人に喜んでもらえることが喜び おもてなしの気持ちでするデザイン
- 東京
- 株式会社ペンシルロケット 代表取締役 武井 正理氏
編集者目線に立った「売れるデザイン」の提供を目指して デザイン会社を設立
「ペンシルロケット」を設立したきっかけを教えてください。
元々は出版社でコンピューター雑誌『Windows100%』、『iP!』(株式会社晋遊舎)の創刊編集長をしていました。2004年に、退職して、編集プロダクション株式会社クランツを設立しました。商業出版物を手掛ける中で、編集者の目線に立ってデザインできるデザイナーが少ないと感じていました。 取次会社への営業用に表紙カンプを作るのですが、これはほとんど編集者が作るもので、私もデザインをしていました。最終的にはデザイナーが仕上げますが、「最初のカンプの方が良かったんじゃない?」と言われることも多く、デザインに対する自分の考え方・取り組み方は間違っていなかったんだと感じることが多々ありました。それなら、「自分がデザインした方がいい」と思い、自分でデザインをやるのであれば、本格的に会社を作ってやろうと2007年に立ち上げたのが、ペンシルロケットです。
元々は、編集をされていたとの事ですが、編集の仕事を選んだのはどんな理由ですか?
昔からコンピューター、特にCG、コンピューターで絵を描くことが好きで、高校時代、『PIXEL』(図形処理情報センター)という学術的な月刊誌を読んでいました。30年以上前のことですから、CGはまだエンターテインメントではなく、研究の世界のものでした。一読者としてファンだったその雑誌の編集部に入ったことが始まりです。26歳の頃ですね。 一度、編集の仕事を辞めて、CD-ROMのコンテンツメーカーで広報の仕事をしていましたが、その後入った編集プロダクションが出版社に吸収されて、その出版社で編集の仕事をしていました。それが、先ほどのコンピューター雑誌の出版社で、出版社で得たエンターテインメント系のノウハウと、僕の持つコンピューターのスキルを合体させたものを作ろうと思って、コンピューター雑誌『Windows100%』や『iP!』を創刊し、この雑誌は、すごく売れました。その出版社には、12年くらい在籍していました。
そこから、独立しようと思ったのは、どんなきっかけですか?
会社というワクの中では、自分が「やれる・やりたい」と思ってもできないことがあり、その会社でやれることは、やり尽くしたと感じていました。もっといろいろなことをやりたいと思っていましたので、独立を考えました。
独立志向は以前からありましたか?
元々、独立の意欲は全くありませんでした。私は、絶対、会社員向きの人間だと思います(笑)。
軽やかな発想から生まれた社名やロゴ 実は、論理的で合理的。
「ペンシルロケット」という社名の由来を教えてください。
特に深い意味はないのですが、手を動かす仕事なので「描く・作る」「筆記具」のイメージはありましたね。勢いのある感じも出したくて「ペンシルロケット」を提案したところ、他の役員も「いいんじゃない?」と賛同してくれて、この名前に決まりました。 こんなに単純に決めていいのかな?とも思ったのですが、ドメインをシンプルにしたいと考えていたところ、「rocket.co.jp」が空いていたので、「これはいい!」と思って決めました。
その考え方は、コンピューターについての深い知識に繋がっていますね。 ロゴマークはポップなアメコミの雰囲気が目を引きますね。
出版社時代からご縁のあるイラストレーターの方に、この社名をテーマに何か描いてくださいとお願いしたところ、その場で、ボールペンでシャシャッと10分くらいで描いてくださったものがすごく気に入って、そのままロゴマークになりました。他にもいくつか描いてくださったたのですが、最初のものが一番良くって。まさに社名通りの絵を描いていただいたなあと思っています。
雑誌作りで培った売れるデザインのノウハウで クライアントの問題解決に応える
現在の事業内容について教えてください。
紙媒体のグラフィックデザインがメインです。商業出版物、フリーペーパー、会社案内、旅行のパンフレット、大学・専門学校や商業施設の広告、セールスプロモーションなどを手掛けています。ウェブグラフィックスは、紙媒体と共通のデザインを依頼されるケースで手掛けています。
いろいろなジャンルを手掛けていらっしゃいますね。
私は出版社時代から、実売で利益を上げる雑誌を作っていました。雑誌には、広告で売上を上げるものと、雑誌自体で売上を上げるものの2種類があります。実売で利益を上げるには雑誌を買ってもらわなくてはいけません。雑誌は表紙が店頭販促チラシなんですよね。つまり、毎月毎月、販促チラシを作ってきたことと同じなのです。そこで普通の販促チラシも上手く作れるのではと思い、販促チラシのお仕事を受けるようになりました。 私はかっこいいデザインをしたいという意識がなく「クライアントが求めるものを作ろう」という気持ちで取り組んでいます。いろいろなデザインを作ることができるというより、クライアントのニーズがさまざまなのでそれに応えていった結果、幅広いバリエーションができたのです。雑誌編集をしていた時代は、毎月売上データを見て、売れる・売れない理由を分析していました。その経験が活きていますね。
業務をスムーズに進める上で、どのようなことに取り組んでいますか?
