プロダクト2018.06.13

“考えるオフィス”から提案型デザインを発信する名古屋デザイン界のトップランナー

名古屋
株式会社 たきC1 代表取締役 大森浩司氏
約30名のデザインスタッフにコピーライター、営業プロデューサーなど総勢40名のスタッフを擁し、大手広告代理店関連の仕事を中心に幅広いジャンルの広告作品を世に送り出している名古屋屈指のデザイン会社「たきC1」。昨年5月、オフィスを名古屋駅前に移転。“考えるオフィス"というコンセプトで設計された空間の随所でスタッフがテーブルを囲み、アイデアをカタチにする作業に没頭している。広告業界を取り巻く時代の変化を受けてクライアントがより有効な販促メディアを模索する中、デザイン会社に求められる役割は多様化している。名古屋デザイン業界のトップランナーである「たきC1」はどこに狙いを定め、さらなる成長を目指していくのか。大森浩司社長にお話を伺った。

アイデアを広げる場所から頭を休める場所まで揃った“考えるオフィス"

昨年5月に名古屋駅前に移転したオフィスは、アイデアが生まれる“考えるオフィス"として注目されていますが、どのような空間づくりに取り組んだのでしょうか?

デザイン会社はクリエイティブな制作物を生み出すのが一番大切な仕事です。そのためには“考える"という作業が大切になります。スタッフが顔を揃えてアイデアを出し合えるミーティングスペースを何箇所も設け、さらに一人で集中してアイデアを考えるスペースや、ゆっくりと頭を休められる休憩スペースも確保しました。

たしかに、ミーティングルーム以外にも打ち合わせができる場所が色々ありますね。

ライブラリと一体化したカフェ空間のようなスペースや窓際のファミレス風のミーティングテーブル、円形テーブルを囲むブースなど、多様なミーティングスペースを設けています。資料を広げながら話せるスペースや、少人数での詳細な打ち合わせなど、それぞれの場所を使い分けながら仕事を進められるようにしているんです。

ミーティングルームには壁一面の大きなホワイトボードがありましたね。

大勢で集まってブレスト的に活発に意見を出し合いたいときはこのホワイトボードが活躍します。進行役がさまざまな意見をボード上に“散らかしたり"“まとめたり"しながら、意見を集約していきます。

一口にミーティングと言っても色々な形がありますし、ミーティングの目的によってそれぞれの場所を使い分けているんですね。そうやって頭を使うだけでなく、頭を休める場所も設けているんですよね。

窓際の一角が“リラックスルーム"になっていて、頭を休められるようになっています。仕事のペースに合わせて休憩中に食事を取るのも良し、時間に余裕があれば横になって寝ていてもいいんです。ここで過ごすすべての時間がクリエイティブな発想を生み出すことに繋がってもらえればと思っています。

“川上"に遡ってプロモーション内容の提案まで行うデザイン会社を目指す

東京の大手広告制作プロダクション「たき工房」から生まれた「たきC1」は、どのようにして名古屋屈指のデザイン会社の地位を確立してきたのでしょうか?

「たきC1」は大手広告代理店との仕事が業務の中心となって成長してきた会社です。大手広告代理店のクリエイターと「たきC1」のデザイナーがタッグを組んで仕事をするのが基本の形。優秀なクリエイターたちと切磋琢磨してデザインのアイデアを出し続け、レベルの高い仕事を積み重ねてきました。

クリエイターからの信頼にしっかり応えてきたわけですね。

制作物がクリエイターの求める「目標値」に到達しているかどうか、そこは徹底してこだわってきました。相手が求めているものを正確に把握し、デザインやコピーに落とし込んでいく。デザイナーによって得意なジャンルをそれぞれ持っていますし、アイデアのバリエーションが豊富に揃っていることで高い評価を受けることができていると思います。

そうした実績を踏まえた上で、今後の展開はどのようにお考えでしょうか。

広告デザインを取り巻く状況は大きく変化しています。けっして今までの実績の上に安住していられないと思っています。広告というものが扱うコミュニケーションの領域が広がったことで、デザイン会社に求められる仕事の内容も変化しています。グラフィックを中心にクオリティの高い制作物を完成させることで結果を出してきたわけですが、今後はさらに踏み込んだ形で仕事をしていく方向で考えています。

クライアント企業との関わり方も変わってくるのでしょうか?

