最先端のアイデアで儲かる「看板」を追求する
- 大阪
-
有限会社シーアンドエーデザイン
代表取締役 上田厚美さん
専務取締役 上田智加良さん
会社を支える「三本柱」
会社を開設するまでの経緯を教えてください。
智加良さん:元を辿れば、私が店舗の看板や、百貨店の催事で使うPOP広告などを制作する大阪市内の会社に勤めていたことが始まりです。打ち合わせから制作の手配、現場での設置・施工までを担当していました。学校でデザインの勉強をしたわけではありませんが、仕事をする中でレイアウトなどは習得しました。独立が当たり前の業種ですから、勤務先の社長の理解を得て、収入をさらに上げるために開業に踏み切りました。法人化は1999年7月ですが、その2、3年前から昭和町(大阪市阿倍野区)のビルに事務所を借りて仕事を始めました。サラリーマン時代の最後の方は自分自身で受注した案件と勤務先の業務が重なっていた時期もあります。
厚美さん:私はデザインの世界とは畑違いの経験しかありません。医療機器販売の会社で納入先の病院に機械を設置して使い方を説明したり、大手電鉄系の不動産会社で経理事務や庶務などをしたりしていました。ひとりでお店を経営することを考えないことはありませんでしたが、主人と会社を経営することは私の人生設計の中では想定外でした。でも主人から「失敗したら、どんな仕事をしてでも、がんばって稼ぐから」と言われ、法人化する前から代表として経理や庶務などを担当して経営を管理してきました。
具体的にはどのようなお仕事をされているのですか?
智加良さん:2016年4月に、日本一高いビル「あべのハルカス」の“麓(ふもと)”のような現在の事務所に移転してきましたが、そのハルカスの東隣りにある「新宿ごちそうビル」という約20軒の飲食店が入った飲食ビルでの販促物や店舗の看板、リーフレットの制作などをしています。「新宿ごちそうビル」は、今年30周年を迎えた施設で、昨年3月に亡くなったグラフィックデザイナーの長友啓典さんがアートディレクターをつとめていました。独立当初から「ごちそうビル」の仕事をさせてもらっていて、そこでの「飲食」系をはじめ、「アパレル」と「不動産」に関する仕事が当社の強みとなり、今では「飲食」「アパレル」「不動産」での分野のお仕事が当社の“三本柱"となってます。その他には観光地の案内板やバス停のポールなども手がけています。
厚美さん:その三本柱の受注がすべて好調という時期はなくて、どれかが減ると、どれかが増えるという循環です。現在、売り上げベースで見ると、東京からの仕事が6割ほどです。東京にも拠点を作って営業効率を高めて3分野すべてが安定して好調な状態を作りたいとも考えて何度も挑戦しようとしたのですが、最終的に踏み込むタイミングがつかめていません。ただ逆に3つ全部が好調になって会社の規模が急激に大きくならず、常に何かの仕事をいただけるという着実な流れがあったので、栄枯盛衰が激しい、この業界で会社を続けてこられたのかもしれません。それは主人の人柄で築き上げた人脈や、ご縁の力が大きいですね。
マンネリを打破するために
お仕事をするなかで、最も気配りをされているのはどういうことでしょうか?
智加良さん:お客さまの話をしっかり聞いて「思い」を最適な形にすることです。とはいえ、それは我々の使命として当然のことです。はっきりと言葉にされなくても、お客さまの根本にあるのはやはり「儲(もう)けたい」ということのはずです。その気持ちに応えた結果を出すことを常に念頭に置いています。そこで必要になってくるのが当社ならではの差別化で、言い換えれば、マンネリ化させない、ということです。クライントが発注先を変えるのは現状の販促手段がマンネリ化して売り上げが伸び悩んでいる時ですから、当社にとっては、クライアントをつなぎとめるためのポイントです。
マンネリ打破のために工夫をされていることはありますか?
