動画配信市場のパイオニアとして 良質なコンテンツを提供していきたい

東京
株式会社配信工房 代表取締役 徳堂 一基氏
今回ご紹介する株式会社配信工房は、ニコ生・Youtube Live・Ustream等の配信・撮影に特化したスタジオの貸出、配信番組の企画制作・配信スタッフの派遣、アニメ情報番組『キャラぺろ』を自主制作する会社です。「普段は撮影や取材をする立場なので、緊張します」という代表取締役の徳堂一基(とくどう かづき)氏にIT業界の仕事を選んだきっかけ、独立を強く決意した体験、動画市場に対する思い、仕事をする上で大切にしていることなど、さまざまなお話をお伺いしました。

自分たちの音楽活動を発信したい。その必要性から、IT業界の道へ

入口に暖簾、第一スタジオの名称「庵(いおり)」など、「和」のテイストには「落ち着いて配信できる場」という意味合いが込められている。

入口に暖簾、第一スタジオの名称「庵(いおり)」など、「和」のテイストには「落ち着いて配信できる場」という意味合いが込められている。

「配信工房」を設立されたきっかけを教えてください。

以前勤めていた会社ではソーシャルアプリやスマートフォンのゲームアプリを手がけていました。元々、グループ会社の中でwebメディア、IT系のメディア制作、広告販売、ECサイトの制作などに携わってきました。そうした経験の中で今後何が来るかなと考えたところ、「動画」だと思いました。ゲーム業界は、スマートフォンやPS4など新しいゲーム機の登場で、ひとつのゲームを作るにはものすごくお金がかかるようになり、新しく参入しづらい市場になってきていました。そういった中で新たに事業を始める分野として「動画」を選びました。また、映像業界出身の仲間がいまして、映像のノウハウとITのノウハウを合わせて何かできるんじゃないか、と。

さまざまなグループ会社を渡り歩く中で、IT系のノウハウを一通り身につけられたわけですね。

携帯小説などのホームページ作成サイトに携わっていた当時、2005年頃に、そのコミュニティを盛り上げるために、携帯用のゲーム、今のソーシャルゲームに近いものを作りました。それが大当たりして新たに会社が設立されて大きくなっていく、という流れに乗りました。そういった経験をふまえて、また新しいことをやってみたいなと思って立ち上げたのが「配信工房」です。会社の中でなく、自分自身の力でやってみたいと思ったことが一番大きいですね。

独立志向が特に強くなったのは、いつ頃ですか?

以前勤めていたグループ会社が沖縄に事務所を設立するにあたって、今から3年くらい前の2012年まで沖縄にいました。2005年から7年間くらい責任者として事務所を大きくするために奔走しました。会社の方針や方向性がありますから、完全に自分の思い通りにはできないわけで、自分の城ようで、自分の城でない。そこから離れて、自分の意思と責任で取り組みたい、という思いが強くなりました。

子供の頃から、今のような仕事をしたいと思っていましたか?

実はIT業界に入る前は、ミュージシャンだったんです。音楽活動の中で、公共の生涯学習施設にあるスタジオをよく使っていました。そこで「ホームページセミナー」が開催され、「これからはパソコン、ホームページの時代だ」と言われて参加したのが、インターネットに触れたきっかけでした。1999年~2000年頃でした。

意外なところにきっかけがあったのですね。

当時は今のようにSNSやYouTubeのような、ミュージシャンが自分で情報を発信する場が全くなく、ライブハウスで定期的に演奏をしたり、デモテープを作る程度でした。自分たちの情報や活動を発信するにはどうすればいいのかと考えたら、ホームページやITに結びついたんです。それで、ウェブラジオを流したり、音楽配信用のサーバーを立てたりしましたが、自分たちだけでは分からないことも多く、だったらIT系の会社でバイトをした方がいいだろうと思い、この業界へ入りました。

ご自身の音楽活動の情報発信が始まりだったのですね。 それでスタジオに、楽器が、いろいろあったんですね。

昔のミュージシャンは事務所に所属しないと露出する機会はありませんでしたが、今は自分たちで考えて動けば露出する機会はいくらでも自分で作れる時代になりましたので、そういう方達に寄与できる設備を用意しました。 当社で制作する番組の曲は僕が作っています。著作権に困りませんし、フリーの曲を買うより早いですから(笑)。

ミュージシャンとしての経験がIT業界で活かされてひとつになっているのですね。

以前の会社でもゲームのBGMを作っていたので、音楽は、ずっと続けていますね。

横文字の社名は埋もれてしまうと 漢字4文字でインパクトを出した社名「配信工房」

社名「配信工房」の由来についてお聞かせください。

ロゴマークはエプロンをモチーフに「工房」を表現。手作り感・親しみやすさが伝わるデザイン。

ロゴマークはエプロンをモチーフに「工房」を表現。手作り感・親しみやすさが伝わるデザイン。

「配信工房」という社名はビジネスパートナーが名付けました。横文字の名前は埋もれてしまうと思ってイヤだったんですよ。横文字でインパクトのある社名を生み出すのは難しい、それなら日本語で漢字4文字が並んでいる方が面白いな、覚えてもらいやすいかなと思いました。分かりやすい言葉=「配信」がつく社名がないかな、と話していたところ、スタジオっぽい名前「配信工房」がいいんじゃないか、ということで決まりました。

起業して、行動の結果がストレートに返ってくることが楽しい!

現在のお仕事について教えてください。

配信の技術支援全般を行っています。配信の場合は、音響・カメラ・映像のスイッチングなどを2人、もしくは1人で回さないといけません。総合的に全部セットでできる人が必要なので、僕たちが呼ばれるのだと思います。あとはこのスタジオでの番組配信がメインですね。

どういったジャンルのお客様が多いですか?

