リモートワークによる潜在的労働力の有効活用で、働く人、企業にやさしい環境を提供
- 大阪
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株式会社JAMSTORE
代表取締役 市位 康時氏
クリエイティブディレクター/コピーライター 松本 裕美氏
会社のピンチを救ったリモートワーク
今日は御社が導入されているリモートワークを中心にお話をうかがいます。まずはお2人のキャリアについて教えてください。
市位さん:僕はもともと飲食業界に携わっていて、その後リクルートの広告代理店で営業職に就き、2009年に独立して2013年11月に法人化し現在は代表取締役として財務面、管理面、経営面等を見ています。
松本さん:私はリクルートで求人雑誌の営業職を経てディレクターとして制作業務にも携わり、ライティングやデザインのスキルも身につけました、フリーランスで仕事をした後に、市位とこの会社を立ち上げました。
リモートワークを導入されたきっかけは何ですか?
松本さん:設立してから3名の女性スタッフがいたのですが、その内の1人が産休に入り、その後私も妊娠が分かり、後の2人が辞めるタイミングとも重なってしまったのです。既にクライアントとの付き合いがある中、品質担保のために急ぎで即戦力になってくれる人材を探していました。でもすぐには見つからず、リモートワークを活用してみたところ、うまく乗り切ることができ、今の体制に至ります。
本格的に運営されるにあたり苦労された点はありましたか?
松本さん:システム環境については、クラウド系に精通しているスタッフがいましたので、世界的シェアを誇るビジネスクラウドを利用する等でスムーズに運用できています。しかし、それらの使い方には試行錯誤しました。基本的に社内SNS・ビジネスチャットは個人的に使用しないとか、退職者が出た際には会社のクラウドサーバのパスワードをすぐに変えるといったオーソドックスなルール決めから、打ち合わせのチャットのやりとりでスピードに追いつけないスタッフが出た場合は、ビデオチャットで説明する場を増やしたり、仲間意識の醸成のため仕事以外の雑談チャットを設けてみたりするなど色々と工夫しています。
勤務管理などはどのようにされているのですか?
松本さん:大きく2つあって1つは、チャットワークで、出退の報告をしてもらうのと、もう1つは、ビジネスクラウドのスケジュールに想定時間を一旦入れておいて、スタッフが実質かかった時間を書き込んでいきます。それで、1カ月に1度1人1人の勤務時間と売り上げとを照合して原価率をみていくんです。それが他と比べて悪かった場合、その原因が個人なのか、クライアントなのかを確認し、もしスタッフに不得意なことをさせているのであれば仕事内容を変えますし、クライアント側に原因があれば私が価格交渉をするなど対策を打つようにしています。
仕事の流れについて教えてください
松本さん:基本的には私がトップセールスで仕事を受注し、マネージャー2名がディレクター6名の得意分野等を考慮しそれぞれに仕事単位で振り分けていきます。ディレクターが内容によって、ライターやデザイナー等の人数を考えアサインしていきます。直でクライアントとやりとりをし、デザイナーやライターに指示をするといった感じで、私がいちいち指示をするのではなく、スタッフ自らが考え動いてくれています。1人平均2,3社の担当に加えスポット案件もこなしていますが、1人当たりの勤務時間は平均して週20~40時間程度です。
ほとんどのスタッフはリモートワークでお仕事をされているんですか?
松本さん:そうです。出産等何らかの理由で一旦仕事を辞められた方や、社会保険の関係で年収130万円以内で働きたい方にはうってつけの仕事だと思います。面接のほとんどをビデオチャットで行っていて、そこでコミュニケーションが取れない人はこの働き方には合いづらいので、一つの指標にもなります。
市位さん:これまでの統計から、男性より女性の方が続いていますね。男性でもエンジニアのように一人で机に向かって集中して仕事に取り組む人には向いているのですが、男性の多くは、仕事もコミュニケーションも密にしっかりと向き合いたいといった方が多い印象があります。
松本さん:私の経験からもいえるのですが、女性って家事をしながら、育児もして、仕事もしてと、同時に複数のものをこなすのが上手く、それらをやり終えた時ってすごく達成感を感じると思うんです。そういった女性の特性が、この働き方にはうまく活かされていると思います。家事や育児をされている方をはじめ、自営や旦那様のお仕事を手伝うなど、ダブルワークをされているスタッフがほとんどです。雇用保険の関係で、週3日以上の勤務が必要で、週40時間を超える場合は残業になるので事前に申請をお願いしていますが、後は個々で自由に仕事をしてもらっています。
“必要な時に必要なだけ”スキルを提供
企業側にはどのようなサービスを提供されているのですか?
