「Eコマース・自社製造・アイデア」でノベルティ業界の1番を目指します
アーリークロスは仙台市(宮城野区)に本社を構え、メモ帳、付箋紙、マグネット、クリップ、クリアファイル作成などのノベルティ販売、またサイン・ディスプレイ製作などの幅広いサービスを提供しています。訪問すると、まず展示されたユニークなノベルティの数々に目を奪われます。スピード感を持って、ダイナミックに事業を展開していきたいという思いを、サッカーの戦略「アーリークロス」に重ねたことが社名の由来だとか。本日は代表取締役の佐藤智裕さんにお話を伺いました。
産業革命以来のIT革命が、独立する大きな動機に
創業されるまでのキャリアについてお聞かせください
宮城県多賀城市で生まれ育ち、県内の印刷会社へ営業職で入社しました。当時はチラシやパンフレットをはじめ、会社で使用する帳票類は印刷会社へ発注していたため、ニーズも安定していました。しかし写植からDTPへ移行し、産業革命レベルともいえる変化の後に、価格が大幅に下落しました。業界自体が薄利多売へと移らざるを得ないなか、企業淘汰の波が押し寄せました。
独立されたきっかけとは?
ワープロ、パソコンが普及し、次に起こったのはインターネットです。これによってさらに価格破壊が進みました。デザインと営業ができ、またデータさえあれば版を作る必要がない、ダイレクト印刷が全国どこでも可能という時代の到来です。「商売は人対人なのだから、インターネットでは商売が成り立たない」と言う方も少なくなかったのですが、インターネット販売の専門誌を読み、リンゴ農家のネット販売など、さまざまな事例を見ると、私には全くそうは思えなかったのです。このままでは将来はさらに先細りになるし、先端技術を取り込んで自分で独立してやってみようと決心しました。
独立後すぐにEコマースを始められたのでしょうか?
従来のチラシ、ポスターなど、印刷の仕事を行いつつ、インターネット事業部を立ち上げるという段階を踏みました。最初の商品は差別化を意識して、単価が高く大手しか扱っていないノベルティを探しました。付箋は大手しか作成していない時代で、お客さまから「付箋のノベルティが高くて…」という声もあり、商品として選びました。SEO対策など取り組む課題も多かったです。結局、黒字化には3年を要しました。現在はネット通販を通じて、全国のお客さまにサービスを提供する「EC事業」が柱となっています。
ノベルティショー出展が大きな転機となった
次々と商品の幅を広げられたきっかけは?
インターネットでノベルティの発注を受けると同時に、全国規模の展示会へ出展を開始しました。東京ビッグサイトなどで年に数回行われるノベルティショーでは、自社のアイデアを展示できますし、新しいノベルティを探しに来られる方と出会える良い機会でした。もちろん出展費用はかかりますが、費用対効果は非常に高く、商談(機会)は大型案件に結びつきました。実は独立する前は興味もなかったのですが、新たなチャンスを探し、アイデアを仕事につなげる目的で、積極的に継続して出かけています。
独自の商品はどのように生まれましたか?
現在までは、ほぼ私からの発案です。従業員から「また何か思いついたんだ…」と引かれるくらいです。当初は、仕入れて販売するというビジネスモデルでしたが、価格や納期、対応力に限界がありますので、2016年の本社移転に伴い自社製造に切り替えました。オリジナリティを保つことや、小ロットの受注を可能にするには、自社企画・製造が1番です。
最近では紙クリップの需要が伸びています。レーザーで厚紙を型抜きして製作するものですが、大手企業から個人の発注まで、幅広いお客さまからご支持をいただいております。2010年にネット通販を開始し、オリジナルクリアファイル専門サイトを皮切りに、現在は10店舗の専門サイトを運営しています。
リアルとバーチャルを両立されていますね
展示会で実際に商品を見ていただいて始まったB to Bの仕事は、弊社の規模感が徐々に大きくなるに従い、お取引先の規模も大きくなってきております。これはお互いの顔が見られるという安心感と信頼感が寄与しているといえます。またB to Cとして、ご自身でデザインされる方が小ロットで発注したいというときに、インターネットで検索して弊社にたどり着いてくださいます。独立前に業界の先輩方がおっしゃっていた「人対人」の仕事のあり方と、Eコマースが両立しているのが現在のアーリークロスです。
アーリークロス3つの事業
EC事業を後押しした背景と今後の課題とは?
