グラフィック2019.04.10

「京都」という地の利を生かし、手描きという「アナログ」にこだわる図案家集団

京都
株式会社GARAGELAND(ガレージランド)代表取締役 松生 剛 氏
世界遺産「二条城」の南、神泉苑の旧敷地内に佇むビルの3階に“図案家”と呼ばれるプリントデザインに特化したテキスタイルデザイナーのアトリエ「GARAGELAND(ガレージランド)」があります。ここでは染織文化が残る京都ならではの筆による手描きにこだわり、さまざまな意匠を製作しています。今回、ガレージランドの代表を務める松生剛(まついけつよし)さんにこれまでのいきさつや将来のビジョンに到るまで、お話をお伺いしました。

下積みがあるから「今」がある

まずは、会社設立までのいきさつについて教えてください。

幼い頃から絵を描くのが好きで、いつか“ものづくり”に関わる仕事がしたいと考えていました。今思えば、友禅の図案家だった父の影響もあったと思います。大学の時、友達の紹介でテキスタイルデザインの製作を行う会社にアルバイトとして入り、卒業後も継続してその会社に勤めることになりました。当時はパソコンではなく、筆を使用した手描きのデザインを行なっていて、まさに「先生と弟子」の関係のように下積みを重ねる日々でした。いつかは独立したいと思っていたので、12年ほど働いたのち、その想いに従う形で独立。まずは個人事業主として、自宅に3畳一間のアトリエを設けて図案描きの仕事を請け負いましたが、もっと外に出て行くべきという考えに至り、2002年に京都市伏見区に事務所を構え、その後、2013年に現在の二条城南に位置するビルに拠点を移し、事務所兼アトリエを構えました。活動の場をより広げるためには「信用」を確保する必要性を感じ、同年9月に株式会社GARAGELANDを設立しました。

独立後の苦労はありましたか?

正直、会社で働いていた時の方が大変だったので、独立後に苦労を感じたことはあまりありません。もちろん、資金のやりくりなど気持ち的な負担はありますが、前の会社で下積みとして学ばせていただいたさまざまな経験が独立後に生きたと感謝しています。

現在の事業について詳しく教えてください。

プリントに特化したテキスタイルデザイン、つまり図案の製作を行っています。当社の特徴としては、コンピューターによる製作も行いますが、筆を使った手描きデザインの製作に長けていることです。また、設立時よりオリジナル図案の製作に力を入れており、常に2,000点以上もの図案をストックしています。オファーだけに頼らず自分たちで考えて作ったデザインを積極的に見て頂ける機会を作り、自社で自立できることを考えた意匠製作を心がけています。

描きたいものを描く

松生さんがデザインする上で、大切にしていることを教えて下さい。

シンプルですが、「描きたいものを描く」ことです。嫌々描くと、やはり人を感動させるものはできません。ですので、社員に対しても常日頃、「楽しんで描いたもん勝ち」と伝えています。楽しんで描けば早く仕上がるし、自然と良いものができ上がります。テクニックを要した図案が必ず売れる訳ではなく、僕みたいな30年選手より、今年入社した若い社員の絵がいきなり売れることがあるんです。そこがテキスタイルデザインの面白さでもあり、難しさでもあると感じています。

現在、スタッフは何名在籍していますか?

社内に5名、外注さんが13名の合計18名で仕事をしています。いきなり増員したわけではなく、その都度、必要に応じて人が増えた感じです。最初は知り合いに紹介してもらったり、大学の掲示板で募集の張り紙を掲示したりしていましたが、現在ではHPの問い合わせフォームやメールで直接連絡をいただくようになりました。今でも毎月1~2人はお問い合わせをいただくので、真剣に考えてくださっている方には一度はお会いするようにしています。

御社の強みについて教えてください。

プリント技術の進歩により手描きの繊細な表現も可能になったことと、手描きというアナログな部分が再評価されていることが強みになっているのだと思います。世の中が便利になりすぎて、逆に手間がかかることに価値を見出す傾向があり、そこに「京都」というストーリーが相まって、価値につながったと感じています。

やはり京都に本社を置くということは強みになっていますか?

関西の中で仕事していた時は感じなかったのですが、東京へも弊社の図案展などで行く機会が増えたことで、京都に本社に置いている強みを感じるようになりました。京都という場所で筆を使って描き、和柄なども手がけているということを高く評価いただき、海外からのオファーも増えています。

自社でのブランド化を進める

将来的なビジョンについて教えてください。

我々の業界を取り巻く環境は年を追うごとに厳しさが増し、図案家としての需要の減少は逆らえないでしょう。しかし、図案家としてのソウルは大切に更なる成長を目指したいと思っています。また、製作販売だけではなく、オリジナルテキスタイルブランドを展開していくことも進めています。その一つが「uwaru(うわる)」です。オリジナル生地をはじめ、クッションカバーなど、自社でデザインした製品をオンラインサイトにて販売しています。今後も京都ならではのオリジナル性のあるブランドを作り上げていきたいと考えています。そして、どんどん海外にも進出できるように仕掛けていきたいです。

将来のビジョンを実現するためにはどういう人材が必要ですか?

会社としての成長を促すためには、さまざまな知識や経験を広く持っておられる人材と、一つのことに特化した奥行き感のある知識経験を持っておられる人材の両方が必要だと考えています。特に自分自身に知識や技術などさまざまな投資をし続ける人や、表現したいことを追求し続ける人に魅力を感じます。

当サイトをご覧のクリエイターの皆さんにアドバイスをお願いします。

自分のやりたいことを常に自問自答することで、自身の信念や個性がより強靭になりどんな時でもブレない軸となります。そういう人はこれからの世の中においてきっと必要とされるでしょう。そのためには、自分で「これしかできない」と決めつけるのではなく、色んなことにチャレンジして欲しいと思います。若いときにどれだけやりたいことに時間を重ねられたかが、その後の仕事に生きてくると思うのでがんばっていただきたいです。

取材日:2019年3月6日 ライター:大垣 知哉

 

株式会社GARAGELAND(ガレージランド)

  • 代表者名:代表取締役社長 松生 剛
  • 設立年月:2013年11月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:服地図案をメインにインテリア・アパレル・和装等、テキスタイル関連の幅広いジャンルの図案の制作販売。
  • 所在地:京都本社:〒604-8381 京都市中京区西ノ京職司町67-15 1/8bldg.3F
  • 東京オフィス:〒153-0064東京都目黒区下目黒1-4-6 ロイヤル目黒401
  • URL:https://www.ds-garageland.com
  • お問い合わせ先:info@ds-garageland.com
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