映像ディレクターが福岡で「浪曲」のイベント企画?ある覚悟の末に生まれたベレーザ

福岡
合同会社ベレーザ CEO
Yushi Kasai
笠井 祐史

通販番組を中心とした映像コンテンツ制作や、福岡の「浪曲」の魅力を伝えるイベント事業などの多岐に渡る事業を展開している福岡の合同会社ベレーザ。代表の笠井 祐史(かさい ゆうし)さんはこれまで映像制作のディレクターとして20年以上活躍していましたが、法人化することなくフリーで活動されていました。そんな笠井さんが突然、今年に入ってベレーザを立ち上げた理由や浪曲の世界に足を踏み入れた理由について伺いました。

映像ディレクターから始まったベレーザ設立への道

合同会社ベレーザ設立の経緯を教えてください。

私は北海道出身で、東京の大学を卒業後、映像制作会社に就職しました。その会社では多くのドラマの制作やドキュメンタリーの制作に携わっていました。その後、福岡の映像制作会社に転職し、ディレクターとして通販番組の演出を多数担当しました。そこからフリーランスとして独立し、東京から福岡の会社まで多くの制作案件を今でもこなしています。
そんな中、4年前からディレクターの仕事以外に浪曲を中心としたイベントやキャスティングを手掛けるようになりました。浪曲は簡単にいうと、落語をミュージカルのようにしたものなんですが、明治時代に福岡で完成された芸能だという一説があることを知り、自分でもイベントをやりたいなと思ったことから浪曲公演を主催するレーベル「浪曲雄鷹座(ろうきょくゆたかざ)」を始めました。ここが大きな分岐点だと思います。
ほかにも、写真撮影の仕事の依頼などが来るようになったことで事業としてやっていくのか、個人としてやっていくのかを考えた時に会社にしようと思いました。特に大きかったのはフリーランスとして活動しているモデルの子たちが自分の周りに増えてきたことで、この子たちを守れるような組織であったり、責任を取れるような会社が必要だと覚悟を決めて設立しました。

社名の「ベレーザ」に込められた想いを教えてください。

「ベレーザ」はポルトガル語で美人や美容などを意味する言葉です。実は、ベレーザという名前には名付け親がいまして、当時、事業を模索しているなかで背中を押してくれた女性が名前を提案してくれました。
元々は映像制作という色が強かったんですが、モデルを扱うような動きが大きくなってきましたし、今後は映像制作よりもイベント事業を伸ばしていきたいという想いもあったので、ぴったりかなと感じ、そのまま名前を貰いました。

「福岡って浪曲の街なんじゃないの?」。気付きから始まったイベント事業

事業内容を教えてください。

映像制作、イベント、フリーランスのフォローアップ事業、大きく分けるとこの三つになるかなと思います。ただ、イベント事業とフリーランスのフォローアップに関しては事業と呼べるほどではなく、収益のほとんどが映像制作によるものです。
通販番組を作れるディレクターって業界に少ないんですよ。特に若い人には全然いないんです。通販って“売れるか売れないか”で番組を作っていくんですけど、通販番組を制作した経験があまりない人だと“面白いか面白くないか”っていう観点が入ってきちゃうんです。そこをきっちりと「売れるための番組づくりをしましょう」と提案できる人がかなり少ないんですよね。そういった部分で映像制作のお仕事は多くいただけています。

浪曲を始めようと思った理由を具体的に教えてください。

浪曲の公演を主催するようになって、起源について調べた時、明治時代に福岡で完成したという説があることを知り、もしかして「福岡って浪曲の街なんじゃないの?」って思ったんです。全然、世の中で知られていないからこそ、伸びしろはありますし、そこを突き詰めていけばオリジナルコンテンツになると考えて、浪曲のイベントを始めようと思いました。
落語は落語家が物語を語るものですが、浪曲は三味線にあわせて語ったり、歌ったりするもので、必ずしもオチがあって終わるわけでもなく、イベントごとにオリジナルの物語を作ることができるんです。それだけ自由にできるからこそ、伝統話芸に若い子たちを絡ませることもできるし、接点のないジャンルにも訴求することができる。福岡の歴史と街を生かしたモノづくりができることから浪曲というイベントを大事にしています。

何者でもない若い子たちを育てていけるような支援をしたい

現在はどのような組織体制ですか?

私ともう1人、出資してくれた40代の役員の方がいます。ほかは業務委託契約にしていて、案件ごとにフリーランスの人間を集めてプロジェクトメンバーとしてアサインしています。プロジェクトメンバーの募集については30〜40人くらいのLINEグループで掲示板を作っていて、20〜70代というかなり幅広い層が存在します。
基本的に私がすべての現場に出るようにしているので、モデルのマネージャーみたいなこともしますし、いざ撮影に行ったらディレクターがいなくて急遽、ディレクターを担当することもあります。

若い方をかなり起用されていますが意図はありますか?

特に狙って集めているわけではないんですが、若い層がより熱量を持っている印象があり、まだ何者でもない彼らをどうにか世に送り出して活躍できるように育てていきたいという想いがあります。
自分がやっているイベントの公式アンバサダーを立てて、それを若い子たちに担当してもらって前に出てもらう。そうすることで、その子たちの認知度も上がってモデルやタレントとして前線で活躍できるようになりますし、浪曲の認知度も上がり、今まで関わりのなかった層の目に留まるようになる。これってすごく良いことだと思うんです。だからこそ、まずは1人にお客さんが10人つくような支援をしたい。そのためにも両方の魅力を発掘して、大事に育てていきたいと思っています。

誰しもがイベントを主催できる世の中へ。「一人一人が生きるコンテンツ」という意識を大切に

今後、どんな会社にしていきたいと考えていますか?

今は映像制作を主としていますが、最終的にはイベント会社にシフトしていきたいと思っています。昨今、テレビは目覚ましくありませんし、Webだと単価勝負で負けてしまうというのがあるので、イベントならオリジナルの価値を発揮でき、展望があるのではないかと私は思っています。
でも、イベントって個人主催をするにはハードルが高く、トラブルも多く対応がかなり難しいんです。それを解決するシステムがあれば、より多くの人がイベントを自由に開催することができて、業界として盛りあがるんじゃないかなと思っています。そのシステムを開発できるようになることが私の目指す未来です。

一緒に働くクリエイターに対して、会社としてどのようなことを求めますか?

“一人一人が生きるコンテンツ”という自信を持ってほしいです。今の時代は大衆を味方にしなくても、生きていける社会なので、少なくてもいいから濃く熱く応援してくれるファンを作ることを大事にしてほしいです。そのためにも自分に興味を持ってくれる人を増やす必要があると思っています。
それと同時にフリーランスはもっと増えていく時代なので、実力や実績のない若いフリーランスは厳しい世の中になると思います。さらに悪い大人に騙される若い子も多い時代なので、自分で自分を守る知恵を身につけて活躍してくれる人になってほしいと切に願います。ベレーザも組織として守れる強い組織になっていきます。

取材日:2024年11月13日 ライター:神代 希海

合同会社ベレーザ

  • 代表者名:笠井 祐史
  • 設立年月:2024年5月1日
  • 事業内容:映像コンテンツ制作、イベント事業「浪曲雄鷹座」、撮影会「コネクト」、フリーランス支援&マッチング事業
  • 所在地:〒810-0014 福岡県福岡市中央区平尾5丁目14号22番パークハイツ平尾山荘303
  • お問い合わせ先:https://www.instagram.com/kasa0217/

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