選んだのは、義援金寄付という“一時的な支援”ではなく 仙台に拠点を設け、“継続的に雇用”を創出すること

御社が仙台に拠点を置くことになったきっかけをお話ください。

直接的なきっかけは震災です。震災が起こった当時、義援金などの“一時的な支援”ではなく、雇用創出を通じた“長期的・継続的な復興支援”をしていくために2011年7月にサテライトオフィスを立ち上げました。翌年12年5月には、サテライトオフィスを拡大し、仙台オフィスとして『ウェブガーデン仙台』を開設しました。実は、震災前から地方拠点を設けることは検討されており、震災後すぐに場所を仙台に決めてオフィス開設準備にとりかかりました。

なるほど。 震災前から地方拠点の新設を検討されていたのは、なぜですか？

弊社のお仕事の多くは、東京に本社を持つ大手企業様からいただいておりますので、地方拠点を作るというのは、意外なことと思われるかもしれません。これにはWEB業界の離職率の高さと業界人口が関係しています。現在WEB業界は、業務のボリュームが大きく膨らむ一方、業界全体の就業人数は特段増えているわけではありません。ご存知の通り離職率が高い割に、転職される方の多くは同じ業界に再就職する傾向にあります。同じ業界の中で人材がぐるぐると回遊しているイメージですね。これでは、この業界ではずっと人材不足に悩むことになってしまいます。新しい人材を育成して、この業界で活躍する人を増やすために、地方拠点で落ち着いて人材を育成することを計画していたのです。また、人材の育成こそがサービスの質を高め、ひいてはクライアントのビジネス成果向上につながると考えています。そしてクライアントのビジネスに大きく貢献することができれば、さらに多くの雇用を創出し、地域経済を活性化させることができます。

震災がきっかけとなり、会社の方針を具現化することになったのですね。

ええ、そうですね。2011年7月に3名でサテライトオフィスを立ち上げ、12年5月に拡大してから、仙台勤務の新卒を毎年15名程度採用しておりますので、現在は中途採用したスタッフと合わせて70名（2015年3月末時点）のスタッフが在籍する大所帯となりました。

仙台は制作業務に特化 いきいきとした若手が育っています

業務内容は東京オフィスと仙台オフィスで棲み分けがなされているのでしょうか。

ええ。営業は東京で行っておりますので、仙台オフィスは制作・開発業務に集中しています。クライアントやプロジェクトごとにチームを編成しており、東京と仙台のチームを常時ウェブカメラを繋いで、互いの様子がわかるようになっています。これによって、情報共有や質問がいつでもできますので、拠点間のコミュニケーションが有効に機能しています。

互いの様子がわかり、コミュニケーションをとりやすいというのはいいですね。 仙台の制作スタッフにはどのようなスキルが求められているのでしょうか。

制作とひとことで言っても、マーケッター、デザイナー、エンジニアなどさまざまです。業務ボリュームによっては、いくつものプロジェクトやユニットを兼任することももちろんあります。スタッフに求められるスキルとして、担当するクライアントの特徴や性質、事業内容や顧客を研究することは欠かせません。また、それぞれのユニットには、東京でクライアントと密にコンタクトをとっている専任のプロデューサーがおり、全体を統括しています。

スタッフのほとんどが入社4年未満というのは、本当に若々しいエネルギーに溢れていますね。

新人の育成にはやはり大きなパワーを必要としますが、3年後には会社の方針とのマッチング率の高い人材が育ちます。今年で仙台オフィスでの新卒採用も4年目となりましたので、2年目、3年目の社員が新人に教えるようマネジメントしています。仙台のオフィスに合った育成スキームを作りながら実践しているところですね。

御社は、CI(コーポレート・アイデンティティ)の中でも、MI(ミッション・アイデンティティ)とVI(ビヘイビア・アイデンティティ)が社内で大変うまく機能しているとのことですが。定期的な見直しをされているのでしょうか。

現在のミッション・ビジョンは、昨年新たに策定いたしました。これは、今年弊社が創業20周年を迎えるにあたって見直しをしたものです。社会的背景とメンバーズの強みを踏まえ、 “社会の本質的な課題をどのような手段で解決し、何を実現するか”を示す「ミッション」と“ミッションを実現するための2020年の目指す姿”である「VISION2020」、その実現に向けた戦略を策定いたしました。全社員がプロジェクトに参加し、考えたものですので、社員にとって共感性の高いものとなり、社員としての誇りを再確認するものとなりました。

ここからムーブメントを。 地方から首都圏へ発信できること。

東北の仙台という土地での御社のこれからの展開についてお話ください。

そうですね。雇用を創出するという目的の一つは少しずつ実現できていると思います。「仙台にメンバーズあり。」と言ってもらえるように、引き続き「東北No.1のWeb制作拠点」を目指し、ウェブガーデン仙台を発展させることで、クライアントのビジネスと東北の復興にさらに大きく貢献したいと考えています。また、同じ仙台にオフィスを構える同業他社様とも協働でセミナーを開催するなど、友好な協力関係を築いておりますので、この地域から大きなムーブメントを巻き起こしていきたいと考えています。

最後に、今後の御社の展望を教えていただけますか。

これからのWEB業界に最も必要なのは、スタッフの「働きやすさ」です。業務が増大する中で、仕事自体を楽しみ、私事(しごと)と捉えて前向きに取り組む人材を育成してきたいと思っています。会社としては、オン・オフのメリハリある仕事環境を整えることや、女性が子育てしながらも働けるような環境とワークスタイルの整備を進めています。10年後、20年後には仙台から世界へ、WEBを通したマーケティングで、よりクリエイティブなプロジェクトを発信していきたいですね。

取材日：2015年4月2日