ゲーム2017.05.17

経験と知恵に自信あり! 名古屋から世界へコンテンツを発信したい

名古屋
合同会社 サンダーボルトインタラクティブ 代表者 安田 武史 氏
日本独自の庶民レジャーとして、すっかり市民権を得ているパチンコ。遊技機(バチンコ台)には20年ほど前から液晶画面が搭載されハイテク化が進み、映像と音の演出でユーザーを楽しませています。流行の移り変わりが激しいこの業界で15年以上に渡って遊技機の企画やプロデュースに携わってきたのが、サンダーボルトインタラクティブ代表の安田武史(やすだ たけし)さんです。今回は名古屋中心部にあるオフィスで、同社の成り立ちや最近力を入れている新事業について話をうかがいました。

事業のベースは遊技機の企画プロデュース

まず最初に、御社のお仕事の内容を教えてください。

ベースになっているのは、遊技機の企画プロデュースです。一般の方には「パチンコ台」と言った方がわかりやすいですかね。その企画のアイデア出しから、企画書・仕様書の作成、液晶映像を完成させるまでの全工程を受け持ちます。弊社には企画と一部プログラマーしかいないので、協力関係にある他の会社にプログラムとCGの仕事を依頼します。その後、仕上がってきたデータを弊社がチェック検証して、最終的にクライアントであるメーカーに納品します。

名古屋周辺には、パチンコ関連のメーカーが多いですね。

名古屋はパチンコ発祥の地ですから。ただ弊社の取引先は、東京が多いです(笑)。というのは、もともと東京でこの業界の仕事をはじめたので、東京のメーカーの7割ぐらいとお付き合いがありました。今は東京だけでなく名古屋のメーカーともお仕事をさせていただいています。

東京に取引先が多いのに、あえて名古屋で開業した理由は?

東京だといろいろな意味で大勢の中に埋もれてしまうということと、僕自身が愛知県出身だということで中部地区から、新しいものを生み出したいという気持ちがあるからです。パチンコに限らず、名古屋から世界に新しいコンテンツを発信したいんです。

コンテンツという面で見ると、現在のパチンコは、CGあり、演出あり、音楽ありの、エンターテインメントマシンになってますね。

僕が業界に入った15年ぐらい前が、ちょうど技術的な革新期でした。演出もどんどん派手になりましたし、マンガやアニメ、タレントなどとタイアップした「版権もの」に人気が出て、パチンコ人口のすそ野も広がりました。そうした中で、自分もメーカーや仲間と一緒に新しい世界を開拓してきたつもりです。

尊敬する上司に諭されて酒場で号泣

パチンコの仕事をするようになったきっかけは何だったんですか?

僕はゲームの世界からこの業界に入ったんです。といっても、最初からゲーム業界にいたわけではありません。名古屋の映像専門学校に入学しましたが、僕自身はミュージシャンとして音楽の仕事に就きたいと思っていたんです。夢を追いながら、20代の頃はいろいろな仕事を経験しましたよ。塾の講師や、芸能事務所でマネージャーの見習い、冠婚葬祭の司会業とか。結局、音楽では食べて行けなかったわけですが……。

それがどうしてゲームの世界に?

偶然ネットで大手メーカーのプログラマーに出会い、ゲーム業界で働くことを薦められたんです。自己流でゲームの企画書を作っていくつかの会社に送り、そのうちの一社に採用されました。その時が29歳ですから、かなりの遅咲きですね。業界のことを何も知らず、使いっぱしりからのスタートです。辛くて何度も辞めたいと思いましたが、その時、飲みに誘ってくれた上司に諭されたんです。「お前はオタクじゃないのが取り柄なんだ。これからの業界はオタクだけじゃ生きていけない。いろいろなことが全部わかる人間が必要になる。だから3年は我慢しろ」と。

それは、いい上司と巡り会いましたね。

本当にそうです。酒を飲みながら号泣しました。この上司は、その後も僕にとっての師匠になります。そんなこんなで半年ぐらいたった頃、会社にパチンコのメーカーから企画の相談があったんです。これが僕とパチンコの出会いで、それからずっとパチンコです。

その後、上司の方とはどうなりましたか?

