「15秒の勇気」で人の心を動かす映像を作る。「福岡発のクリエイティブ」で全国へ
「広告の本質は、伝えたいことを端的に、そして強く印象に残すこと。そのためには技術と感性の両方が必要なんです」。映像の力でブランドの価値を最大限に引き出し、記憶に残る広告を生み出す福岡県の映像制作会社・レボアーチ株式会社は、プロモーション映像、広告映像、ブライダル映像を中心に手がけています。代表の後藤 秀典(ごとう ひでのり)さんは、東京の制作会社でキャリアをスタートし、映画の助監督を経て独立。「15秒の勇気」という独自の経営理念を掲げ、映像制作における技術力とクリエイティブの両立を追求し続けています。
東京で学び、福岡で築いた「一貫した映像制作」。映像のすべてを身につけたキャリアとは
会社を立ち上げるまでのキャリアを教えてください。
私の映像制作のキャリアは、福岡の大学で映像と写真を学んだことから始まりました。在学中から映像の方により深く興味を持つようになり、卒業後は東京の制作会社に就職。最初はアシスタントディレクターとして、ロケのスケジュール管理や出演者や必要な小道具などが載った香盤表の作成、カメラアシスタントなど、現場の基礎的な業務を担当しました。
下積みが必要だったんですね。
はい。最初のうちはとにかく「技術を身につける」ことが最優先でした。テレビ番組やCM制作の現場では、クライアントの意向をくみ取りながら、予算やスケジュールの制約の中で最大限のクオリティーが求められます。
予算が少ない案件では、ディレクター自らカメラを回し、編集まで手がけることもありました。こうした経験を積み重ねる中で、「自分で企画から撮影、編集まで一貫してできるクリエイターになりたい」という思いが芽生えていきました。
その後、テレビ業界から映画業界へフィールドを変えられたそうですが、きっかけを教えていただけますか?
知り合いの映画監督を見ていて、「クライアントにとらわれずに好きなことをやっているのってかっこいいな」と思ったことがきっかけです。
会社を辞めてフリーランスとして独立し、助監督になりました。映画の世界はテレビの世界とはまた違って、拘束時間の長さや金銭的な不安定さがありましたが、映像を通じて「自分の表現を追求する」ことの大切さを学びました。
その後福岡に戻られたのですね。
地元である福岡に戻った後、1年10カ月ほど映像制作会社で働きました。 そこでは、企画から納品までを1人で担当するというスタイルを学びました。東京ではチームで動くことが多かったので、「映像制作のすべてを自分で完結させる」ことができる環境は新鮮でしたね。
映像のクオリティーはもちろん、クライアントの要望に対する理解や、提案した内容を忠実に形にする力を徐々に身につけられたことで、2019年に独立を決意しました。
広告からブライダルまで幅広い映像事業を展開。「好きなものを表現する楽しさ」を実感した出来事
現在の事業内容について教えてください。
レボアーチでは、主にプロモーション映像、広告映像、ブライダル映像を制作しています。クライアントの要望を正確に理解し、企画・撮影・編集まで一貫して対応するのが特徴です。
印象に残っている映像制作の事例はありますか?
最近では 「アガベ×高取焼」のプロジェクトが特に印象に残っています。 人気が高まってきている観葉植物の「アガベ」が好きな友人がいて、アガベ界では結構有名人なんです。その友人が「伝統工芸の高取焼で植木鉢を作ってアガベとコラボして販売したい」ということで、動画作成を依頼してきたんです。高取焼は400年ほどの歴史を持つ福岡県下有数の古窯で、植木鉢を作る文化がありません。しかしアガベと高取焼の相性の良さを確信した友人が熱意を持って職人さんに掛け合い、「アガベ×高取焼」が実現しました。
この思いを聞いて、予算、スケジュール云々を考える間もなく、「やります」と返事をしていました。「好きなものを表現する楽しさ」を純粋に追求した仕事となりました。SNSで発信し、今後の反響を見ていく予定です。
企業へ飛び込み「映像を撮らせてください!」。営業もクリエイターも挑戦を恐れない
映像制作の依頼はどのようなところから依頼が来ることが多いですか?
