時の流れを伴走者に、考えながら走る
- 仙台
- オーサムクリエイト株式会社 代表取締役 庄司みゆき氏
仕事で行なったことには何も無駄がない
これまでのキャリアについてお伺いしたいのですが。
就職したシステム会社は、メーカーでもありシステム構築を受注するなど、幅の広い業態でした。本社は東京ですが、仙台にもPR、マーケティングを行う支社があったため、地元で働くことになりました。「人を育てる」という体質の会社で、プロジェクトが立ち上がるときには、全員が事業主という意識をもって臨むという感覚と状態が求められました。
プロジェクトを任されるようになってからは、プロのコンサルタントと共に、プロジェクト毎に事業計画書を作成することから始まり、コスト管理やスケジューリングも自分で進めるので、プロジェクトマネジメントが自然に身につくことになりました。Windowsが世の中に登場し、Webもいまほど複雑ではなかった時期で、ホームページのデザインや制作に必要な技術もどんどん新しくなり、学びながら実践を繰り返し、振り返るとスキルが身についていたというラッキーな環境に身を置くことができました。
いつごろ起業したいと考えるようになられたのでしょうか。
入社当時は女性が起業する、あるいはフリーランスで働くなど方法さえ考えられないような時代でしたが「いつか会社をつくりたい」ということを周囲に宣言してしまう、少し異色な存在だったかも。きっとまわりは苦笑いしていたと思います。でも、起業への思いはずっと抱いていました。結婚・出産を機に一度退職して、キャリアは途切れたのですが、そのあと復帰して再度認めてもらえるようになるまで、夢中で仕事に専念しました。そしてこの先どうするのかと改めて考える時期を迎え、会社のなかでポジションを上げていくのか、フリーランスでやっていくのか、?と考えるようになりました。
では、株式会社を設立されたきっかけは?
会社でプロジェクトを何本もやり遂げながら、「これは独立したとき経験値になる」と確信し、仕事を行っていました。起業して仕事をするために必要なノウハウは身についているはず、だったら自分で道を作ろうと、退職してフリーランスとして働きはじめました。このとき、自分で描いた事業モデルに関して、第三者の評価はどうなのか、力を試してみたかったこともあり、フジサンケイ・大和証券グループ Presents Woman Power Project 2007「女性起業家ビジネスプランコンテスト」に応募してみたんです。予選審査から、県大会、東北大会、全国大会と勝ち進み、秀作賞を受賞し、自分の進めようとしている方向や内容はこれでよいのだと自信がつきました。その際の賞金を元手に事務所を開設し、今後さまざまな取引を行ううえで、与信上必要なことからも株式会社化することにしました。
お客様の「こうしたい」を掘り出すのが仕事
現在の事業内容は?
Webメディアの立ち上げ、展示会や商品開発等、プランニング・プロデュース・ディレクションを行っています。CI(コーポレート・アイデンティティ)やブランディング構築も、企画から制作まで一環して行います。また、セミナーの企画運営をサポートする事業もあります。
クライアントに徹底して寄り添って仕事をすると伺いましたが、具体的にはどのようなことでしょう?
仕事を受注するきっかけは「ちょっと相談があるんだけど」から始まることが多いです。当初はホームページの刷新というご相談で、伺ってみると店舗の改築に合わせたいからという話が出て、さらにお聞きしていくと、ターゲットを若い世代の方にシフトしたいという狙いがあるということがわかりました。
他にもサービス業のクライアントであれば、それを念頭にたとえばメニューの内容などについてもお客様と一緒に考えていくこともあります。インスタ映えではないですが、味の質も伝わるような絵にするために、店主様以外にも料理長と作戦会議が必要だったり。新たなロゴのご提案から派生して、店舗壁の色味についてアドバイスしたり、結局ここからここまでと決められないんですね。
事業の幅が広くて大変ではありませんか?
