「カタチのないデザイン」で企業の内部にもアプローチ。チームの一員となってブランディングを共創する
パンフレット・看板・商品パッケージ・ファッション・建築…わたしたちの暮らしの中には、数えきれないほど多彩な「デザイン」が溢れています。ですが、デザインの領域は「カタチのあるもの」だけではありません。それが、コミュニケーションです。「カタチのないもの」をデザインするとは? 2024年6月、広島でコミュニケーションデザインに特化した「株式会社Cograf(コグラフ)」を立ち上げた、渡部 健将(わたなべ たけと)さんに、詳しいお話を伺いました。
大学時代にデザインを専攻。商業デザイナーとして多くの「カタチづくり」を学ぶ
会社を立ち上げるまでの経歴について教えてください。
僕は岡山県出身でして、広島市立大学芸術学部へ進学するために広島に来ました。芸術学部ではデザイン系を専攻し、立体物のデザインを主に学んでいました。学生生活を送りながら「僕が本当にしたいことはなんだろう?」と悩んでいるときに、いろいろなデザイン領域があるということを改めて知ったんです。その中で、グラフィックに興味が絞られていきました。
大学卒業後は、飲食店やブライダルなどのサービス事業で知られる「商業藝術」に就職。その中のデザイン部に所属し、1年半ほど下積みをしました。その後「GKデザイン総研広島」に入社し、コミュニケーションデザイン部に配属されました。デザイン戦略部に異動したりコミュニケーションデザイン部に戻ったりしながら、9~10年くらい在籍していました。
会社を設立したいと思い始めたのは、いつごろですか?
起業しようと思い始めたのは、1年前くらいですね。それまでは、独立することはあまり考えていなかったです。それは、どこに所属していても「クライアントさんとともに創る」という僕のスタンスは変わらないからです。独立することのメリットがどこなのか、まだ僕の中で定まっていなかったんですが、クライアントさんから「独立しないの?」と声をかけていただけるようになってきて…そういう選択肢もあるのかな、と思い始めました。
広島で起業したのも、特にこだわりはなくて…たまたま行きたい大学が広島にあった。たまたまGKという存在が広島にあった。たまたまクライアントさんに広島とつながりのある方が多かった。そういう理由で広島にいる感じです。クライアントさんの役に立てるのであれば、どこにいてもいいかなと思っているんです。
デザイナーならではのコンサルティングで、クライアントを長期的にサポート
事業内容について詳しく教えてください。
「デザインコンサルティング」を軸に、インナーブランディング支援とアウターブランディング支援、これらを合わせたトータルブランディング支援をおこなっています。 インナーブランディング支援では、ビジョン創りや世界観創り、人材育成など、組織内部に関わる「コト・ヒト」をサポート。アウターブランディング支援では、ロゴマークや展示空間、パンフレット、Webなど企業のブランド確立の手段である「モノ」を提案し、デザインしています。企業のブランド構築をワンストップでサポートできるのが当社の特長です。
デザイン会社との差別化は「コミュニケーション」を軸にしていること。コンサル会社との差別化は、コミュニケーションを「見える化できる」「カタチにできる」というところですね。具体的にいうと「グラフィックレコーディング」という手法。ホワイトボードに、その場でイラストを描いたり文字を書いたりして整理していくんですけど、それをデジタルでやっていくんです。当社では「デジタルグラフィックレコーディング」と呼んでおり、会議室のモニターでAdobeのイラストレーターを使い、話している内容を図解化しています。
Wordなどの言葉だけのツールだと、同じ文字の大きさ、同じ書体で打ちっぱなしになるので「どの言葉が強かったか?」というのが印象に残りにくいんですよね。でも、デジタルグラフィックレコーディングは、文字の大きさや色、書体を、その場で変えることができるので、話していたニュアンスみたいなことも、より直感的に伝わりやすくなっていく。お客さまにより的確にご提案ができるため、これは一つの強みです。「デザイナーだからこそできるコンサルティング」ですね。
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「Cograf(コグラフ)」という社名には、どんな意味が込められているのですか?
