グラフィック2020.01.22

一生懸命、誠実をモットーに、 挑戦・達成の積み重ねで築き上げてきたデザイン道

大阪
有限会社デラックス 代表取締役社長
Kazuhiro Imai
今井 和弘

「仕事上できないとは言いません」と語るのは、有限会社デラックス代表の今井和弘さん。頼まれた仕事は未知の分野でも積極的に挑み続けてきた。結果、デザイン事務所として電車車両のラッピングからポスター、チラシ、名刺まで大小さまざまな制作物を手掛けており、クライアントもFMラジオ局や鉄道会社、エステサロンなど多岐にわたります。 設立から15年以上になる現在まで、一切の営業活動をしなくても着々とクライアントが増え続けているという同社。今井さんに、仕事をするうえで心掛けていること、また、周囲との信頼関係を築き上げてきた、その真摯な姿勢の基礎となる考え方について、お話を伺いました。

ハイスキルな仲間と切磋琢磨しながら磨かれた感性

これまでのキャリアを教えてください。

昔から絵を描くのが好きだったこともあり、デザインの専門学校を卒業後、制作会社3社で働き、スキルを磨きました。不動産関係の媒体を扱う会社でチラシ制作を主に担当した後に、ファッション関係の媒体を取り扱う会社に転職したんです。そこは、大阪市内にあるファッションモールの広告媒体などの制作をしていた大規模な会社でしたので、CIや広告など専門部署に分かれていました。同年代の若いデザイナーも結構いて、ハイスキル者ばかりで、皆ライバル関係でもあったので、切磋琢磨をしながらお互いどんどんスキルアップしていくという活気のある職場だったんです。ここで周りからたくさんの刺激を受けて感性を磨いていきました。

ここでは、主にどのようなことをされていたのですか?

CIやロゴマーク、広告、カタログなどグラフィックデザイン全般をさせていただきました。この会社でさまざまな媒体を手掛けたことで、仕事の幅もどんどん広がっていきました。もし、ここで何かに絞って仕事をしていたら、起業後の事業方針も今のように幅広く何でも対応するというよりも、チラシのみといった専門的なものに変わっていたかもしれません。それくらい影響を受けた会社でした。

デジタル化への大きな流れがあった時期でもありますよね。

3社目に勤めているときに、手書き中心のアナログからMacを使用したデジタル制作に大きく変わりました。当時は、印刷工程までいくのに、デジタルのデザインデータをアナログで版下に貼り付けて、印刷会社に出すという流れでした。僕自身はもともとコンピュータが好きで、以前からプログラミングなどでなじみがあったので、すんなりデジタルに移行することができました。

さまざまな局面で、柔軟に対応されてこられたんですね。

テレビCMを作っていたこともあります。当初は企画と絵コンテのみを描いてCMの制作会社に頼んでいたのですが、最終的に全て自分でやろうと思い、見よう見まねで監督をするようになったんです。結果、多いときは年間13本を制作し、それに合わせてポスターやチラシなどの媒体も作成していました。僕自身、仕事に壁を作らずにさまざまなことに取り組んできましたので、それが起業後も生きていると思います。

スキル形成をされるなかで、いずれは起業も視野に入れていたのですか?

この業界って独立する人が多く、僕の場合は漠然と40歳くらいまでには独立したいと思っていましたので、39歳で起業しました。3社目で担当していたFMラジオ局の仕事を社長にも快諾いただいて、独立後もそのまま続けることができ、その会社のスタッフ1人と新たに募集をかけて、計4人でスタートしました。

営業活動をしなくてもいい理由

営業活動はどのようにされているのですか?

実は、起業してから一度も営業活動をしたことがないんです。例えば、そのFMラジオ局とのコラボイベントの仕事をきっかけに知り合った鉄道会社の方から、起業後に電車車両のラッピングをはじめいろいろとお仕事をいただくようになりました。他にも化粧品メーカーや、エステサロンの広告などをクライアントや広告代理店から紹介していただき、どのクライアントからも契約を切られることなく継続していただけています。現在は、幅広い業種から、電車車両をはじめ、ポスター、チラシ、名刺、パッケージ、Webなど大小さまざまな制作に取り組んでいます。

本当に幅広いですね。なかでも車両ラッピングって特殊な感じがしますが…。

データ容量がめちゃくちゃ重たいので、当初はファイルを開くだけで5分はかかってしまい、Macもよく動かなくなっていました。それに以前は先方からいただく図面も手書きのものでしたので、デザインするのに、まずコンピューターで図面を描くことから始めないといけなかったんです。寸法を取るのに、当時Illustratorは横幅が最大5mしかないのに対して、電車は20mくらいあるので、データ上にズレがあった場合20倍に拡大されてしまいなかなか大変でした。でも、頼まれた以上は、完璧にやり遂げないといけないという思いで必死に取り組んだからこそ、次のお仕事にもつながりましたし、実際にデザインした電車が走っているのを見ると感動しました。

とにかく一生懸命、それしかない

達成した喜びもひとしおだったでしょうね。仕事上、大切にされていることはありますか?