「3年我慢しろ」と言われたんですが、じつは3年経たずに会社が解散してしまいました。その後はそれぞれ別の会社に進みましたが、師匠はやはり僕の目標です。「師匠ならどう考えるか?」と思いながら、無我夢中で仕事をしていました。ところがある時、師匠から連絡があって久しぶりに飲むことになったんです。居酒屋で酒を酌み交わしながら、少し前に発売された遊技機について師匠に言われました。「あれはお前が作ったんだろう。お前は俺を越えたな」と。

尊敬する師匠に自分の力を認めてもらえたのですね。

そうなんです。それがちょうど、パチンコの仕事をはじめて3年たった頃でした。その時も、僕は師匠の前で号泣しました。

「死ぬ前に好きなことをやりたい」と会社設立を決意

会社設立までの経緯と、会社名の由来を教えてください。

会社を作ったきっかけは、勤めていた会社に突然解雇されたことです。これは会社側の誤解が原因だったのですが、それをいくら説明しても決定は覆りませんでした。僕にとっては、まさに青天の霹靂(へきれき)です。
英語で言えばサンダーボルトです。でもいきなり会社を作る気はなかったんです。再就職しようとして、内定をいただいた会社もありました。でもその時思ったんです。「自分もこの業界で10年以上働き、40歳を過ぎた。死ぬ前に好きなことをやろうじゃないか。」と。そう思い立ったが早いか、たった3日で会社を作りました。

こうと決めたら行動が素早いですね。

仕事はフットワークとスピード感が大事だと思っていますから(笑)。電光石火ですぐに動く。これもサンダーボルトという社名の由来のひとつです。他にもイーストウッドの『サンダーボルト』という映画にも影響されていますし、雷や稲妻はきれいだと思います。

広くてきれいなオフィスですが、現在、従業員は何人ぐらいなんでしょうか?

このオフィスには、昨年11月に越してきたばかりです。ここで働いているのは僕のほかに、プランナー、デザイナー、プログラマーなど7名。4年前に会社を立ち上げた時はまだオフィスは自宅で社員は居らず僕一人だけでしたから、ずいぶんと人数も増えました。

スタッフにはクリエイターとして育ってほしい

ホームページを拝見するとスマホゲームやVRの記事が多いですが、御社の中でこうした事業の位置づけはどうなっているのでしょうか?

パチンコの仕事はクライアントとの契約上、「我が社がこれを作った」とは絶対に言えないんです。ホームページでも紹介できません。でもゲームやVRは自社企画で自社開発した製品ですから、告知することができます。スタッフが子供から「お父さんは何の仕事してるの?」と言われた時に、子供をパチンコのホールに連れて行って遊技機を見せるわけにはいきません。でもスマホゲームなら、「これだよ」とその場で胸を張って見せられる。ゲームなどはまだ大きな収益に結びついていませんが、会社の新しい事業として今後も伸ばして行きたい分野です。

こうしたゲームは、スタッフの中からアイデア提案が出てくるのですか?

最初に出した「TRIANGULAR(トライアングラー)」は、僕自身がゲーム業界に入るきっかけになった企画が元になっています。一人でも遊べますが、チェスやオセロのように二人でプレーもできます。ルールは単純ですが、これは飲み屋で友達とやるとウケますよ。第2弾の「saicachi(サイカチ)」は女性スタッフによる企画で、日本では珍しかった数字を使ったパズルゲーム。最新作の「Ooga-chaca(ウガチャ)」はその発展進化形です。

会社の代表として、スタッフに求めているものは何ですか?

物怖じせずに、何でもやってみることですね。僕はスタッフに、ゲームでも、VRでも、映画でも、何でもいいから新しい企画を出せと言っています。時間もお金も限られるけど、ものを作って飯が食えるように、コンテンツを自分で立ち上げてみろと。そうしない限り、本当の経験や知恵は身に付きません。経験こそが財産です。スタッフにいろいろな経験を積ませてクリエイターとして育てて行くことも、プロデューサーとしての自分の役目だと思っています。

最後になりますが、今後の仕事について考えていることがあれば教えてください。

パチンコについて言えば、有名なキャラクターとタイアップした版権ものや、お客さんの射幸心をあおる過剰な演出は飽和状態です。今後はコストがかからないオリジナルコンテンツが求められ、そこから新しいトレンドが生まれると思っています。それと、やはりVRですね。VRには大きな可能性を感じています。映画、ゲーム、教育、観光プロモーションなど、いろいろな分野に応用できそうですし、この技術を使って海外市場でも勝負できると思います。今後は欧米よりもアジアです。VRには大きなメーカーも力を入れていますが、自分たちにはそれに負けない経験と知恵があると思っています。

取材日: 2017年4月25日 ライター: 服部弘一郎

合同会社 サンダーボルトインタラクティブ

  • 代表者名: 代表者 安田 武史(やすだ たけし)
  • 設立年月: 2013年6月
  • 事業内容: プロデュース、制作ディレクション、企画・仕様書作成、映像制作、遊技機、ゲーム、VR、イベント、飲食店の企画プロデュース
  • 所 在 地: 〒465-0003 愛知県名古屋市中区錦1-7-26 錦MJビル8F
  • U R L: http://thunderbolt-interactive.net/
  • お問い合わせ先: TEL) 052-212-8809 FAX) 052-212-8829 E-mail)info@thunderbolt-i.jp

TAGS of TOPICS

続きを読む
TOP