“シェア”でベンチャー企業の成長を後押し!「シェアリング」が生み出す新たなビジネスの可能性
2019年に設立された株式会社モビイクスは、沖縄を拠点にIT受託事業からスタートし、プロスポーツチームの公式サイト運営のほか、今ではシェアオフィス運営など幅広い事業を展開しています。24年に社長に就任した熊谷 豪(くまがい ごう)さんは、シェアリングを軸にビジネスモデルを強化し、新たなサービス開発を推進しています。熊谷さんに、シェアリングを軸としたビジネスモデルの可能性や展望について伺いました。
買収した会社のオフィスが偶然にもモビイクスと同居。「これも何かのご縁」と代表に
会社設立は19年で、熊谷さんは24年に社長に就任したと伺いました。会社の成り立ちから教えていただけますか?
東京で別の会社を運営していた創業メンバーの1人が、沖縄に移住して新しいビジネスを始めました。それがモビイクスです。初めは小規模なIT受託事業からスタートし、次第にプロサッカーチームやプロ野球チームの公式サイトの運用なども手掛けるようになりました。その後シェアオフィス事業も展開し、現在弊社が入居しているビルに移転しました。
これまでの経歴と熊谷さんが代表取締役に就任された経緯も教えてください。
福岡から東京の大学へ進学し、卒業後は引き続き東京で広告代理店に就職しました。その後独立して立ち上げたスタートアップ会社を16年に別会社に売却。その資金を元に沖縄のリゾートワークスという会社を買収したのですが、拠点がモビイクスが運営しているシェアオフィスだったんです。それをきっかけにモビイクスの経営陣とも知り合い、私の事業家としての知見などを生かせるであろうとお誘いいただき、これも何かのご縁だと今年2月から社長に就任しました。
柱となる四つの事業で「シェアリング事業」を強化。プロスポーツのサイトも運用
IT受託事業からスタートし、スポーツチームのサイト運営やシェアオフィス運営など、幅広い事業をされているとのことですが、現在はどのような事業を手掛けているのでしょうか?
大きく分けて四つの事業があります。まず、プロ野球チームやプロサッカーチーム、そしての公式サイトの運用があります。次に、WebサイトやWebサービスの制作事業、さらに、AmazonでのEC販売と、シェアオフィスの運営を行っています。
各事業はどのように運営されていますか?
事業ごとにチームは分かれていますが、プロジェクトに応じて協力し合うことが多いです。 例えば、プロサッカーチームやプロ野球チームのイベント時には、クリエイティブチームがランディングページを作成し、システム開発は開発チームが担当するなど、連携して仕事を進めています。また、シェアオフィスに入居しているほかの企業とも協力し合って業務を進めることもあります。
シェアオフィス事業について、スタートした経緯を教えてください。
最初は偶発的なものでした。当初、オフィスを借りたものの人数が少なく、家賃の負担が大きかったため、みんなでシェアする方が効率的だということで始まりました。今ではシェアリングを強化する方向にシフトしています。
具体的にシェアオフィスのいいところについて聞かせてください。
例えば小さな規模でも、ある程度の規模の会社でも、コピー機や会議室など、会社として運営していくうえで必要な設備はだいたい同じです。それぞれの会社が別々にオフィスを構えている場合、もちろん設備も別で購入しなければなりませんが、オフィスをシェアリングすれば、コピー機も会議室も一つで済みます。シェアリングは企業のコスト構造を変えることができるうえ、業務効率も上がるのです。
御社の強みはなんでしょうか?
「シェアリング×開発×運用」です。シェアリングを行うには予約システムやオペレーションの構築など、システムの開発や運用が不可欠ですので、それらの分野には長けています。
また、最近では業務の効率を上げるために、特定のお客さまに対して価値を提供することを意図的に進めています。
業務効率化と深化のために受託事業の種類の統一を推進。「ベンチャー企業の発展を加速させる」
どのような特定のお客さまに絞っているのでしょうか?
