自分が面白いと思うことをどれだけ仕事の中に盛り込めるか

広島
株式会社タスカ 代表取締役社長
Kazunori Takahashi
高橋 一哲

広告の企画・制作を行っているタスカ。閑静な住宅街にある事務所には小さいテーブルと同じくらいのサイズのドローンがあり、取材のために通されたのは大きなモニターがいくつも据えられた「グレーディングルーム」という部屋でした。
グレーディングとは、表現したいイメージを実現するために、RAWデータで撮影した映像の色や明暗を調整することです。タスカの設備は広島県内でも数少ない映像カラー調整用の専用ルームで、映像表現の豊かさへの強いこだわりが見てとれます。
ここまで映像に特化した会社にもかかわらず、代表の高橋一哲さんの前職はなんと宝飾品デザイナー。話し始めたときは映像事業への方向転換について疑問もありましたが、お話を伺ううちに腑に落ちました。 高橋さんは、とにかく好奇心にあふれています。常にわくわくしており、想像力が豊かで、この人のイメージを形にするためには、表現の幅が広く不可能も可能にする映像しか無かったのだということがわかりました。

企画・撮影・編集からCG制作まで

現在の事業内容を教えてください

主に、企業がイベントなどで使う説明用の映像や商品プロモーション用の映像を作っています。企画・撮影・編集を全て自社で行っており、必要に応じてCGの制作もします。例えば物理的に撮影が不可能な物や、外からは見えない内部の構造を表現するときなどです。

御社の強みは何ですか

広島では数社だけだと思うのですが、本格的なグレーディングルームを完備していることです。一般的な8bitの映像よりも豊かな階調で色や明暗を表現できるので、「こういうタッチで映像を作りたい」というご要望に柔軟にお応えすることができます。

最近では、12 bit 4.6Kの映像をリアルタイムで処理することのできるデータストレージを導入しました。最終的な解像度が4KやフルHDだとしても8Kや4Kで制作したものをダウンコンバート(※1)する方がきれいに仕上がるので、より大きなデータを扱えるよう2年ほど前からオーダーメイドで準備していました。
※1 高解像度の映像コンテンツを、低解像度のものに変換すること。

宝飾品のデザイン、イベント企画を経て映像事業へ

起業までのキャリアを教えてください

実は最初は、宝飾品のデザインや販売をしていました。当時から自分が思い描いたものを形にするのが好きでした。またバイクや車のカスタムパーツを作るのも大好きなので、それらを通してデザイン力や制作力が身についたのかもしれません。

結婚を機に独立してからは、その仕事のつながりでパーティーの司会やショーの企画を頼まれるようになりました。当時はバブルのさなかでイベントの数も多く、次第に制作会社や広告代理店から依頼を直接受けるようになり、辞書のような分厚い企画書を泣きながらいくつも書いていました。

イベントの企画から現在の映像事業へはどのようにシフトチェンジしていったのでしょうか

企画したイベントを形にするためには、演出をする、ポスターを作る、CMを打つなどさまざまな作業が必要になってきます。それらの中で、当時「面白いな、(発注せずに自分で)やってみたいな」と感じた部分にどんどん特化していった結果、今のような形になりました。

勉強のたまものですね!

いつも楽しくて、勉強という感覚はあまり無いんです。
「面白い」と思う機会が増えれば増えるほど引き出しが多くなっていきます。

いろんなものに手を出して、何でもかじってみる

楽しみながら引き出しを増やしていくコツはありますか

僕はかっこいいCMを見かけると、すぐに作り方を考えてしまいます。雪が降っているシーンは、どこで、いつ頃撮影したものなんだろうとか。

休みの日もそうで、例えば「デイ・アフター・トゥモロー」という映画で、登場人物が車に乗り込み、右にあるキーシリンダーを右手で回すシーンがあるんですけど、「ああっ、これは左右反転だ!」ってそっちの方にわくわくしてしまいます。劇中に登場するポルシェはキーの位置も左のはずなので、左側から物理的に撮影できなかった映像を逆側から撮って反転させたんだと思います。面白くないです?(笑)

制作の仕事は、自分が面白いと思うことをどれだけ自分の仕事に盛り込めるかだと思います。

クリエイターのみなさんにメッセージをお願いします

いろんなものに手を出して、何でもかじってみるのがいいと思います。そうすれば取引先の人と同じ言葉でコミュニケーションが取れるので、より精度の高い発注ができるようになります。

いろいろと試してみて自分に合うものが見つかったらその分野のスキルをしっかり磨いて、「これだけなら誰にも負けない」というものを作ってみてください。

取材日:2019年11月6日 

株式会社タスカ

  • 代表者名:代表取締役社長 高橋 一哲
  • 設立年月:2007年8月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:総合デザイン制作(映像制作[撮影・編集]、各種グレーディング・特殊効果、映像合成、スチル撮影、ドローン空撮[映像・写真]、CGデザイン制作、CGアニメーション制作、Web制作、Webシステム開発、各種販促物制作、プロダクトデザイン制作および製作代行〔金属加工等〕)
  • 所在地:〒734-0027 広島県広島市南区仁保南1丁目25ー4 B1F
  • URL:http://www.tascapro.com/
  • お問い合わせ先:082-890-7001

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