「1人の小さな会社」でも幅広いデザイン制作に対応できるインハウスデザイナーのような存在。アパレル業界・飲食業界にも挑戦

福岡
株式会社MIZO DESIGN STAND 代表者
Daisuke Mizoguchi
溝口 大輔

福岡の株式会社MIZO DESIGN STANDは、1杯1杯こだわりを持って淹れるコーヒースタンドのように、それぞれの仕事に丁寧かつスピーディーに向き合います。代表を務める溝口大輔(みぞぐち だいすけ)さんは、2019年に個人事業主として創業し、21年に法人化させ、現在にいたるまで1人でデザインに携わり続けています。主に紹介ベースでの案件は、観光PRにまつわるデザイン、プロダクトデザイン、紙媒体のデザインと多岐にわたります。今後はデザインだけでなく、アパレル業界や飲食業界へも踏み出す挑戦心旺盛な溝口さんにお話をお伺いしました。

1杯1杯こだわりを持って淹れるコーヒースタンドのように、1件1件向き合って作るデザイン

会社立ち上げまでの経歴と独立のきっかけを教えてください。

学校卒業後、化粧品会社のインハウスデザイナーとして2年ほど、パッケージデザインなどを制作していました。その後広告代理店に入社し、10年ほど勤めたところで福岡支社の立ち上げを担当し、支社長を務めました。
独立は全然考えていなかったんですが、あるタイミングで複数のクライアントさまから独立を勧められました。性格的に、考え始めたらその方向へ進んでいくタイプで、1カ月後には辞める申請をしていましたね。立場上すぐには辞められなかったのですが、18年に個人事業主として独立し、21年には法人化しました。

会社から独立してみて、変化はありましたか?

自分で会社を経営するのと雇われるのとではまったく違いますね。会社員として最後の方は、マネジメント業務や経営側の仕事が多くて、自分が手を動かしてデザインをすることが、あまりなかったんです。 でもデザイナーとして、30代半ばでこの状況は良くないと思っていて。それで自分が手を動かしてデザインしたいと思っていたことも相まって、その気持ちが独立の後押しにもなりました。

MIZO DESIGN STANDの名前の由来を教えてください。

「MIZO」は自分の名前ですね。「DESIGN STAND」は造語です。コーヒースタンドって、大きいお店と違って、1杯1杯にこだわりを持って淹れている。それで僕も、1件1件にちゃんと向き合って仕事がしたいという思いから名付けました。
ありがたいことに独立してから今のところ、ご紹介でしか仕事を受けていません。1人でしているので、それぞれのお客さまと真摯に向き合うためにはこれ以上受けられないということもあります。

仕事を通して地元を知り、働きたい人と一緒に作り上げていく。福岡の広告賞を受賞

独立して最初のお仕事は何でしたか?

最初の仕事は、化粧品会社が神戸コレクションに出店する時のブースデザインやツールデザイン、SNSプロモーションの仕掛けなどをトータルでやらせてもらいました。
当時オイルに花を浸けるのが流行っていたので、看板商品の小さいボトルにオイルと花を入れ、撮影ブースに並べました。SNSプロモーションとして、撮影・拡散したら特典をあげるような仕掛けを作りましたね。
また、地元の長崎で幼馴染が花屋をやっているので、そこに全部発注を依頼しました。自分で会社を立ち上げたら、自己責任ですが、自分が仕事をしたい人と一緒に仕事を進められるようになりました。

ほかにも印象に残っている案件があれば教えてください。

そうですね。福岡県糟屋(かすや)郡にある宇美町が、20年10月20日に町制施行100周年を迎え、それを記念し西日本新聞朝刊に広告を掲載するということで依頼を受けました。写真は依頼しましたが、デザインだけでなく、コピーライティングや文章も僕が担当しました。

あともう一つは、22年に携わった地元・長崎市の観光PR動画を作った仕事が記憶に残っています。ずっと長崎県のお仕事をしたい、何かしら貢献できればと思っていました。子どもの頃から高校卒業まで18年間長崎に住んでいましたが、意外と長崎のことを全然知らなくて。だからこのお仕事のタイミングで、あらためて長崎のことを知ることができたことがうれしかったですね。
僕はプロデューサーの立場で撮影を進めました。写真家に構図や動画イメージを伝え、ちんちん電車や名所を貸し切って撮影をしたり、友達や親戚を集めてモデルをしてもらったりしました。

いつか長崎に帰りたいと思いますか?

