ゲーム2019.02.20

ゲームの力で世の中を便利に

福岡
株式会社トライコア 代表取締役 由比 建 氏
ゲームやVRなどのデジタルコンテンツの制作を⾏い、自社でもゲームを開発している株式会社トライコア。2017年に誕生し、たった2年でタニタや三菱地所など、大手のデジタルコンテンツも多く手がけ、海外のショーでも展示が展開されるなど、急成長の兆しを見せています。今後の動きが注目される新進気鋭の会社の代表に、運営にあたって抱く強い使命感と、その根底にあるゲームへの絶えることのない情熱について語っていただきました。

好きなゲームを仕事に、ゲーム好きな仲間と会社を

ゲームの開発が現在の主な仕事ですが、やはりもともとゲームがお好きだったのですか?

そうですね。大好きでした。小学生のとき、私の家では夜にゲームをしてはいけないという決まりがあったのですが、その裏をかいて朝3時に起きてひたすらゲームをしていたような子供で。当時はスーパーファミコンで「スーパーマリオブラザーズ」(任天堂)や「スーパーメトロイド」(任天堂)に夢中になっていました。「ファイナルファンタジーVII」(スクエイア、現スクエア・エニックス)の長いエンディングが見たくて学校に遅刻して親に怒られたこともありましたね。中学の時はインターネット黎明期だったので、友人と素人の小説サイトを作ったことをきっかけにゲームを作ろう、という話になって、ゲーム自体は作らないまでもゲームに登場するようなドット絵を作ったりしてゲームの世界に興味をもっていました。

ゲームを作ることを仕事にしようと思ったのはいつ頃でしょうか?

高校2年のころに「RPGツクール」(株式会社KADOKAWA)というRPGゲームを制作するソフトで、友人と自分たちの住む町を舞台にしたゲームを作りはじめました。友人の家をダンジョンにしたりして。内輪ノリのものでしたが、今遊んでもなかなか面白いものができました。そんな中でゲームを作る楽しさを感じたんですね。それから進路を考えるときに、保育士、海洋生物学者、ゲームを作る人、という3つの夢から、ゲームの道を選びました。初めはゲームの絵を描く人になろうと思っていたのですが、「万が一ゲームでダメでも食べていけるものにしたら?」と母にアドバイスされて、プログラミングを学ぶ専門学校に進みました。結果的にそのプログラミングの道が自分に合っていたようです。

そこからどのように本格的な仕事の道に進まれましたか?

専門学校2年の時から、ゲーム制作会社の株式会社サイバーコネクトツーで報酬をいただけるインターンシップ「プログラムマスター」に応募し、採用していただきました。 世の中に出回っている人気のゲームの最先端にかかわることができる環境でPlayStation®3のソフトなどを多く手がけました。ここで卒業後も働き、計8年間を過ごしました。とてもハードな仕事でしたが、何よりもゲームを作ることが楽しいと思えましたし、ここでゲーム作りの基盤となる技術や、「ゲーム開発者はかくあるべし!」という心構えを身につけられたと思っています。

そこからどのように起業を?

サイバーコネクトツーの後、ブラウザゲーム※1の制作会社で1年働いて、大きなプロジェクトを任されました。その時に、専門学校の同期を含む交友の深かったプロのクリエイターたちと取り組んだその仕事が思いのほか早く進められ、いいものを作ることができて。このメンバーすごいな、と思ったんです。それから1年間フリーランスで働いて、その時の3DCGアーティストとプランナーと一緒に3人で仕事を始めることにしました。初めはそれぞれフリーランスの立場で自分の仕事をこなしながらなんとか一緒に仕事をしようとしていましたが、あまり時間の融通が利かなかったり、クオリティーも上がらずに。そこで定期的に給与がもらえる会社の形を作って、集中して仕事に取り組める環境を作ったほうがよいのでは、と、皆の銀行になるつもりで起業しました。当時29歳でしたので、なんとか20代のうちに起業したいという気持ちもありましたね。
※1ブラウザゲームとは、ウェブブラウザ上にて遊べるゲームの総

自分のエゴではなくクライアントとのコミュニケーションを大切に

そうして起業なさって、現在どんな仕事が主なんでしょうか?

主なものが、会社として業務委託を受けて、ほかの会社がゲームやデジタルコンテンツを作る際に開発のお手伝いをする、という形のものです。2Dのデザインができるスタッフやシナリオライターなど数人、同種別の職種同士二人でチームを組んで、委託先で仕事をしています。一般的なゲームの開発はもちろんですが、最近印象に残っているものですと、タニタさんの体重計とピンボールを合わせた「TANITA PINBALL」の開発にかかわりました。この商品はアメリカのラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES2019」で展示されました。

素晴らしい実績ですね。そのような仕事をこなせる御社の強みは何でしょうか?

