向き合っている仕事は楽しいか?楽しそうか?いつもそれを判断基準とする会社でありたい
- 仙台
- 株式会社 AndHA 代表取締役 三浦 崇 氏
人をニヤリとさせる少しの驚きは心地いい。それをいつも目指しています。
経営理念の「add a little surprise」についてお聞かせください
モノづくりの会社だから「何か一本の芯みたいなものがないとダメだよね」と役員たちで話し合い、人が感情を揺り動かされるようなものを考える会社にしていこうと決めました。人の感情は全ての起点が「驚き」にあります。自分の想像と違っていたから、楽しい、嬉しい、泣けるんです。何かを作るときには、常に驚きや良い意味で期待を裏切るものを提供していきたいと考え、これが経営理念になりました。
社名の由来もそこにあると伺いました
その「驚き」については、人が想像できないような、びっくりするというものではなく、少し先の未来を見るくらいの「はたと気づく」や「ハっとする」くらいが一番心地よいのではないかと思うことから、色々と考える中で「ハっとする」は英語で何というのかとGoogle翻訳してみたんです。表示されたのは、なんと誤訳の「and ha」でした。でもアンドエイチエーという響きがいいということで、社名をAndHAに決めたんです。
Web関連の仕事に携わられたきっかけについてお聞かせください
仙台から山形大学へ進学し、大学院に残って磁力によって硬さが変わる磁性ゲルの研究を行っていました。研究は99%の失敗の上に仮説を重ね、検証を繰り返していく作業で、結果をすぐに見られないことが性に合わないと感じるようになったんです。 このときゼロベースで何が自分に合うのか?何に興味を持てるのかと自問自答を繰り返し、Webが面白い!と感じたことから独学で勉強を始めました。
仙台でWeb関連の会社への就職活動をされたのですか?
故郷でもある仙台と東京で就職活動を行うなかで、学生の調べる範囲には限界があり、当時、自分が面白いと思える企業を、仙台ですぐには見つけられませんでした。いずれは自分が入社したくなるような面白いと思う会社を、仙台で立ち上げたいという思いがあったので、仙台での就職にこだわりました。
起業した会社が軌道に乗るまではがむしゃらに頑張った
就職してから起業されるまでの期間がかなり短かったと伺いましたが。
在学当時、小中学校の同級生と3人でルームシェアをしていて、このメンバーで会社を作りたいという思いを共有し勉強を進めると同時に、少しずつ仕事を行っていました。卒業を待たず大学院2年生の春に中退して就職しましたが、本業に支障をきたさない範囲であれば、友人と行っている仕事は継続していてもよいという了承を得て、二足の草鞋を履くことになりました。 当時、DeNA(ディー・エヌ・エー)やGREE(グリー)のアプリが流行っていたのですが、あるアプリコンテストに3人で出場したところ優勝して、そのアプリ開発を本格的に始めるという大きなプロジェクトが立ち上がることになりました。その結果、勤務先を退社し、他2名を加えた同級生5名で前身である合同会社チームサンタを設立しました。
チームサンタからAndHAにいたるまでのお話を伺えますか
ルームシェアをしていた場所でスタートした合同会社は、3年目に事務所を借りて、5期目を迎えたところで、株式会社への変更に伴い社名もAndHAに変更しました。と、文字にしてしまえばとても順調のようですが、コンテスト優勝からの流れで起業したようなもので、今考えると無謀でした。仕事もないなか(自分を含めた)5名を養うことがいかに難しいかを思い知りました。最初の1年は死に物狂いで本当にきつかった。飛び込み営業はもちろん、勉強会などで積極的に人のつながりを作って、外注の小さな仕事など来るもの拒まずで必死にかき集めました。自分の給与は1年半出なかったです。でも徐々に仕事を受注することができて、なんとか繋がったというのが現実でしたね。
AndHAの3つの事業について
現在の事業内容についてお聞かせください
クライアントワーク(Webサイト・アプリ制作)、自社サービス(Paper&Inc)、3Dサービス(masterplan)の3つの柱があります。クライアントワークにおいては、制作だけではなくWebに詳しい広告代理店のような進め方を求められます。目的を実現するための企画を考えるところから、プレゼンも含めゴールまでを提案します。何をどうしていくか?という「答え」を出していくことが弊社の一番の強みです。 (参考URL https://and-ha.com/works_cat/client/)
自社サービス「Paper&Inc」についてお聞かせください
このサービスは2014年にGoogleが発表したデザインのガイドライン「マテリアルデザイン」に沿って作ったWebページを掲載しているポータルサイトで、一般の方向けのサービスではありません。マテリアルデザインは人が心地よくWebページを操作するために必要な条件を、人間工学や心理学などをベースに考え尽くされたもので、明確なフォーマットが決まっているのですが、理解するには少々難しいです。このサイトはデザイナーの方に参考にしていただいたり、制作会社やクライアントの方に弊社のスキルとしてご覧いただくなど、プロモーションの一つとして掲げています。 (参考URL https://and-ha.com/works/paperink/)
3Dサービス(masterplan)についてお聞かせください
新しい施設や店舗の建設・施工時に、完成形を立体的に可視化するサービスです。 これはある商業施設が新店舗を出店する際に製作しパッケージ化したものです。出店時には施設の高さや、どの位置から店舗が見えるかなど、現地での調査に多大な労力を費やすのですが、それを画面上でできるように街そのものをバーチャルで造りました。画面上で建物の高さを変えてシミュレーションした時、様々な方向や場所からどう見えるかという検証も、クリック一つで簡単に確認できるというものです。社内での意思決定もソフトで可視化して説明できるためスムーズに行えます。他には飲食店内のレイアウト時の導線確認を実際にテーブルや椅子は動かすことなく手軽に行えるなど、応用範囲が広いので今後提案の幅も広がっていくでしょう。 (参考URL https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=dZ9eGf7VtiA)
気の合う人たちと楽しい仕事ができるのが最上
仕事をするうえで大切にされていることは何ですか?