Eコマースを支えているのは物流の発展が大きいです。仙台から商品を発送して、東京ならば翌日の午前中には届きます。また、インターネット販売の決済方法も前金のみであったのが、売掛代行会社が関与することで、月末締め切りで翌月末払いなど従来の支払いサイトでの取引が可能になったことも大きいです。ただ実際に打合せが必要なお客さまが遠方だとすると、移動コストと売り上げのバランスから取引が難しいこともありますので、今後首都圏に支店を設けるか、否かという場面が起こり得ると予想しております。
サイン・ディスプレイ事業についてお聞かせください
デザインから印刷、加工まで看板製作を受注するのですが、これも自社での製造による高品質・低コスト・短納期が実現しています。建築工事看板やPR看板、囲い看板など、屋外での使用に耐える素材にUVインクジェットのダイレクト印刷を行えますので、建築会社やハウスメーカー、広告代理店などから依頼をいただいておりました。ただ10月の台風19号によって自社工場が浸水の被害を受けたため、現在は休止中ですが、復旧しだい事業を再開する予定です。
プロダクト事業についてお聞かせください
自社製品のプロダクト販売をはじめ、企業さまへのOEMを提供する事業部です。企画・製造から販売まで行っております。これまで力を入れてきましたのは、2020年の東京オリンピックを意識したインバウンドで、「和」を意識したプロダクツです。「KABUKI Paper Clip(歌舞伎紙クリップ)」は、100%紙素材の丈夫なエコクリップで、松竹の監修を受け、弊社が企画・製造したものです。また、外国の方には漢字を型抜いた紙クリップも人気があります。これらは仙台という場所にとらわれることなく、外国人観光客が多い全国各地から発注をいただいております。
アーリークロスの未来
今後の課題などについてお伺いできますか
創業当初は自宅の一室からスタートし、会社の成長に伴い製造部門を作り、本社も移転、Eコマースのサイトを年々広げてきました。今後は各事業の開発スピードをもっと上げていくためにも、人材を育成する必要があると感じています。現在、営業やホームページの制作・改訂、プロダクツの企画のいずれも、完全に私の手を離れておりません。全体的なスピードを上げるためには、任せることができる人材の育成が必要です。例えば、私が安心して社を離れて営業に出かけられる、情報をインプットする時間を作ることができる体制を実現したいです。そのための人材育成と組織づくりが今後の重要課題ですね。
一緒に働くスタッフに対して求められることは?
まずは、なんでも面白がってやってみようと思ってほしいです。新しいアイデアが出てきたときに、一緒になって「じゃあやってみようか!」という心持ちがほしい。「私には無理です」という言葉を聞きたくないと思っています。経験を重ねることでしか成長できないことがあります。失敗してもそれも経験で、カバーはこちらでしていくので果敢にトライしてほしいです。
取材日:2019年11月13日 ライター:桐生 由規
株式会社アーリークロス
- 代表者名:佐藤 智裕
- 設立年月:2008年8月
- 資本金:1,000万円
- 事業内容:ノベルティ・グッズ事業、サイン・ディスプレイ事業、プロダクツ事業
- 所在地:〒983-0038 宮城県仙台市宮城野区新田2丁目8-50
- TEL:022-349-9371(代)
- FAX:022-349-9372
- E-Mail:info@early-cross.co.jp
- URL:https://www.early-cross.co.jp/