「口より手を動かした人が儲かる社会にしたい」。クリエイティブの面白さで変える、次世代教育
地域の若い人々が「やってみたい」と思える環境を作り、地方から世の中を面白くする挑戦を続ける香川の瀬戸内サニー株式会社。創業者の大崎 龍史(おおさき りゅうし)さんは、東京でのキャリアを経て、地方の可能性を信じ香川に根を下ろしました。復興支援やクリエイティブ事業を通じて地域の未来と向き合う姿は、メディアと教育の融合を目指す活動にもつながっています。今回はそんな大崎さんを取材し、地方発の新たな挑戦に迫りました。
「地域から面白さを発信する」。時代の波を感じ取り、デジタルの世界へ
立ち上げまでのキャリアについて教えてください。
兵庫で育った僕は高校卒業後、香川大学で学びながら2年間アメリカに留学しました。当時、ソーシャルメディアが急速に広がり始め、スマートフォンが普及する時代の変化を肌で感じました。その経験が、「インターネットを使って地域から面白いことを発信できる」という想いの原点になりました。
大学卒業後は東京で働きながら、SNSやデジタルマーケティングに本格的に取り組みました。
「人々に響くコンテンツ」求め、現場で磨いた戦略思考
東京ではどんな仕事をされていたんですか?
東京では、デジタルマーケティングやSNSを活用したプロモーションに携わりました。いろいろな企業やメディアと協力しながら、マーケティング戦略を考える日々でした。例えば、新商品のプロモーションキャンペーンでは、SNSの特性を生かした拡散施策や、企画立案を行いました。また、大手企業のブランディング案件にも関わり、広告効果を高めるクリエイティブ制作に携わるなど、多岐にわたるプロジェクトに取り組みました。
この経験を通じて、「どうすれば人々に響くコンテンツを作れるか」を深く学び、マーケティングにおける本質的なスキルを磨きました。
「人生で一番尖った選択をとりたい」。安定から飛び出し、挑戦を追い求めて
東京を離れることを決断した理由を教えてください。
東京でのキャリアを積む一方で、どこか心が満たされない思いがありました。プロジェクトはたしかにやりがいがありましたが、忙しい毎日の中で「この先もこのままでいいのか」という疑問が次第に大きくなっていきました。その中で強く感じたのが、「人生の中で一番尖った選択肢をとりたい」という思いです。自分の中で、「本当に挑戦したいことは何か」を見つめ直す機会が増えました。
東京での生活は、とても安定した環境でした。しかし、その環境がある意味では「守りに入る」状態になりつつあると感じたのです。自分の人生を振り返り、ここでしかできない挑戦をしたいと思い、結果として選んだのが香川でした。東京では得られない心の余白や自由、そして地域で直接的に変化を起こせる可能性が、香川にはあると感じたのです。
地方へ帰り、「余白」を生かした挑戦へ
なぜ香川で起業をしようと?
香川は大学時代に過ごした場所で、僕にとって「帰ってくる場所」でした。地元の兵庫に戻る選択肢もありましたが、香川には大学時代に苦楽をともにした仲間や先輩たちがたくさんいます。「ここは自分がいてもいい場所だ」と感じられたことが、香川で起業する決め手になりました。
また、地方にはビジネスを生み出す余地があることから、その余白を生かした大胆な企画や、地域を大切に想う活動を軸とした挑戦ができると感じましたね。
若手へ背中を示し、地域をもっと面白く。「面白い地域」づくりのために
事業内容を教えてください。
「面白デジタル事業」「面白デジタル教育・研修」の二つの事業を展開しています。
一つ目の「面白デジタル事業」は、マーケティング、ブランディングを組み合わせたコンテンツ制作と情報発信を行います。総SNSフォロワー数10万人を持つ私たちだからこそ、ユーザーに響く情報発信が可能です。より最適な発信をしていく中で、必要な動画やHPの制作なども対応できます。
二つ目の「面白デジタル教育・研修」では、自治体や教育機関と連携しながらそれぞれに合った教育サービスをご提案しています。スマホ・SNS時代にあった情報リテラシー教育、従来の職業観にとらわれないキャリア教育、地元への誇りを育むシビックプライド教育などを探求するプログラムを開発することで、若者の可能性を広げることを目的にしています。
YouTubeチャンネル「瀬戸内サニー」について教えてください。
起業当初は、地方発のインターネットテレビ局としてスタートしました。その後、YouTubeに転換し、現在のチャンネル「瀬戸内サニー」を運営しています。
最初の1年は2018年7月に発生した西日本豪雨の復興企画に力を入れていました。その中で制作した、応援動画「カモンベイビー西日本!!」は50万回以上再生され、大きな反響をいただきました。
「まずは“地域を支える”ことから始めないと面白い地域にはできない」という思いが強くありました。また、「地域の若い子たちが面白いと思えることをしないと、地域全体が活気づかない」とも常に考えています。これは、親が教員だったことも影響しています。大人が子どもたちにどんな姿を見せられるかをすごく意識するようになり、「自分が実践者として示すことが大事だ」という思いを持ちながら活動しています。
今では、地方から「面白いことをしたい」というメンバーが自然と集まるようになり、個性や情熱を持ったメンバーとともに活動をしています。社内の企画会議では、時には長時間にわたり熱い議論を交わしながら、アイデアを形にしています。
「メンバーから逆算した経営」で作る、クリエイターが本領を発揮できる環境
瀬戸内サニーは「面白い」をどのように生み出していますか?
