日本一のクリエイティブでスポーツを支え、感動を巻き起こしたい。仙台という街にかける、ある思い
「日本一のチームを目指すなら日本一のクリエイティブが必要だ」。そう語るのは、仙台の株式会社心花堂(トキメキドウ)の代表取締役・千葉 充(ちば みつる)さんです。日本一への挑戦を掲げている国内プロバスケットボールBリーグに所属する「仙台89ERS」をクリエイティブの側面からサポートしています。クリエイティブだけでなく生花業も展開するなど、あらゆる事業に熱意を持って取り組むのには、東日本大震災で甚大な被害を受けた仙台を「盛り上げたい」という思いがありました。
大企業から中小企業までを経験し、起業。3事業を軸に展開
創業までのキャリアを教えてください。
新卒で大日本印刷株式会社(以下、DNP)に入社し、東北楽天ゴールデンイーグルス(以下、楽天イーグルス)創設期に、プロモーション案件を3年間ほど担当していました。その後、株式会社ジェイアール東日本企画に転職し東北6県におけるディスティネーションキャンペーン施策などを約12年行っていました。地域の観光資源を発掘・宣伝し、中小企業との関わりを深めるなかで、大企業では味わえない体験をしたいと思い、中小のデザイン会社を事業承継しました。プロモーションにおけるクリエイティブ制作全般に携わり、それらの経験を生かしながら、2023年4月18日に株式会社心花堂を設立しました。
現在の事業内容を教えてください。
大きく分けて三つの事業を展開しています。一つはデザイン制作全般に関わるデザインや企業ブランディングなどの支援。二つ目はスポーツチームに対する企画運用支援、三つ目は生花の仕入れから販売などの生花業を行っています。
幼少期の原体験がスポーツ事業のきっかけに。「一緒に日本一の夢を見たい」とバスケチームを支援
DNP時代からスポーツ関連の仕事をされていますが、以前から興味があったのでしょうか?
幼少期のころから野球が好きで、当時仙台が本拠地であったロッテオリオンズ(1969-1991)というチームを応援していました。しかし、同チームが優勝を機に本拠地を移転してしまい、仙台にプロ野球チームがなくなってしまったのです。当時はその出来事がとてもショッキングで「いつか仙台で野球に携わりたい」という思いがありました。
そんななか、仙台で新球団設立の話があり、DNPでは当時、数多くのプロ野球チームのファンクラブやプロモーション支援を行っていたので、そのノウハウと情熱をもとにスポーツ関連の仕事を始めました。
そこでの経験が現在展開しているスポーツの企画運用支援事業につながっているのですね。
はい。現在、カレッジスポーツなども支援しておりますが、スポーツチームへの企画運用支援のほとんどが仙台を本拠地としている国内男子プロバスケットボールBリーグに所属する「仙台89ERS」の仕事です。楽天イーグルスの創業メンバーがバスケチームの経営に参加したのを機に、当時の社長と熱く語り合い「一緒に日本一の夢を見たい」と思い、「仙台89ERS」を支援することになりました。
「全試合満員」の実現をクリエイティブでサポート。「日本一のクリエイティブ」の定義は
スポーツの企画運用支援をされるなかで一番印象に残っているエピソードなどを教えてください。
昨シーズンの「仙台89ERS」のクリエイティブ制作です。昨年、同チームが無謀にも開幕前にホームゲーム全30試合を「全試合満員宣言」しました。その集客目標を達成するために、クリエイティブでできる全てをやりつくしました。その結果、最終戦まで「全試合満員」を達成することができ、達成感や充実感がありました。質・量・タイミングなどを最大限考え、24時間頭をフル回転させていましたね。
ただ一方で、スポーツは“勝負の世界”。「仙台89ERS」が次に掲げている「2026年シーズンの優勝」という“日本一のチーム”を達成するためには、“日本一のクリエイティブ”でないといけません。私たちの次の目標はそこです。
千葉さんが考える「日本一のクリエイティブ」とはどんなものですか?
今僕たちは、映像以外のクリエイティブに関しては全て制作をしています。試合当日に配布するゲームプログラムやデジタルサイネージ、LP、広告宣伝用の画像制作などさまざまなことを行っておりますが、これらを実現できているのはクリエイティブチームがマーケティングディレクターと密接な関係を築けているからこそ。「こういったクリエイティブがほしい」となれば、会議をしている最中から制作に取り掛かっているので、数時間後には宣伝物が完成しているといったスピード感です。「ワンチーム」としてチームとともに秒単位で戦って仙台を支えることができるのが「日本一のクリエイティブ」だと思っています。
流通過程を見直せば、花は長持ちする。亡き友たちへの想いも事業に込め
生花業を始めたきっかけはなんでしょうか?
生花に関しては「いつかやりたい」とは漠然と考えていたのですが、起業して事業にするまでは想像していませんでした。しかし、その思いを強めたある出来事がありました。
私の父親が亡くなった時に同級生がお花を持ってきてくれたのですが、その花が2カ月ほど枯れなかったのです。私は衝撃を受け、お花の流通過程を見直すことができれば多くの人に長く楽しめるお花を届けられるのではないかと思いました。
同業他社さんとの違いを教えてください。
生産者と消費者、両方の顔が見えているということですね。一般的な流通ルートだと「生産者→市場→仲卸→店舗」という流れで店頭に生花が並ぶのですが、私たちは生産者から直接買い付けもしますし、季節で一番良い状態の花を目利きの仕入れ担当が最適なルート・環境で仕入れ・管理しています。価格も変わらず、最速で花を届けることができるのが強みです。週末には東北各地のお取引先や売り場を回りながら消費者の声を聞いています。
また、仙台は11年の東日本大震災によって私の大切な人が多く亡くなった地域です。そんな故人に対して、「すぐに枯れてしまうような花を贈ることがどうしても許せない」という想いもあります。価格を変えずに、長持ちする花を届けたいという想いが強いのだと思います。
仙台を「スポーツ」で盛り上げたい。アナウンサーにも挑戦しているワケ
今後はどんなことをしていきたいですか?
今でこそ、プロバスケットボールチームの仕事をしているのですが、以前はあまり興味がありませんでした。しかし、一緒に仕事をさせていただくなかで試合を観戦した際に、身長2メートルクラスの選手たちが目の前でぶつかり合うパワーとスピード、スリリングな展開は、人を魅了するコンテンツとして高い可能性があると思いました。そういったコンテンツを「仙台」のカルチャーにしたいと思っていますし、仙台の一部で盛り上がるのではなく、全域を盛り上げたいという気持ちがあります。
震災で被災した地域に行って試合をした際に、スポーツは誰かに勇気を与えたり、生きる希望になったりするのだと感じました。感動や活力を届けられるのがスポーツの醍醐味だと思うので、より広くそれらを届けるためにも僕らが制作したクリエイティブでサポートし、スポーツを通じて感動を届けていきたいです。
また、私は去年からアナウンススクールにも通っているのですが、スポーツの実況中継を通じてあまり知られていないマイナースポーツの魅力を広げていきたいと思っています。どんなスポーツにも感動が必ずあります。真剣勝負のなかで生まれる、心たぎる感動をクリエイティブとアナウンスの両方で届けていきたいと思っています。
取材日:2024年7月10日 ライター:三芳 洋瑛
株式会社心花堂
- 代表者名:千葉 充
- 設立年月:2023年4月
- 事業内容:デザイン制作、生花事業
- 所在地:〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町1丁目11番9号 仙台リエゾン902
- URL:https://www.tokimekido.jp/