イベント事業を通して地域活性、社会貢献を目指す
- 仙台
- 株式会社ニア 代表取締役 木皿 譲司 氏
何もないところから設計図を描いて作り上げていくのが⾯⽩かった学生時代
イベントに興味をもったきっかけを教えてください。
大学時代、先輩の紹介で、式典のステージ進⾏補助のアルバイトを経験しました。自分の任務を全うするために何をするべきか、次に何が起きるかを考えて自ら動くというルーティンワークではない仕事が新鮮でこの仕事に興味を持ちました。以来、その会社にお世話になり、イベント、ブライダル事業のバイトチーフとして、携わらせていただきました。
当時、学生でありながら、イベント会社のクリエイティブのプロと対等にテーブルに着き、何もないところから設計図を描いて作り上げていくのが面白く、なにより学生の自分がその経験を共有させてもらえることが嬉しかったですね。
学生時代のアルバイトから会社を立ち上げた経緯は?
当時の事業仲間から、「一緒に会社を立ち上げよう」と熱く説得されました。
私はもともと就職志向で、起業することに積極的ではありませんでしたが、当時の事業仲間である創業メンバー金津の話を聞いて、起業・就職を問わず、私が持つ⼈脈や技術を活かし「社会的意義の在る事業を創出できる」と考え、一度やってみてもいいかという気持ちになり、挑戦しました。金津は現在も取締役で、お互いにないものを全部持っていて、まるで妻子のような関係です。(笑) お互いに信頼できる関係性があったと思います。
学生時代は、どんな学生でしたか?
学生時代は人付き合いに積極的ではありませんでしたが、友達は多かったと思います。私の父親は転勤族で、高校生までは一年以上同じ所にいたことがありませんでした。そのおかげで初対面の人に話しかけることにも抵抗がなく、環境が変わっても人と自然につながれるタイプでした。
一方、故郷を持たない者として仙台市民としての誇りを持ちたい、この街に必要と思われる人材になる為には社会貢献、地域貢献しかないという想いがありました。社会に貢献するために、会社を起こすという手もあるし、起業することで、自分の存在意義が欲しかったのではないかと思います。
地域での存在意義を意識するとイベントは進化する
社名の「ニア」には、どんな想いが込められているのでしょうか。
創業当時、イベント会社の役割は、広告代理店がクライアントから請け負った電波媒体(テレビ、ラジオなど)業務、紙媒体業務、イベント業務のうち、イベント部分だけを依頼されてプロデュースするというのが主流でした。
クライアントが伝えたいイベントの趣意・目的を参加者に対し、温度差なく、ダイレクトに届けるため「イベント」の位置づけを確立したいという想いから、会社を立ち上げる際、「今の業界のあり方を継承する会社はやらない」と金津に言いました。波媒体と紙媒体を専門とする広告代理店とより良い共存関係を築き、私たちはイベント企画の骨子を整える段階から一貫して請負うことで、クライアントの趣意・目的を直接うかがってお客様にしっかりと届けたいと思いました。そして、お客様とクライアントの距離を近づけることをコンセプトとし、メッセージとして伝える意味合いで「ニア(near)」と名づけました。
貴社が展開するイベント事業の特徴を教えてください。
メイン事業は、イベントの企画・制作・運営です。B to Bの関係では、趣意・目的を一緒に整えて、温度差なく共有して作り上げるのが我々の仕事です。売上だけを目的にしない、楽しませて終わりではなく、意味がある経済活動をすることを提案します。会社として地域にどんな効果を生み、どう還元できるか、地域での会社の存在意義を意識して行うと、イベントは進化します。現在の大手クライアントは、そういう私のスタンスを買ってくれて、学生時代から直接ご依頼をいただき、長いお付き合いが続いています。
もうひとつの大きな業務として、アルバイトスタッフの育成という役割があります。イベントという環境を通して、私たちの知識と技術のすべてを伝授し、イベントに限らず、様々なビジネスシーン、フィールドで活躍できる若手を育てて、輩出していくことに力を入れています。それも、私たちの会社が社会に還元できることの一つだと思っています。
起業して11年目、創業当時と変わったことは?