「シェアリング」という強みをベースに、目下で進めているのはレンタカーや車関連の事業です。アルプスアルパイン株式会社というカーナビゲーションの大手企業と協力して、宮古島でレンタカーモールを作る新たな計画を進めています。シェアオフィスやフードコートのレンタカー版のようなもので、各レンタカー会社が集まり、シェアリングすることで効率を高める仕組みを考えています。このメリットとして、集客やメンテナンスを一括で行えることがあります。
沖縄には多くのレンタカー会社があるなかで、新しい取り組みですね。
これまで近い例はありましたが、大手のレンタカー会社が中心でした。従来の取り組みと大きく異なる点が、車関連の中小零細企業やスタートアップ企業でも、参入しやすいことです。シェアリングすることで、参入の初期費用や運用のコストを抑えられるほか、チャンスとなる場所を平等に提供できます。小さな会社でも集まれば大きな力になる、というのがシェアリングの可能性です。
この新しい取り組みは、「ベンチャー企業の発展を加速させる」という御社の理念に通じるものがありますね。
そうですね。起業の際には固定費が非常に大きな負担となりますが、弊社のサービスを利用すれば、それを抑えることができます。オフィスを安価に構えることができ、登記も可能です。また、郵便物の受け取りや会議室のシェアリングもできます。最初はオープンスペースを利用してコストを抑え、事業が成長したら個室に移り、最終的には独自のオフィスをもつことも可能です。最初のステップとしては最適な環境だと自負しています。
また、こういった環境であれば、自分たちでできない仕事をほかの入居者に発注できます。起業したばかりで人脈や知り合いが少なくても、クライアントに対し幅広い提案ができる可能性があるという点も、ベンチャー企業にとっては利点になりますし、発展の後押しになるはずです。
シェアオフィスの入居企業同士の連携が、幅広い提案を可能にする。同居会社と築くwin-winな関係
入居している会社同士でのやり取りも多いとのことですが、連携のために何か工夫していることや心がけていることはありますか?
弊社も発注元や発注先になりえるので、社員1人1人が、どの入居企業がどんな能力を持っているのかは、自発的に情報を得て、把握するようにしています。社員がハブになって、必要に応じて個々の会社とつないでくれることが多いです。私がいうまでもなく、自然発生的にいろいろな場所でシナジーが起きているのはうれしい限りですね。自分たちの会社に特定の能力がなかったとしても、「できません」とはいわずに、他社と連携を取りながらできる方法を見つけています。
とてもいい関係を入居している企業と築けているのですね。具体的な事例はありますか?
例えば、イベント会社が入居されているのですが、最近オープンした商業施設のイベント開催を依頼されたことがありました。弊社はイベントのノウハウがなかったので、入居しているイベント会社につないで、開催することができました。また、このような一つの仕事によって1年分の入居費を軽くペイできることもあるんですよ。
シェアオフィスに入居していただくことで入居費を支払っていただくだけでなく、仕事をつなげられれば、お互いにwin-winなのです。それこそ、弊社のシェアオフィス事業の強みともいえます。
ライドシェアの時代に備え、開発力アップを図る。沖縄ならではの社会課題解決に向け
展望についてお聞かせいただけますか?
今後も引き続き、「シェアリング×開発×運用」に集中していきたいと考えています。そのためにはITの開発能力を高める必要がありますので、エンジニアの能力を向上させることに注力しています。
もう一つ取り組んでいきたいことが、ライドシェアの時代が必ず来ると思うので、その分野にしっかり投資できる体制の整備です。ライドシェアもITとセットで進めなければならないので、やはりITの技術と運用の力を強化していくことが重要だと考えています。
たしかに、ライドシェアにはITの力が不可欠ですよね。車のGPS情報などをITと接続するためのノウハウも必要ですし、今のうちに準備を進めるということですね。
そうですね。沖縄は車社会であり、高齢の方々の移動も大変です。タクシー業界が高齢化し、供給が不足している現状では、一般の人たちがライドシェアを活用しない限り、移動手段が崩壊していく可能性があります。沖縄はそういった実証実験を行いやすい土地だと思います。
開発能力を高めるというお話がありましたが、どのように社員の能力を向上させているのでしょうか?
社員については、特定の分野のスペシャリストとして成長していってほしいと思っており、受ける案件を慎重に選ぶことを大切にしています。なんでもかんでも受けるのではなく、似たような案件を繰り返し受けることで、知識が応用できるようになり、深みが出てくる部分があると思います。その代わり、私たちが受けられない案件については、シェアオフィスのほかの会社にお願いするという方針です。
最後に、どのような人材を求めていますか?
デザイナーやエンジニアの方であれば、探求心が強いといいですね。手に職をつけたいとか、生活が安定しそうだからという理由でエンジニアやデザイナーをやりたいというタイプの方は、あまり私たちには合わないかもしれません。むしろ、“好きだから深めたい”という気持ちが強い方に、ぜひ来てほしいですね。
取材日:2024年8月27日 ライター:仲濱 淳
株式会社モビイクス
- 代表者名:熊谷 豪
- 設立年月:2019年6月
- 資本金:2,250万円
- 事業内容:IT受託事業・インキュベーションオフィス運営事業
- 所在地:〒902-0067 沖縄県那覇市安里381-1 ZORKS沖縄
- URL:https://mobyx.jp/
- お問い合わせ先:098-943-0313