開発者に優しい会社として、ユーザーに優しいものを作りたい
ゲーム開発を出発点にした、デジタルコンテンツ制作会社「キャットスタジオ」。4名の合同会社として、自社のLINEスタンプや3Dモデルなどを制作しながら、ゲームの技術を使って、障碍者のためのシステムや、障碍者スポーツへの貢献も始めている。社員の働きやすさを大切にしつつ「ゲーム制作」の枠を超え、医療やスポーツにも貢献し始めた注目の会社を訪れ、その成り立ちと意気込みについて話を聞きました。
クリエイターに優しい会社を作りたい
キャットスタジオのメンバーはどのようにして集まったのですか?
私はプログラマーとして、2000年から大手のゲーム会社で人気ゲームの開発に携わっていました。5年ほどで、別のゲーム開発会社に転職をしたのですが、その会社の経営が傾いたこともあり、開業にいたりました。以前の会社では、スケジュールなどもきつかったりして、徹夜で仕事をしたこともあります。当時、少人数でも開発ができるような状況が出てきたこともあり、2008年ごろからネットなどで、会社設立のための知識や情報を集め始め、最初に勤めていた会社でのテクニカルなやり取りを通じ信頼していたデザイナーの下川善央(しもかわ よしひさ)に声をかけて、株式会社よりも手順がより簡単な合同会社という形で、会社を作りました。
初めは二人からのスタートだったんですね。会社の名前もかわいらしいですが、どんな由来があるのですか?
少し柔らかい面白味のある名前にしたいと思って、いくつかネタのように候補を挙げて「キャットスタジオ」という名前になりました。当時「クロ」という猫を飼っていたので。今では会社のロゴなどにも使っていて、気に入っています。
それから、どのように事業を展開して今のメンバーになったのでしょうか?
初めは、前に勤めていた会社での関係先から仕事を頂き、二人がそれぞれ在宅で作業を進める形で仕事をしていきました。また、勉強もかねてオリジナルのiPhone用アプリの開発も始めました。赤ちゃんの言葉を音声として記録して、成長の記録や会話のネタにしてもらおうという「赤ちゃん語辞典」(https://www.catstudio.jp/iphone_baby.html)が初めてのオリジナルのアプリです。このアプリは、障碍者の方にもご利用いただいているという声も頂いて、思わぬところで誰かのお役に立てていることを知って、やりがいを感じました。初期からの約7年は、二人がそれぞれ在宅で作業を進める形で仕事をして、その後、以前の会社で一緒に仕事をしていたデザイナー仲間を2016年、プログラマーを2018年に迎えて、現在の形になりました。
ゲームから、医療スポーツへ。意地でつないだ10年。
取引先に、医療機関の名前も挙がっているようですがこれはどういった仕事を?
アプリの仕事を定期的にもらっていた学生時代の友人から新しく足が不自由な方向けのシステム開発の話を頂きました。正常な歩行の際の筋肉の活動電位を検知して、そのデータを実際にリハビリにあたる理学療法士さんの役に立てていただくというものでした。ゲーム開発で身に着けた知識が医療でも役に立って、うれしい気持ちです。モーションセンサーを使ってさらなる開発も進めたいと考えていて、医療にゲームの技術を生かすということは、これからも挑戦していきたい分野です。
ゲームの枠を超えて、力を発揮できたのですね。ほかにそういったことはありますか?
最近だと、障碍者スポーツでパラリンピックの種目でもあるボッチャタイマー(得点板のモバイルアプリ)の開発です。(ボッチャとは、白い的となるたまに向かって青、もしくは赤のボールを投げてその距離の近さを競う「床の上のカーリング」と呼ばれるゲーム)ボッチャタイマー以外にも、私たちの開発したアプリが、現在も世界中の試合や練習の現場で使われていると聞いています。日本の有名な選手もそのアプリを使ってくれていることを知った時には、日本の役に立てたというやりがいを感じました。
作ったコンテンツの活躍の幅が広がっていますね。その中でも御社ならでは強みは何だと思われますか?
全員がプロとしての経験をしっかり持っていることです。4人それぞれが年齢の変化とともに柔軟に仕事に向かい合えるようになっていますし、請け負った仕事に責任をもってお互いを信頼しあって仕事ができています。これからは、この会社の良さを生かしながらVR(Virtual Reality、仮想現実)、MR(Mixed Reality、複合現実)などの分野にも乗り出していきたいと思っています。
そうやって会社も10年生き抜いてきたのですね。
それは、半ば意地のような気持ちで続けてきたとも言えます。とにかく取引先に迷惑をかけないようにやってきたら、気づけば10年がたっていました。自分たちでも、よく続いたな、と感じています。10年たって、社会の在り方がわかるようになってきました。基本であるクリエイターを大切にする姿勢を守り、フリーランスに近い自由な働き方を開拓しながら、その結果として、お客様の喜びの声を直接聞けることも大きな喜びとなっています。
これからクリエイティブの世界、デジタルコンテンツの世界に乗り出そうとするクリエイターの皆さんにメッセージをお願いします。
まずはいろんなことに興味を持つことを大切にしてほしいです。人は知らないことには挑戦できません。それは、人生にとっても大きな損失だと思います。私も常に世の中に敏感であるために、いつもネットでの情報収集をしています。そして、相手がやりたいことをしっかり読み取って形にするためには、経験と知識だけでなく、コミュニケーション能力も大切です。相手の本当に欲しいものを見抜くコミュニケーション能力を磨くことも怠らないでほしいです。
取材日:2019年4月26日 ライター:有村 千裕
合同会社キャットスタジオ
- 代表者名:代表社員 御姓 智宏
- 設立年月:2009年3月
- 資本金:150万円
- 事業内容:デジタルコンテンツ制作
- 所在地:〒810-0014 福岡市中央区平尾2-3-23KASAHARAビル201号室
- URL:http://www.catstudio.jp
- お問い合わせ先:support@catstudio.jp