WEB・モバイル2024.10.09

「驚きのある遊びを」任天堂から独立した代表がハードとソフトで叶える“こんなモノがあれば”

京都
株式会社モノコト 代表取締役社長
Koichi Sano
佐野 高一

「遊びやエンタメの仕事を手がけたい」という強い思いで、株式会社モノコトを立ち上げた代表の佐野 高一(さの こういち)さん。おもちゃ・ゲーム機器の受託での企画・開発・生産までをワンストップで行う事業を京都で展開しています。1歳半の赤ちゃんから大人までが楽しめるデジタルトイを世の中に送り出す佐野さんは、「おもちゃやゲーム以外の分野でも、エンタメ要素を拡げていきたい」と話します。モノコトを設立した経緯や事業にかける想い、ビジョンをお聞きしました。

任天堂から紆余曲折あってモノコトへ。変わらないのは、遊びに最適化したゲーム・おもちゃづくりへの思い

モノコト立ち上げ以前は任天堂株式会社にお勤めされていたと伺いました。起業されるまでの佐野さまのキャリアを教えてください。

ゲーム機のハードウェアを開発する部署で「スーパーファミコンCD-ROMアダプタ」や「スーパーファミコン衛星放送アダプタ『サテラビュー』」などの設計・開発に携わっていました。5年ほど勤めた後、任天堂時代の上司に誘われる形で、新世代株式会社に創業時から参加しました。
当時、ゲーム市場が高度化し、マニア向けになっていく中、新世代株式会社では「遊びに最適化したゲームやおもちゃ」を作ろうとしていたんですね。そこでは、テレビに接続してすぐに遊べるゲーム機やカラオケのおもちゃなどのコアとなるメディアプロセッサ開発を中心に、製品開発も担当していました。

株式会社モノコトを設立したきっかけを教えてください。

その後、任天堂を世界的な大企業に押し上げた立役者の一人であった故・横井軍平(よこい ぐんぺい)さんが創業した株式会社コトに転職しました。これまでお付き合いのあったおもちゃ会社に対し、新商品を提案・企画・開発・製造する受託事業の立ち上げを行っていました。ところが、当時の状況では、電子おもちゃの受託・開発・生産で利益を出すことができず、この事業を続けていくのが困難との話になりました。しかし、私自身は、まだ遊びやエンタメの仕事を手がけたいと思っていたこともあり、数人を連れて別会社を立ち上げ、ゲームなどのデジタルエンタメ系に特化した事業をやっていくことに。それが株式会社モノコトの始まりです。

社名に込めた想いを教えてください。

形のある「モノ」であるプロダクトと、形のないサービスなどの「コト」の両方をエンターテインメントの分野で作り出すという思いを込めています。

企画・開発・生産まで一気通貫、そしてプロトタイプを使用したプレゼンが強み

現在の事業内容について教えてください。

主力の事業としては、デジタル技術を使ったおもちゃ・ゲーム機器の企画・開発・生産です。中でも得意としているのは、カラー液晶を搭載していたり、テレビにつないだり、インタラクティブ(双方向性)な映像音声を扱うゲーム的要素を持ったデジタルトイ。3歳から小学校低学年くらいのお子さんが使うものが多いですね。取引実績が増えることによって、「こういったものを作りたい」とお客さまから相談されることも増えてきました。

御社の強みを教えてください。

近頃は提案書だけで相手にどういうものか想像してもらうのは難しくなりました。実際に動くプロトタイプを作って「こうなりますよ」と見て、触っていただけるところが私たちの強みかもしれません。人数は少ない会社ですが、ソフトウェアもハードウェアも高い機動力で制作できる点が強みでしょうか。

独自性と進歩性を大事に、時間・品質・価格面をクリアするモノづくりを

御社がモノづくり、コトづくりをするうえで、大事にされていることを教えてください。

遊び・エンタメを柱にしているので、楽しくなければ話になりません。遊びは同じことをしていると飽きてしまうので、常に新しい驚きのある遊びを提供していかなければならない。新しい技術を使うこともそうですが、「独自性」「進歩性」はいつも気にしています。
また、時間・品質・価格面の三つをバランス良くクリアするモノづくりを行っています。テレビやアニメのキャラクター商品の場合、発売日が決まっているので、限られた時間の中でいいモノを完成させることが重要です。おもちゃの場合、お買い上げいただいたお子さんが大人になるまで遊ぶことはありませんよね。10年以上耐久性のあるボタンでは過剰スペックになるわけです。一方で、壊れたときに危険がないとか、口に入れてしまった場合の安全性や品質は維持したうえで、商品に見合った価格にしなければなりません。

