“面白い”ことを作るのが仕事をする上での原動力 楽しみながら新しい世界を広げていく
札幌のブライダルシーンを中心に、さまざまな業界の映像制作を行う「WiLL PLANT」。自分自身はデザインも制作もしないが、“面白いこと”を追求し続けてここまで来たという代表取締役の吉井千博(よしい かずひろ)氏に、若い力とともに取り組む制作現場にかける思いや、今後の目的についてお話を伺いました。
さまざまな仕事を経て、全く知らない映像制作の世界へ
起業までの吉井さんの職歴について教えて下さい。
出身は札幌で、高校卒業後に一部上場の自動車部品メーカーに入社しました。そこから輸入車のディーラーを経験して、さらに約10年間は葬儀社で勤務していました。葬儀社はスタッフの数も少なく激務だったこともあり、いい具合に燃え尽きたというか。そこで自ら辞める決断をしたのが31歳の頃。その時には娘も生まれていたので、家族で2年ほど道内を行脚。お祭りでテキ屋もやりました。これがまた、天才的な喋りのスキルでよく売れたんですよ(笑)。そこから「WiLL PLANT」を立ち上げ、マネジメントやコンサルタントのようなことをしていました。法人を立ち上げた時は記念樹を植えるというビジネスモデルを展開したのですが、これは笑っちゃうくらいに失敗しましたね。
そこからどのように現在のビジネスに展開して行くのですか?
そのうち、葬儀社の頃に知り合った映像会社の社長から、手伝って欲しいと声がかかりまして。週に2〜3回社員を指導しつつ、札幌のホテルブライダルに営業を始めたんです。その会社がブライダル映像も手掛けていたのですが数年後、事業をシステム制作に特化させるという話になって。そこで制作の女の子達と組んで、ブライダル映像制作に特化した事業を始めることにしたんです。
現在、ブライダル映像は年間1000本以上の実績だそうですね。
おかげさまで、たくさんの発注をいただいています。
私を含めて3人でスタートした当時は、貯金ゼロで給料もカツカツでしたが、それでもスタッフは着いて来てくれました。喋りしかできない自分が彼女たちに報いるにはとにかく受注だと。お陰様で札幌市内のホテルから信頼をいただくのとともに、結婚式の演出に関するクリエーターが増え、あれよあれよと言う間に社員も現在は10名。複数のパートさんや外部スタッフを頼むまでに規模が拡大していきました。
36〜38歳くらいの頃は、札幌市内のホテルにおけるブライダル映像の受注件数も格段に伸びて、やっと落ち着いて仕事ができるようになりましたね。
社員の提案でアウトドア事業の展開もスタート
クライアントはどのように獲得していったのですか?
会社の立ち上げ時に結婚式回りを行った以外は、ほぼ新規営業をしたことはありません。地元の仲間がさまざまな業界にいるので、彼らからの紹介で取引先が広がっていったという感じでしょうか。何か面白いことをしたいという気持ちが常にあるので、異業種交流会にも積極的に出席し、人と会うようにしています。 顔を合わせて話すことで、仕事へと繋がっていくことも多いですからね。ただ内容がマッチしなさそうであればはっきり断ります。どちらもいい思いをしませんので。 中でも、興味を持ってしまったらタダでもやらせてほしい!ということもあります。 このクライアントさんは熱いハートを持っている!と思ったら手伝いたくなるんです。
事務所も、吉井さんらしい“面白さ”に溢れていますね。
きれいな駅チカのオフィスビルよりも、玉ネギ倉庫に惹かれました(笑)。会社を立ち上げた時は自宅で作業をしていましたが、スタッフが増えたのを機に9畳1ルームの部屋を借り、そこからさらに一軒家を借りて3年ほど過ごし、2016年に現在の場所に移転しました。築40年くらいの建物を活かして、みんなで少しずつ壁を塗ったり床板を貼ったりして仕上げましたので、自分たちの作品の1つという意識も強いです。最終形態は、屋根が開いて50機くらいドローンがドバーって出てきたらウケますよね〜。
1階にはアウトドアショップも展開していますね。
2017年に、アウトドア好きの社員が「Snow Peak(スノーピーク)」の社長と知り合い、そこから話が進んで、翌年10月にSnow Peak公式サポートショップ「CONPASS(コンパス)」〜野遊びコンシェルジュ〜(URL:https://www.noasobi.camp/concept)として、展開することになりました。1階には、Snow Peakのテントや商品を展示販売しており、キャンプ用品のレンタルも行っています。ブランドのファンではなく、どちらかというとキャンプ初心者の方に、もっと気軽に製品に触れてもらうための場として設営の仕方や道具の使い方をレクチャーしたり、家族のスタイルや人数などに合わせたキャンプのプランを立てて、サポートをしています。冬には大きなテントを吊って、その中で打ち合わせをすることもありますが、テントでやれるの?ってリクエストも来ます(笑)。
腕のいいプロ集団が、最初から最後まで自社で制作を完結
御社の強みをひと言で言うなら。
私たちの強みは映像会社がWeb制作スキルも持っているという点です。Web制作会社に頼んでも、動画部分が外注であれば、その会社の腕によって仕上がりや金額にも大きな差が生じますよね。
その点私たちは、プロデュースからディレクション、撮影・編集、完パケまで自社で行うので、クオリティの高さはもちろん、時間のロスもなく、話も早くまとまりやすいのが特徴でしょうか。社員にはやりたいことをやってみたらと言っていますが、基本的には、動画制作が入るものしか受けません。トップページに動画を入れたり、求人ページにインタビューを掲載するといった動画コンテンツを作れるからこそ、高い価値が出ると思っています。
お取引先は主にどういったところになりますか?
