クリエイトとは「クライアントの本質を掴むこと」。人々の心を動かす“伝わる”映像を追求する

広島
株式会社Node 代表取締役
Shozo Morishita
森下 彰三

スマートフォン一つで、誰でも簡単に動画が撮れ、SNSなどで発信ができる時代。それでも、プロにしかできない仕事は確実に存在します。企業や人、ブランドの持つストーリーを大切にした“エモーショナル”な映像づくりに定評のある、広島の株式会社Node(ノード)の代表・森下 彰三(もりした しょうぞう)さんに、独立するまでの経緯や業界のウラ話、展望などを伺いました。

一般企業の会社員からフリーのカメラマンに転身!機材の扱い方を知るため機材屋でも働いた

広島で会社を立ち上げるまでの経歴について教えてください。

僕は福岡県出身で、大学卒業後に上京し、電気系の一般企業に就職しました。同時に、もともと映像の世界に興味があったことから、夜学でエンターテインメント業界のスタッフなどを育成する「東放学園」に通っていたんです。「現場に入るには、どうしたらいいんだろう?」と自分なりに調べていると、東京には機材屋がたくさんあることを知り、機材屋で働こうと決めたのです。映画やコマーシャルの現場に出るためには、まず機材のことを覚えないと、下っ端でも使ってもらえないんですよ。そこにいたのは、1年くらいですかね。それからはずっとフリーランスで、映画やコマーシャルのカメラマンをしていました。
広島に来たのは10年くらい前です。妻が広島出身というのもあって、移住しました。でも、広島にツテはありませんので、当時は数少なかったコワーキングスペース「ソアラサービス」に半年ほどいました。そこで人脈作りをしました。それから、8~9年前に「SHOT PRODUCTION(ショットプロダクション)」という名称で個人事業主としてスタートしました。「株式会社Node(ノード)」を立ち上げたのは4年前の2021年です。

会社を立ち上げたいと思い立ったのは、なぜでしょうか?

法人化することで「きちんとしたものを創っている」というところをアピールできるのかな、と思ったんです。やっていることはフリーランスの頃と変わらないんですけどね。 僕の仕事は、基本的に企業のプロモーション動画の制作です。企画から編集、仕上げまで一貫してやっています。そのほかは、コマーシャル撮影のカメラマンとして呼ばれることが多いですね。あとは、スチール写真。仕事の割合は映像が7割、スチールが3割くらいですね。

現場で出会った人たちとの良好な関係づくりから、大きなチャンスが訪れることも

フリーになってから、どのような形で仕事を受けていたのですか?

僕にも師匠がいるんですけど、その方のアシスタントとしてやっていく中で、認められたって感じですね。カメラマンになるのに、特に資格や免許はいりませんし。映画撮影の現場に何度も行っていると、ある程度チームができるんです。そこでコミュニケーションをとっている中で、仕事をもらえることもあります。現場には助監督もたくさんいらっしゃるので、その人たちが監督になったら一緒に仕事をするとか。結局、タイミングですよ。僕はコマーシャルの仕事もやっていたんですが、どちらかというと映画寄りだったかな。実をいうと、コマーシャルってギャランティーがいいんですよね(笑)。
ちょうどデジタルの走りの頃、20年前に『CASSHERN(キャシャーン)』という映画を撮りました。紀里谷和明監督のデビュー作品だったのですが、彼のコミュニケーション能力は「さすがだな!」と思いましたね。ほかには、映画のスチール写真やアーティストのジャケット写真を撮ったこともあります。
広島に来た最初の頃は、仕事を獲得するのに営業をしていたのですが、今では口コミで広がって、ホームページからの問い合わせが増えました。「社員を雇って会社を広げようかな」という時期もありましたが「森下さんに作ってほしい」という人が多いんですよ。仕事が溜まって追い付かないという時だけ、編集を外注することもあるんですけどね。あと、フリーのカメラマンやアシスタントに手伝ってもらうこともあります。