なんといっても全員がそれぞれの分野のベテランで、仕事が早く、プロ意識が強いことです。プロ意識が強い、というのは自分のエゴのために作りたいものを作ろうとするのではなく、先方とのコミュニケーションが取れる、ということです。

なるほど。ゲームを作る方というと一般的に寡黙なイメージもあるかと思いますが。

トライコアの社員は皆、その点で優れています。たとえば先方がなんとなく言った「いい感じで」という言葉を実際にゲームにしたら、プログラムにしたら、具体的にどんな提案ができるのか、相手とのコミュニケーションを大切にしてそのイメージを実際の商品として実現するメンバーばかりです。

ここまでお伺いしていて、単にいわゆるゲームだけを作っているというイメージではないですね。

そこも私たちの強みです。全員ゲームは大好きですが、ゲームを作ることばかりにこだわっていない。ゲームでなくても、要求があれば私たちの技術を使って実現できるものは積極的に形にしています。例えば三菱地所さんの都市直下型地震体験VRなどもその例ですね。株式会社トヨタプロダクションエンジニアリングのVRショールームなども手掛けさせていただきました。ゲームにとらわれず面白いものを作る会社と思っているので、私はトライコアを「ゲーム制作会社」ではなく「デジタルコンテンツ制作会社」と表現しています。

世の中を便利にすること、ゲーム業界を健全にすること、目標はこの2本柱

大手の会社の仕事もたくさん手掛けて、勢いに乗っているように感じますが、これからの御社の目標は?

柱は二つあるのですが、そのうちの一つがゲームを使って、あるいはゲームの技術を使って、世の中をもっと便利にしたい、ということです。たとえば、銀行のATMとか、電子レンジとか、インターフェースが良くない。もっと反応が良ければ、とイライラしている人は多いはずです。ああいう日常の場面にもゲーム界の技術を応用すれば、もっと便利なものを「当たり前」にしていけると思っています。そうして自分たちが作ったコンテンツで、世の中のものがもっと使いやすくなって、それを私たちも実感したいと思っています。

もう一つの柱はなんでしょうか

まず、ゲーム業界を健全にする、ということですね。これまでゲーム業界にはどれだけ残業できるかが正義、というようなハードな風潮があった。そんな風にものすごく苦労をして、さらに博打を打つように発売する。これは決して健全とは言えないんじゃないかな、と思っています。そして、ゲーム作りをより身近なものにしたいですね。私たちは、もっとインディーズの市場のようにカジュアルに、作っている本人たちが本当に作りたくて、楽しめるゲームを作ることができる風潮を作って、結果としてそれがきちんと売れるような環境を作りたいんです。この二つの柱は私にとって「使命」です。

ゲームが好き。そのワクワクを忘れてはいけない

現在はオリジナルのゲームを作ってはいないのでしょうか。

それが、当初は業務委託でお金をためてから、それを資金に自社のゲームを作ろうという話をしていたはずが、最近やはりゲームを作りたくなってしまって。仕事の合間に皆でノベルゲームを作り始めてしまったんです。そしたらそれがついエスカレートして、ついにフル3Dグラフィックスゲームが完成してしまいました。「夕鬼(ゆうおに)」というゲームなんですが、先日、台北ゲームショウ2019に出展しました。私たちが懐かしく思う、平成初期の懐かしさをゲームにしたものです。テレビにもあまり規制がなく、今では考えられない事件が起こっていたり、便利さと不便さのカオスというか。あの時代の面白さを平成最後に伝えられるような作品になっていると思います。近くNintendo SwitchとSteam VRから発売予定です。

聞いているだけで楽しそうですね。やはり原動力はゲームの楽しさですか?

はい。今も仕事の合間にたくさんゲームをしていますし、作っていてつらい時も、ゲームのワクワク感だけは忘れないようにしています。ゲームを作る面白さって誕生日パーティーとかでサプライズを仕掛ける面白さに似ています。これをプレイした人どんな反応するかな、というのが一番の楽しみです。

最後にこれからクリエイターを目指す方にメッセージをお願いします。

ゲームの業界はまだまだ未成熟です。だからこそ、何か思うところがあれば自分たちで変えるつもりで若い感性を生かしてぶつかってほしいです。そうすれば変わる業界でもあります。ゲームを作っていると「好き」の気持ちを忘れそうになりますが、そんなときはきっとゲームをやったら初心を思い出せるはず。自分が好きでやってるという気持ちを忘れないでいてほしいです。私も「すげえって言われたい」という、始めた頃の純粋な気持ちを常に大切にしています。

取材日:2019年1月29日 ライター:有村 千裕

株式会社トライコア

  • 代表者名:代表取締役 由比 建
  • 設立年月:2017年5月
  • 事業内容:コンピューターゲームの企画・制作・販売、デジタルコンテンツの企画・制作・販売、専門学校等での講師業務、各種セミナー等の企画・運営
  • 所在地:〒810-0001 福岡県福岡市中央区天神1丁目15-5天神明治ビル2F
  • URL:http://www.tri-core.co.jp
  • お問い合わせ先:t.yui@tri-core.co.jp

TAGS of TOPICS

続きを読む
TOP