小さなアイデアが大きな可能性を生む!「伝わる」クリエイティブで、福井から世界を元気に
写真撮影、映像制作、Web制作をワンストップで提供している福井の株式会社ミエリ。代表取締役の西村 幸起(にしむら こうき)さんは、地域の活性化に貢献したいという強い思いから起業し、地元企業の課題解決や観光振興など、さまざまなプロジェクトに積極的に取り組んでいます。地域を元気にするキーパーソンとして注目を集めている西村さんに、創業の経緯や魅力が伝わるコンテンツの作り方、展望について伺いました。
34歳で故郷福井へのUターン、そして独立
ミエリ立ち上げまでのキャリアをお聞かせください。
大学卒業後は東京の音楽出版会社で働き、デザインなどを担当していました。その後両親の体調が思わしくないこともあり、なるべくそばにいられるよう故郷の福井県で転職先を探していたところ、タイミングよく求人募集があった石川県の出版社へ入社しました。それが2006年、34歳の頃ですね。
石川県の出版社ではどんな仕事を担当されましたか?
北陸三県の情報を紹介するタウン誌を発行する会社でしたので、福井支社の一員としてアパレルショップや飲食店、イベントなどの取材を担当しました。スタッフも限られていたので、営業から撮影、デザインにいたるまで誌面制作に関するすべての作業をこなすハードな日々でした。
独立したのはどのようなきっかけだったのでしょうか?
父が亡くなったことが大きなきっかけです。石川県と福井県を行ったりきたりの働き方だったので、しっかり福井県に拠点を置きたいと考えました。とはいえ、出版社を辞めてしばらくは何をしようかと1年くらいブラブラしていたのですが…。「ミエリフォトデザイン」として個人で写真撮影やデザイン、映像制作などの活動を始めたのが2011年2月のことです。
自己破産からの再起、そして地域を支える存在へ。妻も事業に参画
個人で活動を開始するにあたって、あらためて感じたことがあったそうですね。
実は私自身、自己破産の経験があるんです。父が友人の会社の保証人をしていて、その借金の影響が私にも及んでしまい…。家が差し押さえられお金もなく、何もできず本当に辛い時期でした。父はプライドが高く、そんな状況になるまで誰にも相談できなかったようです。もっと相談したり、人を頼ったりしてほしかった。独立してそのことを思い出し、自分が企業や困っている人の力になりたいと思うようになりました。
そのためには、Web制作も重要になってくると考え、独立して4年目に妻へ「一緒にやらないか」と頼みました。妻とは、以前働いていた石川県の出版社で出会ったのですが、10年近くライティングの経験がある妻の文章力と私の写真や映像で一つのマーケティングができると思ったんです。
そこからの事業拡大は順調でしたか?
事業拡大のためには取引先への信用度もあげる必要があると、2018年に「株式会社ミエリ」として法人化。同時に福井県の主要企業の案件を獲得するという目標も掲げました。
はじめは小さな仕事をコツコツやってお金を貯めて、機材も増やしました。全力を尽くして営業活動を行い、最初に目標を実現できたのが福井県内最大のショッピングモール「Lpa(エルパ)」の案件です。年間数十本のCMとWebサイトなど、すべての管理・制作を受注できました。
コロナを乗り越え、観光支援で福井の経済を活性化
新型コロナウイルスの感染拡大で大打撃を受けたそうですね。
好調だったのに、いろいろな事業計画がすべて中止になってしまいました。でも、そんな時だからこそ、どうすれば企業と県民を元気にできるかアイデアを絞ったんです。そこで福井県と日本ユニシス株式会社(現BIPROGY株式会社)と共同で制作した「ふく割」というアプリのPRに関わりました。県内の買い物やサービスの利用時に使える電子クーポンを発行するアプリでしたが、そのCMやロゴ、チラシ、Webサイトなどの制作物を当社で担当することになりました。アプリの認知度があがり利用が増えれば、 企業が活性化し人々の生活も回る。外出自粛と言われていましたが、スーパーやガソリンスタンドへ出かける機会が増え、人の流れを大きく動かし経済回復に貢献できたと実感しています。
コロナ禍の問題解決のため、さらにどのような決断をされたのでしょうか。
コロナ禍が明けた時、経済をどうしたら回せるのか、それだけを日々考え続けたどり着いた結論が「観光業へ事業を広げること」でした。北陸新幹線が福井へ開通したら、受け入れ体制も含めて考える必要がある。そこで一気に旅行会社へ営業をかけました。さらに福井県の観光連盟へも営業をかけ、2022年には国内最大の旅の祭典「ツーリズムEXPOジャパン」の福井県ブースの企画デザイン・運営を大企業6社とコンペで争い勝ち取りました。
これが大きな実績となり、観光連盟や観光庁から、直接依頼でお客さまを紹介してもらえるように。福井県を代表する人気施設「日本海さかな街」のブランディングも、そこからのつながりでいただいた仕事です。
さらに、最近では日本旅行グループの一員として地域活性化を行う「日本旅行ビジネスクリエイト」との業務提携も行い、観光分野での仕事は一層広がりつつあります。
「伝える」から「伝わる」へ。鉄骨企業の魅力をVTuberが発信!?
