グラフィック2020.01.29

多彩なニーズにしなやかに応える少数気鋭のデザイン会社

沖縄
株式会社うさぎでざいん 代表取締役社長、代表取締役副社長
Hiroki Chinen, Komaki Yoshida
知念宏樹 氏、吉田コマキ
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「うさぎでざいん」という、とてもキュートな社名のデザイン会社が沖縄にあります。その名前通りの愛らしいデザインを得意とするかというと、必ずしもそうではありません。作り出されるものは重厚だったり、派手だったり、もちろんキュートだったり。さらに携わっている媒体も実に様々。広告、CM、パンフレット、 Web サイト、デジタルコンテンツなど、あらゆる媒体を多彩なテイストで生み出し続けています。なぜ、そんなにもしなやかに対応できるのか?「我々の作るものは作品ではなく、お客さまを助けるための商品」という2人の代表取締役の言葉に、その真意はあるようです。

フリーランス、同業他社とのネットワークで柔軟な体制を構築


社長の知念宏樹 さん(写真左手前)と副社長の吉田コマキさん(写真右奥)

会社設立までの経緯を教えていただけますか?

知念さん:

沖縄の広告代理店で、長くデザイナー、ディレクターとして勤めていました。そこを退職し、しばらくフリーランスとして働くなかで、2人体制の方が仕事をしやすいと感じ、同じくフリーランスデザイナーの仲間とチームを組んで動いていました。しかし、まだ法人化していなかったので、大きい案件の参加条件を満たせず、関われないケースが出てきました。それを機に、以前から日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)を通じて交流のあった吉田に声をかけ、私たち2人が代表権を持ち、仲間4人で法人化することにしたんです。

吉田さん:

私は Web ページやデジタルコンテンツ系のデザイナーでしたので、紙媒体やパッケージなどのリクエストをお客様から受けた際は、経験値の高い知念に度々相談していました。そんな経緯があったので、一緒に会社を立ち上げれば、それぞれの得意分野を生かして幅広い要望に応えられると思いました。

知念さん:

2人の専門分野が違うので、今でも弊社の代表権は私と吉田でそれぞれ持っていて、Webなどデジタルコンテンツに関することは吉田が決裁し、それ以外の紙や広告媒体に関することは私が決裁するようにしています。また弊社の他の2人のスタッフも、それぞれ得意な分野が異なります。紙と Web という媒体の違いだけではなく、ジャンルも自治体やメーカー、不動産、教育機関など幅広いのは、そのためです。

なるほど!それにしても、お2人含め4人だけでカバーしきれる内容ではないような気がしますが?

知念さん:

常勤スタッフは我々含めて4人ですが、フリーランスの方々や同業他社とのネットワークを大事にしています。その方々に都度お声がけしていますので、常時10人前後のメンバーと一緒に仕事をしているので問題なくカバーできています。むしろ、皆が同じ会社のスタッフである必要はないと思っています。

なぜそうお考えなのですか?

知念さん:

その方がフットワークが軽く、柔軟に対応できるからです。多くの人を社員にする場合、様々なコストがかかり、会社のスキルだけでやりくりしなくてはならない。そこに注力するより、幸いにも優秀な仲間が大勢いますので、その方々の力をお借りした方が、効率的にクオリティーの高いものを作れて、クライアントの問題をスピーディーに解決できると考えています。

吉田さん:

デジタルコンテンツを制作する場合は特に、その方がいいと感じています。インターネットの世界は技術の進歩がとても早いので、社内だけではなかなかカバーしきれません。難易度が高かったり、新しい技術が必要だったりする案件に対しては、それを得意とする方の手をどんどん借りています。一年前のノウハウが、使えないなどといったケースも度々あったり、お客様のニーズも多様化していて、軽度な案件であってもその度に勉強は当たり前の世界です。弊社を含め一つのチームとして取り組むことで、より多くの情報やスキルを共有できますし、プロジェクト単位のチーム編成のほうがお互い早くレベルアップしたり、情報アップデートができると思っています。

フリーランスの方や同業他社というのは、御社の競合でもあると思うのですが、一緒にやることに抵抗はありませんか?

知念さん:

全く抵抗ありませんね。むしろスキルを補完し合える仲間だと感じています。助け合った方が、結果的にクライアントへクオリティーの高いものを提供できると思います。

吉田さん:

沖縄という土地柄かもしれませんが、横のつながりが強いんです。お互い助け合って、みんなで強くなれればいいと思っています。

デザインは作品ではなく、お客様の商売をお手伝いするためのツール

仕事をする上でのモットーはありますか?