一番変わったの、年齢ですね。(笑)23歳で会社を立ち上げて、今は35歳。20代は、みんなで技術や知識をつけられるだけつけて仕事の幅を広げてきました。30代は、そのスキルを遺憾なく発揮して、人脈を広げ、思想を確立する時期です。
会社としては、Pマークも取得して、情報セキュリティに関するコンプライアンスや設備関係などの基盤を整えました。私たちにあるのは、徹底して管理されたコンプライアンスのもとで、技術と礼節が平均化されたマンパワーです。初めに面接審査で基礎的な部分をクリアした上で、オリエンテーションを行い、弊社の求める人材像をクリアした人だけが登録、派遣され、さらに派遣された先で研修を受けて、自己を研鑽していただく。自分たちを厳しく律するからこそ、「ニアさんのスタッフじゃないとだめだよね」と求めてくださる方がいます。
仕事に、地域団体の活動に、おいそがしいと思いますが、オフはありますか?
集まりに参加して深夜まで議論したり、自分が存在意義を感じられるところに行くことが自分にとってのオフだと思っています。
また、プライベートでは、娘と遊んで充電しています。まとまった休みはとれませんが会合とか、イベントとか、いろいろな場所に子どもたちを連れて行って、私がやっていることを将来的に認識してもらえれば嬉しいですし、子どもたちが将来生きていく地域を活性化できれば明るい未来を子どもたちに残してあげられるのではと思っています。
根底にある志が同じなら、どんな事業でも一緒にゴールを目指せる
イベント1本で成長してきたニアさんが、新たにICT部門を設立したのはなぜですか?
実は、現在ニアのICT事業部部長である佐々木弘一との出会いが全てです。スマートフォンのアプリやゲームをつくるIT系の開発会社にいた佐々木の仕事ぶりもさることながら、ビジネス以外の話、主に地域復興の話で意気投合しました。
これまでニアは自社製品を持たずにやってきましたが、イベント事業だけでニアの理念を追求していくことは難しいと常々考えていました。私自身、チャンスと意味があればイベント以外の事業も立ち上げたいと思っています。いろいろな業界から声をかけていただきますが、収益優先の誘いには心が動かないんです。そんなときに佐々木と出会い、同じ志を根底に持って、新しいICT分野に参入できるのであれば、一緒にやらない手はないと思いました。
ニアの今後のビジョンを教えてください。
ICT事業部では、佐々木が以前勤めていた会社に依頼して開発したアプリを使って、現在の人材サービスとそれに紐づく人材育成サービス、開発事業を拡大していきたいです。拡大できる未来が現実的に見えてきました。
これからの3年間で地元企業にもICTの効果を紹介・提供して、各社が地域活性、社会貢献のためのサポートができればと考えています。さらに2年位で、お客様向けのコンテンツを打ち出していきたいですね。まだ何も決まってはいませんが、便利ツールではなく、楽しみながら豊かなライフワークを構築するお手伝いができるものという青写真はあります。
もちろん、すでに導入した自社アプリなども活用してイベントを活性させていきたいです。自社主催のイベントはこれまで数えるほどしか行っていないので、地元の協賛をいただいて社会に意味のあるイベントを自社で開催していければと考えています。
最後に、クリエイターへのメッセージをお願いします。
なぜやるのかを考えずに、手法自体が目的になると、だめになったときに立ち返る場所がなくなります。趣意・目的があって、背景から手法に紐付けて、こういう意味がある仕事だと理解した人は精神力が圧倒的に違います。ぜひ目的意識、課題背景意識から入って自分の存在意義を見定めて働きましょう。その先に地域社会の発展があると思います。
取材日:2018年5月24日 ライター:佐藤由紀子
株式会社ニア
- 代表者名:木皿譲司(きさら じょうじ)
- 設立年月:2007年3月
- 資本金:3000万円
- 事業内容:イベントの企画、立案、制作及び設営業務
- 所在地:宮城県仙台市青葉区五橋1-7-15 ピースビル五橋6F
- URL:https://www.near-sendai.com/
- お問い合わせ先:TEL)022-342-0008