映像×カフェ×映画 縁を生かして可能性を広げていく
- 福岡
- 有限会社アンジェリカ 代表取締役 吉屋貴志氏
人との縁がつながり、飲食業から映像の世界へ
御社は1999年に東京で設立され、2016年に福岡に拠点を移したそうですね。吉屋さんは、東京からいらっしゃったのですか?
いえ、私は昨年福岡でこの会社を引き継いだばかりです。
私は鹿児島出身で、将来は飲食業をやってみたいと思い、地元の大学で経営を学びました。在学中に飲食店でアルバイトをして、調理師免許も取得。卒業後も地元の飲食店で働いていたのですが、福岡から出張の際に良くいらっしゃる常連のお客様といろいろお話するうちに「一度福岡に来てみたら」と言われて、軽い気持ちで休日に遊びに行きました。そこで老舗の居酒屋を紹介してもらい、福岡に引っ越して転職。しばらく料理と接客の両方を担当していました。
今度はそこに来られたお客さんから、「会社にお茶でも飲みにおいで」と声をかけられ、会社を訪問。その方は映像プロデューサーで、一緒に働かないかと誘われて、その会社に入りました。
映像の世界に興味があったのですか?
少し経験があったんです。鹿児島で働いていたときに、映像関係の方と知り合いになり、一緒にご飯やライブに連れて行ってもらったり、たまに撮影の手伝いもしていたので。いろんな経験をさせてもらい、ローカルのテレビCMに出演して、ギター片手に自作の歌を歌ったこともあるんですよ(笑)。それで、映像の仕事も面白いなと思っていたため、25歳で福岡の映像会社の正社員になりました。
大手企業のCMや海外を紹介するTV番組などを制作
その会社は、どんなお仕事をされていたのでしょう?
そこは映像制作会社で、プロデューサーのほか、ヘアメイク、スタイリストなどが所属していました。私は声をかけてもらったプロデューサーのもとで、CMやテレビショッピングのアシスタントプロデューサーとして経験を積み、プロデューサーになりました。企画を立てて予算を組み、キャスティングして、自らディレクションや制作をすることもありました。
映像制作の面白さはどんなところでしょう?
いろいろなアイデアを出し、毎日違うことができるクリエイティブな仕事ですし、作品が完成したときの達成感や喜びも大きい。とてもやりがいのある仕事だと思っています。
そこから独立されたのですか?
はい、もともと30歳になったら独立したいと考えていたので、2011年に30歳でフリーランスとして活動を始めました。屋号は「High Five」、ハイタッチという意味です。福岡を拠点として、映像コンテンツの企画から制作をメインに、Webサイトや広告の企画・プロデュースなどもしていました。行政をはじめ、新聞社、航空、鉄道、メーカーなど幅広いクライアントさんの作品を担当させてもらい、海外を紹介するようなTV番組やCMも多かったですね。
オフィスの入口にカフェを開き、地域とつながる
今の会社アンジェリカとはどうつながったのでしょう?
アンジェリカは、もともと東京で映画製作を⼿がける会社でした。さらに、アート系作品や世界のアニメーションなどを上映するシネマ・アンジェリカという映画館も経営していました。 元のオーナーが地元の福岡に戻り、知人から紹介を受けた私がアンジェリカを引き継ぐことになりました。
なるほど。またしても人とのご縁から、新しい流れが始まったのですね。
はい、ちょうど会社の法人化を考えていたところでしたし、何より元のオーナーの思いに心打たれたので。今、実際に一緒に福岡発の映画を製作しようと話を進めているところです。 会社の事業内容としては、映像の企画からプロデュース、制作などをメインとしていて、フリーランスでやっていたことと変わっていません。
オフィスの入口にカフェがありますね。
このオフィスは2016年9月にオープンしました。以前、小山薫堂さんのオフィスの入口にはパン屋があると聞き、その影響からカフェを作りました。オフィスの入口に店があると、会社の受付がわりになり、そこで荷物の受け渡しもできる。とても便利なんですよ。 ここで出すコーヒーの豆は、以前、撮影で訪れたサンフランシスコのコーヒー焙煎所のものなのですが、縁を感じて、取引させていただくことにしました。
商店街にあって、雰囲気のいいカフェ兼オフィスですね。
ありがとうございます。シネマ・アンジェリカの想いを引き継ぎ、このカフェでは2階の大きな白壁を使って、映画を上映するイベントもやっています。昨年はクリスマス前、商店街で子ども向けに売っていたお菓子の詰め合わせに映画のチケットを入れて、来てくれた子どもたちにアニメ映画作品の上映会をしました。
商店街の活動には積極的に参加するようにしています。カフェは今、近くにできたホステルの朝食会場になっています。外国人客が多いので和食を出していて、その中の4つの小鉢には商店街の漬物や惣菜などを使っています。
縁を大切にして生かすことで、チャンスが広がっていく
カフェという場ができたことで、活動の幅が広がりそうですね。今後の展望をお聞かせください。
今はWebでもスマホでも映像がどんどん利用されるようになりました。今、当社のクリエイターは4人いますが、これからも新しい流れに乗り、いい映像を提供していきたいです。 一方で、昔、映画館で作品を観ていたワクワク感も大切にしたい。上映会や映画の製作などを通して、アナログも発信できる会社でありたいと考えています。それに、せっかくカフェという場があるので、ここで人がつながっていくといいなと思います。
吉屋さんはもともとクリエイターを目指していたわけではないのに、いつの間にか映像の仕事をされるようになったとのことですが、クリエイターに向けて、アドバイスをいただけますか。
私が大学生の頃に読んだ本に「縁を生かす」という言葉がありました。「縁があるのに気付かない人がいる、縁に気付いているのに生かせない人がいる…」というような内容で、なるほどと思い、それから縁を大切に生かすように心がけています。そのためには、まずはあいさつが基本ですね。
作品作りにおいては、自分の作品にこだわりすぎないようにしています。あくまでもビジネスとして、相手のことを考え、優しさを持って作るようにとスタッフにも言っています。例えば、どんなにかっこよくできても、伝わらなくては意味がない。作品は何かを伝えるためのツールですから。 あとは、デスクに長く座らないほうがいい。外に出て何気ないものに目を向けたり、旅をしたり、くだらない遊びをしたりすることが作品作りの役に立つと思いますよ。
取材日: 2017年5月25日 ライター:佐々木恵美
有限会社アンジェリカ
- 代表者名:代表取締役 吉屋貴志(よしやたかし)
- 設立年月:1999年6月
- 事業内容:映像コンテンツ(CM、TV番組、企業VPなど)の企画・制作、印刷物の企画・制作、
Webサイトの企画・デザイン・運営サポート、映画の企画・製作、カフェ経営 - 所在地:〒812-0017 福岡市博多区美野島2丁目19番4号
- TEL:092-516-5311
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