映像を学びたい人たちのために、今ではカメラマンの育成事業も

制作以外にも動画スクールも運営されているんですね。

そうなんです。3年ほど前からスタートしました。受講期間は3カ月くらいです。広島は比較的に映像の専門学校が少ないんです。また、映像系の専門学校を卒業したけど、現場に出るにはどうしたらよいのか、先生に聞いても分からないという受講生も多い。そういった、映像を学びたい人たちの力になれればと思ったんです。

スクールを運営するうえで意識されていることがあれば教えてください。

僕は“共に育む(共育)”ことを大切にしています。たとえば、カメラの動画に関して、露出やらシャッタースピードやら、それを具体的に伝えることによって、僕自身のコミュニケーション能力が上がったりするんです。「伝える」「伝わる」というのが、映像制作には一番大切ですからね。

本当に大事なことは何か?多くの情報の中から絞り込んで“ストーリー”を創り上げる

映像のどういったところに面白さを感じますか?

コマーシャル制作では、クライアントからのご要望から構成を考えるんですけど、皆さんいいたいことがたくさんあるんですよね。それは、とっても分かります(笑)。しかし、いいたいことがあまりにもありすぎて、全部盛り込んでいると、本当に大事なことが伝わらない。なので、クライアントとコミュニケーションしながら、“本当に伝えたい核の部分は何か”を探っていきます。そうした過程を経て、最終的に出来上がったものに対して喜んでくださることが、やりがいであり、面白さです。
クライアントの本質を掴むのがクリエイトだと思うんです。やっぱり、依頼者であるクライアントが感動してくれないとね!本質を突き詰めるのは大変ですが、面白いですね。

企業ビジョンに「エモーショナルなCinema(映画)的な表現を意識した作品づくり」とありますが、ビジョンを体現するうえで意識されていることはありますか?

そうですね。特に意識していることは“ストーリーを作ること”です。ただ映像を羅列しても、見ている人は多分、心を動かされません。
百貨店「有楽町マルイ」のWebCM「みんなのフィッティングルーム」を制作したことがあるんですが、それを発表する場があって、社長がそれを見てすごく気に入ってくださったんです。「わたしがいいたかったことは、コレだ!」って。それがきっかけで、大きな仕事にもつながりました。なので“ストーリーを作る”って、本当に大事です。なんのツテもなかったけど、いろいろな人とつながれたので、とても思い出深い仕事の一つですね。

映像業界で築いてきた人脈を生かして、若い世代に現場体験をさせたい

今後どのような会社にしていきたいですか?

基本的な形は変わらないと思います。なんでもそうだと思うんですが、消費者・ユーザー目線で仕事をしていかないといけない。自分たちがやりたいことや、新しいことばかりやっていても、多分よくないと思うんです。別にAIがダメということではないんですが“人のストーリー”を作ることは、AIではまだまだ難しいだろうと思います。

最後に、後進へのアドバイスなどがあれば、お聞かせください。

今は、スマートフォンで簡単に写真が撮れる時代。ちょっとしたコツを覚えると、うまく撮れるようになります。僕が思うセンスの磨き方は、写真集とか、いろいろな作品を見ること。Instagramでも有名なカメラマンの写真がたくさん見られますし。「こういうのが好き」と、自分なりに決めていけばよいと思います。誰でも、最初は真似をすることからです。
また僕たちの時代は、師弟制度で、ある程度経験を積んできました。今は、センスがあれば誰でもカメラマンになれます。世の中に受け入れられれば、それでいいと思うんです。でも、プロになるためには、ある程度「アシスタントとはどんなことをするのか」を経験しておいたほうがいいと思います。
僕は長く映像制作の現場にいたので、今でもそこで知り合った人たちとのつながりがあります。彼らの人手が足りない時にアシスタントとして行かせて、現場を見る機会を与えてあげたいですね。

取材日:2024年11月12日 ライター:橘髙 京子

株式会社Node

  • 代表者名:森下 彰三
  • 設立年月:2021年7月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:映像制作、動画スクール(育成講座)運営、写真撮影、ワークショップ・ロケコーディネート、コンテンツ&プロモーションプランニング
  • 所在地:〒730-0851 広島市中区榎町8-20 第7アイエスビルヂング1階
  • URL:https://shotproduction.net/
  • お問い合わせ先:082-208-2395(代表)

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