クライアントと直接関わる仕事も増える方向にあります。今まではデザイナー主体の会社としてやってきましたが、営業職=プロデューサーの役割も仕事を動かす中で重要になってくると思います。

クライアントへの「提案力」が求められるようになるということですか?

そうですね。広告制作という今までの事業よりも、もう少し“上位概念"、川上の部分で仕事をしていかないといけないと思っています。そのためにはプロデューサーがクライアントと正面から向き合うとともに、デザイナーの“職域"も広げていかないといけません。

クライアントから求められる制作物を完成させて終わりではないと。

たとえばクライアントから「ポスターを作って欲しい」というご依頼があったとします。もちろん、ポスターのアイデアを考えるのが基本ですが、“なぜそのポスターが必要なのか"、“目的を達するためにはポスターだけで十分なのか"ということまで考えながら仕事をしていくことが大切になると考えています。

デザイナーに求められる役割が広がってきますね。

クライアントの広告プロモーションの中で、当初、依頼を受けたポスターやパンフレットからどのような販促媒体まで派生していくか、プロモーションの動線までを考えながら仕事を進めていく必要があると思っています。

新卒デザイナーに半年間の研修プログラムを実施。コピーライティングや営業提案の仕事も経験

デザイナーの存在価値が今まで以上に重要になってくる中で、たきC1ではデザイナーの方たちをどのようにして育てているんでしょうか?

新入社員に対しては、毎年見直しを重ねながらかなり充実した教育プログラムを実施していると思います。今の若者達はデジタルネイティブの世代でWeb関連の知識は当然豊富なので、何よりも広告を制作をする上で一番大事な部分、デザインの“勘所"などに関して専門的なプログラムを組んで身につけてもらっています。

デザインの基礎をしっかり学んでもらうわけですね。デザイン以外の部分に関しても教育に力を入れているんでしょうか。

社内にはそれぞれの部門に専門職が揃っていますので、コピーライティングや営業提案に関しても、熟練のスタッフが1対1で教育していく形を取っています。他の職種の仕事内容に触れるのは良い刺激になると思います。ひと通り会社の業務内容を肌で感じて覚えるまで、入社してから半年ほどは研修期間としてみています。

半年も研修期間があるんですか?

もちろん、デザイン部署での実作業もこなしながらですが、デザイナーが果たしていく役割の広がりを考えたら必要な時間だと考えています。社員の成長過程を見ながら、研修内容のさらなる充実を今後も図っていきたいですね。

オリジナルプロダクトの開発を通じて新たなジャンルの業務依頼も

オフィスの入口に面白いステーショナリーが飾ってありましたが、商品開発も行っているんですね。

社員全員からアイデアを公募して「モノづくり」に取り組んでいるんです。投票も社員全員で行い、第1弾として2種類の商品が選ばれました。その一つが「ダイイングメッセージふせん」です。倒れた人物のイラストと一緒に「あとは君に頼んだ」といったメッセージを書き込んだりと、遊び心を盛り込んだ付箋です。第2弾として、上下にひっくり返すとだまし絵のように「笑った顔」と「怒った顔」が現れるメモパッドも開発しました。

なぜ「モノづくり」に取り組まれようとおもった思ったのですか?

“アイデアを出す"というのは仕事をする上で日常茶飯事的に行っている部分ですので、社員もそうした過程を楽しみながら仕事ができたらと思っています。これをきっかけに商品企画から加わって欲しいというオーダーも発生してきているのは嬉しいですね。

規模の大きな会社でありながら積極的に新たな業務提案に取り組むとともに、ベンチャー的な姿勢を忘れない。今後のデザイン業界を生き抜く上で大切なヒントを教えていただきました。ありがとうございました。

取材日:2018年4月25日 ライター:宮澤裕司

株式会社 たきC1

  • 代表者名: 代表取締役社長 大森浩司
  • 設立年月: 2009年3月
  • 資本金: 2000万円
  • 事業内容: 広告宣伝の企画・立案から制作
  • 所在地: 名古屋市中村区名駅四丁目10番25号 名駅IMAIビル4階
  • TEL: 052-265-7070
  • TEL: 052-265-6644
  • URL: http://www.taki-c1.co.jp
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