コンテンツ制作の際、大切にしているのはどのようなことでしょうか?
モットーにしているのは、「お客さまが 考えたものをそのまま採用しないこと」。お客さまが求めるものではなく、世の中が求めるものを作らないといけないからです。だから、打ち合わせでは「いいですね」と言って、まったく違うものを提出します。絵コンテを持っていったら「こんな話したかな? しかも予算あがっていない?」と言われますが(笑)。それができるのは、しっかり過去の事例や類似案件などの資料を提示し、納得してもらって作るからです。
意識しているのは「バタフライエフェクト」。“小さな変化が時を経て大きな変化を引き起こす”という考え方です。中小企業でも大企業でも、商品やサービスを作ってもそれを届ける力が足りないケースが多い。それを大きな竜巻にさせるお手伝いをするのが私たちです。会社を盛りあげよう、商品を知ってもらおうという努力を、アイデアも含め一生懸命作って世に出してあげる。いろいろなコンテンツを作っていますが、私たちが作っているのはモノではなくコト。「伝える」より「伝わる」、心を動かすことを何より大切にしています。
これまでで印象に残っている事例を具体的に教えてください。
木下工業株式会社のコンテンツ制作です。要望の一つに「(建築鉄骨企業に対する)若い世代の印象を変えたい」という思いがありました。そこでアニメを使った表現を提案したら社長も非常に乗ってきてくれました。木下工業のVTuber「一ノ木 にむ」を有名作家に描いてもらい、タッチパネルで案内可能な受付広報係として受付のデジタルサイネージに表示させ、CMもすべてアニメで構成。「にむの部屋」というLPも制作し、若者にも興味を持って企業情報を見てもらえるようにしました。アニメキャラで面白いと思わせるのではなく、そこを一生懸命がんばる面白い人たちがたくさんいる会社だとアピールしたかった。こちらも楽しんでやらせてもらいました。
地域でNo.1に!力強く後押しするクリエイティブパートナーへ
御社が目指していることやビジョンについてお聞かせください。
観光分野としては、将来的に多くの海外や関東圏の人たちに来てもらって、福井県、そして北陸を知ってもらいたいですね。こんなに魚がうまい、こんなに米がうまいんだと感動してほしい。 昨年、台湾のテレビクルーをアテンドしましたが、福井県にこんなところがあるのかと驚いていました。人脈も広がり、中国やインドネシアの人が何を好むかもわかってきたので、今後も世界に提供できる北陸の魅力を発掘し、クリエイティブで発信していきたいですね。
企業のサポートに関しては、これからも県1番にすることを常に目標としていきます。福井県にはまだまだ認知度が低い会社もあるので、一つでも多く東京や関西、中部方面に知っていただくお手伝いをしたい。それが会社的な目標であり、戦略の一つです。そうした企業の認知度があがれば当社の認知度もアップしますから。
また現在、コロナ禍の影響もあり倒産件数が増加しています。もし事業の先行きに不安を感じている方がいたら、手遅れになる前に一度当社に相談してほしい。お金をかけなくてもできることはたくさんありますから。
どのようなクリエイターと一緒に働きたいとお考えですか?
ソフトを扱えればクリエイターというわけではない。PCやツールがなくてもクリエイターである人はたくさんいます。「何が使えるか」ではなく「何ができるか」。私たち としては、クリエイターが当社とどう関わってくれるかが重要です。実績があることはもうできることなので、それよりもっと面白いことができる人。面白いことをやりたい熱意がある人。そんな人材であれば新卒でも中途でもウェルカムですね。
最後に、クリエイターへのメッセージやアドバイスをお願いします。
まず、クリエイターには「妄想を形にしたことがありますか?」と問いたい。例えば、車ならもっとこんな方がカッコイイ、と想像を膨らませることがあるはずです。最近はそれを実現しようと思った経験がない人が多いんですよ。言われたものを形にするだけ。 一から考える力がないんです。それだと今の時代は生成AIで十分になってしまう。仕事も楽しくないと思います。
逆に一から考える力を持つクリエイターは、どんな挑戦もし続けられるし、新しいことも含めてなんでもできちゃう。妄想を形にするような経験を身につけることが非常に大切だと思います。
取材日:2024年10月17日 ライター:酒井 恭子
株式会社ミエリ
- 代表者名:西村 幸起
- 設立年月:2018年7月2日(法人化)
- 資本金:300万円
- 事業内容:TVCM制作、WEB動画広告制作、CG制作、CGアニメーション制作、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、HP制作、各種写真撮影、各種動画制作、広告代理店業務
- 所在地:〒910-0003 福井県福井市松本3丁目9-27
- URL:https://mieli.co.jp/
- お問い合わせ先:0776-97-6070