大手サイト構築を手掛けるWeb制作会社、映画事業も展開。大阪の映画文化を醸成し、劇場を元気に

大阪
CREASTITCH Inc.(株式会社クリエステッチ) 代表取締役
Takatoshi Terai
寺井 隆敏

Web制作会社としてさまざまな大手企業のサイトを手掛けている大阪の株式会社クリエステッチ。代表取締役の寺井 隆敏(てらい たかとし)さんは、芸大で映像を学んだ後、営業職やエンジニア職などさまざまな業務を経験し、2004年に独立しました。また別法人の代表として映像事業を手掛けるなどユニークな取り組みも行っています。そんな寺井さんに起業するまでの経歴や具体的な事業内容、今後の活動についてお話を伺いました。

制約に縛られず、仕事も資金も自由に扱える立場になりたくて独立

クリエステッチ立ち上げまでのキャリアについてお聞かせください。

もともと映画関係の仕事に就きたくて、大阪芸術大学の映像学科に進学したのですが、勉強する中で映画業界の大変さを痛感し、卒業後は印刷会社に入社しました。ところが、1年ほど経ったとき、大分の大学で映画を研究しているゼミから「映画制作について教えてほしい」と依頼があり、講師として就任。その後は、大手営業会社での営業職や、Apple Japan合同会社の契約社員など、自身のキャリア形成のためにさまざま職を経験しました。
前職では、自社ビルを所有する会社の社内インフラを改善するため、ネットワークの配線や書類のデジタル化を手掛けました。その任務を終えた後、社長から「グループ会社を新たに立ち上げて事業をしてみないか」といわれ、Webの制作会社を作りましたが、あっという間に黒字化できたため、独立を決意しました。

クリエステッチを設立しようと思ったきっかけは?

前職では、社長の右腕として働いていたものの、会社員の立場だと資金を自由に扱うことができませんでした。利益を得るためには出資が必要な場面もありますが、社長が許可しても経理部が承認しないこともあり、そういった制約の中で働くよりも、自身で仕事し、自由に資金を扱える立場になりたいと思ったんです。当時はまだホームページを制作する会社も少なく、この分野であれば自身のキャリアを生かせると思い、04年にクリエステッチを設立。08年には法人化しました。

継続して取引いただけていることが、満足いただいている証

主な事業内容について教えてください。

弊社は、Web制作とシステム開発をメインに手掛けており、代理店を通じて案件をいただいています。そのため、設立当初から営業部門は持たず、制作に専念できる体制を整えてきました。現在スタッフは4人。デザイナー、コーダー、プログラマー、そして私自身はプログラマーとシステムエンジニアとして、月に約20〜30件の案件を進めています。制作だけでなく、運用、変更、更新なども請け負っています。

Web制作では5000件以上の実績を重ねておられますが、印象に残っている事例は?

例えば、大手電鉄会社の新規事業立ち上げにおいて、サービスそのものを構築する段階から参画させていただいたことがあります。システムの提供だけでなく、サービスの設計から一緒に手掛けさせていただきました。
ほかには、関西を拠点にしながら東京にも積極的に進出している不動産会社の分譲マンションの主要シリーズのサイトを一手に担当しています。

お客さまからはどのような声をいただきますか?

この業界では、直接お客さまから声をいただく機会は少ないのですが、継続して取引いただけていることが、満足していただいている証だと思っています。代理店からの話によると、弊社が当たり前のように提供しているサービスを他社に依頼すると、「それはできない」と断られることがあるそうです。弊社では、できる範囲でお客さまの要望を叶えるのではなく、お客さまの要望を叶えるためになんとかできないかと常に模索して技術を投入していくため、こうした姿勢が信頼につながっているのではないかと自負しています。

御社の強みを教えてください。

強みは、見積もりをしっかり作成し、その金額の妥当性を担当者がしっかりと説明できることです。一見当たり前のようなことですが、受注をえるために安価な見積もりを提示し、利益が出ないケースは少なくありません。弊社では、高額な見積もりでも、その金額の理由を担当者が説明することで納得感を持ってもらいます。
追加要件が出た場合にも、適切なバッファを見込んだうえで見積もりを作成しているため、その範囲内でプロジェクトを進められます。そのため、高すぎず安すぎず、途中で大幅な値上がりが発生しないことから、お客さまには安心感も提供できていると思います。

映画制作関係者向けのサイトを運営。「映画業界や学生映画のレベルアップを狙う」

映画事業も展開されていますが、どんなことをされていますか?

