WEB・モバイル2025.04.09

京都発「百人一首記念メダル」で文化を次世代へ!病気と出会いを機に起業「笑って死ねる人生に」

京都
広告デザイン エムズクラフト 代表
Junichiro Ueshima
上嶋 潤一郎

古代の都に名前の由来を持つ京都府長岡京市、このまちで地域に根ざして広告全般のデザインを手がけるのが広告デザイン エムズクラフトです。代表である上嶋 潤一郎(うえしま じゅんいちろう)さんは、デザイナーとして広告制作会社で約20年のキャリアを積み上げた後に独立、「デザインの力をさまざまな分野に生かしたい」という思いを持っています。現在の事業や展望などについてお伺いしました。

「起業なんて自分には無理だ」が変わったワケ

これまでのキャリアを教えてください。

美術大学を卒業後、大手ショッピングモールの広告を手掛ける制作会社に入社し、デザイナーとしてのキャリアをスタート。ショッピングモールに入っている数多くの専門店の紙面デザインを手掛けていたほか、モデル撮影の際のディレクションを行うこともありました。入社当時は、文字のフォントを撮影して切り張りする、いわゆる「写植」と呼ばれるもので、版下を作って入稿するような時代でしたので、約20年間のキャリアの中で、紙からデジタルへの変遷を目の当たりにしてきました。

その後、お付き合いのあった印刷会社で、デザイン部門を立ち上げるというお話があり、その会社に転職しました。この会社ではスマートフォンアプリを制作できるシステムを導入していたので、当時流行し始めたパン屋さんを紹介するアプリを作りました。アプリで紹介しているパン屋さんに伺った際、たまたまお店を訪れていたお客さまから「夫婦でパンが好きなので、妻の脳梗塞のリハビリを兼ねて、アプリを見てパン屋巡りをしています」といっていただきました。広告会社に勤めていた際には、制作したものに対してお客さまからの反応を見る機会がありませんでしたので、このことは感動的で記憶に残っています。

元々、事業を立ち上げようという思いはなく、「起業なんて自分には無理だ」と思っていましたが、印刷会社を退職後のさまざまなきっかけから、2018年7月にエムズクラフトを立ち上げました。

立ち上げる理由となった「さまざまなきっかけ」とはなんでしょうか?

印刷会社を退職した頃に、たまたま知人からの誘いで「京都レトロモダン」というイベントに、ボランティアで運営スタッフとして携わりました。その名のとおり「レトロモダン」な和装アイテムなどをテーマとしたイベントです。準備の最中にはスタッフが怒ったり、泣いたりと大変なことも多かったのですが、とても楽しい経験でした。一緒に仕事をしたスタッフにはフリーランスの方や、ママサークルの主宰者、メディア露出が多いお寺の方、舞台の脚本家など、多彩なメンバーが集っていました。メンバーたちと意気投合し、「一緒に事業を立ち上げよう」という話にまでなりましたが、それぞれの方向性が違っていたため、その話は無くなってしまいました。しかし、当時は自分で事業をやるかどうか悩んでいる時期でしたので、彼らの考え方に触れて、「自分でチャレンジしてみよう!」と決意しました。

もう一つの大きなきっかけは病気を患ったことです。椎間板の手術と、網膜剥離で右目が見えなくなったことがありました。片目だと物を立体的に捉えることができず、歪みもあり、デザインができなくなってしまうという恐怖を抱きました。幸い視力は回復したので、運命が自分に「何かをやれ」と伝えているのではないかと感じました。そしてその時に「失敗しても後悔のないように生きよう」「笑って死ねる人生にしよう」と強く思いました。周囲からは年齢的なことから起業に反対されることもありましたが、妻からも「そんなにやりたいならやってみれば?」という言葉があり、今の事業を立ち上げました。

「他社にないスピード対応」で差別化

 

現在の事業内容を教えてください。

現在は主にWebサイトの制作と、チラシなどの紙媒体のデザインを行っています。そのほか、ECサイトの構築や、のぼりなどの販促グッズの制作、動画制作も行うなど、広告や販売促進に関わるものはご相談いただければ、幅広く対応しますよ。

御社の強みはありますか?