大変ですが、お客様のためにできることをしっかり行いたいです。コスト面は管理したうえで、ですけれど。「ちょっと相談いい?」と、誰に言ったらいいのかが分からないというお客様の声を聴かせていただくことが私の仕事だと思います。そのうえでプロジェクトを構築し、必要な人材をはじめマネジメントするのが、オーサムクリエイトの仕事といえるかなと思っています。
awesome! creators shop(http://asm-shop.com/)についてお聞かせください
これは女性起業家ビジネスプランコンテストで賞をいただいた、アーティストの作品をポスターとして販売する事業です。ショップサイトでお好みの作品とサイズを選んでご注文いただき、1週間前後、お客様のお手元にポスターをお届けするという仕組みです。現在、500点以上の作品を展示させていただいております。
立ち上げ当時はグループ展を東京・大阪で企画開催したり、実際に数多くのアーティストたちとお会いすることを心掛けておりました。より多様な作品をお客様にご提案し続けるためには、アーティストとawesome! creators shopが良い関係を築き、継続していくことが大切だと考えてきたためです。今後もその考えのもと、事業をさらに拡大していきたいと思っています。
基点は仙台。それ以外は境界ナシ
地元での企業活動に対する想いとは?
デザイン事業のほうは、地域性を理解していないとご提案できない部分がありますので、地元での人脈とフットワークを大切にしています。お客様の考えやお気持ちを形にして、喜んでいただく、そして集客が増えるなどの結果につながれば、地元に貢献することに繋がると思っています。「ちょっと相談いい?」と言ってくださるお客様に応え続けること、近しい関係で一緒に頑張る。これがオーサムクリエイトの存在意義だと思っています。
一方でawesome! creators shopでポスターを買ってくださるお客様は、地域性とは全く関係がありません。パソコンに向かっているときは、地域を意識している人は少なく、境界線のない世界観の中に自分が存在しているような感じなのかなと。私自身もそれを踏まえて、事業ごとに、リアルとバーチャル、A面とB面というようにバランスよく意識を切り替えています。
地域の境界線を超えた活動に対して
一般社団法人Evolve Art & Design Japan代表理事として、アートプロジェクトの活動をされていますが、きっかけは?
きっかけは、震災で実家が流されてしまった時、アーティストたちから絵を売って役立ててほしいというお申し出を頂いたことでした。何か役に立ちたいというその気持ちが本当に嬉しかった。ならば、参加する人も観る人も楽しめて、アーティストにとってもリターンがある仕組みを作ろうと思ったのが、MONSTER Exhibition(http://monsterex.info/
)です。MONSTER(怪獣)をテーマとした作品を審査で選び、展示する企画展です。どうせなら大きくやりたいと、日本で人が一番集まる渋谷と、アートのメッカNYでやろうと1回目から風呂敷を広げてしまいました。5年間続けて、2万7000人動員することができました。
モンスターは、何もかも飲み込んでしまった津波のメタファーですが、そこは大きく主張せず、このプロジェクトに興味を持った人が「あ」って思ってくれるだけでいいと思っています。形骸化させないためのキーワードなんです。
時流に沿って柔軟に変化させるのがオーサムクリエイト流
会社の将来はどのようにお考えですか?
私にとってオーサムクリエイトとアートプロジェクト活動は大きな柱です。内容が重なっている部分があるのですが、営利目的と非営利のため共存は難しく、会社と社団法人というように、分けなくてはいけないジレンマがあります。各事業に関しても同じ感覚で、事業単位で将来を見て、市場のニーズに合わせて拡大・縮小など、考えていこうと思っています。たとえばプロジェクトを受注したときも、案件ごとに必要な人材やスキルが違うことから、その時に合わせ、質の高いアウトプットを引き出していくのが私の役割。会社の運営についても、柔軟に流れに逆らわず進めていくことが、この時代には合っているのではないかと思っています。
庄司さんが一緒に仕事をしたいと思うスタッフ像は?
これまで、いくつもプロジェクトチームや人を見てきましたが、結局思うのは、どのような場面でも、土壇場になっても投げ出さず、誠実に仕事をする人が一番です。当たり前のことですが、これができる方とは、また別の仕事もしたいなと思います。
取材日:2017年12月20日 ライター:桐生由規
オーサムクリエイト株式会社
- 代表者名:代表取締役 庄司みゆき
- 創立年月:2009年11月
- 資本金:100万円
- 事業内容:Webデザイン/制作、プロダクト商品企画/販売、
店舗及び室内空間デザイン企画、イベント企画/制作 - 所在地:東京Office 〒107-0062 東京都港区南青山1-23-13-201
仙台Office 〒980-0021 仙台市青葉区中央2-1-5 AOBA21 5F - TEL:022-200-2676
- URL:http://www.awesome-create.jp/