下関を拠点に国際的なイベントの現場へ
- 福岡
- 株式会社ストロベリーメディアアーツ 取締役ラインプロデューサー 永渕裕康氏
1984年、山口県下関市で創業した株式会社ストロベリーメディアアーツ。楽器店と貸しスタジオからスタートした同社は今や全国11カ所に拠点を広げ、音響・映像・照明の分野を主軸として、舞台用大型LEDディスプレイなども開発しています。取締役ラインプロデューサーの永渕裕康さんにお話を伺いました。
音響機材のレンタルから映像の世界へと拡大
創業時はどんな事業をされていたのでしょうか。
わが社は1984年、現会長の緒方克彦が下関で創業しました。当時はバンドブームで、楽器店に貸しスタジオを併設し、音響機材等のレンタルも手がけていました。その後、ステージでは映像も重要になると考え、マルチビジョンなどの最新機器を導入。レンタルだけでなく、現場の運営も任されるようになり、音響から映像、照明へと分野を広げていったそうです。
全国へ進出するきっかけは何だったのでしょう。
大きな転機となったのは、東京都渋谷区にオフィスを開設した1997年です。その数年前に山口と福岡でNHKの公開録画を担当した際に仕事ぶりが認められ、NHKの某番組の担当業者として全国を回ることに。そこから福岡、名古屋、大阪など全国でオフィスを立ち上げました。 さらに、民間のコンサートやイベントに関わる制作会社や舞台監督などにもわが社の存在が知られるようになり、どんどん仕事の幅が広がりました。
現場経験を活かしてユーザーからメーカーへ
御社はLEDディスプレイなどの開発も手がけられていますね。
はい、そうなんです。2000年頃にはステージの大型映像にLEDディスプレイが登場し、わが社でもいち早く大手メーカーや海外製のディスプレイを導入しました。しかし、既存のディスプレイはどれも重くて、イベントで一時的に用いるだけなのに設置や撤去に手間がかかり、非常に大変でした。 「コンサートやイベントなどで使用できる、もっと使い勝手の良いLEDディスプレイがほしい。そしてもっと自由な演出をしたい」。そう思ったものの、世界中どこを探してもそんなディスプレイはない。それなら自分たちで作ろうと、軽量なLEDディスプレイの開発に乗り出しました。2007年のことです。
現場のニーズが製品開発につながったのですね。
技術面では素人でしたが、私たちは現場経験が豊富だったので、何よりも現場で理想とされるものをデザイン・設計しました。製造は海外の工場に委託しています。2010年には製品開発に本腰を入れるため、別会社として株式会社エス・エム・エイを立ち上げました。こちらで開発部門を担い、株式会社ストロベリーメディアアーツは販売・レンタル部門に専念しています。 試行錯誤の末、従来のものより大きくて格段に軽いディスプレイの開発に成功し、演出の幅が広がりました。自社オリジナルで開発した反射防止コーディングの技術では、特許も取得。国内外の展示会でも画期的という高評価をいただき、大きな反響がありました。おかげさまで、中国地域ニュービジネス特別賞を皮切りに、山口県知事賞(山口県産業技術振興奨励賞)、ものづくり日本大賞(中国経済産業局長賞)などもいただきました。私たちの開発を面白いと思って参加してくださる方々もいて、産学官連携に発展したのも幸運でした。
皆で作り上げた世界観で人に感動を与える
永渕さんは新卒で御社に入られたのですか。
私は佐賀出身で、福岡の大学を卒業して全く別の仕事をしていました。もともと映像や音楽が好きで、20代後半だった2000年に今の会長と知り合い、転職しました。当時はまだ20人ほどの会社で、ちょうど全国展開を始めた時期。現場や営業を任されて、楽しく仕事をしてきました。今は営業やマーケット開発などの全般を統括しています。
この仕事のやりがいはどんなところでしょうか。
コンサートやイベントに来てくださった方々に喜んでいただけるのが、一番のやりがいですね。いろいろなスタッフとひとつのステージを作り上げる達成感もあり、何より人に感動を与えられる仕事だと実感しています。一見すると華やかに見える世界ですが、地味で大変なこともたくさんあります。しかし、何よりもこの仕事が好きで、誇りを持っています。 今は主に営業を担当していますが、現場に入ってオペレーションなどをすることもあります。皆で一緒に汗を流すことで培ってきた経験が全てにおいて活きています。
下関を拠点に国内外のステージづくりに貢献
御社の今後の展望についてお聞かせください。
今は国内外の有名アーティストのツアーから国際的なイベント、皇室行事、ファッションショー、CM、映画まで、いろんな現場で仕事をするようになりました。盆踊りからアリーナツアーまで手がける幅の広さが、わが社の特徴のひとつだと思います。また、現場を深く知っているからこそ、機材レンタルや企画、制作、運営まで、現場に即したベストな提案をできることも大きな強みです。 自社開発の製品が認められ、最近では常設ディスプレイとして購入いただいたり、同業者のレンタルのラインナップに加えていただいたりしています。現場の声を大切にしながら、今後も次世代のデバイスを積極的に模索していきたいと考えています。 そしてもうひとつ、下関で日本や世界を相手に仕事をしているというのもわが社の特徴です。東京は情報の発信地であり、大型イベントの開催も多い。けれど、下関に本社を置くわが社でも同じ土俵で仕事ができることを、これからも証明していきたいですね。 現場から営業まで多くのことを経験できるわが社では、新しい人材も募集しています。様々なことに興味を持ち、一緒に挑戦していってくれる方のご応募をお待ちしています。
最後に、クリエイターにメッセージをお願いします。
今の若手の方々は世界中の情報に触れることができて、才能があふれていると感じています。そんな中にあって、まわりに流されず、自分で考えることを大切にしながらオリジナリティを確立してほしいと思います。そのためには、あらゆる物事にアンテナを張る好奇心と、情報を精査する力、柔軟に考える力が重要です。 私も海外のチームなどと仕事をすると、予想もしなかった新しい考えに出会い、刺激を受けます。映像の世界に、もはや既成概念はありません。新しいもの、新しいデザインを生み出していきましょう。
取材日:2015年9月9日
株式会社ストロベリーメディアアーツ
- 取締役会長:緒方克彦
- 代表取締役:林由美子
- 設立年月日:1984年12月
- 事業内容:イベントの企画制作、レンタル、販売、設備、音響、照明、映像制作、デザイン
- 本社所在地:山口県下関市一の宮町3-11-4
- TEL:083-263-3040
- URL:http://www.smacom.jp/