沖縄広告業界のクリエイティブ拡張を目指して。走り始めたデジタルクリエイティブカンパニー
今年4月、「沖縄のクリエイティブを拡張する」というテーマを掲げる広告のクリエイティブカンパニー「株式会社GYOKU(ギョク)」が誕生しました。「ギョク」は、「極」や宝物の「玉」という意味を持つ特徴的な会社名。クリエイティビティあふれる様々な個性が、繋がり重なり合い生まれるクリエイティブが「1+1=2」でおさまらず、10にも100にも広がっていくという思いが込められています。
東京のクリエイティブ集団「PARTY」のメンバーなど、多くの人との縁を大事に長年沖縄の広告業界でサバイブしてきた代表取締役の久田さんに、走り始めたばかりの会社に対する熱い思いを伺いました。
縁が導いてくれた会社設立
久田さんのご経歴を教えていただけますか?
専門学生の頃から広告代理店で働くことが夢でした。理由は、世の中を作る面白い仕事ができ、稼げて、お金持ちになれる業界だと思っていたから(笑)。しかし私の就活時代は世の中が不景気で、特に広告業界は狭き門でした。とにかく飛び込みで県内の代理店を訪問し「トイレ掃除と文字打ちからでもいいから頑張ります!」と頼み込んで、なんとか働き口を見つけました。そこで運良く、沖縄で最も規模の大きい広告代理店の「宣伝」という会社に入社し、アシスタントデザイナーとして働けることになりました。そこで10年ほどデザイナーとして働いたのち、別の代理店の尊敬する先輩から、新しい部署とプロジェクトをスタートさせるので一緒にやろうとお声がけいただき、「沖縄広告」に転職しました。
転職した会社では、どのようなプロジェクトに携わったのですか?
「琉Q(ルキュー)」というブランドの立ち上げに関わりました。これは、「沖縄の恵みと知恵を、日々の生活に」というテーマのもと、沖縄の材料で作った加工品を福祉施設の方々と一緒に作り上げていく沖縄県産ブランドです。そのブランドの立ち上げやデザインを「KIGI」とWebサイトを「PARTY」「伊藤総研」と、日本を代表するかたがたに依頼でき、共に作り上げてきました。「PARTY」の創設者である伊藤直樹さんや中村洋基さんらとの出会いが、「GYOKU」設立に強く結びついています。
どのような経緯で会社設立に至ったのですか?
PARTYさんとは、Web制作を依頼する以前にも、私が会長を務める沖縄のクリエイター組織「ocy(Okinawa Createas 結い:オキー)」で開催する広告賞のゲストとしてお招きした時からお付き合いさせていただいていました。そのご縁から、PARTYさんが地方での拠点作りを計画をされていた際、ありがたいことにお声掛けいただき、一緒に会社を設立することとなりました。
ラッキーと言ったら失礼ですが、すごく強いご縁があったのでしょうね。
本当にいいご縁をいただけたと思っています。それとともに、私自身が以前から働きながら感じていたジレンマをなんとか打開したかったことも、会社設立の後押しになりました。
どのようなジレンマを抱えていたのですか?
これまでの経験で、携わった広告が世の中、もっと言えば身近な人達にすら届いておらず、依頼主のその先の誰かの為になったのか実感できずに終わってしまう事を、心のどこかでは度々感じていました。社会で働く1人の人間として広告の仕事や、携わり方に疑念が出てきたり、意義が見出せなくなってしまう事がありました。
クリエイティブバイリンガル、副業推進。スタッフの技術と視野を広げる
現在の主な業務内容を教えていただけますか?
Web上での広告制作がメインです。グラフィックデザインから動画制作までやっています。様々な業種のクライアントがいますので、楽しさもやりがいもあります。
動画とグラフィックを作れるスタッフさんがいらっしゃるということですか?
それぞれ得意とするスタッフはいますが、完全に分業はしていません。現在社員は3人ですが、全員動画もグラフィックもできるクリエイティブバイリンガルです。これから入社するスタッフにも、どちらもできるように教えていきたいと考えています。今後は、今以上に動画、特にモーショングラフィックスのニーズが高くなると思っています。それに対応できるようにしていきたいですし、グラフィックデザインをできる方が、バランス感覚や見せ方の経験があるのでより細部までこだわった画や、きれいなモーショングラフィックスを作れるように感じます。
仕事をする上で、心がけているモットーはありますか?
私が考えるデザインとは、何かを良くする事で、課題や問題を解決することです。広告は目的を人に広く伝えるための手段と考えています。ですので、お客様に寄り添うように、いわば並走しながらデザインや広告を制作することを大事にしています。そのために、自分が制作スタッフ間や依頼主にとっても潤滑油になれるようコミュニケーションを大切にしています。これは広告代理店時代に培った、気持ちよく仕事を運ぶための一つの学びです。依頼主の課題解決を第一に考え、人間関係はもちろんのこと、円滑に物事が進むようなコミュニケーションを心がけています。
スタッフへの指導などで、心がけていることはありますか?
心がけとは違うかもしれませんが、やりたい人は副業をOKにしています。会社の業務に支障をきたさなければ、いろいろなことをやってみてもいいと思います。その方が様々な気づきや経験ができ、考え方や視野が広まり、会社の仕事やプライベートにも良い影響が出てくると思っています。私自身、個人的にゆかりの深い場所であるコザ(沖縄市)のまちづくりに関わらせてもらい、人との繋がりもデザインに対する考え方も深まったと感じています。内面的にも人生が豊かになる副業は、ぜひ挑戦して欲しいと考えています。
誇りを持てる仕事を増やし、沖縄全体のクリエイティブを拡張させる
今後の展望や夢があれば、教えてください。
スタートしたばかりですので、まずは今の主な事業であるWeb広告制作の規模を広げ、質を高めることが当面の目標です。将来的には、それを続けることによって「沖縄のクリエイティブを拡張する」ことが目標ですね。
具体的にはどのようなことを目標としているのでしょう?
私自身がそうだったのでよくわかるのですが、広告業界において、沖縄のデザイナーは首都圏のデザイナーに対して劣等感を抱いてしまうことがよくあります。理由としては、華やかな案件に携われる機会は少なく、首都圏に比べ仕事の規模感もどうしても小さくなりがちで実績に対して成果を感じにくく、結果やりがいを見出しづらいからだと個人的には思っています。誰でも知っている企業やブランドの仕事や、大きくても小さくても質の高い評価される仕事を首都圏のクリエイターと協業できるようになれば、沖縄にいても自分の中に華を見い出せ、劣等感を抱かなくなるはずです。そしてそれを続けることによって、沖縄にもいいものを作る会社があると県外国外の方に思っていただけて、県内から見ても、県外から見ても「沖縄のクリエイティブが拡張した」と言えるようになると思います。そうなれるように頑張りたいですね。
取材日:2019年10月2日 ライター:仲濱 淳
株式会社GYOKU
- 代表者名:代表取締役 久田 友太
- 設立年月:2019年4月
- 資本金:1,818万円
- 事業内容:広告の企画制作、ブランディング
- 所在地:〒901-0306 沖縄県糸満市西崎町4-15-2-3F
- URL:https://gyoku.jp/
- お問い合わせ先:098-851-3780