プロジェクションマッピングで、多くの笑顔を映し出す
- 京都
- 株式会社電気蜻蛉 代表取締役 林ケイタ 氏
デジタルツールの進化を感じ、映像制作の道へ
映像制作に関わるまでのキャリアを教えてください。
高校時代に絵を描いたり美術に関わることが好きで、進学先としてデザインを学べる大学を希望していました。しかし、「団塊ジュニア」と言われる我々の時代はデザイン専攻の学生も多く、希望する大学への進学が困難だったのです。デザイン関係であればどこでも良いと諦めかけていたところ、その年から立ち上がった神戸芸術工科大学の情報デザイン学科に受かり、進学を決めました。そして、大学4年生の専攻として映像制作を選択。理由はパソコンを通してデジタルツールが進化していくのを肌で感じ、映像制作にこそ魅力的に感じたからです。卒業後は精華大学の大学院に進み、映像制作をより深く学びました。そして、25歳で就職。入社したのはCDやDVDを貸し出す大手レンタル会社の子会社で、グループ会社の社内報の映像を制作していました。私はテロップなどの2DCGの担当でした。しかし、寝る時間さえないハードな仕事環境と私自身がこれまで培った価値観とのズレに違和感を覚え、2年で退社。その後、フリーランスとして、グラフィックデザインや映像制作を請け負い始めました。29歳の頃です。
その後、起業までのいきさつを教えてください。
母校の精華大学が新しい映像コースを立ち上げることになり、学生時代にお世話になった先生から教員としてのオファーをいただき、非常勤講師として教えに行くことになりました。そこからは、フリーデザイナーと非常勤講師の両立です。学校に出入りを続けると、才能のある学生たちとたくさん出会え、とても刺激をもらいました。その中でも、アジアからの留学生たちとの出会いは大きなきっかけでした。彼らは語学の勉強を経て大学に入ったいきさつがあり、年齢において私とさほど変わらず、技量として良いものを持っていたので、徐々に交流が深まり、私の仕事を手伝ってくれました。その後、私の仕事が増えたことがきっかけで、その留学生を含め、当時手伝ってもらっていたメンバーとともに起業に至ったのです。
これまで培ったプロジェクションマッピング技術で勝負
御社の現在の事業内容について教えてください。
映像を中心とした広告制作です。制作物としては、プロジェクションマッピング制作に数多く携わってきました。実際に、我々は「プロジェクションマッピング」という名前が付く以前から制作していましたし、時代が求めるようになったことを受けて、より注力していこうと思いました。まずは商業として軌道に乗るまで、京都府木津川市で行われた「木津川アート」や上海で行われたプロジェクションマッピングイベントなどの芸術祭に出展し、広告としてのデモストレーションを重ねました。実際に、商業としてオファーをいただき始めたのは2014年ごろからです。
競合他社に負けない御社の強みを教えてください。
1つ目は子どもや地域の方々にプロジェクションマッピング制作をテーマにしたワークショップができるということです。これには我々が大学の講師として関わってきたことが活きたと思います。きっかけはとある高校の美術部からプロジェクションマッピング制作のサポート依頼を受けたことです。何度かワークショップを行い、実際にプロジェクションマッピング制作を行っていただきました。実は、それがテレビで取り上げられるまでに至ったのです。この経験により、プロジェクションマッピング制作はプロが特権的にできることではなく、誰でも制作可能だと提案するきっかけになりました。その後、淡路島にあるサービスエリア「ハイウェイオアシス」の40mもの窓ガラスにプロジェクションマッピングを投影して欲しいとの依頼を受け、参加した子どもたちと共に鳥を象ったパネルを制作し、プロジェクションマッピングを当てることで鳥の影絵が飛び回るような演出をしました。その時は出講している大学の学生らも制作に携わってくれて、地元の人たちとワークショップを通じて、オリジナルのプロジェクションマッピングを作ることができたのです。
誰もやったことのないことへのチャレンジ
実際に行われた本番の映像を拝見しましたが、子どもたちの笑顔があふれていて、映像制作を通じて人と人との深いつながりを感じました。それでは続いての強みを教えてください。