僕たちの中で「面白い」とは、単に楽しさや新しさを追求するだけではなく、クリエイターたちが本気で取り組める場を作ることにあります。しかし、社会全体を見渡すと、クリエイターが本領を発揮できる仕組みがまだ十分に整っていないと感じています。
そのため、僕たちは「メンバーから逆算した経営」を大切にしています。
先に会社の目標を細かく決めるのではなく、まずどんな才能のあるメンバーがいるのか、そして新しく入ってきてくれるメンバーがどんな可能性を秘めているのかを見極めます。その上で、それぞれの才能が表現できる「面白さ」を描き、その目的から逆算して経営戦略を組み立てる。これこそが、クリエイティブ企業の社長に求められる重要な仕事だと思っています。
この姿勢があったからこそ、現在のメンバーは東京で培った経験を経て、一芸に秀でた個性と「地方から新しい価値を発信したい」という強い意志を持つ人たちが自然と集まりました。彼らとともに、地方でしか生まれ得ないユニークなプロジェクトを手掛けています。
最近では、教育クリエイティブという新しい分野にも挑戦しています。地方の可能性を信じ、地域と若者たちの未来をつなぐ場を作ることで、クリエイティブが社会の課題解決にも役立つことを証明したいと思っています。
軸を持って生きること。孤独を恐れず、自分で考え行動する力を
次世代の若い方々へどんなことを期待したいですか?
僕が若い世代に一番伝えたいのは、「群れずに自分でコツコツやってみたらいい」ということです。周りと歩調を合わせることにとらわれず、自分自身としっかり向き合い、孤独を恐れずに挑戦することが何より大事です。若いうちはエネルギーと好奇心さえあれば、どんなチャレンジにも飛び込めます。自分が面白いと思えるものを追いかけてみると、後々の人生で、自分だけの強みや価値観につながっていきます。
地方で挑戦する場合は、どうしても「孤独」を感じる場面が出てきます。でも、その孤独は成長のきっかけです。自分自身で考え、行動し、結果を出す力が身につく環境でもあるのです。
結局のところ、どれだけ多くの人に支えられていても、最後は自分の力で切り拓かなければならないのが人生です。そのための力を身につけるのに、挑戦する機会を最大限に生かしてほしい。そうすれば、地方でも都会でも、自分の軸を持って生きていけるはずです。
メディアと教育の融合で、社会的インパクトを生み出す存在に
瀬戸内サニーの最終目標は?
僕たちの最終目標は、地域発の新しい形のメディアと教育の融合を実現することです。地方から世の中を面白くし、地域全体が活気づくような取り組みを続けていきたいと考えています。そのために、「口より手を動かした人が正当に評価される社会」を作ることを目指しています。
この目標を達成するためには、事業の幅を広げ、多分野での展開を視野に入れる必要があります。瀬戸内サニーでは、まず地域に根ざした活動を基盤としながらも、その先にあるホールディングス化という形で事業の拡張を考えています。これによって、各分野で専門性を持った新たな取り組みを可能にし、より広範な影響力を持つ企業へと成長していくビジョンを描いています。
ただ単に事業を拡大するのではなく、「面白さ」を中核に据えた挑戦を続けることが重要です。メンバーの個性や才能を最大限に生かしていくことで、「瀬戸内サニーらしさ」を発揮しながら、地域や社会にインパクトを与えられる存在を目指しています。
大崎代表のトレードマークのペンギン帽子
取材日:2024年12月4日 ライター:木場 晏門
瀬戸内サニー株式会社
- 代表者名:大崎 龍史
- 設立年月:2018年1月11日
- 資本金:10,500,000円
- 事業内容:YouTubeチャンネル「瀬戸内サニー」の運営、メディア運営支援事業、情報リテラシー教育事業
- 所在地:〒760-0028 香川県高松市鍛冶屋町7番地1乃一ビル(株)ido(4F)
- URL:https://setouchi-sunny.com
- お問い合わせ先:080-2387-2279