2000年より、オーディション情報、スタッフ・キャスト募集のサイト「シネマプランナーズ」を運営しています。5年前から「シネマプランナーズラボ」として別法人化していますが、もともとは映画制作に関わる人たちのために立ち上げました。近年は、監督や脚本家によるワークショップの告知サイトとしても有名になり、登録者は約4万人におよびます。収益は主にGoogle AdSenseの広告から得ており、アクセス数やユニークユーザー数が多いことから広告価値を求めて出稿する企業も増えています。
また、サイト運営だけでなく、私自身が講師として、映画関係者に向けた効果的なプレゼンテーションや企画書の作成方法、営業術・トーク術といったノウハウを提供するための講座も行っています。

「シネマプランナーズ」を立ち上げたきっかけについて教えてください。

私が大学を卒業した1999年は、まだインターネットがそこまで普及しておらず、映画制作の際に役者を見つける方法は、大学内でのキャスティングに頼っていました。そんな中、私はおそらく大学で初めてインターネットを活用してキャスティングを始めた人間です。大阪中の劇団や大学の映画・演劇サークルに片っ端からメールを送って直接会いに行きました。その結果、キャスティングの層が広がり、さまざまな世界観を持つ映画制作が実現可能となったのです。
この経験から、映画業界や学生映画のレベルが向上するであろうと考え、「シネマプランナーズ」を立ち上げました。今では一つの映画のキャスト募集に対し、約1500人が応募してくるサイトへと成長しました。

 

仕事は人間関係や誠実さの中で生まれるもの。大阪で映画文化の醸成へ

この仕事をしてよかったと感じることはありますか?

弊社はWeb制作会社ですが、映画事業を並行してきたことが結果的に良かったと思っています。一般的に映画が嫌いな経営者って少ないですし、特に関西では映画事業自体がめずらしく、映画の話題から営業につながることも多いです。
その逆もあって、映画業界からシステム開発やWebに関する相談を受けることもあります。映画業界は比較的アナログな部分が多いため、例えば情報整理やデジタルツールの活用方法をアドバイスしてあげると、喜んでもらえます。

現在抱えている課題について教えてください。また、その課題をどうやって解決していこうと取り組んでいますか?

今は代理店に頼りきっている部分がありますが、今後はもう少し各会社と密な関係を築き、継続的に案件を受けられる状況を作っていく必要があると思っています。仕事は人と人とのつながりや誠実さの中で生まれるもので、それ自体が営業です。そのことを常に意識し、感謝の気持ちを持つ大切さを、スタッフにも常々伝えております。

どのような会社にしたいですか?新たな事業展開として取り組んでいきたいことは?

Web制作に関しては、今後も安定して継続できればと考えています。そこまで会社を大きくしようとは考えていませんが、現在10年以上おつき合いのある代理店とは、20年、30年と長く信頼関係を築いていけるよう、常に誠実な姿勢を持ち続けたいと思っています。
映画の分野については、大阪の映画業界を活発にしていくための活動を進めていきたいと考えています。実はこのたび、大阪・十三の街でたくさんの人にインディーズ映画を観てもらうなど映画ファンを増やしていく「十三下町映画祭」のディレクターを務めました。大阪は東京に比べて映画制作が少ないですが、大阪で制作された映画が地元で上映されると、多くの観客が足を運ぶ傾向にあります。映画は、作るだけではなく、見る人がいてこそ完成します。大阪で映画を撮る文化を育て、地元の劇場が利益を確保できるように盛り上げていきたいですね。

座右の銘は「目標は 思い描く 二歩先に」。AIを積極的に活用して

寺井さんの座右の銘を聞かせてください。

「目標は 思い描く 二歩先に」――。これが私の座右の銘です。例えば、映画祭でグランプリを取りたいという目標を掲げたとします。しかし、真の目標は「グランプリを取ることで自分の知名度を上げ、さらに大規模な予算で映画制作をしたい」といった二歩先にあることを表しています。
また、「問題の原因は 二歩手前にある」という言葉もあります。問題が起きたとき、多くの人は直接的な原因を見つけようとします。しかし、その背後にあるフォロー体制やチェックシートの有無、担当者の人選が適切だったかといった二歩手前に本当の原因が潜んでいることを表しています。これらを肝に銘じながら、日々取り組んでおります。

クリエイターを目指す人たちに、メッセージをお願いします。

これから目指す人たちには、ぜひAIの活用をおすすめします。「AIを使ってラクしよう」という考えではなく、AIを活用して効率を上げ、より素晴らしいものを生み出していくのです。私も以前は、プログラムやシステムの開発に多くの時間を費やしていましたが、AIを活用することで業務が効率化され、その結果、映画制作や映画館の改善を考える時間に充てることができています。
また、Webの分野は常に進化していくため、今使っている技術も数年後には時代遅れになってしまいます。仕事の中で学ぶだけでなく、新しい技術やサービスが登場した際には積極的に試し、最新の情報を追い続けていただきたいですね。

取材日:2024年8月21日 ライター:堀内 優美

CREASTITCH Inc.(株式会社クリエステッチ)

  • 代表者名:寺井 隆敏
  • 設立年月:2004年10月(2008年9月 株式会社に改組)
  • 事業内容:WEBに関わる業務全般(クリエイティブ・システムの構築)映画事業(シネマプランナーズ https://cinepu.com/
  • 所在地:〒531-0072 大阪市北区豊崎3-20-9 三栄ビル 10F
  • URL:https://www.creastitch.co.jp/
  • 連絡先:06-6292-6787

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