「京都」という土地の利を活かし、新たなインバウンド事業を展開
“フレキシブル(Flexible)” “アクト(Act)” “イメージ(Image)” そして、“シップ(Ship)”。それらの言葉を集め「仲間とともに、自由な行動と発想で」という意味を込めて命名された「S-fleage (エスフレイジ)」は京都に本社を置く、インバウンド事業とWeb広告事業を行う会社です。特徴としては、舞妓さんによるお座敷体験を欧米人向けに提供する「Enchanted Time with Maiko」を運営していること。まさに自由な発想から生まれたこの事業はどのように展開し、今に至ったのか?はたまた、同社が将来に描くビジョンとは?今回、烏丸御池にある本社に伺い、代表取締役CEOである永井 雄一(ながい ゆういち)さんに話を聞かせていただきました。
観光都市におけるソリューションとして、訪日外国人観光客向けの舞妓お座敷体験事業を展開
まずは、起業するまでの永井さんのキャリアを教えてください。
学生の頃に、梅田望夫さんの著書「ウェブ進化論」(ちくま新書)に感銘を受けて、いつかWebの世界で独立したいと思っていました。大学卒業後は動画サイトを手がける大手音楽配信会社に入社しましたが、そのサイトが別会社に売却されるタイミングで退社。その後、友人からのリファラル採用でサイバーエージェントに入社しました。担当したのはWebマーケティングです。5年ほどの経験を得て、より独立心が強くなったタイミングで退社し、すぐに「S-fleage (エスフレイジ)」を立ち上げました。
起業当初はどのような事業を展開されていましたか?
最初は一人だったので、サイバーエージェントで培ったWebマーケティングの集客支援事業を展開していました。しかし、京都で事業をする中で、京都の観光資源の魅力やそれを求めて来る外国人観光客の多さを知り、さらに「見たい、来たい、感じたい」というニーズをうまくプロダクトとして提供できていない観光の現状を知り、その課題に対してソリューションを提供したいと思い、インバウンドマーケット事業部を立ち上げました。
それが訪日外国人観光客向け舞妓お座敷体験、「Enchanted Time with Maiko」ですね。
そうです。インタラクティブな観光体験として、舞妓お座敷を体験いただくだけでなく、英語のみのコミュニーケーションを楽しんでいただけるサービスです。東山・八坂通りにある「八坂通り 燕楽」さんで毎週4回開催しており、これまでのべ3,000名を超える外国人観光客にご利用いただいています。
欧米人をターゲットに絞り、Webで集客
新たな事業を始めたときに苦労はありましたか?
従来のWebマーケティングでは10を50や100にするフェーズが多かったのですが、インバウンドマーケット事業においては0からのスタートだったので正直うまくいかない場面もありました。特に、初めて開催した日は前日になっても予約がまったく入らず、会社のメンバーとともに京都の街を駆けずり回り、集客に努めました。最終的には15名くらいの観光客を集めることができ、無事に開催できたのですが、改めて集客の難しさを感じました。
集客はどのような方法を取っているのでしょうか?
お客様との接点は訪日される前と訪日されてからの2つに分けています。訪日される前であればWebでの集客がメイン。事業を始めた当初は国を指定せずにアジアや欧米など幅広い国で、Webでの集客の網を張っていたのですが、事業を進める中で、国によって旅行に求めるニーズが違うことを知りました。例えば、アジアからの観光客は食事や歴史的建造物に興味を示しますが、欧米人は出会う人や文化の成り立ちに興味を示します。ニーズの違うターゲットが混在してしまうと、全ての人に高い満足度を提供できないと思い、ターゲットを欧米からの観光客に特化することを決めました。訪日してから接点としては、京都のホテルにこの事業を知っていただき、コンシェルジュから紹介していただく方法を取っています。これらの集客方法が確立できたことで、やっと事業が軌道に乗り始めました。事業をスタートしてから1年ほど経ってのことです。
起業されたときに展開していたWebマーケティング事業は今も行っているのでしょうか?
インバウンドマーケット事業を展開する過程で、SEOに関する知識と経験が増え、それらの実績をもとに日本の企業様向けにSEOサービスの提供を始めました。昨年の秋頃から始めた事業なのですが、すでにクライアントが増え、インバウンドマーケット事業と2本柱で進めています。
求めているのは、困難に立ち向かえるマインドを持っている人
御社のHPを見るとインターンシップに力を入れていると感じました。
はい、力を入れています。背景としては、僕が学生の時に、自己成長を目指すためにインターンシップを利用したいと考えたのですが、インターンシップ環境が整った会社がほとんどなかった経験からきています。現在でも当時とあまり状況は変わってないと聞くので、インターンシップでしっかり学べる環境を学生の皆さんに提供したいと思い、行なっています。今の学生は優秀な人が多いので、戦力という意味でもインターンシップの学生には期待しています。
社員の育成はどのような方法を取っていますか?
育てる前に、まずは採用に対するこだわりがあります。当社は2016年に設立した比較的新しい会社なので、事業を進める上で新たな出来事が多く、当然困難もあるので、社員にとってはその困難に立ち向う姿勢が大切だと思っています。ですので、困難に立ち向かえるという強いマインドを持っている人を採用するようにしています。そのようなマインドを持っている方であれば、スキルは経験で付いてくるので、特別な教育や育成は必要ないと考えています。
そのようなマインドを持っている人をどのように見分けているのですか?
過去にどんな困難があり、それを乗り越えるためにどのようなことを行ってきたかを面接で聞くようにしています。マインドは教育では変えられないスキルなので、採用で見極める必要があると考えています。
世界で勝負できるプロダクトを生み出す
御社の将来的なビジョンを教えてください。
世界で勝負できるプロダクトを作るというのが1つの大きな目標です。昨今、海外旅行者の数が世界的に増えている中、旅行領域においてはまだまだサービスが出し尽くされていないと感じているので、当社としても旅行領域でさらに事業展開していきたいと考います。つまり、旅行領域をさらにアップデートできる新しいサービスを京都だけでなく、世界に向け提供していきたいと考えています。具体的な構想はお伝えできないのですが、キーワードとして「人」という部分にフォーカスしたサービスを今年の夏から来年にかけて、スタートさせたいと考えています。また、当社のHPをご覧いただければと思います。
さらに京都に本社を置いているという強みが増しますね。
世界的に「最先端の技術」というとシリコンバレーが思い浮かぶのですが、観光でいう「京都」の立ち位置はそれに近いものがあるのではないかと思っています。そのポテンシャルを持っている環境で仕事ができることはまさに有利だと考えています。
最後に、クリエイターの皆さんにアドバイスをください。
採用面接などで「何がしたいのかわからない」と立ち止まってしまい、行動できないという学生の話を聞くのですが、まずは大まかな方向性だけ決めて、行動を起こすことが大切だと伝えるようにしています。方向だけを決めたなら、あとは偶然に任せる。そう思って行動を起こすことで道が開かれ、キャリアとして形成されていくのではないでしょうか。参考にしてください。
取材日:2019年6月11日 ライター:大垣 知哉
株式会社S-fleage(エスフレイジ)
- 代表者名:代表取締役CEO 永井 雄一
- 設立年月:2016年2月
- 資本金:100万円
- 事業内容:インバウンド事業
- 所在地:京都府京都市中京区室町通御池上ル御池之町324-1 御池幸登ビル 7階
- URL:https://www.s-fleage.com
- お問い合わせ先:Tel)075-741-8727(代表)/ Mail)contact@s-fleage.com