「一期一会を大切に、関わった皆さんに大きな幸福を提供したい」。眠っているウェブサイトを復活させるサービスを展開
- 金沢
- 株式会社一期大福 代表取締役 福岡 明夫さん
ITコーディネーターとして起業、中小企業のITの橋渡しに使命を感じて
まずはそのユニークな社名の由来を教えてください。
「一期一会を大切に、関わった皆さんに大きな幸福を提供すること」を目指し、中小企業の情報化支援を通して地域社会を元気にしたい、という思いから「一期大福」と名付けました。これは当社の企業理念でもあります。
「一期一会」を大切にしたいと思ったのには何かきっかけがあったのですか。
独立後、個人事業を続ける中で、2年間はなかなか思うように売り上げが見出せませんでした。そんな中、仕事をいただいたのはやはり人とのつながりがきっかけとなることが多かったのです。人とのつながりは、ありがたいことだと実感しました。だから一期一会は大切にしなければと社名に思いを込めました。
起業のきっかけを教えてください。
大手IT企業(PFUアクティブラボ株式会社)でシステム開発の企画、設計から製造、保守までの開発業務を担当していました。SEとして仕事をする中で、これからは、IT業者と中小企業の間に立って、ITの橋渡しをする仕事が必要とされる時代になると感じていました。東京へ4年間単身赴任していましたが、家族の住む金沢に腰を落ち着けたいという思いがあり、ちょうどITコーディネーターの資格試験が始まったことから、2004年に資格を取得し、独立したのが2007年でした。
大学を卒業されてIT業界に入られたのですか。
いいえ、卒業後は地元の測量会社に入社しました。航空写真測量において必要とされ、はじめたプログラミングを勉強させてもらいました。そこで初めて、FORTRAN(フォートラン)※1といったコンピュータについて学ぶことができました。その後中途入社で、IT企業に入りSEの職に就きました。
※1 1954年にIBMのジョン・バッカスによって考案された、コンピュータにおいて広く使われた世界最初の高級言語である。
独立後はITコーディネーターとしてどのような業務に取り組まれましたか。
中小企業の支援機関でIT相談員として5年間、経営に役立つIT利活用についての相談や助言、支援に数多く取り組んできました。独立して3年後に株式会社一期大福を設立しました。
ウェブサイトを再生、「目覚ましキット」の開発
現在、一番力を入れている事業を教えてください。
何年間も更新されないまま、商品や会社情報が現状と異なっていたり、構築ソフトが古いためにワイド画面やスマホに対応していないなど、眠ったまま放置されているウェブサイトを再生し、「生きた」ウェブサイトに変身させる「ホームページ目覚ましキット」の販売に力を入れています。
「ホームページ目覚ましキット」を開発された経緯について教えてください。
IT相談を多く受けていく中で、いつの間にか更新しなくなったり、10年前につくったけれど誰も触れなくなってしまったといったウェブサイトがたくさんあることを知りました。企業側が、ウェブサイトを制作する業者に相談しても、「古いものは捨てて、新たなウェブサイトを立ち上げたほうが効率的だ」と言われるらしいのです。
つまり古いウェブサイトはあきらめて新たに作りましょうと提案される。
そうなんです。ただし、新たなウェブサイトを作るには、また時間と経費がかかる。小規模な企業では、その手間を解消したい。それならば、既存のページを利用できないかと思った次第です。当社では従来、新規でウェブサイトを作る際、CGI(※2)を使ってデータベース化した情報をウェブサイト構築に利用していたのですが、お客様の既存のウェブサイトの内容のうち必要な一部を抽出して利用すれば手間を省けると考え、「ホームページ目覚ましキット」の開発に至りました。ホームページも全てデータベースにしてしまった方が、いろいろと使いみちが広がるという考えに基づいて、そのデータベースをプログラミングでHTMLに書き換えていくという手法ですね。
※2 CGI Common Gateway Interfaceの略。 Webサーバが、Webブラウザの要求に応じて、プログラムを起動するための仕組み。
「ホームページ目覚ましキット」の特色について教えてください。
今は、ユーザーが簡単に更新できるCMS、WordPress(ワードプレス)一色になっていますが、それよりも安価に、従来のホームページを自分たちで更新できるような仕組みに作り変えます。SEO対策として、ブログページの追加も同時におすすめしたり、スマートフォンでの閲覧にも対応可能な仕組みづくりも提案しています。
現在どれくらいの導入実績があるのでしょうか
現在80件ほどの企業やお店で導入実績があります。あるお店では、入荷した商品の更新が旧来のものでは複雑になってしまっていたのをデータベース化して、簡易化したので、更新がずいぶんと楽になったとの声をいただきました。
情報化支援をはじめ3本柱となる業務を展開
ほかにはどのようなサービスを提供されていますか。
大別すると、3つの業務に取り組んでいます。一つは経営戦略策定業務。企業の3年後の姿を明確化し、経営革新計画や新規事業の計画を策定する事業です。二つ目は情報化支援業務。ウェブサイトやネットショップといったウェブ戦略の構築や、「RFP(Request For Proposal)」と呼ばれる提案依頼書の作成ですね。RFPとは、情報システムを導入するにあたり、システムの目的や要件などを発注先事業者に具体的に依頼する文書です。三つ目は、人材育成業務。社員の意識改革やモチベーション向上研修を行っています。
RFPという考え方について教えてください。
RFP(Request For Proposal)とは「提案依頼書」のことです。前職のSE時代にも感じていたのですが、これからIT化を図ろうとする企業がシステムを開発・導入する中で、システムを供給するベンダーに任せっきりになってしまうケースは少なくありません。主体であるはずのユーザーが、自ら内容を考えRFP(提案依頼書)を作成していくことは不可欠だと思いますし、その支援についてはITコーディネーターとして自らの役割を強く感じます。何のために、自分たちがそのシステムを必要としているのか、自分たちの要件を明確化することが、システム導入を成功に導く鍵だと思っています。
志を定め、人や地域とのつながりを大切にしていくこと
今後の展望や将来のビジョンについて教えてください。
「地元企業の発展に貢献し、ワクワクする元気な会社を増やしたい」をモットーに、ITを通してお客様のビジネスをプランニングしていきたいと考えています。相談から始まり、企画(経営戦略、経営改革、新事業企画)の策定、そして実行までを担保できるサービスを目指します。PDCAサイクルを繰り返し、ワンストップで信頼性のあるビジネスモデルの構築をお手伝いしていきたいです。
起業しようと考えている人たちにアドバイスをいただけますか。
志を定めること、人とのつながりを大切にすることを心掛けてください。そして、1年間無収入でも平気なくらいの蓄えが必要だと考えます。経験上、それぐらい心のゆとりを持てる方が良いと思います。松下幸之助さんの「人間の運命は90%がすでに決まっているが、運命を受け入れて前向きに取り組んでいけば、道は拓ける」という考え方に感銘を受けました。自分が決めた道を迷うことなく進み続けてください。
取材日:2018年7月23日 ライター:加茂谷慎治
株式会社一期大福
- 代表者名:代表取締役 福岡 明夫
- 設立年月:2010年7月
- 資本金:300万円
- 事業内容:経営戦略作成業務、情報化支援業務、人材育成業務
- 所在地:〒920-0912石川県金沢市大手町15番15号 金沢第2ビル6F
- お問い合わせ先:TEL) 076-260-5670
- URL:https://www.ichigo-daifuku.jp/