智加良さん:寝られないくらい没頭して考えることももちろんですが、気になる美術展などがあれば、開催地が東京でも出かけて行きます。会場では、作品よりも、装飾やライティングなどをしっかりと見ます。時代は変わっていくので常に最先端の方法や、今どのようなものが世間に受け入れられているのか、といった情報は常に更新することを心がけています。そのうえで、お客さまに提案するときには「思い」の先にあるものを的確に成果物として納品するために、できる限り具体的な形でアイデアを示すようにしています。
智加良さん:しっかりと、お話を聞くことを最重視していますが、その前に、お客さまのニーズがある程度把握できていれば、お求めになっているものをできるだけ形にして、そこから依頼の背景にある本当の「思い」に迫っていくようにしています。当社にお声がけいただくときは、お客さまの「思い」は、まだイメージの前段階という状態が少なくありません。ですから、印刷物なら素材の手ざわりまでもわかるレベルまで形にして提案し、納得していただきながら本当に満足していただけるものに仕上げていきます。販促物や看板でしたら設置予定場所をロケハンするのはもちろんです。印刷物の素材は「企業秘密」と表現しても恥ずかしくないほどに他社にはない斬新なものを探してストックしています。
ご苦労されていることはありますか?
智加良さん:私自身はデザインを学校で学んだというキャリアはありません。でも実際の仕事で経験を積み重ね、「自分はクリエイターだ」という意識も自負もあります。それだけに夜も寝られないくらいの思いで生み出したアイデアを、真似されることがつらいですね。ですから常に、他社から模倣されないもの、できないものを追求していますが、それがものすごく難しい。ネットの普及で情報収集が簡単になって、成果物が世に出てしまえば、それを分析して再現するための材料や方法はすぐに見つけられますからアイデアの旬の時期も短くなっているのです。
未知の分野を開拓するために
貴社の強みを教えてください。
智加良さん:これまでに培った経験と技術による色の選択と再現力はどこにも負けない自信があります。常に、お客さまには具体的な提案をすることとも重なりますが、印刷用の大型出力機は大阪では同業他社より、かなり早くから導入して、その後も更新してますし、さまざまな素材もストックしていますからサンプルも迅速に制作できるのです。
現在、目標とされていることは?
厚美さん:継続的にいただいているお仕事からの収益を糧(かて)にして若いスタッフにこれまでの当社にとっては未知の分野を開拓してもらうことです。それから、あべのハルカスを中心にして、この事務所の界わいの天王寺・阿倍野地区は外国人観光客がすごく増えています。このチャンスをビジネスにつなげたいと、外国人をターゲットにした商品を開発し、ECサイトで販売・PRする準備をしています。当社はこれまで個別のお客さまのご要望に合わせて商品を制作するというBtoBスタイルでしたが、ECサイトを開設し市場に向けて商品を提案・提供していくBtoCに挑戦していく方針です。
智加良さん:社名の「シーアンドエー」は開業当初に家内と私のイニシャルの「C」と「A」にちなんで“ノリ"でつけてしまいましたので、開設するECサイトはもう少し考えたタイトルにします(笑)。長期的には、お客さまの見えない「思い」を最適な形にして本当に満足していただける商品を提供するという姿勢は継続します。とはいえ、今は既存マスメディアやSNSなどのネット上のサービス、印刷物が組み合わさって広告効果が発揮される時代です。そのすべての媒体で使えるアイデアを形にして提供しているのが当社ですので、その特徴を生かして情報流通の変化に対応していくのが必須の使命だと考えています。
緒に働くスタッフとして、どのような人材を期待しておられますか?
智加良さん:デザインができて、ファッションセンスがあって明るい……。そんな方がいいのですが、もっと大切なのは、もちろんそこじゃないと思っています。気働きができて、力を出し惜しみしない方がいいですね。現在、当社のスタッフは私たち以外に2名のスタッフがおります。多いときには8人いましたが、この業界は独立していくのが当たり前ですし、会社間の分業化も進んで、現在の態勢になっており、人材の流動性が高いのが特徴です。実際、独立して当社の得意分野に仕事を依頼してくれる元社員も少なくなくて、助かっています。ぜひ当社で自身のバージョンアップをして価値を高めてほしいのです。だからこそ気働きや出し惜しみをしないフットワークの軽さに注目するわけです。
厚美さん:そうなんですよ。私は現在、経営面を担当していますが、会社員時代に身につけた、お茶の出し方から予算編成まで、今の役に立たなかったものは何ひとつありません。ですから、いろいろなことを吸収したいという意欲を重視しますね。
取材日:2018年2月26日 ライター:岡崎秀俊
有限会社シーアンドエーデザイン
- 代表者名:代表取締役 上田厚美(うえだ あつみ)
- 設立年月:1999年7月
- 資本金:300万円
- 事業内容:広告サインやイベント用看板、販促グッズ、などの企画・デザイン・制作。
- 所在地:〒545-0051 大阪市阿倍野区旭町1-2-7 あべのメディックス310
- URL:http://www.ca-d.net/
- 問い合わせ:TEL)TEL)06-6648-0388