「ともに働き、みんなで人生を謳歌」。“誰も取り残さない”ビジネスモデルで仙台を盛り上げる

仙台
株式会社ハーモニー 代表取締役
Shinichi Nakahama
中浜 慎一

仙台市の株式会社ハーモニー代表・中浜 慎一(なかはま しんいち)さんは、映像制作・デザインを軸に、豊富な経験を重ねてきました。地元愛がとても強く、障がい者・高齢者・外国人・ひきこもり・シングルマザーなど社会的弱者といわれる方々も、映像・デザインの仕事を通して、ともに働くことができる地域共生の新しいビジネスモデルを模索しています。「ともに働き、みんなで人生を謳歌する」そんな社会を目指しています。

クリエイティブワークで地域共生社会を見出す

2022年に会社を立ち上げるまでのキャリアを教えてください。

北海道の美術大学で、映像やグラフィック、彫刻、デッサンを学び、美術の教員免許も取得しました。将来は世界で活躍できる映像クリエイターになりたいという思いがあったので、海外留学を計画しました。留学費用を貯めるため、大学卒業後は、友人の祖父がいる美瑛町の牧場「ファームズ千代田」というところを紹介してもらい、そこで1年間働きました。その間も独学で映像制作を行っていました。
その後、カナダのバンクーバーに留学しました。カナダはハリウッド映画などを制作する際に、人件費が安くてセットも組みやすいので、映画のロケーションで多く使われています。英語を学びやすい環境という点もあり、「行けば何かが見つかる!」そう信じて、飛び込みました。MVなどを制作しながらもストリートで映像制作をするクリエイターは少なかったと思います。
帰国後は、東京のテレビ局でADとして1年間働きました。東京から地元仙台に戻り、東北大手の映像制作会社で15年間働き、その後独立をして、現在にいたります。

豊富なキャリアから、どのようなことが得られましたか?

今になって思えば、美瑛の牧場で働いていた頃は「今しかできない経験をしたい」という思いが強かった反面、知識は浅く、勢い任せなところもありました。正直なところ、大変な現場でした。カナダでは、大切な親友や師匠である映画監督の豪田 トモ(ごうだ とも)さんとの出会いが、私の人生に大きく影響しています。
また、東京での1年は「地獄のAD時代」ですが、肉体的にも精神的にも鍛えられたと思っています。
総じて、人生には無駄がなく、どこかで点と点が結ばれることがあると感じています。これまでの経験上、すべてにおいて無駄なことはなかったと実感している今日この頃です。

ハーモニーを設立したきっかけを教えてください。

日本で働く外国人のクリエイター仲間も多くいます。左半身不随の映像クリエイターの友人の存在など、きっかけは複数あります。コロナ禍でリモートワークが加速し、障がい者、高齢者、ひきこもり、外国人、シングルマザーなど、社会的弱者といわれる方々も、リモートで映像の仕事に携わることができるのではないか?と思いました。
もともと、仙台への地元愛が強く、街おこしにも興味がありましたので、培った映像制作技術を通して地元のさまざまな背景の人と取り組むソーシャルワーカーとして、地域共生のビジネスモデルをつくりたいと考えるようになりました。

「障がい×映像制作」で、社会的弱者の方々の働く可能性を広げる

事業内容を教えてください。

撮影や編集なども含めた映像制作、広告デザイン、HP制作、プロジェクションマッピング制作など、幅広く事業を展開しています。 これらの作業の過程において、障がい者のみなさんが関われるプロジェクトを模索しながら、映像コンサルやプロデュースをしています。
そのほか、英語力を生かし、海外ロケのコーディネートを行ったり、音楽やサーフィン、ファッションにも精通しているため、DJや、イベントの企画、制作、運営まで一貫しておこなっています。

「障がい×映像制作」のかけ合わせを思いついたきっかけを教えてください。

障がいをもつ方々、社会的弱者の方々の中には、イラストレーターさんもびっくりするような素晴らしい絵を描ける方がたくさんいらっしゃいます。しかし、絵が上手だからといって、例えば就労支援でデザインを学んでも、収入が得られるクリエイティブワークにはつながりません。障がいがあるなしに関わらず、社会一般的に絵で食べていくのは、とても難しいものです。
そんな中で思いついたのが、「障がい×映像制作」のかけ合わせです。プロフェッショナルの映像の世界では、編集作業ができる人材は、まだまだ少数です。しかし、最近のアプリを使った映像編集の方法を知る機会があれば、スキルを身につけられる可能性が高いですし、絵やデザインが好きで、さらに編集スキルをもつ人材なら、映像を学べば仕事に結びつくと思いました。