吉田さん:

私たちの仕事は「お客様のご商売のお手伝い」。つまり、私たちが作るものは「私たちの作品」ではなく、あくまでも「お客様が買う商品だ」ということです。私たちは商業デザイナーである、という考え方なので、お客様が困っていることに対して、できる限り何でもお手伝いしています。基本的に「ノー」と言いません。

知念さん:

実直にお客様のニーズに応えていったかいあって、できることの幅が広くなったと感じています。テレビCMや紙媒体、 Web 媒体の制作だけでなく、海外の市場調査や貿易業のお手伝いまでしたこともあり、「いったい何屋なんだろう?」と自分自身で思うことも(笑)。

吉田さん:

でも、これも沖縄という地方だからこそかと思うのですが、何かのスペシャリストになり過ぎるとオーバースペックになって、仕事がしにくくなる気もしています。言い換えれば、器用貧乏(笑)。であれば、重宝していただき、仕事になるといってもいいかもしれません。

でも「ノー」と言わずに何でも引き受けるのは、大変ではありませんか?

吉田さん:

大変ですよ(笑)。でもデザインの世界は常に進化、変化していますし、また何事もお客様のご商売を深く知ることから始まります。何をするにしても日々勉強であることに変わりはありません。

知念さん:

それを続けていると、とあるお客様が抱えている問題を解決するには「このお客様が良さそうだ」というケースが出てきて、課題解決のために企業と企業をマッチングできる場合があります。そうなれば弊社としても嬉しいことですし、お客様同士も弊社も、皆がWin-Win(ウィンウィン)の関係になれますよね。

その他、社内的に心がけているモットーはありますか?

知念さん:

会社を立ち上げる際に決めたことが3つあります。「出勤時間は決めない」「会議はしない」「日報は書かない」です。この3つは、サラリーマン時代に大嫌いだったので(笑)。

会議もしないのですか?

知念さん:

そうです。4人だけですので、短時間での情報共有だけで十分です。この3つに時間を取られるなら、クリエイティブなことに時間をかけた方が効率的だという考え方です。

ということは、これ以上規模を大きくしたり、社員を大勢入れたいとは思われてはいないのでしょうか?

知念さん:

そうですね。ありがたいことに、今は周りに大勢の優秀な仲間がいますので、多くの社員がいる必要はないと感じています。もしどうしても今後、弊社に決定的に足りないものを補完し、一緒に仕事して欲しいと思える方に出会えたら、ヘッドハンティングという形を取ると思います。

吉田さん:

うちは、基本的にお客様に対しての間違いがなければ、ほぼ放置しています。なので、一般の企業のような研修制度など、一から新人を育てる仕組みは、今のところ考えていません。うちのような小さな事務所ならではなのかもしれませんが、今の時代、お互いを拘束して会社に縛り付けることが本当に必要なのか、大事なのかと疑問にも思っています。昔デザインの世界では、お師匠さんについてとことん修行することが普通でしたが、今は興味があれば1人でどんどんスキルアップできますし、能動的になれば、学べる環境はそろっています。もちろん会社としても、そのための環境づくりだけは、意識していますが、勉強時間も作業時間も休む時間も自己管理です。あとは、時々みんなで「同じ釜の飯を食う」ということをしています。事務所にキッチンがあるので、「うさくま賄い」と称して、同じ食事をとっているのですが、そういう場では、お互いの体調やプライベートの様子、今抱えている案件の状態などを気にかけています。
結構、自由な感じではありますが、先ほど知念が言った 3 つの信条もあるので、社会人未経験者だと面食らって馴染むのが大変かもしれませんしね(笑)。

そうかもしれませんね(笑)。最後に、今後の展望を教えてください。

知念さん:

デザイン制作だけでないことにもチャレンジしてみたいと思っています。例えば、何か商品を作って流通させるといった、メーカー的な業務にも興味があります。今はまだ具体的なプランはありませんが、広告という枠にとらわれず、機会あればいろいろなことに取り組んでみたいですね。

取材日:2019年12月16日 ライター:仲濱淳

株式会社うさぎでざいん

  • 代表者名:代表取締役社長 知念 宏樹, 代表取締役副社長 吉田 コマキ
  • 設立年月:2016年2月
  • 資本金:400万円
  • 事業内容:・グラフィックデザイン、ウェブデザイン、商業デザインの企画、⽴案、制作
         ・企業の広告宣伝・販売促進及びマーケティングに関する企画・制作
         ・地域活性化に関する事業
         ・総合輸出入貿易業務及びそれに付随する事業
         ・経営及び物流に関するコンサルティング及びそれに付随する事業
  • 所在地:〒900-0005 沖縄県那覇市天久2-2-35(3-A)
  • URL:https://usakuma.jp/
  • お問い合わせ先:098-988-4145

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