Webの仕事は世界中どこでも繋がっているので、スキルさえあれば誰でも仕事を依頼したり、されたりがほかの業種よりも簡単と思われますが、7、8年この仕事を通して感じるのは、やはり人とのつながりが一番大事と思うことが多いです。この人とこの仕事をすると楽しいという感覚を自分自身は大切にしています。例えば新たにほかの方に依頼すればコストが低くなるとしても、簡単に依頼先を変更するということはありません。これは社員に対しても同様です。今まで一緒に過ごしてきた時間で生まれた信頼や楽しさはコストで測れません。あくまでも自分の考えですが、楽しくなければ仕事をする意味がないと思っています。そして、依頼元・先、社員、自分も含めて仕事につながる人たちが、お互いハッピーになれる仕事をしていこうと思っています。
自分の思考のベース、軸となるものを常に考えることが大切
クリエイティブの仕事についてお聞かせください
必死で仕事を集めていた時に、「アプリ企画で優勝した」ということを武器にしていたためか現在も相談されることが多く、会社の周年事業でWebを使って何かやりたいから提案してほしいといった、ザックリした案件が多いのです。相手のやりたいことを聞き取りして、多数ある選択肢のなかから最善を選んで、プロモーションの伝わり方と、こうなるでしょうというゴールまでを、自分なりの答えを出して提案するのですが、これがクリエイティブの仕事だと感じています。
これから必要だと感じられている能力とは?
自分も迷っている部分ではありますが、今クリエイティブにかかわる人たちの転換期だと感じています。4、5年前でしたら、大学生の間に特別なスキルを磨いた方がいいよと話していたんですが、いまはGoogleなどで検索するとすぐに答えや選択肢が見つかります。各種機器の性能が良くなったこともあり、プロフェッショナルの必要性が昔より薄れてきているのです。多数ある選択肢のなかで、あなたが求めているのはこれですよね?と提案できる人が求められています。何をしたら何が得られるのか?という答えを提示できる能力が必要なのだと思っています。
それには何を学ぶ必要があるとお考えでしょうか
少し前はコミュニケーション能力と言われていたのですが、もっと深い自分の思考のベース、自分の考え方の元となる「軸」を持つことが必要なのではないでしょうか。説明が難しいのですが、例えば、私の実家はお寺ですが、改めて自分の思考のベースに大きな影響を与えている仏教と東洋思想について学んでいます。昔から廃れないものには何かの軸や正解といったものがあると思います。キリスト教やイスラム教など、それぞれの国の文化や歴史、考え方の基軸に大きな影響力を持つものですから、その宗教を学ぶだけでその国や、それに従っている大勢の人たちを大まかですが掴めます。
逆に「では自分の考えの軸は?」と自問して、思考のベースになるものを把握し、何か提案するときに正解はこれと言える判断基準(軸)を持っていることが、必要だと思うのです。アートであれば、作品は作者が自分の考えを考え尽くして形にしたものだから、作者の思想の塊と言えて、その背景を知るだけでも影響を受けて、自分の方向性や軸を考える助けとなるのではないでしょうか。
立ち止まったら終わるから動き続けてほしい
今後どのような会社にしていきたいとお考えでしょうか
現在は私の夢でもある新卒採用を行いたいと考えており、育成するためにはある程度の人数規模が必要となりますので、会社規模をもう少し大きくしたいと考えています。その先は少数精鋭にするか?など役員と共に考えていくことになります。Webを軸にブレずに事業を行っていくことはずっと変わることはありません。
オフィスの仕切りが一切ないことにもこだわりがあるとお聞きしましたが
過去に希望者はリモートで仕事ができるという施策を行ったのですが、止めてしまいました。一緒に居て、それぞれの担当デザイナーとプログラマーとディレクターが雑談することはとても重要で、仕事のことだけを話しても、成長もなければクオリティーも落ちると私は認識しています。オフィスが1階と2階に分かれたら、結局グループでまとまって敵対したという事例を聞いたこともあるので、全員同じ空間で仕事をすることを大切にしています。集中したいときには煩わしいこともあるのですが、そのデメリットよりもメリットのほうが大きいと感じています。
一緒に働くスタッフにどのようなことを求められますか?
新しいものに出会った時に吸収できるクセ、勉強グセをつけてほしいです。止まったら終わりの業界ですから、なんでもいいので自分が気になったこと、ものに出会ったら、その背景や歴史など深堀りして自分なりに思考を広げるクセをつけてほしいです。本も読んでほしいですね。いま本を読まない人が増えていて、学校を卒業してからは年に10冊読まない人が9割だそうです。興味をもって本を読むだけでも大きな学びがありますし、仕事にも生き方にも必ず活きると思います。
取材日:2018年11月21日 ライター:桐生由規
株式会社アンドエイチエー(AndHA)
- 代表者名:代表取締役 三浦 崇
- 設立年月:2012年1月
- 資本金:3,000,000円
- 事業内容:
- ◇WEBサイト制作事業(・キャンペーンサイト制作・コーポレートサイト制作・ランディングページ制作・保守、運用・システム開発)
- ◇アプリ制作事業(・iphoneアプリ制作・Androidアプリ制作)
- ◇3Dモデリング事業
- 所在地:〒980-0014 宮城県仙台市青葉区本町1-12-12 GMビルディング6F
- TEL:022-302-5351
- FAX:022-302-5352
- URL:https://and-ha.com/