紹介という形が多いですね。東京で制作会社をしていたときの知り合い、福岡の大学時代の仲間などから「映像制作をやっている人間がいる」と紹介してもらうことがよくあります。
福岡は屋台文化や、おいしい食べ物もたくさんあって飲み会も多いイメージがありますが、飲み会の場での出会いもあるんですか?
はい、おっしゃる通りです。東京にいるときと比べても、飲み会に呼んでもらうことが多く、その場で意気投合して後から仕事につながることもあります。地元の話題で盛り上がったり、共通の知り合いがいたりして。そういったことから関係が作れるのは地方ならではなのかなと思います。圧倒的に東京の方が人口が多いのに、つながるのは福岡の方が多いってなんか不思議ですよね。
営業活動をすることもありますか?
はい、営業もしますよ。これは僕のやり方ですが、“一緒に仕事をしてみたい”と感じたブランドや企業があれば、会社に訪問し、「映像を撮らせてください!」とお願いするんです。“この商品を売るための映像を撮影したい”という思い1本で飛び込みます。
実際に、そのスタイルで案件に結び付いたこともあるのでしょうか
成功率は低いですが、もちろんあります。愛用しているお醤油があって、調べてみると商品へのこだわりや歴史を知って、「映像を作ってみたい」という思いにいたり、営業をかけて仕事に結びつきました。
すぐに仕事にならなくても数年後に思い出して連絡をくれることもあります。
映像を通じて、新しい価値を生み出す。クリエイターの育成と、新たな才能の発掘
展望について教えてください。
まず力を入れたいのがクリエイターの育成です。来年度から新卒2人が入社予定で、若手の教育に注力していきたいと考えています。
どうして育成に力を入れていかれるのですか?
「自分の賞味期限をわかっている」ということかなと思います。映像業界って、新しいものにどんどん取り替わっていきます。10代、20代の子には僕にはない感覚がたくさんあります。そういった感覚的なところは若い子から学びたいとも思っています。もちろん技術と経験においては僕の方が長けているので、彼らに教授していきたいです。
若いクリエイターが会社でどんどん活躍していきそうですね。
実は、映像業界は独立志向が強いため、一度は会社を離れていく人も多いです。それでも「育った人材がまた仕事を回してくれる」関係を築くことができれば、会社としても業界全体としてもプラスになると考えています。
実際に、東京の映像会社に就職した元社員が、現在ではレボアーチに仕事を発注してくれています。「辞めてもつながる関係」 というのは、重要な価値になっていると思います。
地方から全国へ。「福岡発のクリエイティブ」を強みに
なぜ東京にも事務所を構えているのでしょうか?
東京の案件も増えてきたことが大きな理由です。しかし、東京の仕事を受ける際に、クライアント側が「交通費を気にする」ことが多く、それならば東京に拠点を持ってしまおうと考えました。
現在、東京事務所には常駐スタッフはいませんが、東京での打ち合わせや撮影の拠点として機能しています。営業活動を強化し、より多くの案件を獲得することで、福岡発のクリエイティブを全国へ広げていきたいと思っています。
「15秒の勇気」を胸に、さらなる挑戦を
これからの目標を教えてください。
私たちのモットーは 「15秒の勇気」 です。これは、営業でも制作でも、新しいことに挑戦するときに必要な「最初の一歩を踏み出す勇気」を意味しています。
映像制作の世界は日々進化しています。新しい技術、新しい表現方法が次々と生まれる中で、挑戦を恐れずに進み続けることが大切です。
今後は、企業のプロモーション映像だけでなく、ドキュメンタリーや短編映画など、より表現の幅を広げるプロジェクトにも取り組んでいきたいですね。
「映像を通じて、人の心を動かす仕事」 を続けるために、これからも進化を続けていきます。
取材日:2025年1月23日 ライター:田口有香
レボアーチ株式会社
- 代表者名:後藤 秀典
- 設立年月:2019年1月
- 資本金:300万円
- 事業内容:映像・写真・WEBサイトの企画・制作
- 所在地:〒816-0905 福岡県大野城市川久保3-8-1
- URL:https://www.reboarch.com
- お問い合わせ先:http://reboarch.com/contact/