モバイルPOSシステムで シャッター街化した商店街を再生!
- 大阪
- 株式会社イグレック 代表取締役 新田 秀幸氏
身近なところからスタートした新事業の取り組み
ファッションモデル事業を主に行ってきた御社が、インターネットに関連したビジネスへ事業を拡大していった経緯などについて教えてください。
事業の中心が外国人のモデルを専門としたモデル事務所であった当時、モデルの活躍の場にも変化が出てきたことを、肌で感じていました。雑誌などの紙媒体からウェブ媒体へとニーズが変化し、ネットショッピングの環境を整えていく企業が増え、インターネットの可能性が急速に広がっていった時代でした。 私自身も、早くからコンピュータやITに関心があり、これから世の中が大きく変化し、そこで新しいビジネスチャンスが生まれることを確信していました。 一方、本業であるモデル事業を通して、さまざまなクライアントとの接点が生まれ、それは当社にとって大切な財産になりました。そうしたつながりを築いていくうちにクライアントに店舗を持った業種が多いという点に気がつきました。
モデルエージェンシーとして培ったクライアントとの接点がインターネットビジネスにつながっていくのですか。
はい。それには、モデル業界ならではの事情も関係しています。 ご存知の通り、モデルとして活躍できる期間は、一般にそれほど長くはありません。モデルとしての寿命は短いのです。このため会社としては、モデルたちの引退後の人生設計を一緒に考えてサポートすることが大切なのです。
引退後のキャリアのため、スキルを磨いてwebデザインをするようになったモデルに、ウェブサイトの制作を依頼したことがはじまりでした。出来上がったウェブサイトは、日本人にはないセンスが発揮されており大変に好評を博しました。 自分たちではじめられる身近なところをきっかけに、徐々に、クライアントからウェブやITに関連した相談や仕事を受けるようになり、また専門的なニーズに応えられるように仕事上のパートナーを増やしていきました。
現在のスマレジ事業(モバイルPOSシステム)に取り組みはじめた経緯を教えてください。
大阪に、POSレジシステムをつくっている会社があり、当社のパートナー企業であるソフトウエア会社を介して、紹介していただいたのがきっかけでした。5年ほど前の話です。
このモバイルPOSシステムをみて、iPadを使ったレジシステムということで率直に面白いと感じました。レジを必要とする店舗は全国に数え切れないほどあり、このシステムを使えば、POSシステムを低予算で素早く、だれでも簡単便利に導入することができるので、ぜひこれに取り組みたいと思いました。 モバイルPOSシステムでは、クラウド化することにより、従来は高額な設備投資をしないと導入できなかった高付加価値なPOSシステムをぐんと身近な存在にすることができるのです。
新しい事業をはじめるに当たり、御社にはどのような強みがあるとお考えでしたか。
『スマレジ』の開発元はシステム開発力に優れた企業です。それに対して、弊社は、モデル事業で広げてきたクライアントやパートナー企業との信頼関係があり、顧客の要望を聞いて具体的な形にし、顧客と開発をつなぐ役割が担えると考えました。 それは、それぞれ特化した力が集まって一つのメーカーのように製品を収めていくというやり方です。
市場は全国に広がっており、店舗などでレジを切り替えるときには、大型で重いレジはもう止めてモバイルPOSシステムのスマレジを導入してはと、ご提案しております。 なお当社は2012年にはモデル事業を分社化して、以降はスマレジ事業を中心に据えて展開しています。
シャッター街化した地方の商店街を、スマレジで再生するのが夢に
これまででご苦労されたところはどんな点でしょうか。
当初、苦労したのは、モバイルPOSシステムへの認知度が低かった点です。 店舗にある従来のレジは、まず大きいというイメージがあり、それに代わる存在としてiPadに全ての機能があるのか、またデータを蓄積するクラウドサーバーってどんなものなのかとか、セキュリティーは安全かとか、疑問を一つひとつ払拭していく必要がありました。ただそれも、1年、2年経るごとに理解が得られやすくなってきました。
インターネットを使う手段がパソコンからスマホに変わり、いろいろなネットサービスが普及してきたことは影響していますか。