一つ一つの仕事を大切に一生懸命、誠実に対応することですね。例えば急にクライアントから打ち合わせがしたいと連絡が入れば、目の前の仕事がどんなに忙しくても、すぐに伺うように心がけています。また、どのような状況でも時間をきちんと守ることです。日々の積み重ねが本当に大切なんです。他社とはそういったことで差異化を図ろうとしています。

信頼関係を築くのに重要なことですよね。

他にも、しんどい方、苦しい方を選ぶようにしています。簡単に楽して作ったものは、人は見てくれないし、絶対感動させられないと思うんです。ですので、画像もありポジでなく、撮影を重視しています。苦労して一生懸命に手間暇かけた制作物は、クライアントの満足感、自分たちの達成感、そして何より、目にした人の反応も違ってくると思います。

心の琴線に触れるモノづくりを

情報を詰め込みたいクライアントからの要望とクオリティー面、また時間とのバランスって難しいと思うのですが…。

クライアントの意向は全てくみ取るようにしています。それを見る人が、見やすいデザインに仕上げるのが僕らの仕事で、デザイナーとしてはそこが一番大切だと思っています。最近特に若い人に多いのですが、時間的なことも考えて、無難にまとめてしまう傾向があります。前例やクライアントの好み、ターゲットなどの理由をつけて、自分が好きじゃないものを生み出しているので、その広告が街に置いてあったとして「果たして自分が手に取るのか?」って聞くんです。「自分が好きなもの、可愛いと思って買っているものと、自分が作ってるものとは違うだろう?」って言ってるんです。自信をもって僕に見せられるものを仕上げてほしいと思うんですよ。

自身の感性を無視して、頭でっかちになってしまうんですね。

クライアントから制限をかけられる前に自身でかけてしまうのではなく、逆に「これはやめてくれ」って言われるくらいのものを作らないといけないです。そうでないと、作品もデザイナーの頭も凝り固まってしまいます。若いうちから制限する癖をつけてしまうと、狭いところでしか考えられないようになってしまう。もっと色々な方向から感性を磨いて、幅を広げて、飛び道具的な案も自分自身のなかで増やしてほしいんです。

「できません」は言いません

今後の展望について教えてください。

仕事はどれだけあってもいいので、新規案件を増やしていきたいと思ってます。今後デザイン業界もどのような仕事がくるかわからないのてすが、頼まれた以上は絶対に「出来ません」とは言いたくないです。仕事をするうえで、誰でも最初のときがありますから。これまでも、実績がない仕事でも一生懸命取り組んで、必要であればパートナーを探してでも対応してきましたし、これからもその姿勢は変わりません。一回でも断わってしまうと、クライアントから「出来ない」という烙印を押されてしまいますから、頼られてる以上はしっかりと応えていきます。

現在、頑張っているクリエーターに向けて、アドバイスをお願いできますでしょうか。

僕はアメ車を買うために仕事をしてます。そんなものでもいいので、何か自分を喜ばせるものや、仕事をする目的を持ってほしいと思います。そのなかで「日々時間を大切にしなさい」と社員にもよく話します。忙しいと細かいところでルーズになりがちなんですが「電車でも、毎日時間通りに来るものと、いつ来るか分からないものとだったら、同じ料金で同じ距離なら、どちらを利用しますか?」ってことです。そういった小さな積み重ねは、先方の心象にも大きく影響してきます。

あえてしんどい道を選ぶ

時間って誠実さが伝わりやすいですよね。

後は、何かを選ぶときには、しんどい方を選ぶようにしなさいってことです。それは、仕事だけではなく日常生活でもそうです。食事に行くのも、安い店と高い店があったら、ちょっと無理してでも高い店に行った方が刺激にもなるし、自分の中に記憶として残ります。また、あそこで食べたっていう話のネタにもなるじゃないですか。デザインの本を買うにしても少々高くても、自分で悩んで気に入ったものを買った方が、その中にあるネタやアイデアを使おうとします。通勤でもときどき電車をやめて歩くことで、普段気付かなかった花の美しさやお店が発見できます。毎日の小さい選択をしんどい方や手間のかかる方、ちょっと高い方にすることで、自分の中に何かが残って財産になって、自身の幅も広がっていくと思います。目に見えないところでの自分の成長にもつながって、それが後々他から認められたり、自身の達成感につながったりしていきます。

なるほど、道でも上っていくときってしんどいですものね

人間って自然に楽な方を選ぼうとするんです、なので、考えだけでも違ってきていいと思う。僕は、現状が楽だと思ったらだめだと思っていて、仕事でもそこでルーチン的なものになってしまい、あとは下がっていくだけのような気がするんです。楽になったと思ったら、常に新しい責任を自分に課して、しんどい状態を続けていくようにしています。会社員の時代に比べて独立したほうが責任も増えましたし、正直しんどいことの方が多いです。でも苦労したからこその実りを感じています。

取材日:2019年11月25日 ライター:川原 珠美

有限会社デラックス

  • 代表者名:取締役 今井 和弘
  • 設立年月:2003年5月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:広告販促企画・デザイン、WEBサイトデザイン、パッケージデザイン、ロゴデザイン、モデル撮影・取材撮影
  • 所在地:〒550-0013 大阪府大阪市西区新町3-3-14
  • お問合せ先:06-6543-5980
  • URL:http://www.deluxe-inc.com/

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP