最先端のVR技術を突破口に北海道から新しい風を吹かせたい

札幌
合同会社 風兎(ふうと)design lab 代表/デザイナー 鈴木 政博 氏
主従にとらわれない新しい働き方を提供していきたい。北海道在住のクリエイターが集い、昨年スタートアップした合同会社風兎(ふうと)代表/デザイナー鈴木政博(すずきまさひろ)さん。現在同社では、最先端のVR映像デザイン・CG映像制作、2D、3D、UIを用いたゲームキャラクターデザイン等、多岐にわたるデザインを受注制作しています。鈴木さんはデザイナーとしてどのようにキャリアを積まれたのか、起業に至るまでの経緯、また今注目される最新VR(バーチャルリアリティ)の未来についてもお話を伺いました。

声が掛かればいつでも集まる少数精鋭クリエイター集団

鈴木さんご自身のキャリア、ご経歴について教えてください。

私は30代前半までまったく別の職業に従事していました。学校卒業後、家業の飲食業を継ぎましたが経営者である父が倒れたのを機に、借金返済もありトラック運転手に転職しました。その業務中の、待ち時間が長かったんですよ。長い待ち時間を活用して「何かアルバイトができないか。」と考え、元々好きだったイラストを描くことをバイトにしました。その後デザイン事務所で正式にアルバイトを始め、借金返済のメドがついたことをキッカケにこの業界に入ることに決めたんです。アルバイトがデザイナーとしての第一歩でした。デザインを学ぶ為の専門学校などは特に出ていないです。デザインの基礎は図書館で勉強したり。ほとんど実務からスキルを身に着けていった感じです。

現在代表を務める“風兎”立ち上げの経緯をお伺いできますか?

前職はゲームソフト会社ハドソンに在籍していました。
元々フリーのデザイナーとして独立したいという想いはありましたが、会社設立までは考えていませんでした。前会社の実質的な解散のタイミングで当時一緒に働いていた仲間と共に“風兎"を立ち上げることになりました。デザイナーやプログラマー、漫画を描いている人、音楽を作っている人、幅広いジャンルのクリエイターが集まり、今の“風兎"が成り立っています。

社名である「風兎」の由来とは。

会社というよりも、北海道から新しい商品やサービス、コンテンツを発信し風を起こしたい。そんな志をもったプロフェッショナルの同志達です。社名の「風兎」は新しい風を起こしたいという願いを込め“風”、軽やかな躍動感、疾風感をイメージさせる“兎"の文字を付けました。

立ち上げ当時から現在に至るまで苦労されたことはありますか?

「風兎」は立ち上げからまだ一年も経過していないんです。ようやく軌道に乗り始めたところですかね。とにかく資金繰りには苦労しました。スタートアップの見通しが甘かったと反省しています。開業資金の準備も特にしていなかったですし、会社としての実績がないので、初めて受注する仕事はトライアウトを兼ねたものが多かったり。納品から入金までの時間が長かったり。キャッシュフローがうまくいきませんでした。今後の課題でもありますね。

VRの領域はノウハウや制作モデルがまだ確立されていない。 だからこそビジネスチャンスがある。

ゴッホの絵の世界を360度VRで体験するコンテンツ。 「黄色い家」

事業内容について教えてください。

弊社では、デザイン全般を手掛けています。ゲームデザインやプロダクトデザイン、おもちゃの筐体(きょうたい)デザイン、スマホアプリデザイン・企画・開発、ロゴやキャラクター、各種パッケージなど多岐にわたります。

現在特に注力されていることはなんでしょう。

一番力を入れているのは、VRのデザインですね。立ち上げ当時から制作依頼が多いです。デザイン業のジャンルは広いですがVRのジャンルは比較的新しく、まだまだ専門的にやっているところが少ないんです。未開拓の部分もたくさんあって。最近ですと、ARとVRが合体したMR制作の依頼も増えています。従来の2D、3Dデザインのように開拓し尽くされた畑ではないということ、ですから競合が少ないというメリットがあります。
今後もVRのデザインには注力していきたいと思っています。

小規模のデザイン会社だから大手企業がマネできない新しい挑戦ができる

ファンゴッホの寝室

鈴木さんはなぜVRデザインに興味を持たれたのですか?

私の母親は遠く離れた岡山にいます。体も不自由なので北海道で一緒に住もうと言っても慣れ親しんだ場所を離れるのは嫌だというので現在、別々に暮らしています。
それで北海道と岡山という離れた場所でも、お互いを近くに感じられたり、一緒に北海道を旅行している気分を気軽に味わってもらえる方法は無いものか。そんな些細な事がきっかけでした。
未来はわかりませんが、VR(仮想現実)と実社会が密に結びついていくことは間違いないでしょう。“仮想現実が生活の一部"となる時代が来る。そう思います。
私の場合、グラフィックやプロダクトデザイン、3Dデザインをやってきた延長線上にVRデザインがありました。

御社の強みとは。

まだ小さい規模のデザイン会社なので、新しいコトを自由に取り入れることができ、小回りや融通がききやすい。ゲームデザインのみならず、地元に密着した多岐にわたるデザインをトータルで行うことができる点です。
会社の規模が大きくなるにつれ、さまざまな制約が出てきますが、小さくて小回りが利くからこそ、新しいモノ、コトに積極的にトライできる。大金を掛けず短期間でVR映像を制作することも可能です。小さなデザインや映像制作の依頼を受注できるのも弊社の強みです。

地元北海道ゲーム業界の特徴。

北海道のゲームデザイン会社、その他のデザイン会社も含め業界全体、本州の企業から受託を受けるかたちで成り立っています。少し前までは、中国やシンガポールなど賃金や制作費用が安いアジア圏に仕事が流れていました。ですがアニメやゲームなど日本カルチャーの色彩、細かなニュアンスは海外の人には少々伝わりづらい現実があったようです。やはり日本カルチャーを作り出す為には日本人ならではの感覚、価値観、共有感が必要であると、近年海外へ流出していた仕事が回帰しているんです。以前は北海道を日本のシリコンバレーになんて話もありました。北海道人の真面目な気質や首都圏に比べ少々物価、賃金が安いということも相乗し、北海道在住のデザイン、Web関係のクリエイターに仕事の発注が増えています。弊社はいいタイミングで起業したと思っています。

他社との差別化を図るためどんなことをされていますか。

国内ではまだ流通が少ない、導入している企業が少ないソフトや技術を積極的に使うようにしています。業界紙や海外の専門Webページなど新しい情報のチェックは欠かせません。デザインソフトは体験版があることも多いので、すぐ試すようにしています。 最新の技術を学ぶことで業務効率が促進され、コストを下げることができます。

人それぞれ得意なこと・不得意なこと、長所や短所が違って当たり前。チームで綺麗な円グラフを目指せばいい。

事業拡大のため求める人材とは。

やる気があって会社を一緒に盛り上げていってくれる人ですかね。
クリエイターという職人達だけの会社だと視野が狭くなってしまう不安もなくありません。開拓精神があるベンチャー思考の人が入ってくれたらうれしいです。もちろん技術的に特化した人材も求めています。絶えず独自の技術や視野を活かしお客様が何を望んでいるか、何をすれば喜ばれるかを常に考え実行に移せる人が理想的です。

今後の展望についてお聞かせください。どのような会社作りをされたいですか。

まず今後は受託業務から、自分たちで新しいモノを開発していく業務へと変更していかなければならないと思っています。そうやって仕事を生み出し、働く意欲はあるけれども働くところがないという人達の受け皿になれるような会社作りをしていきたいです。
またVRはUIが確定されていません。操作をもっと簡単に、使いやすさを重視した何かを発信したいと考えています。

最後になりましたが、鈴木さんご自身はどんなVRが欲しいですか。

自由に旅した気持ちになれるVRが欲しいです。
身体が不自由だったり、北海道に来たくても来られない人がリアルに疑似体験できるような。自治体の人達と協力して北海道の魅力を伝えられるVRを今後作れたらいいなと思います。

取材日:2017年12月25日 ライター:橋本 香菜

合同会社 風兎(ふうと) design lab

  • 代表者名:鈴木 政博(すずき まさひろ)
  • 設立年月日:2017年5月
  • 資本金:60万円
  • 事業内容:
    VR映像デザイン、CG映像制作、スマホアプリ企画・開発、プログラミング(ゲーム系、システム系)、ゲームデザイン…2D/3D/UI、プロダクトデザイン…意匠デザインおもちゃ、プロダクトデザイン他、スマートフォンアプリデザイン、各種パッケージ、冊子編集デザイン、ロゴ、キャラクターデザイン、デジタルサイネージ、プロジェクションマッピング
  • 所在地:〒003-0021 北海道札幌市白石区東札幌5条1丁目1-1 札幌市産業復興センター SPR C-8
  • URL:http://futo-lab.com/
  • お問合せ先: 080-1920-4022
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