弊社は、作業の効率化を考え、InDesignを使用しています。効率化や印刷所とのやり取りを考えると、InDesignが優れています。印刷所はデザインが得意ではありませんし、デザイン畑から来た人は、InDesignがあまり得意ではありません。InDesignを使用することで、無駄な作業がなく、早くて、正確です。一緒に仕事をしたクライアントからは評価されますが、説明だけではピンとこないクライアントもいます。一度お仕事をさせていただいたクライアントとは、ずっとご縁が続いています。
設立して良かったこと・苦労したことを教えてください。
良かったことは、自分がやりたいことを会社ではなく、社会に直接問うことができることです。 元々、発信したいという気持ちが強く、自分で本(『未経験者のためのデザイナー就活テキスト』アスペクト)を書いたこともあります。会社員では、なかなか難しかったと思います。いろいろなチャンネルを自分で考えて、自由にやれるようになったことが良かったなと思います。
人に喜んでもらえることが私の喜び 「おもてなし」の気持ちでするデザイン
会社として大切にしていることは何ですか?
クライアントは、世の中に商品やサービスの価値を提供するため私たちにお仕事を発注をしています。ですので、弊社がやるべきことはクライアントの商品やサービスの価値を理解すること、そしてそれを訴求するデザインを具体化することで、私たちに自我は必要ありません。これは、絶えずスタッフと共有していることで、これこそがクライアントから評価されている理由だと思います。
クライアントに対して大切にしていることは何ですか?
弊社はフットワークがいいと思います。それは、時間というクオリティで応えることを大切にしているからです。また、クライアントが求めているのは、ビジュアルだけではなく「問題解決」です。答えがデザインでない場合は、そうアドバイスします。デザインはあくまでも、クライアントの課題を解決する手段の一つですから。
今後手掛けたいこと、展望・夢などを教えてください。
「ペンシルロケット」としてのプロダクトを作りたいと思っています。メーカーになりたいという発想と近いかもしれません。やってみたいアイデアはいろいとありますが、印刷物の企画から入稿まで全部自分たちでできるので、企画を通す前にまず作ってみよう、と思っています。
一緒に働く人に対して、会社としてどのようなことを求めますか?
デザインの仕事は、想像するほど華やかではありません。デザイナー自身が脚光を浴びることはなく、きちんと裏方に徹して、人に喜んでもらうことで、自分たちが自己実現するという発想でないと、この仕事はできないと思います。つまり、「おもてなし」の感覚がすごく大事です。そういう感覚を持った人と仕事をしたいですね。「これを作ったらあの人が喜ぶぞ」という気持ちを持った人たちが、今のこの会社にはいます。
取材日:2016年3月11日 ライター:保坂久美
企業名 株式会社ペンシルロケット
- 代表者名(ふりがな):代表取締役 武井 正理(たけい まさよし)
- 設立年月: 2007年3月
- 資 本 金: 300万円
- 事業内容: 出版物およびWebのデザイン
- 所 在 地: 東京都渋谷区幡ヶ谷1-1-2 第五定石ビル8F
- URL: http://www.rocket.co.jp
- お問い合わせ先: 上記HPの「Contact お問い合わせ」より