一番多いのがゲーム会社です。配信を積極的に利用するジャンルはゲーム会社かアニメの制作委員会、この2種類がほとんどですね。それ以外のジャンルにも広げていきたいのですが、企画を提案しても配信への意識を持っている会社が出てきていないというのが正直なところですね。あと僕らは独自にアニメの情報番組『キャラぺろ』を制作しています。他には地上波の音楽ライブ番組での編集・ディレクションを手がけたこともあります。

設立して苦労したことを教えてください。

現在進行形で苦労しているのですが(笑)、「配信」をどうマネタイズ(収益事業化)してビジネス化していくかに関しては、まだ市場全体が発展途上です。 今はゲーム関係の仕事をいただけていますが、一過性のものだと思っています。数字もそれなりに確保できるからだと思いますが、低年齢層にリーチするからテレビより動画配信が選ばれている。ただ、このままでは絶対に良くないと思います。 配信はオンデマンドで利便性が高いので、インフラがもっと発達すれば、動画を流しっぱなしにして見ることが増えていくと思います。そこへどうやって良質なコンテンツを提供していくのかが課題ですね。今のテレビは自主規制やコンプライアンス(法令遵守)等でニッチなことができなくなってきています。動画配信はそういった点にとらわれず面白いことを面白いまま提供できる点が一番の強みであると思います。 動画配信もっといろいろな人に見てもらうようにすること、そこに対してどんなビジネスモデルがあるかを開拓するパイオニアの一員に入っていたいですね。

逆に良かったことはどのようなことですか?

全部自分の責任となる、ということですね。たとえば、「今月の売上が良くなかった」「来月どう乗り越えようか」という時は、確かに大変ですが、そこに理不尽さがない。行動した結果がストレートに返ってくるので、正直メチャメチャ楽しいですね。行動も給料も自分たちで考えて、ダイレクトに返ってくるという状況は厳しくはありますが「生きているなあ・大地に立っているなあ」と感じますね。

大変な状況を楽しめる姿勢がポジティブですね。

自分は体育会系で、小・中学校で柔道をしていました。強い相手と会った時にワクワクする、その感覚に近いですね。柔道の練習はすごくつらいのですが、強い相手を倒せた体験があると楽しく感じるんですよ。そういう気持ちが昔からあったのかもしれませんね。 文化祭や合唱コンクールなどの学校行事も大好きでした。大変なことを乗り越えてクラス一丸となって何かを達成することが楽しかったですね(笑)。

働くこと自体を楽しんで欲しい 何でもチャレンジすることに無駄はない

1508_haisin_03

会社を運営する上で、特にどういった考えを大切にしていますか?

一番大事なのは「気持ち」だと思っています。会社は集団で関わるもので同じ方向を向いていないと、物事は上手く運びません。「何のために働いているのか」ということに対して明確であって欲しいなと意識して運営しています。「いかに自分が楽しいと思える場にしていくか」「どう考えていきたいのか」といったこと意識して、強い気持ちを持って望んで欲しいですね。ただお金のためだけではつまらないですし、生きる糧になっていないと意味ないと思うのです。働くこと自体を楽しんで欲しいですね。

今後手がけたいこと・抱負・夢などを教えてください。

まずは動画番組の市場の形成です。同業者とのパイの奪い合いではなくお互いが儲けられる市場を作るための動きを続けていきたいと思います。 将来的なことで一番思うのは、海外にもっと視点を向けたいですね。日本には、独特のオタク文化の空気感があります。たとえば海外のゲーム番組は顔出しでプレイしていますが、日本ではそうでなかったりします。これに海外の人たちは、すごく憧れているのです。そういうもの(文化)を輸出できる環境を作っていきたいなと思いますね。

日本のオタク文化を海外に伝えていきたい?

世界コスプレサミットなどもあり、オタク文化は認知されていますが、向こうの捉え方だったりします。コンテクスト(文脈)も含め、もっと文化をまるごと伝える技術が欲しいですね。たとえば、日本では、お気に入りの女性キャラクターを「◯◯たん」と呼びますが英語で「ミス◯◯」と言うのは違いますよね。空気感まで伝えることができれば圧倒的な市場が生まれて、さらに面白いものを作る投資につながります。

一緒に働く人に対して、会社としてどのようなことを求めますか?

「やる気」「カッコつけない」「こだわらない」、この3つですね。「こだわらない」というのは何でもチャレンジしてみるということです。「苦手・できません」というのはマイナスでしかありません。特に若い時は吸収できる時期なので、何でもやってみればいいと思います。それが楽しいと思えば続ければいいのですから。30歳を超えるまでは何でもやってみろ、と思いますね。そういう意味で、沖縄の人はハングリーで、沖縄時代の若いスタッフは今、沖縄のIT業界で活躍しています。その人が経験したことに100%無駄はないと思います。

取材日:2015年8月3日

株式会社配信工房

  • 代表取締役: 徳堂 一基(とくどう かづき)
  • 設立年月: 2014年4月
  • 資本金: 1,000,000円
  • 事業内容: 配信スタジオ運営事業/配信番組制作事業/映像編集制作事業/インターネット広告事業 webシステム開発事業/web制作・編集事業
  • 所在地: 東京都中央区八丁堀3-19-2 京橋第7長岡ビル B1F
  • URL: http://haishin-koubou.net
  • お問い合わせ先: 上記HPのお問い合わせフォームより

TAGS of TOPICS

続きを読む
TOP