「ともに」「共創」を意味する「Co」と「グラフィック」を意味する「Graph」を合わせた造語です。僕は「人の役に立ちたい」という思いが根本にあって、高校生の頃から「美術とその思いをどう絡めたらいいのか?」と考えていました。よく分からないながらも「デザインだろう!」と思いたち、この業界に入りました。職場でいろいろと勉強させていただく中で「core(コア)=核心」の部分が大事だなと気づき始めたのが、4~5年前くらいですかね。それで「一緒に創っていく」ということが、重要だと思いました。ちなみに「コグラフ」の「コグ」には「一緒に漕ぐ」という意味も込めています。「同じ船に乗る」ということですね!
今まで手がけた仕事で、印象に残っているものはありますか?
今やっている案件の一つに、長期計画でサポートをしているメーカーがあります。3~4年かけて関係を作っていって、今は内部に入れるようになってきました。やはり、僕自身の個人的な思い入れは強いですね。というのも「一緒にやっている!」という感覚が大きいから。経営者の方々と一緒に運営チームを作って、さらに社員の皆さん、中でも事業部長とか課長クラスの方と一緒に、定期的に会議をしながら進めています。長期的なビジョンに向かって、階段を一つずつ上がっていっている感じです。それは、だいたい8年くらいかかるんですけど、今はまだ1~2年目くらいですね。今はベースを作っている最中です。
ミッションはポジティブな雰囲気創り。一人ひとりの「前向きさ」が良い流れを生み出す
これから、どのような会社にしていきたいですか?
広島だけに留まらず日本全国、できればグローバルに広げていきたいですね。なので、なるべく多くの人と、より広範囲で関わっていきたいです。そして、一つのやり方、モデルみたいなものができていくと、CografとしてのDNAになるな、と。そのDNAづくりのためには、やっぱり、いろいろなプロジェクトを増やしていかなければいけない。また、「Cografらしさ」というのを追求し、発信していくことで、もっといろいろな人が当社を利用しやすくなってくると思うので、僕たちらしいプロジェクトを展開していきたいです。
また、クライアントさんの社内でポジティブな雰囲気を創ることも、ミッションに掲げています。人は集団で生きる動物なので、空気感とか雰囲気が良くなっていけば、人も良い方向に進んでいくんですよね。経営層の方々とかキーマンの方々と定期的に打ち合わせをしている中でも「コレ、いい流れだな」みたいな雰囲気を感じることがあります。例えば「今日だけでは決まらないから、社内で1回話し合って、また渡部さんに相談します」とか。コレって、とても良い動きですよね!「前向きさ」が世の中をポジティブな雰囲気にしていくと思っています。
今、クリエイターを募集されていますが、どのような人材を求めていますか?
まず軸になるのは「コミュニケーション能力」。観察力や空気を読む力は大切です。二つ目は「センス」。美的センスはもちろん、勘の良さみたいな。ニュアンスの違いを拾う力もセンスだな、と僕は思います。三つ目は「表現力」。絵にする力だったり、言葉にする力。やっぱりコミュニケーションって、言葉ですからね。そして、最後に「根性」です(笑)。といっても、身を粉にして働けとはまったく思っていなくて…「貪欲に良さを追求する心」ですね。これらは素養さえあれば、なんとかなるんじゃないかと思っていて、どれかの項目で僕が「この人は尊敬できる!」と思うところがあれば、ぜひ一緒にやっていきたいですね。
取材日:2024年12月5日 ライター:橘髙 京子
株式会社Cograf
- 代表者名:渡部 健将
- 設立年月:2024年6月25日
- 資本金:120万円
- 事業内容:デザインコンサルティング業務
- 所在地:〒730-0011 広島県広島市中区基町12-5 7階
- URL:https://www.cograf.co.jp/
- お問い合わせ先:082-576-0215