労働時間ではなく「クリエイティビティ」で勝負するために必要なもの
テレビ番組や、地方創生に貢献するVR映像の制作を手掛けるロントラ。まず気になるのは、その技術。ノウハウを培うところから始まったというVR映像の制作現場に迫ります。そこで見えてきたのは、西村さんが大切にする「会社」というチームの存在意義。人材育成に力を入れるのはなぜなのか、代表取締役・西村佳之さんにその理由を伺いました。
個人ではできない「チームで作る」番組
会社設立に至った経緯を教えいただけますか?
25歳でテレビ業界に転職。それから2年半後、28歳で独立し、フリーランスでテレビのディレクターを始めました。しかし次第に、個人でできることの限界を感じて37歳のとき、「チームで番組を作る」ということに移行していきたいと考えて、会社を設立しました。
フリーランスから会社の長になると、仕事の取り組み方が大きく変わると思うのですが、設立当初に苦労したことはありましたか?
未経験者を採用して、育てていくのに時間がかかりました。普段の仕事に「教育」という仕事は難しいですね。
未経験者が独り立ちするまでには、どのくらいの時間がかかるものでしょうか?
5年から7年ほどでしょうか。ただ、一人前になる前に職を変えてしまう人が非常に多い業界です。
VRコンテンツをユニークなものにするのは「視点」
現在の事業内容について教えていただけますか?
映像を扱う部門は2つあって、1つはテレビやCMを作る映像部門。もう1つは、地方創生に携わる部門です。こちらは主にVRを使いながら地方創生につながる企画を提案し、実行していく事業です。
どちらも映像に関わる部署ですが、雰囲気は異なりますか?
そうですね。テレビ部門は、映像の編集にかかりきりになっている時間もありますし、土日に撮影をすることもあります。勤務時間がすごく長いときもあれば、そうでないときもある。毎日が同じことの繰り返しではないのが特徴です。
一方、地方創生部門は行政や企業が相手なので、働く時間はある程度決まっています。一般的なビジネスパーソンと同じような働き方をするために、時間と向き合って、1時間1時間のクオリティを高めることを意識しています。1日にやるべきことに明確にして集中しているのが地方創生部門の働き方です。
VR映像の制作をはじめるにあたって、ノウハウはあったのでしょうか?
ありませんでした。カメラも当時はレンタルサービスがなかったので、機材を買っては使えるのかと検証を繰り返しました。編集も簡易的にPC上で行えるのですが、実際にどう見えるかはデータをアップしてゴーグルでのぞいてみないと確かめられないんですよ。その確認に時間がかかるし、テロップの見え方もどの位置だったら見やすいのか当初はわかりませんでした。人によってゴーグルの向け方が違うこともあるので、「見てほしい角度で見てくれない」などVRならではの悩みもあります。そうした試行錯誤は今でも続いています。
御社のVR制作に関する強味は、そういったノウハウを培ってきたことにあるのでしょうか?
そうですね。実写系VRの制作本数は結構多いので、どういう風に見られるかがわかってきました。それからVRの場合は、「どの目線になるのか」が大事です。簡単にいうと空から撮れば鳥の目線になるし、地面近くから撮ればアリの目線になる。ちょっと人間とは違った目線にするだけで、コンテンツがユニークになるんです。「何を見せたいか」、そして「何の目になるか」というコンセプトを考えることについては、多くの経験から自信を持っています。
VR映像と、通常の映像制作とで一番違いを感じる工程はどこですか?
大きくは企画でしょうね。スマホでも360度の映像は楽しめるんですけど、やっぱりゴーグルをつけて、その世界に没入してもらうことでVRの良さは体験できるわけです。そのときに、TVのように早いテンポでどんどん映像が切り替わると、せっかく別世界に没入しようとしている視聴者が映像の中に入り込めません。つまり、ということはカットされて映像が切り替わると、せっかく別世界に降り立ったのに素に戻ってしまいます。カットがあまり割れないので、撮影のハードルが一番高いですね。
VRが民間に浸透するのはいつ頃になるとお考えですか?
VRは、ざっくりいうと普通の映像の4倍ほどデータが重いのですが、5Gならそんな重いデータを軽々と通信できるんです。だから、VRが本当の意味で注目されるのは2020年のオリパラ以降かなと思っています。
時間ではなく、頭で勝負する会社にしたい
御社が目指す将来のビジョンや夢を教えてください。
業務的には労働時間で勝負をするのではなくて、クリエイティビティや頭で勝負をしたいと思っています。編集など時間のかかる作業も、ある程度機材も進化しているし、昔に比べると時短は出来てきています。ITを含めて、最新技術の助けを借りつつ、働き方を変えてフレッシュな状態で毎日臨めるようにしたいです。
そのビジョンに向けて、一緒に働きたいのはどういった人でしょうか?
たとえ間違えてもいいから、自分で答えを出せる人がいいですね。答えが違っていても、本人がどう考えているのかがわかれば、コミュニケーションを重ねて一緒に正解へ向けて進んでいけます。しかし、答えを出さないままでいる人は、言われたことをそのままやる作業になってしまう傾向が強くて、成長が遅いんですよ。指示されてやるだけだと、結局本質が理解できてないから、また次も同じところでつまずいてしまう。自分で正解を出そうと考えるくせはすごく大事です。
人材育成に重きを置いていらっしゃるんですね。
人を育てていかないと会社をやっている意味がないと思うんですよね。個人個人がバラバラの状態ではなく、会社で経験したものを皆で共有して、知識のレベルを引き上げていくっていうのは最低限必要だと思っています。
それでは最後に、映像業界を目指す方へメッセージをお願いできますか?
「面白いものを作る」ということには多くの人が興味を持っていると思います。しかし、時間もかかるし技術もない。それで本来なら自分たちで作るべきものを、われわれのような会社に制作を依頼してくださるわけです。それって有り難い仕事だと思うんですよ。その分、大きな予算を預かって制作して、クライアントに満足してもらうのは簡単なことではありません。だからこそ、クリエイターは覚悟を持って努力しないと、本物のクリエイターにはなれないと思っています。
本気で取り組めば、本当に面白い仕事です。なりたい自分をしっかりイメージして、この業界に飛び込んで来てほしいです。
取材日:2019年11月5日 ライター:渡辺 りえ
ロントラ株式会社
- 代表者名:代表取締役 西村 佳之
- 設立年月:2011年
- 資本金:10,000,000円
- 事業内容:映像作品の制作および編集業務、番組制作・VR・Webムービーなど多岐の事業
- 所在地:〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿3-7-17 M2ビル1F
- URL:http://www.lontra.co.jp/
- お問い合わせ先:03-6455-6875