アミューズメントの“鍵”を担う。
パチンコやスロットなどの企画・開発者として数々の実績を残し、2018年9月に起業を果たした株式会社キーフレームの代表・佐竹修樹(さたけ しゅうじ)氏に、起業までのストーリーや手がけている事業の領域、仕事の喜び、クリエイターへのメッセージなどを伺いました。落ち着いた語り口の中に、パチンコに対する“愛”と開発への“熱”を感じるインタビューでした。
好きなことが仕事となる、偶然の巡り合わせ。
佐竹社長はどのような学生時代を過ごされていましたか?
名古屋出身なのですが、四国の大学を選びました。情報システムを専攻し、学校のすぐ目の前に住んでいたのですが……実は授業にはあまり出ず、朝になると逆方向にあるパチンコホールに足を運んでパチンコやスロットに没頭する毎日だったんです(笑)。 たった1発の玉によって当たり外れが決まるため、その動きに一喜一憂できるのがパチンコの大きな魅力。トータルで勝っていたのでアルバイトもほとんどしませんでしたし、金遣いもけっこう荒かったと記憶しています。ただ、パチンコを将来の仕事にするとは思ってもみませんでした。
遊技機業界に入られたきっかけは?
卒業後は人材派遣会社にSEとして入社し、ヘリコプターの設計やミサイル発射台の設計、航空機の配線設計、パソコンのマスターHDDの開発などを経験しました。26歳の時に偶然、遊技機関係の会社に派遣されたのが業界に入ったきっかけです。 そこではじめて「学生時代から好きだったパチンコが仕事になるんだ!?」と、何かがつながった感覚がありました。
その会社では派遣社員として1年ほど働き、メーカーに正社員として入社しました。そこから計3社、15年ほど遊技機の企画・開発の実績を積んで独立に踏み切りました。
なぜ、独立起業に踏み切ったのですか?
ずっと企画に携わっていたい!というのが一番の理由です。会社に属すると、企画開発の業務以外にもやらなくてはならない仕事が発生しますし、企画以外の部署に異動することもあります。それならば、責任は重くなるかもしれないけれど“やりたいこと”に専念したほうがいいと考え、独立を決めたんです。
メーカー目線で考え、企画・提案ができるメリット。
御社が手がけている事業について教えてください。
私自身は企画開発の経験が長いため、「役物」と呼ばれる遊技台のギミック設計や液晶の演出、スペックなどさまざまな領域の企画・ディレクションを行えるのですが、現在の事業としては主に映像の元となる静止画のデザインを担当しています。 幸いにもこの1年は仕事に恵まれ、スタッフの拡充も行っています。今後はさらにスタッフを増やして静止画のデザインで実績を積み、将来的に信頼できる映像制作のプロフェッショナルと出会うことができたら社内に迎え、その領域も手がけていきたいと考えています。
御社の強みはどのような所にありますか?
メーカーの企画担当として第一線で働き、さまざまな実績も残してきた経験もあるため、常にメーカー目線で考え提案ができる部分が強みだと思います。 現在は遊技機の開発会社からの仕事依頼が多いのですが、依頼されたことをきちんと形にしたうえで「メーカーの担当者から見ると、こちらのほうがいいかもしれません」と別のアプローチからの付加提案も行うことができます。
独立前に一緒に仕事をしたことがある方から相談を受けることも多いのですが、高く広い視点から物事を見ることができる部分を頼りにしていただいていると感じます。
会社名「キーフレーム」の由来は?
「キーフレーム」というのは映像用語で、“表現の鍵”となるポイントを指します。遊技機の開発にもメーカーの社内承認会をはじめとしたさまざまなキーポイントがあるのですが、その大事な局面で大きな力となる企画・デザイン・映像などを担うという、開発にかける想いを込めています。
モノが評価される様子を、すぐ隣で見られる幸せ。
佐竹社長の仕事の原動力や喜びはどんなところにありますか?
「パチンコが好き!」「スロットが好き!」「開発が好き!」という部分に尽きると思っています。その3つがなければ業界にこだわることもなかったですし、独立してまで開発を続けようとは思わなかったでしょう。
そして、仕事の喜びはメーカーの社員時代から経営者となった今に至るまで変わらず、「自分が作ったモノが評価される様子をすぐ隣で見られる」という部分です。ホールでお客さんがすごく楽しそうにプレイしている姿を見ると、たまらなく嬉しいですね。
動きが激しく、規制も厳しい世界で戦っていくための戦略を教えてください。
いつ規制が来るのかがわからないのが、この業界の特徴です。警察からNGが出ることで開発が数ヶ月もの間止まってしまうこともしばしばです。映像に「赤い血」が出る表現が突然NGとなり、すべてを黄色に塗り替えたというようなことも実際にありました。 そのような情勢の中でうまく事業を回せるように、確かな情報をいち早くつかむための人間関係の構築を何よりも大切にしています。また、軸足は遊技機の開発に置きながらもデザイン力を活用してゲーム業界や広告業界への進出も準備しています。
「派遣社員・正社員・経営者」を経験されて、それぞれで見える視界は変わりましたか?
派遣社員はある意味「即戦力」を求められていますので、実務の能力は必須ですが指示されたことを的確に行えばいいので責任は伴わないイメージでした。 正社員はちょっと違って「自分が働く会社の評価をどうやって上げていこう?」「どのように会社に利益をもたらそうか?」といったことを考える必要性が出てきます。その一方で、何もしなくても毎月一定のお金をいただけるという安心感がありました。
経営者になると、企業活動におけるすべての責任が自分の肩にのしかかります。自分が食べることはもちろん、スタッフを食べさせるために仕事をとってくる必要があります。しかも、ただ仕事をとってくるだけではなくスタッフそれぞれのワークライフバランスも熟慮しながら全体を見回してベストな仕事量をコントロールする必要もあります。しかし、判断の責任が重い分、やりがいも感じられますね。
最後に、クリエイターへのメッセージをお願いします。
僕は長年プランナーの立場からさまざまなクリエイターと接してきたのですが、クリエイターは「自分が創りたいモノが世の中にきちんと受け入れられるか?」ということを今一度考えることが重要だと思っています。特に若いクリエイターは、まずは「世に評価されるモノ」を創ることで、次第に「自分が創りたいモノ」を自由に生み出せる環境が整っていきます。どうすれば人々に認められるモノが生み出せるのかを、模索してみてください。
取材日:2019年7月2日
株式会社キーフレーム
- 代表者名:佐竹 修樹
- 設立年月:2018年9月
- 資本金:100万円
- 事業内容:遊技機の企画・デザイン
- 所在地:〒460-0002 愛知県名古屋市丸の内2-15-12-2 ザ・テラス丸の内702
- お問い合わせ先:052-696-7796