子ども写真館経営から広告運用会社設立へ。元俳優の若き経営者が新しいビジネスを作り続ける理由
子ども写真館やSNS広告運用を展開する、沖縄の合同会社Aimable(エマーブル)の代表取締役・坂口 雄斗(さかぐち ゆうと)さんは、キャリアに悩みながらも模索を続け、自分の特性に合った道を切り開いてきた起業家です。高校時代のお笑いから始まり、俳優としての挑戦、広告代理店での学びを経て、ついには自らの子ども写真館を立ち上げ、紆余曲折ともいえる人生を歩んできました。彼がどのように経験を生かし、今の仕事にたどり着いたのか。そのキャリアから人生観まで伺いました。
自分の特性にふさわしい道を模索する中で出会ったビジネスチャンス
2023年に起業するまでのキャリアについて教えていただけますか?
出身は大阪で、高校生の時にお笑いをやって、学祭で漫才やコントを披露していました。その姿を見た先生の勧めもあり、沖縄に新設された吉本興業の専門学校に一期生として入学しました。学校生活の中でラジオ番組や舞台などさまざまな経験を積みましたが、まだやりたいことが定まらず、模索する毎日でした。
卒業後は20歳で吉本興業に俳優として所属し、東京を拠点に活動をはじめました。ドラマなどに出演していたものの、「絶対に俳優として大成する」という大きな夢を持っていたわけではなかったので、やりたいことと違う生活に、次第に続けることが辛くなっていきました。
次第に沖縄が恋しくなり、またお付き合いしていた女性が沖縄にいたこともあり結婚を視野に入れて、沖縄に戻って自分のやりたいことを見つめ直そうと決意しました。
沖縄に戻られてからはどのようなお仕事をされていたんですか?
バーで働くなど主に飲食業をしていたのですが、家庭をもつためにも定職に就こうと思うようになりました。俳優の頃からYouTubeをやっていたこともあり、パソコン作業には自信があったので、その経験を生かせるだろうとWeb広告を制作している広告代理店に勤めることにしました。
広告のノウハウを学べる環境ではあったのですが、朝から夜遅くまでの勤務が続き、家族との時間が取れない状況に直面しました。また、毎日同じ職場で、同じような仕事を繰り返す生活にも苦しくなってきて。思い返せば子どもの頃から、人と同じことをするのが純粋に苦手だったんですよね。学校へ通ってはいたものの、心の中で「自分には普通の生活は無理だ」と、どこかで分かっていました。その特性に気付いていたので、独立して自分で会社を作る方が向いているだろうと、薄々と思っていました。
会社勤めを実際にしてみて、その思いがいっそう強くなったのですね。
そうですね。そんな思いを抱きながら悶々としていた頃、娘の百日祝いで写真館に行く機会がありました。そこで「機材と環境があれば、写真館という仕事は成り立つ んだ」とピンときました。週3〜4枠撮影が入れば、生計が立つ効率的なビジネスモデルだと感じ、自分でもできると子ども写真館を立ち上げることにしました。
自身が経営する店舗を黒字化した実績を引っ提げ、SNS広告運用業をスタート
子ども写真館とは面白いですね。その後、どういった展開になったのでしょうか?
写真館という環境を整えることと並行して、「いかに集客するか」に注力しました。前職の経験からSNS広告を作れるスキルがあったので、低予算で広告を回しながら試行錯誤した結果、半年で写真館を黒字化させました。
次に、この経験を成功事例として示しながら、広告代理店業をはじめました。実際に店舗を運営した経験がない代理店や広告制作会社も多い中、単なる代理店ではなく、実際に店舗を黒字運営している経営者がやることで、より説得力が増すと思ったのです。こちらの事業も SNSを運用しながら集客し、多くのクライアントからご依頼をいただくことができるようになりました。
SNS広告は、具体的にはどの媒体を活用されているんですか?
主にInstagramで、それ以外は状況に応じて選んでいます。ただGoogle広告はほとんど使いません。Instagram広告は利用者の使い方次第という側面はありますが、Google広告は基本的にGoogle側の裁量に委ねている部分が多いにもかかわらず、高額な料金をとることに違和感があるんです。Google広告をクライアントから依頼されることもありますが、全部断っています。
ホテルの売上を6倍にした秘策とは?顧客との対話で心がけること
これまでの広告運用で、特に印象に残っている事例や成功体験を教えてください。
とある沖縄のホテルの運用が印象に残っています。依頼された当初は月に2〜3部屋しか予約が入っていない状態でした。そこで、広告でアピールできるような特長を作ってもらうために、各部屋にプロジェクターを導入することを提案しました。その結果、売上は開始当初の6倍に増え、稼働率も大幅に改善しました。
そのほか、飲食店の運用では、2〜3カ月でフォロワーを1千人ほど増やし、集客につなげた事例もあります。
御社の強みは何だと思いますか?