松本さん:弊社の主軸となる「Re:motto(リモット)」で提供できることは大きく4つあります。①企画サポート、②平面・立体デザイン、③広報チーム形成、④販促チームの形成です。①については、プロデューサーや、企画提案営業に従事している方などのアイデアを形にするプレゼンツール作成のサポートをします。 ②は、DTPデザイン、パッケージのデザインに加え、図面設計まで出来る体制にしており、印刷に至るまでの工程をサポートします。③は、ファシリテーターとして、企業の強みの分析・市場でのマッピング、顧客のターゲティングを一緒に整理整頓し、進むべき方向を見える化して発信するまでの作業をお手伝いします。④は、顧客ターゲット設定からコンセプト作成、キャッチコピーの作成、デザイン制作を軌道に乗るまでの販促活動を一定期間継続的にサポートします。
市位さん:弊社が得意とするクリエイティブ系のリソースを活かした安定と品質にこだわったサービスをクライアントに定額で「必要な時に必要なだけ」提供できるのは弊社の強みだと思っています。
顧客が喜ぶ四次元ポケットって!?
実際にクライアントの反応はどうですか?
松本さん:クライアントからは、自分たちが頭に浮かんだことや思ったことを気軽にどんどんチャットに入れていったら、キチンと制作物になって出てくるので、まるで四次元ポケットのようだと喜ばれています。弊社のディレクターがチャットの内容をみて、クライアントの要望を汲み取り、きちんと咀嚼してまとめて構成を考え、ページ毎にデザイナーやライターに発注するので、クライアントがいちいち構成を考え指示を出す必要がないんです。説明をする工程が要らないのでストレスフリーになったと喜んでいただいています。ただ単にきれいにデザインしてくれるだけでは、頼んでなかったかもしれないとまで言われるくらいです。
市位さん:一度利用していただければ、弊社の良さがわかっていただけるのですが、新規営業の際、特にクリエイティブ系とはあまり関りのない業種の企業は、理解していただくまでに断られることもあります。本当はそういった所にこそ、弊社を活用していただきたいので、今後、まず理解していただくことに取り組んでいきます。
松本さん:まず、その取っ掛かりとして、具体的に弊社に何を依頼したらいいのかわからない方に向けて、クライアント3社くらいの事例を弊社のWebサイトに載せる予定です。(http://jamstore-web.com/remotto-int1/)
“やさしい”の連鎖を企業活動に
やさしい日用品「無垢な日常」の販売も手掛けているんですね。
市位さん:商品の販促ツール作成等の依頼を受ける中で、自分たちの力でどこまで発信できるのかを確かめるために、実際に物販を始めたんです。その中で、苦労した点や市場の反応が良かった取り組みなどをまとめ、そのノウハウをお客様に還元していこうとしています。取り扱う商品は、会社のミッションが「『優しい環境』をビジネスに」ということから、天然素材しか入っていない洗浄剤等のやさしい日用品雑貨シリーズ「無垢な日常」をプロデュースし、その売り上げの一部を、NPO法人日本こども支援協会を通して助けが必要な子供たちに還元しています。
「『やさしい循環』をビジネスに」とは素敵な取り組みですね。
松本さん:ただただ優しいものを提供したいというだけではなく、ビジネスとして存続するには企業との関りは必要不可欠です。イメージとしては、①Re:mottを企業が利用することによりローコストで経験者のスキルを利用することができるため、経営への“やさしい”につながります。②企業が弊社の「無垢な日常」を使用することで、子供たちへの支援にもなるためCSR活動にもつながりますし、環境にも配慮した商品なので子供たちへの“やさしい環境づくり”にもつながっていきます。③子供たちが笑顔だと弊社のスタッフをはじめとするママたちへの“やさしさ”にもつながる、といった流れをビジネスにしているのが、弊社の活動なんです。
温かい活動ですね。社名の由来もそういったところからですか?
