ありがとう、と言われる仕事を。
- 福岡
- 株式会社クラフト 代表取締役 武内 勝 氏
携帯電話のハードな営業販売で身に着けた「営業」の力。まずは「聴く」こと。
今の会社を立ち上げられるまでは、どんなお仕事をなさってきたのですか。
はじめは、携帯電話の営業の仕事をやっていました。きっかけは「時給が良くて、楽しそう」と始めた、大学時代のアルバイトで。でも実際は機種代を0円にしてでも、とにかく契約数を伸ばす、そんな過酷な営業が強いられる時代で。ノルマも無茶苦茶にハードでしたね。そこで営業のノウハウを泥臭く学んでいるうちに、しばらくすると光通信の代理店の店長を任され、福岡県内約30店舗を任されるエリアマネージャーにまでなっていました。
店長に、エリアマネージャー。かなり営業成績が良かったんですね。
そうですね。ノルマをこなし、アルバイト時代も成績は1位でした。怒られるばかりで今でいえば「超ブラック」な労働状況だったんでしょうが、その時代を耐えられたので、今でも「何があっても大丈夫」と思えるようになりました。あの時代があって、今の自分がありますね。それまでは前に出ることが苦手で営業なんて敬遠するタイプだったのですが、接客やクレーム処理で、相手の言うことを「聴く」技術を身に着けたことが、人と接するスキルとして今も役立っています。
その会社からどのようにWebの世界に。
その携帯電話の会社で働いていたのは3年ほどでしょうか。2000年代ごろから携帯電話の需要が飽和状態になって、営業も苦戦してきて。そこで出てきたのが「i-mode」でした。パソコンだけでなく、携帯電話にもインターネットが普及し始めて、「これからはインターネットの時代が来る」と思い、いったん会社を辞めてアルバイトをしながらホームページなどインターネットの勉強を始めました。そして前の会社を退社して2年後、福岡市内でホームページ制作を行っていたベンチャー企業に就職しました。
営業からWebの世界へ、そこで気づいた「数字を伸ばして満足してもらう」喜びが転機に。
またその会社で営業として活躍されたのでしょうか。
はい。今ではわりと当たり前になってきましたが、幼稚園や老後施設のライブ映像を、安全管理のために遠隔地から見られるようにするホームページを作る会社でした。営業にも、もちろん力を入れたのですが、なにせまだADSLの時代。技術も未熟で映像も滑らかではない、スライドショーのようなもので、必要性や良さが十分に伝わらず、導入するところはわずかで、経営はうまくいきませんでした。廃業寸前までいったところで、その会社の経営者の親族がやっていたレンタルサーバの会社に移ることになりました。
インターネットの技術も未発達で、大変な時代だったんですね。次の会社ではどんな仕事を?
次の会社の主な業務は、社内にLANを設置したり、ホームページの発注を受けることでしたが、ホームページの制作自体は、外注していました。修正すべてをお願いしていては大変なので、小さな修正や改善は自分たちで対応できるようにして、お客様の要望に対応していました。そこで、今の仕事につながる、面白さを発見したんです。
それが独立につながる転機ですね。
はい。ある健康食品会社のホームページの修正中に、ちょっとした改善のつもりで利用者の顔写真を載せたところ、グンとアクセス数が伸びたことがあったんです。そんなことがいくつかあって、「これは面白い、こんな仕事ができたら楽しいだろう」と独立を決意しました。会社と話し合い、担当していた2社を引き継いでもらう形で独立が実現しました。
そこから今のようなWebのコンサルティングに?
いえ。インターネットが浸透していない時代だったので、初めは「インターネットに繋がらない」とか、「プリンターが動かない」とか、そういうトラブルにも駆けつけて、IT全般の何でも屋さんのような仕事をしていましたね。ホームページの修正やトラブル対応を昼にやって、作業を多少外注しながらも夜やって……。そうやって体を酷使してやっと食べていけるようになりました。
初めからコンサルティング、というわけではなかったんですね。そこから路線が変わったのはいつですか?