現在は大手ホテルチェーンやレストランブライダル業者、レジャー施設、大手スーパーをメインにお取り引きさせていただいています。最近ですと、企業のHPや内部資料用の映像、介護事業会社の映像制作なども行っていますし、単発で名刺やパンフレット、フライヤーなどの紙媒体にも対応しています。編集スタッフが5人いるのですが、全員腕のいい子達です。ブライダルに特化したスタッフやエディター寄りのスタッフ、デザインが得意なスタッフと、セクションも様々なので、プロジェクトに合わせてその時々でチームを決めています。
人間的な魅力を持つスタッフたちが“面白いもの”を提案し続ける
スタッフは若い方が多いようですが、採用のポイントを教えてください。
とにかく夢を持っている人ですね。人と違う感性を持っている点に面白さを感じます。いわゆるレールから外れているというか、ひねくれているというか、あえてそこにハマらない人(笑)。個性や自分の“好き”を貫いていくバカ正直さを持っているというか。そういう人に人間的らしさを感じます。ただパソコンに向かって作業をしたいという人は、うちにはいないですね。何か新しいことに取り組みたい人、何か面白いものを作りたいなら一緒にやろう!という感じですかね。
職場の環境づくりで心がけていることはありますか?
よく聞くセリフかもしれませんが、社員は友人であり家族だと思っています。みんな名字ではなく名前やあだ名で呼んでいますし、毎週呼び方を変えてみたり(笑)。私自身も社長とは呼ばせていません。呼び方ひとつでも何かしらの距離が生まれますし、そうした距離があると仕事に必要な相談がしにくくなりますよね。社長といっても偉いわけでも遠い存在なわけでもありませんから、みんなには吉井さんと呼ばれています。
映像制作会社で平日に定休日を設けているのも、珍しいですよね。
結婚式の取り扱いが多く、週末は人員が必要になりますので、うちは火曜日を定休日にしています。
会社としてはほぼ残業もないですし、社員には月始めに、フリー休み・月極休み・偶数月の有給消化の申告をしてもらいます。今でいう働き方改革が叫ばれるずっと以前から、うちはこのスタイルです。ちょっとした自慢ですが北海道庁が制作した働き方改革のガイドブックにも紹介されました。誰も気がついてくれませんが。(笑)
最後に、今後の事業展開について、構想や展望を教えてください。
面白いと思うことを続けていくのは変わりませんが、この先はアイデアが正統に評価され、それが対価になるための“超儲かる仕組み”づくりを構築して、それを北海道に根付かせていきたいと考えています。どうしたらクリエイターたちの能力が経済を回し、会社の売り上げになって、給与に反映できるかをずっと考えていて。 そのための仕掛けが来期に向けて形になる予定です。それによってみんなが楽しく幸せに仕事ができたらいいじゃないですか。個人的には5年後に会社を社員たちに預けて、新しい人生に進みたいと思っております。まだまだやりたいことはたくさんありますし、“面白さ”への興味は尽きませんね。 人生ロックンロールなんで。(笑)
取材日:6月26日 ライター:八幡智子
有限会社WiLL PLANT
- 代表者名:吉井千博
- 設立年月:2005年8月
- 資本金:300万円
- 事業内容:映像制作、グラフィックデザイン、Web制作、システム開発
- 所在地:〒065-0000 北海道札幌市東区北12条東13丁目2-31
- URL:http://willplant.tv/index.html
- お問い合わせ先:上記HPの「お問い合わせ」より