そうですね。ちょっと先の話ですが、10年以内には家の拠点を長崎に移そうかなと考えています。福岡は福岡で拠点を残して、長崎に新たに拠点を作るような形になると思います。
実家の土地やお墓のこともあるので、そこは守っていきたい思いがありますね。

気軽に相談できる伴走型の小回りの利くデザイナー。信頼するパートナーとともに制作

デザインや仕事をする上で1番大切にしていることはなんですか?

僕は「伴走型」を意識しています。自分1人の小さな会社なので、小回りの利くデザイナーを目指しています。
企業のインハウス企画室やデザイン室みたいなポジションでいたいなと常々思っています。わざわざ発注書を書いて相談されるのではなく、気軽に社長から電話をもらい「こんなことやりたいだけど、どう思う?」と相談されるような存在でいたいですね。とにかく相談されたら、すぐに形を見せるようにして、スピードも重視しています。

今後も1人で続けていく予定ですか?

僕は小回りが利くことが良いと思っているので会社で人を雇うことは考えていません。しかし、今後も案件によってパートナーを組みつつ進めていくと思います。多少お金がかかっても、その方が過去の経験上、絶対いい仕事になると感じています。デザイナーは、どうしても得意な仕事、不得意な仕事があります。例えば僕だったら、女性っぽいデザインは、おそらく女性より得意じゃない。コストを考えたら、社員を入れて作らせることもできると思うんですが、仕事の質を考えると案件毎に得意なメンバーで作り上げた方がより良いものが出来上がると思っています。それは今まで会社員でディレクション業務を担当していた経験も含め、信頼できるいろいろなパートナーがいるからできることだと思います。

「やったことないのに偉そうに言うな」という自分への葛藤。アパレル業界と飲食業界へ挑戦

これから挑戦してみたいことはありますか?

今、実際に進めているんですけど、今年からアパレル事業を始めました。「ELSFANDER(エルスファンダー)」というゴルフウェアブランドです。オンライン販売のみですが、シンプルなデザインで普段着としても着られるデザインにしています。
あとはクレープ屋さんも今準備をしていて、来年にはオープンするスケジュールで動いています。それは福岡市六本松に出店する予定です。クレープ屋さんは佐賀で友人がやっているものを継承する形です。妻が佐賀出身ということもあり、小麦粉や生クリーム、いちごなど使う食材は佐賀県産のものを多く使用したいと考えています。

デザイン業とはまったく違う分野に思えますが、販売・飲食業の知識はどのようにして得たのでしょうか?

僕はデザイナーとして、クライアントさんの商品の販売促進や、飲食店さんの立ち上げのブランディングをお手伝いさせてもらうことがよくあります。その時に「こうした方が良いです」と助言するんですが、自分の中で「やったことないくせに偉そうに言うな」という葛藤がありまして。
その葛藤に打ち勝つため、アパレルやクレープ屋さんの前にも、実はキャンプ好きが高じてキャンプギアを輸入販売していました。日本では置いていないようなキャンプギアを、海外のブランドと代理店契約をしてネットで販売したらそこそこ売れていたんです。人が作ったものを横流しする単純作業が面白くなくて辞めてしまいましたが、販売経験という意味ではいろいろなことを学びました。
それに比べるとアパレルは素材や形も自分で1から作るものだからおもしろいですね。性格的に結構なんでも挑戦したくなるので、これからの広がりが楽しみです。

取材日:2024年9月26日 ライター:藤木 彩乃

株式会社MIZO DESIGN STAND

  • 代表者名:溝口 大輔
  • 設立年月:2021年4月1日
  • 資本金:2,000,000円
  • 事業内容:映像制作、グラフィックデザイン、WEB制作、システム開発
  • 所在地:〒810-0033 福岡県福岡市小笹4-19-32-701号
  • URL:https://www.mizodesigns.com/
  • お問い合わせ先:092-231-9243 / 090-5087-8669

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