Webサイトについては、対応の早さが強みです。基本的に1人で対応していますが、デザイナーとしては「スピードが速い」ほうですので、制作にはあまりお時間をいただきません。いつでも連絡がとれるように心がけており、お客さまからの修正依頼にもすぐに対応しています。他社だと1つの修正にも1週間以上かかるというようなお話も聞きますが、当社の場合は簡単な修正であれば、お電話いただければすぐに反映することも可能です。また、デザインについてはお客さまに合わせて多様なものをご用意できますし、ご要望には柔軟に対応します。自分のデザインを押し付けるようなことはありません。会社勤めの時に、システム管理業務もしていましたので、パソコン(特にMac)やネットワークの事でもご相談いただけます。

単に仕事をこなすのではなく、地域の中で「人脈のハブ」に

 

お仕事をするうえで意識していることなどがありましたら教えてください。

地域の中で、仕事を通じて知り合ったお客さま同士をつなぐということを心がけています。例えば、自社製品のあるお客さまに、お取引のあるスーパーマーケットの会長さんをご紹介して、スーパーの中に売り場スペースを設けてもらうことがあります。経営者の方とやりとりすることが多いので、そういったことができるのです。地域の中で、私と関わりを持っていただいたことで、今までとは違ったつながりを持ってもらう。いわば私を“人脈のハブ”にしてもらうということです。こうしたことで地域が盛りあがれば良いなと常に思っています。

将来的には、会社を大きくするよりも、もっとさまざまな事業に取り組める自由な会社にしたいと思っています。これまで培ってきたデザインの力を生かせる事業を、今後も模索してチャレンジしていきたいですね。また、今後自分と同じ思いを持つ人が現れたら事業を託すことも考えていきたいと思っています。

 

目指せ100種類!「百人一首記念メダル」などのユニークな取り組み

現在の事業のほかに、新たにチャレンジされていることはありますか?

新たな事業として、京都にちなんで小倉百人一首をテーマとした「百人一首メダル」というものを制作しています。1枚につき1首の和歌を表面に刻んだ記念メダルで、日本文化への関心が高いインバウンド客からの需要を取り込むことも狙っています。取引先の社長さんが観光地の記念メダルが好きで、コレクションしているという話をきっかけに制作しましたが、単なるお土産物ではなく、“日本文化を違った形で残そう”という意味を込めています。
ほかに、会社の事業ではありませんが「長岡京eスポーツ協会」というものを立ち上げてeスポーツの普及活動を行っています。競技としてのeスポーツだけではなく、健康増進や若者と高齢者の世代間交流のためにeスポーツを活用しようと考えていて、福祉施設などで高齢者の方向けに太鼓のテレビゲームを使ったイベントを開催予定です。今後はeスポーツを楽しみながら交流できる場所を作りたいと考えています。採算性のあるものにすることが課題です。興味のある方や企業さまがいらっしゃればお問い合わせいただきたいですね。

「百人一首メダル」はどこで販売しているのでしょうか?

プレミアム感を出すために共感いただいたお店のみで販売を行っております。まだ、一つ目の和歌である「秋の田のかりほの庵の苫を荒みわが衣手は露にぬれつつ」のメダルの販売を始めたところですが、歌集に収められた順番に制作し、ゆくゆくは百首すべてのメダルを作ることが目標です。コレクションする人が現れてくれることに期待しています。今後は歌の内容にちなんだ販売の戦略も考えていきたいと思っています。

「枠にはまる」ことも力をもたらす将来のクリエイターに向けて

クリエイターを目指している方に向けてメッセージをお願いします。

誰でも発信者になれる今の時代は、人より抜きんでることが難しくなっていると感じます。しかし、伝えたいメッセージが本当に伝わるデザインや文章を作るには、基本を学ぶことが重要。若い人は特に人より先んじようとして近道をしたがるものですが、ゴールにたどりつくまでの過程が“あなたらしさ”を作ります。基本を抑えたうえで、人より何倍もやったり、人と違うことをすれば良いのです。一度は「枠にはまる」ことも、いずれは必ず「力を持つこと」につながりますよ。

取材日:2025年3月19日 ライター:川村忠寛

広告デザイン エムズクラフト

  • 代表者名:上嶋 潤一郎
  • 設立年月:2018年7月
  • 事業内容:広告やWebサイト制作・SEO、動画制作、各種印刷物・看板の制作、ブランディングアドバイス、SNS運用相談
  • 所在地:京都府長岡京市開田3丁目7-3 ガレージ2F
  • URL:https://mz-craft.net/
  • お問い合わせ先:info@mz-craft.net

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