事業や社会的弱者の方との取り組みについて教えてください。

これまでの経験を生かして、映像制作や広告・デザイン、イベントプロデュースを幅広くやっています。映像制作に関しては、主にプロモーションCMや会社紹介、映画、ドラマなどです。
社会的弱者の方との取り組みとしては、仙台にある障がい者への就労支援を展開する株式会社manaby(マナビー)と連携して、利用者さんに映像の絵コンテを依頼したり、アプリを使った映像編集のレクチャーをしたりしています。実は、当社ハーモニーのホームページ(https://hrmn.co.jp/)もmanabyを通して、障がいをもつ方に制作していただきました。

御社の強みを教えてください。

私自身が日本語と英語のバイリンガルで多国籍の方と直接現場でコミュニケーションをとり、現場の調整をできることが、今の当社の一番の強みです。ワンストップで映像制作ができるので低予算でも対応することもできますし、優秀なブレーンに囲まれているため、クリエイティブでのアイデアの幅は他社より広いと思います。

社会的弱者の方々が社会と接し、「みんなで人生を謳歌する」

御社ホームページのmissionに「みんなで人生を謳歌する。」とありますが、どのような思いから掲げられましたか?

ここでいう謳歌については、大きいことをいっているわけではありません。例えば「ロケ前の早朝に太陽を見ながらコーヒー一杯を楽しむ」といった、ささいなことも人生の謳歌だと思いますし、小さなことの積み重ねだと感じます。自分自身も人生を謳歌したうえで、精神的に困っている人を喜ばせる小さなきっかけづくりができれば、と思います。日本の直面している問題は深刻です。自殺者、8050問題。ひきこもり、問題を解決するためのアクションがないので、弊社が行動することで、きっかけを与えていきたいと思います。

設立からの取り組みで、特に印象に残るものを教えてください。

就労支援を行うmanabyの利用者さんに、名言・格言をもとにデザインや映像制作のレクチャーをしながら、作品をつくってもらったことがあります。映像制作のスキルを学ぶことができるうえに、名言・格言から生き方を考えるいい機会になり、精神的に得られるものもあったようで、とても喜んでもらえました。そのレクチャーを受けたことで、実際に映像制作に興味をもってくれるようになった方もいます。また、アーティスティックな独自のスタイルを持つ方が多くいらっしゃいました。

地元仙台でビジネスモデルの確立へ。東北から全国を盛り上げたい!

将来のビジョンをお聞かせください。

理想のビジネスモデルは、「私自身がプロデューサーとして映像関係の一般の仕事をクライアントさんから受ける」というものです。
社会的弱者の方々がプロの世界で関われる仕事はまだまだ技術的に少ないので、 地域の就労支援事務所と連携して、社会的弱者の方々を少数精鋭なクリエイターとして開発育成していきます。
障がいがある方々の中には、体調に波がある人も少なくありません。波があることを含めて、ビジネスを考えていかなければならないので、正直なところ難しさがあります。しかし、映像業界の第一線で今後も経験を重ねて、少しずつでも社会的弱者の方々が映像制作を通してどのようにうまく関わっていくことができるかを探っていきたいと思います。また世界で活躍するクリエイターを育成して、弊社のハーモニーを響かせます。
私の理想とする新しいビジネスモデルが確立できれば、地元仙台を盛り上げることができます。仙台で確立ができたら、東北にムーブメントを起こすことができるでしょうし、東北で確立ができれば、日本全国へ広げられると考えています。
楽しむことがクリエイティブの原点にあるので、多くの方々とつながり、素晴らしい作品を残せたらと思います。

取材日:2024年12月2日 ライター:くりた なお

株式会社ハーモニー

  • 代表者名:中浜 慎一
  • 設立年月:2022年4月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:映像制作、デザイン
  • 所在地:〒989-3127 宮城県仙台市青葉区愛子東4丁目18-26
  • URL:https://hrmn.co.jp/
  • お問い合わせ先:

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