2つ目の強みは人がやったとがないことでもチャレンジして達成する精神です。大阪南港〜釜山間を週3回往復している客船の運営会社から、客船を目立たせるためにプロジェクションマッピングを投影して欲しいとのオファーをいただきました。しかし、運行している船にプロジェクションマッピングを投影することは難しく、新たな案として、船の甲板にプロジェクションマッピングで映し出す球体のプロジェクターを設置することを提案したのです。その提案が通り、進めようとしたものの、その当時は球体に映像を映し出す技術が当社にはありませんでした。そこで、近しいことをやっている会社を視察したり、色々と試行錯誤を重ねた結果、360度映し出せるレンズを外国で見つけ出し、球体の内部から投影することで実現しました。実際の様子もテレビで取材していただきました。しかし、結果は撃沈。レンズを使用することで光を分散させすぎて、色がはっきり出ないとの指摘をいただいたんです。
もちろん後日、再調整することになりました。その後、試行錯誤を繰り返し、球体の中に設置した3つのプロジェクターを特別な鏡に当てて、それぞれの映像をきれいにつなぎ合わせることで映像をはっきり見せることに成功し、本番ではその手法が採用され、成功をおさめることができました。
そのチャレンジ精神は今、どう活きていますか?
プロジェクションマッピングというソフトの制作だけではなく、ハードを自社で制作することによって、ソフト自体の売り上げにつながるという強みを知るきっかけとなりました。最近は、新たに透過液晶を開発して、投影する色味を使い分けることによって、リアルとバーチャルを視覚的に混ぜ合うディスプレイを制作し、展示会などで好評を得ています。
市場は東京だけではない。上海での活動を進める
まだまだ強みがありそうですね。
もう1つ、強みがあるとすれば、中国につながりがあるということです。冒頭にお話した通り、当社には中国出身のスタッフがいて、これまでも中国でプロジェクションマッピングを制作させていただきました。中国での制作は新たな出会いを生み、上海で新しく立ち上がった「芸倉美術館」の第一回目の展示を、私たちが担当することになりました。この美術館は石炭工場を廃して作られたもので、なるべくそのモチーフのイメージに近しいものを作ろうと取り組みました。その展示会後、芸倉美術館から「日本人アーティストを紹介して欲しい」との連絡があり、その時は自分たちがコーディネーターとしてキャスティングに関わりました。このように、中国での人脈を活用し、実行していけるというのが我々の3つ目の強みです。我々の業界において、日本国内では仕事自体、東京に偏ってしまっていますが、世界的に見れば中国市場の方が熟成度の拡大を感じ、当社としても中国での活動をより進めて行きたいと考えています。
最後に、会社としてのビジョンを教えてください。
これまでもやってきたことですが、「官、産、学」の関係性の中で映像作品を制作する場合、我々が入ることで、官と学が結びつきやすくなったり、それぞれのクッションになったり、我々の存在が何かしらの役に立つことができたらと思っています。また、観光客が京都で体験するプログラムの中に、我々が制作した映像を生かすことを模索中です。例えば、生け花体験で生けた花は持ち帰ることが出来ないので、バーチャルに3D保存できるアプリケーションの制作など、新たな開発を進めたいと思います。
取材日:2018年7月20日 ライター:7omoya
株式会社電気蜻蛉
- 代表者名:代表取締役 林ケイタ
- 設立年月:2012年7月
- 資本金:1,000,000 円
- 事業内容:映像を中心とした広告展示環境、空間の企画・設計・デザイン
映像を中心とした広告代理業務とコンテンツデザイン
映像デザインに関わる人材教育支援
芸術文化に関わる国内外のクリエイティブ・プロジェクト支援 - 所在地:〒607-8214 京都府京都市山科区勧修寺平田町1丁目高山会館2階
- Tel(Fax):075-644-9670
- Mail:info@denki-tombo.com
- URL:https://www.denki-tombo.com/