生産者、メーカーと消費者をつなぐ場作りで北海道の食の魅力を伝えたい
- 札幌
- 株式会社ブレナイ社 代表取締役 野呂 貴弘 氏
ずっと考えていたのは 何かに「特化」するということ
御社は、「食に特化したセールスプロモーション」を展開されているということですが、具体的には、どういったことを行っている会社ですか?
プロモーションやPRというと、テレビ、ラジオ、今はwebなどのメディアで商品やサービスを紹介する広告をイメージされると思います。でも、テレビCMやラジオで見聞きして商品の名前は覚えても、その後、実際に購入して食べるかというとわからないですよね。そこで弊社では、料理教室やイベントのような場で、その商品を実際に食べてもらったり、直接購入につながるような仕掛けをつくったりというようなプロモーションを行っています。イベントを企画・運営するのはもちろん、そこに関わる広告やポスターなど社内のデザイナーがクリエイティブ関係を制作し、丸ごと全てワンストップでプロモーションを提供しています。
今のビジネスモデルについて、昔から構想はあったのですか?
うっすらとはあったかな(笑)。ブレナイ社の前に、以前、務めていた会社で同僚だったデザイナーと一緒に広告代理店を立ち上げたのですが、そもそもそこを立ち上げたきっかけが、何かに「特化」したことをやろうというところからでした。
それで、まったく違う業種である広告代理店業へチャレンジされたのですね。チャレンジしてみていかがでしたか?
当時、札幌で広告代理店は200社くらいあって、しかも、その200社がみんなテレビだ雑誌だって同じような企画を同じような価格で売っていました。そうすると、結局大手の一人勝ちです。やはり、何かに特化しないとダメだという思いがありました。それで、北海道といえば食べ物。自社媒体を作れば、すぐに集客ができるのではないかと考えて、『クイッキング』というレシピを紹介するフリーペーパーを作りました。読者のメインターゲットは主婦。スーパーに置いてもらって、食品や主婦層向けの広告掲載をしていました。
私も以前は、スーパーで見かけて読んでいましたよ。
あれは当たりました。ニーズに合っていたのでしょうね。やっぱり毎日献立を考えるのって大変じゃないですか。まだスマホもなく、料理レシピのコミュニティサイト『クックパッド』も、まださほど認知されてない時代でしたから。でも当時営業先のメーカーの方に、「広告はもうテレビで全国的に流しているからいらない。それよりも売れるしかけが欲しい」と言わて、広告とは違う形で商品が売れるしかけを作れないかと考えてできたのが、今のビジネスモデルです。
ブレナイ社を立ち上げたきっかけは?
10年ほど前に帯広市で行った北海道米キャンペーンです。当時、十勝エリアでは北海道米の食率が低く、全体の50%程でした。よくよく話を聞いてみると、家で北海道米を食べている人はいるものの、飲食店で全く使われていませんでした。そもそも飲食店の人が北海道米を食べたことすらない。帯広と言えば、名物は豚丼。そこで、帯広市の関係者に市内の豚丼屋さんを20件紹介していただき、「3日分の米(北海道米)を無料でお配りするので、まず使ってください。そしてお客さまに食べていただいてください。」というキャンペーンを展開しました。市内で1番人気のある豚丼屋さんの場合、金土の2日間で140kgの北海道米を提供しました。キャンペーン終了後、バタバタっと北海道米を使う豚丼屋さんが増えたんです。その時に、実際に食べていただくというのはこういうことかと実感しました。今は帯広市のほとんどの豚丼屋さんで北海道米を使っていただいています。 今思えば、それが決定的だったかな。それで、食に特化したことをやろうと決めて、2009年にブレナイ社を立ち上げました。
テレビやネットのような一方通行の広告ではなく 実際に食べる機会をつくる
現在、特に力を入れているプロジェクトはありますか?