2006年ごろ、紹介を受けて楽天市場に出店するサイトの管理の仕事が増えてきました。そこでやっと、目指していた形の仕事に近づき、方向転換ができ始めました。簡単に言えば、出店している会社の売り上げを上げれば、その分報酬が上がる「成功報酬型」の仕事です。それまでのぎりぎりの生活を変えたいという思いもあり、その方面により力を注ぎました。扱ったのは、手作りの照明屋、化粧品店、醤油屋、アパレルなど様々なお店でしたが、ここで営業時代に培った「聴く」力を生かして、まずはお客様の悩みを聞き、市場調査もして、サービスを受ける側のニーズに気づいてもらいました。見せ方を変える提案をして、売り上げを10倍にしたこともあります。
まさに天職、という感じでしょうか。
そうですね。とても面白い仕事でした。ただ、楽天市場は全国のお客様を相手にした場です。徐々にスキルやノウハウの勝る大手に圧倒されるようになりました。
全国相手のビジネスの限界と、地域限定の仕事の面白さに気づく。
それからどうやって今の地域限定のビジネスにシフトしたのでしょうか?
ちょうど楽天市場でのビジネスが大手の台頭で苦戦を強いられ始めた2014年、私は今の会社「株式会社クラフト」を設立して、方向性を探っていました。そんな時、あるセミナーで、中部地方のある都市で地域限定の事業をされている方のお話を聞く機会がありました。敵の多い全国を相手にせず、地域に限定し、WebだけでなくハガキやFAX、多方面からコンサルティングを展開する考え方に衝撃を受けましたね。その出会いが、これまでの私の仕事のやり方を大きく変えました。
それを福岡で、と思われたんですね。
はい。それから同じような志を持った各地の仲間とも情報交換しながら、福岡の中でも地域に視点を絞り、そこに根差した商店や産業の役に立てるサービスを考えるようになりました。
今、具体的にはどんなところでご活躍を?
例えば、わかりやすいクライアントが自動車整備店です。車に傷がつくと、ほとんどの人がその車を買ったディーラーに車を持って行ってしまい、自動車整備店で修理するという選択肢すら持っていません。お店はお店で、提供したいサービスばかりを考えてしまい、ニーズに気づけていないのです。そこで、まずは車に傷がついてしまった当事者が何で困っていてどんなサービスを必要としているかを徹底して調べます。
調べるというとどうやって?
これはあまり詳しくは言えないんですけど、大まかにいうとアンケートやSNSの調査ですね。徹底的にやります。そうすると、顧客が本当は具体的に何で困っているかが見えてきて、それがわかるとクライアントも喜んでくれるんです。そうした提案の中から新しいサービスが生まれて、それを紹介するWebページもできる。それで入庫台数が2,3倍になったところもあります。ほかには不動産投資コンサルティングの会社なども手掛けさせていただいています。そんな風に、地域限定の小さなサービスに、ニーズを見つけて役に立つことが、今の私の仕事です。
と、すると、ずばりこの会社の強みはなんでしょう?
やはり先ほどまでにも述べた徹底した精緻な市場調査と、それに基づいた絞られた広告です。地域などの設定を細かく絞り、とにかく狙ったターゲットで効果が上がる提案ができるところです。
手を広げるのではなく、深く、丁寧に、まじめに。
これからやっていきたいことはなんですか?
今はお客様からの紹介だけで仕事をさせていただいていますが、さらに福岡の中でも、今扱っているクライアントと利益がぶつからないように、新たな地域も開拓していけるといいですね。さらに今はライター、デザイナー、コーダー、雑務の4人の在宅アルバイトで回している仕事も、徐々に仲間を増やし、お客様ごとで取り組むチームを変えられるようになりたいです。また、今はWebに限定したサービスだけを扱っていますが、ゆくゆくは、POPやコピー、看板などトータルでお客様にいろいろな提案ができるようになれれば、と。
目指す会社の姿は?
会社を大きくしようとかそういった気持ちは正直あまりありません。自分でいうのも変ですが、私はよくお客様から、「まじめ」とか「働きすぎ」とか、言われます。お客様から「さんざん騙されてきたけど、やっと本物に出会えた」と、そう突然頂いた電話でお礼を言われたときは本当に嬉しかったですね。そういう愚直ともいえる部分も大切にして、一社ごとに深い付き合いをして、お客様に「ありがとう」と言われ続けたいです。
素晴らしい志ですね。それでは、これを読んでいるクリエイターの皆さんに一言お願いします。
お金のために動くのではなく、「やる」と決めたことは曲げずに何でもやって逆に「やらない」と決めたことも徹底していってほしいです。どんな些細なことでも「その道ならこの人」と言われるような意識でやってほしいし、私もそうありたいと思います。
取材日:2018年8月29日 ライター:有村千裕
株式会社クラフト
- 代表者名:武内 勝
- 設立年月:2014年10月
- 事業内容:Webコンサルティング
- 所在地:福岡県福岡市中央区大名2丁目4-31 新赤坂ビル4階
- URL:http://www.crft.jp/
- 問い合わせ:上記ホームページのお問い合わせフォームより