印象に残っている、御社のターニングポイントとなった事例を具体的にお聞かせください。

当初は主に、ソフトウェアの開発受託事業を行っていましたが、3期目から商品の製造も行うようになりました。初めて製造までを手がけたのは「液晶パッド型トイ」です。中国の華南地区のおもちゃ工場に製造を委託するわけですが、品質や設計面、出荷数量の管理などを、こちらがやらなければならない。そしてなんらかの不具合があった場合のリスクも負わなければならないので、量産品を作るというのは大きなチャレンジでした。
発注元が開発から製造までできる会社を探していて、私たちが手を挙げたわけですが、工場の選定から製造に関わる体制づくりは大変でした。少なからずトラブルもありましたが、その後の対応でお客さまの信頼を失うことなく、契約も継続、無事に発売することができて本当に良かったと思っています。

スキルや経験を身に付けて、どこに行っても通用するプロフェッショナルであれ

御社がクリエイターに求めるものは何ですか?

スタッフには「モノコトは小さな会社。そして遊びやエンタメは生活必需品ではないので、まったく売れなくなることもある。当たりはずれも大きいので、売れていても安心してはいけないし、売れなかったからといって落ち込むこともない。いつどうなるかわからないので、1人1人がプロフェッショナルとして、どこへ行っても通用するスキルを身に付けてほしい」と伝えています。
小さな会社であるメリットの一つは、広い範囲を少ない人数でカバーしていること。必然的に自分の専門分野以外のところも理解したうえでモノづくりをしていく必要があります。「これしかできません」という人材は少ないですね。

遊びをコアとし、ゲームやおもちゃ以外の分野への拡がりを目指して

御社が目指していることやビジョンについてお聞かせください。

遊び心のあるUI(ユーザーインターフェース)は、ゲームやおもちゃの分野だけでなく、いろいろなところで価値を生み出しています。iPhoneのピンチイン・ピンチアウトや、ページ終端を示す「少しだけ動いてバネのように戻る」直感的な操作方法などはその最たるもの。実用機器だからといって、無味乾燥なUIや機能にするのではなく、エンタメ要素をプラスすることで、よりその価値が認められ、求められるようになるでしょう。あまり詳しくは言えませんが、弊社は電動モビリティーのUI開発にも携わっています。ゲームで培ったレスポンスの良いUIデザインやエンタメ要素をほかの事業に拡げていきたいですね。
京都は我が道を行く、独自色の強い会社が多い。弊社もそういった風土の中で、「独自性」を大事にしていきたいと思います。

読者である、クリエイターの方々にメッセージをお願いします。

貪欲にいろいろなことを経験し、スキルを貯めて、どこでも通用する人材になることが必要だと思います。
今後の会社の在り方として、雇用主と従業員という形ではなく、独立してやれる力を持ったプロ同士が協力してモノづくりをするという形になっていくでしょう。海外の人と話すと、日本人は自立心・独立心が少ないなと感じます。誰かがいったことをそのまま鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えて、そのうえでどう行動するかを決めるプロフェッショナルであってほしい。弊社としてもそういう人材とより関係を深めていきたいですね。

 ※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

取材日:2024年8月23日 ライター:上野 典子

株式会社モノコト

  • 代表者名:佐野 高一
  • 設立年月:2010年12月
  • 資本金:450万円
  • 事業内容:デジタルトイの企画・開発・生産、スマートデバイスアプリ(iOS/Android)の企画・開発、情報家電のプラットフォーム、ファームウェア開発
  • 所在地:〒631-0805 京都府京都市中京区烏丸通六角下ル七観音町634 ONEST京都烏丸スクエア 3F
  • URL:https://monokoto.co.jp/
  • お問い合わせ先:075-253-6310

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