今は、北海道産牛肉のプロモーションに力を入れています。北海道は道産牛の生産量は全国1位なのに、消費量は全国41位なのです。道民は年間平均4.1kgしか食べられてないんですよ。なんとかもっと食べていただく方法はないかということで、料理教室を開いたり、新得町(しんとくちょう)や士幌町(しほろちょう)など産地の小学校で食育の授業を行っています。小学校の授業はなかなか面白いですよ。3・4時間目と給食の時間を使って行うのですが、まずは生産者の方のお話を聞いた後、料理の先生が作り方を説明して、その後、みんなで作って食べるという進行です。クライアントからの評価も高く、とても喜んでいただいている企画です。実施した小学校からも、お礼の手紙が届いています。
そういえば、焼肉屋さんに行っても道産牛ってあまり見かけないですよね
そうなんですよね。その上、牛肉の料理法って意外と知られていなくて、みなさん、思いつくのは、すき焼き、牛丼、ハンバーグくらいじゃないですか。そこで、料理教室の開講や食べ方の提案も行っています。例えば、山形県に芋煮汁という郷土料理があります。山形では地元の牛肉と里芋を使っていますが、道産牛と北海道のジャガイモを使って、北海道バージョンの芋煮汁というのを作って、いろいろなイベントでプロモーションを行っています。まずはイベントで実際に食べていただき、美味しくて簡単に作れるとわかっていただところで、レパートリーに加えていただき、家でも作っていただく。そうすると実際に道産牛を買っていただく機会につながるというわけです。「美味しいよ、簡単だよ、だから食べよう!」ってテレビや雑誌で流れている広告を目にするだけではなく、ご自身で経験していただいた方がずっと説得力がありますよね。
お祭りなどでもよくお見かけしますね
商品プロモーションを展開できるイベントを探していった結果、お祭りにつながりました。 きっかけは、某メーカーのレモン調味料のお仕事を受たことからです。そのレモン調味料を食べていただく機会として、なにか面白い機会はないか?と考えていたところ、北海道には「牡蠣祭り」というイベントが数箇所で年に5回も開催されていると知って、「これはいける!」と思いました。牡蠣にはレモンがつきものですし、ここでプロモーションを行ったら面白いと思い、牡蠣祭りを開催している町の観光協会に話をしに行きました。町の特産品やご当地グルメのプロモーションを色々な自治体と組んでやらせてもらったりもしています。羽幌町(はぼろちょう)のはぼろ甘エビまつり※もそのうちのひとつですが、札幌から車で3時間の場所に2日間で5万人の集客力があります。これは、ものすごい一大イベントになりましたね。開催期間中は近郊も含め、ホテルが全然取れない程の人気です。自治体の方にもとても喜んでいただいています。
※ 日本一の水揚げを誇る羽幌町の甘エビや旬の味覚を一堂に楽しめるイベント。甘エビを浜値で提供するほか、全道各地の人気店が甘エビを使った様々なメニューで提供される。羽幌町観光協会 http://www.haboro.tv/
他にはない強み、 リアルな経験を提供し続けたい
現在、競合はありますか?
北海道で、同じような会社があるとは聞いたことがないですね。メーカーをクライアントに持っている広告代理店が、受けている仕事のうちのひとつとしてやっているということはあるかもしれませんが、食の事しかやっていないという会社は、弊社しかないんじゃないかなあ。 食品メーカー様の地方の営業所は、広告費は持っていなくても、販促費としての予算はしっかりあって、クリエイティブ含め、売るためにはどうしたらいいか常に考えていらっしゃるので、ご提案すると「手伝ってもらえると助かるよ。」って喜んでもらることが多いです。
これからやっていきたいと思っていることはありますか?
ブレナイ社は立ち上げからまだ10年もたっていないので、やりたいことや、やり足りないことはまだまだたくさんあります。今は、インターネットが発達して、ネットで何でもできる時代です。買い物はもちろん、銀行振り込みも、勉強も、なんだってできちゃう。でも食育的なことはインターネットでは、絶対できないと思うんです。なぜなら、実際にその食品を食べていただいたり、その食品がどのように作られたのかという生産者の声を通して語られる言葉のようなリアル体験を伴わないとなかなか伝わらないと思うのです。 とはいえ、集客のためのクリエイティブは必須です。イベントや取り組みに興味を持ってもらう、理解してもらうためにも、クリエイティブは切り離せない部分です。クリエイティブにおいても、リアルな場作りについても、もっともっとクオリティを上げて、心に残る体験の場を作っていきたいと思います。
取材日:2016年2月3日 ライター:小山佐知子
株式会社ブレナイ社
- 代表者名:代表取締役 野呂 貴弘(のろ たかひろ)
- 設立:2009年10月1日
- 資本金:3,000,000円
- 事業内容:「食」に特化したセールスプロモーション、イベントの企画、運営、 広告代理業務全般
- 所在地:〒060-0031 札幌市中央区北1条東4丁目 8-8 大竹ビル2階
- TEL:011-231-1713
- URL:http://www.brenaisha.com
- お問い合わせ:上記ホームページより