広告運用で自分自身の店舗を黒字化させたという経験と実績に基づき、購買意欲を高める広告を作れることだと思います。経営者として「どうしたら買ってもらえるか」を理解し、それを広告に反映させることができる。それが一番の強みです。
また、必要なポイントを絞って広告運用することで、クライアントにより早く成果を提供できることも強みです。高額な広告費をかけなくても、的確にデータを分析すれば結果を出せるという信念があります。例えば先ほどのホテルのケースのように、高額な改装を提案するよりも、7千円程度のプロジェクター導入で稼働率が変わるなら、それに越したことはありません。
クライアントとのコミュニケーションをとるうえで心がけていることはありますか?
「偉そうにしない」ことです。ほとんどのクライアントは、20代半ばの私に比べれば、実績も経験も上です。皆さんそれぞれに強みがあって、私ができる部分をお手伝いしているに過ぎません。それを十分肝に銘じ、リスペクトを持って接しながらも、言うべきことは言う。「僕レベルの人間が提案するのも恐縮ですが」という、謙虚さと率直さのバランスをとりながらも、自分の思いをしっかりお伝えすることで、信頼していただけると考えています。
もう一つ心がけていることは、出し惜しみをしないことです。例えまだ契約にいたる前の段階でも、私のアイデアや提案を全部お伝えした方が「もっと深く知りたい、聞きたい」と思ってもらえるし、信用にもつながるはずです。私としても、その方が気持ちがいいです。この考え方は、限られた秒数の中で情報を端的に、効果的に伝えることが重要な動画広告などにも通じるような気がします。
新しい「何か」を常に探して、挑戦し続ける会社でありたい
現在のお仕事内容について伺いたいのですが、メインは引き続き、子ども写真館と他社から依頼された広告運用ですか?
子ども写真館は信頼できるスタッフにほとんど任せており、広告運用も継続案件のみを行っています。というのも、実は新しく二つのプロジェクトを進めており、詳細はまだお伝えできませんが、一つは広告関連の新しい取り組み、もう一つは広告業のフリーランス向けの学校を作る計画です。学校のプロジェクトは1〜2年スパンで考えています。
新しいビジネスを生み出そうとしている真っ最中なのですね。それも含め、将来的にはどのように会社を運営していきたいと考えていますか?
とにかく自分の子どもが普通に暮らせるような環境を作り続けること。正直それが人生の一番の目標です(笑)。
私自身の目標としては、飽き性なのでいろいろなことに挑戦し続けたいですね。サメは止まったら死ぬ、というのと同じで、僕は行動していないとやる気がなくなるので、止まらないようにしています。
実はあまり計画性がないので、その時のやりたいことを、それが本当に利益になるのかを意識しながら取り組み続けたいですね。とはいえ、お金よりもやりがいを重視しています。また、会社を立ち上げて感じたことが、BtoBよりもBtoCのビジネスの方が好きだということです。人と接することで、皆が何を考えているのかを肌で感じることが好きです。
新しいビジネスのアイデアを見つけるために、意識されていることはありますか?
常にアンテナを張りながら新しいことをキャッチし、日常の中でそれを掛け合わせることを意識しています。例えばカフェでお茶を飲んでいても、何か目に止まるものがあれば「その何かと何かを組み合わせたらどうなるだろう」と考えたりしています。子ども写真館がいい例で、最初は娘の100日撮影に写真館に行っただけでしたが、それを見て「これを広告と組み合わせたら集客ができるな」と思いつきました。
最後に、どんな方になら御社に参画してほしいと思いますか?
自由な発想を持ち、強みをしっかり持っている方が理想です。何か「これが得意です」とか「これを学びたい」という強い気持ちがある方が好きです。そして、私が「この人となら何か掛け算できそうだな」と感じられる方と一緒に働きたいです。決まったことだけを淡々とこなすよりは、何かを自分なりに工夫できるような方がいいですね。
とはいえ正直なところ、今いる社員は全員個性が強いので、逆に、粛々としっかり作業をできる方だったり、私と一緒に仕事をしてみたいと思ってくれたりするだけでも大歓迎です。私自身、いろいろと模索しながら紆余曲折して生きてきた人間ですから、そこまで確立した目標や強みがなくてもいいんです。一緒に楽しみながら仕事に取り組んで、成長していける方と働きたいですね。
取材日:2024年11月27日 ライター:仲濱 淳
合同会社Aimable
- 代表者名:坂口 雄斗
- 設立年月:2023年7月
- 事業内容:広告代理業、フォトスタジオ
- 所在地:〒902-0064 沖縄県那覇市寄宮2-6-10
- URL:https://www.aimable0.info/