市位さん: JOY(楽しむ、喜び)&(アンド)MAKE(作る)を提供するストアという意味です。それはお客様に対してもそうですし、仕事をする楽しみや達成感、お客様に喜んでもらうことで制作に携わる喜びを、スタッフ皆で共有したいという想いを込めています。
運営される中での喜びとは何ですか。
松本さん:やはり、お客様からの評価や、スタッフが喜んで働いてくれることがうれしいですね。この間、ディレクター会議時に弊社で働いている理由をスタッフに聞いたんです。すると、フリーランスなら得られないスキルを得られたという意見をはじめ、ダブルワークをしている中で自分なりにプラスアルファのキャリアを積めたという人や、シンプルに時間を有効活用して稼げているのが嬉しいという人もいれば、フリーランスとは違い仲間と一緒に働けることがすごく心強いんだとか、色々出てきたんですね。でも共通項としてあるのは、リモートワークを心地良く出来る環境を提供できているんだと感じてうれしくなりました。
仕事上で大切にされていることを教えてください
松本さん:品質担保は一番大事にしています。それと同等にスタッフの満足度も意識しています。リモートワークにおいてスタッフが働きやすい環境を作ることで、コストパフォーマンスの良い仕事をしてくれます。結果それはクライアントへの品質担保につながります。スタッフそれぞれの生活や考え方などを考慮し、ワークライフバランスを大事にすることに注力しています。
この働き方はフリーランスのように場所や働き方は自由度が高い上に、仲間意識や企業で働く安心感もありますね。
松本さん:スタッフ自ら「今空いてますけど何かしましょうか」という声かけがスタンダードですし、逆に急に本人や家族の方が体調を崩した時には、担当している仕事を引き取り社内でフォローします。私の経験上、フリーランスって一旦受けた仕事は自分一人で対応しなければいけないというリスクがあるじゃないですか。いざという時に頼れる所が有るのと無いのとでは安心感が全然違うと思うんです。家族をはじめ自分が大事にしたいものを大事にしながらキャリアを積めるっていうのは、すごく魅力的な働き方だと思います。
時代の変化を楽しんだもの勝ち
新しい社内のコミュニケーションの形ですね。
松本さん:そうですね。でも先日、中小企業の社長の集まりで、リモートワークを推奨している私に、会社は社員にとって家といえる場所として存在しないといけない、と言われたんです。色々な考え方があるのも事実です。
市位さん:それでいうと興味深い話があって、親戚の家に行った時に、20歳位の女の子がスマホをテレビ電話の状態にしていて、家族とテレビをみながら電話の相手がそこにいるかのように会話をしているんです。その家族も同じように普通に電話の相手に話しかけていました。電話の相手も自分の好きなことをしながら、こちらと話をしているんです。これが若い世代には当たり前のコミュニケーションなんです。僕らの世代よりも、物理的な場所にとらわれないもっと広い意味でのコミュニケーションが既に存在しているのを目の当たりにしました。スタッフも、クライアントもこれから若い世代が中心になってくるわけで、そこを否定してしまったら、今後大変なことになると思います。個人も企業も時代の変化に対応できることが重要だと思います。
そのような中で、どのような人材を求められますか?
松本さん:思考を停止しない方がいいです。弊社の強みでもあるお客様の要望を汲み取ろうとする力、察する力、咀嚼する力が今後も重要になってきます。時代って変わっていくものなので、今のスキルで止まっていたら5年後、10年後、個人も企業もどうなっているかわかりません。お客様からの要望の変化についていかなければいけないので、現状維持ではなく、自分で考え動くことができて、ちゃんと変化し続けることができる人がいいですね。
市位さん:仕事を楽しめる人がいいですね。実際に働いていくと困っていることや要望が出てくると思うんです。僕らの仕事は、それをどう解決していけるかだと思っているので、一緒に仕事を楽しんで前に進んでいけたらと思います。
最後に今後の展望について教えてください
市位さん:リモートワークにより、将来的には世界中にスタッフを置きたいと思っています。現在でもフランスにスタッフがいるのですが、国や国籍を問わずにどんどん広げていって、時差を利用した無理のない24時間営業を展開していきたいと思っています。そのためにも、人材確保に向けスタッフが自身や家族にも優しくできるような体制づくりに今後も取り組んでいきたいと思っています。
取材日:2018年8月3日 ライター:川原珠美
株式会社JAMSTORE
- 代表者名:代表取締役 市位 康時
- 設立年月:2013年11月
- 資本金:300万円
- 事業内容:①クリエイティブ系バックオフィスサービス「Re:motto」の運営、広告制作、広告出稿、プランニング業、Web制作、各種デザイン(チラシ、フライヤー、パンフレット、リーフレット、WEBサイトなど)、コピーライティング
②日用品雑貨の販売(やさしい日用品「無垢な日常」) - 所在地:〒530-0027大阪府大阪市北区堂山町1-5 三共梅田ビル9階
- URL:http://jamstore-web.com/