ネットワーク上のアプリケーションを皆で共有して使うクラウド的なものは徐々に広がりをみせ、潜在的な利用者層の皆さんに便利さや機能の高さがアピールしやすくなってきました。今ではちょっとした調べものをするにしても、わざわざパソコンを開かずにスマホで探すのが普通になっています。そんな時代の分岐点もスマレジ事業にはよい流れを与えてくれました。
たくさんの方々にメリットがあるシステムですが今後、提案していきたい活用シーンはありますか。
これまで導入していただいたところは従来のPOSレジからの変更が多く、今後は、今までPOSシステムを導入することができなかった小規模なところにも目を向けていきます。 例えば、地方にある今ではシャッター街化が進んでいる商店街などです。 店同士をクラウドで結び、手元でいろいろな情報が共有できれば、商店街全体にとって大きな武器になります。商店街で金券のようなものを発行してそれを管理することも容易になるので、大型店が行っているサービスを商店街でも行って大型店に対抗していくことも可能になります。
今や商店街を行き来し利用する街の人たちは、常時スマホを手にしています。『スマレジ』はコンテンツを入れ替えることによってさまざまな情報発信ができるので、商店街と利用者のコミュニケーションを図る上でも大きく役立つと考えております。
大手メーカーの対応とは異なり、私どもはお客様の仲間の一人として同じ目線で問題解決に取り組んでいけるところが強みです。『スマレジ』を活用して街の活性化を手助けするようなことができれば、地方が衰退する日本の現状を少しずつでも変えていくことができるかもしれません。
助けてもらったことを忘れない生き方は、 人とのつながりに深み与える
話題を変えまして、今度は御社についてをうかがいます。スタッフ、特にクリエイター職のスタッフについて、重視するのはどういった点でしょうか。
当たり前のこととして、まず社会人としての自覚を持ち、大人として振舞えることが大事です。自由人でありながら責任感がある人というのが重要です。 新しく柔軟な発想をするためには自由であることが大切です。 当社では就業時間を決めておらず、例えばデザインだったら作品のクオリティを上げるために何か別のことをしていても特に問題にしません。 ただし、締め切りまでに成果物を仕上げるなどの約束事は絶対に守ってもらいます。定められたことをコツコツ積み上げていくタイプより、自己管理ができて仕事を自ら推し進めていく意志のしっかりとしたタイプの人は当社とぴったりくると思います。
今の若い世代に対してアドバイスはありますか。
最近の若い人は、一見、しっかりした印象の人が多いなと思いますが、実際には、しっかりしているように"みせる"ことが上手い人もいるように感じています。 情報が豊富にあり、表面的な知識を身につけることは容易になりましたが、経験が足りない部分もあるのかと思います。
だから若い人は、苦労をもっとしたらよいと思います。そうすれば、人に助けてもらう場面がいっぱいあるでしょう。そこで助けてもらったことを忘れないことが大切です。それをきちんと覚えていて、その人に対し感謝する気持ちを忘れなければ、失敗自体は忘れても別に構いません。
人は助けられた過去を忘れてしまいがちですが、助けてくれた人を思い起こせば、心の中で大切な指標となりますし、自分が助ける立場になったときには、迷いなく動けるものです。感謝を忘れずに生きていければ、大丈夫じゃないかなと考えています。そうしていくことで、人とのつながりに深みや広がりが生まれ、やがて、人生の財産にもなります。
事業の目標など今後の方向性についてはいかがでしょうか。
「組織を大きくする」といった、企業としての当たり前の目標は、実はあまりありません。 目の前にある仕事を一生懸命にやっていくと、次に見えてくるものが絶対にあるので、それをやりたい、面白いと思えるように好奇心を持ち続けていくことが日々の目標です。 もうすぐ50歳を迎えますが好奇心の衰えはまだまだありません。 何にでも興味を持って好奇心を持って接すると、気持ちがワクワクして毎日が楽しくなります。いつまも自由であることが大切だと思います。
取材日2016年2月19日 ライター 長谷川 隆
企業名 株式会社イグレック
- 代表者名(ふりがな): 代表取締役 新田 秀幸(にった ひでゆき)
- 設立年月: 2012年5月
- 資 本 金: 600万円
- 事業内容: モバイルPOSシステムのスマレジのカスタマイズ提案販売
- 所 在 地: 大阪府大阪市西区阿波座1-3-18 Eggビル本町9F
- URL: http://www.igrekcom.co.jp/
- お問い合わせ先: 06-6535-9919