YouTube×コミュニケーション。世の中に欠けた愛を埋めるために動画ができること

東京
株式会社WIQOMEDIAN 代表取締役
YUKA TAKI
滝 祐夏

「小学生のなりたい職業」に挙げられるようになったYouTuber(ユーチューバー)。YouTube(ユーチューブ)の登場は、かつて難しかった動画制作を、一般人にとっても、身近なものに変えました。誰もが動画を撮影し、配信することが可能になった現代に、YouTubeのコミュニケーション性に着目して参入した企業が、株式会社WIQOMEDIAN(ウィコメディアン)です。代表の滝祐夏(たき ゆうか)さんはテレビ業界出身。滝さんはYouTubeをただ動画配信だけのツールではなく、コミュニケーションとして捉えています。「今の世の中には愛が不足している」と語る滝さんにとって、動画コンテンツを制作し、コミュニケーションの場を広げていくことは、世の中に枯渇している愛を満たしていく作業。動画配信ビジネスとして、またコミュニケーションツールとして、YouTubeチャンネルのブランディングや企業としての思いを語っていただきました。

やりたいことができない憤り。やがて世界は神意的なものだと気付いた

動画制作を始めたきっかけはなんでしょうか。

学生時代から映像に興味があり、自主映画を撮影していました。就職先には映画会社を志望しましたが縁に恵まれず、テレビ番組の制作会社に入社。3年で独立しようと当時から決めていて、決意通り、3年働いた後、友人と起業し、会社は当初プロダクトデザインの仕事を考えていました。世界のトイレを変えたいと思って。これだけテクノロジーが発展しても、未だに他人の尿で汚れた床を踏みながら用を足すことに納得がいかなかったんです。だから変えたいと思い起業したんですが、一緒にやるはずだった友人が別のビジネスにハマって決別することになり、自分ひとりでできることは動画制作だと立ち返り、映像制作会社を作りました。

映像一筋というわけではなかったんですね。

やりたいことは映像に限らずたくさんありましたが、当時は「なんでこんなにやりたいことができないんだろう」と憤りがありました。
世の中は常に神意的なもので、社会に欠乏しているものに対して、自分がどう埋められるのかということでしか、存在意義は示せない。ですが、それだとやりたいことができるわけじゃない。
だからといって、巡り合わせに逆らってまでやりたいと押し通す力は僕にはありませんでした。でもスティーブ・ジョブズならできたかもしれない。それが自分で分かっていることもつらかった。少しオカルトっぽい話になってしまいますが、やるべきことは、自分に与えられた問いにどう応えるかということで、運命的なものだと思います。

コミュニケーションはデジタルの先にリアルがある

YouTubeでの動画制作配信について伺えますか。

YouTubeはデジタルコンテンツであり、発信者と視聴者が繋がるコミュニティーでもあります。今、妻と一緒に始めたヨガスタジオも運営し、YouTubeではヨガチャンネルを配信しています。これはデジタルのつながりです。そして見てくれた人の中には、ヨガスタジオに通ってみようとリアルな場を求める人もいる。このようにデジタルとリアルな場の両輪を走らせることで、今の時代にベストなコミュニケーションを提供できると思っています。

YouTubeの発信によりファンを獲得することが事業につながっているんでしょうか。

ビジネスだけではなく、根底にあるのは愛です。YouTubeのすごいところは、出ている人やその人の世界観を好きになっていくところです。その中にはファンでいてくれる人もいる。好意を得るというのはとても強いんです。人が集まり、ビジネスにもつながりますし、視聴者が発信者を知っているのでブランディングが楽です。
大切なのはやはり愛で「ファン相手だから」と何も考えずに押し付けるようになってしまえば、人は離れていってしまう。近江商人の考え方で「三方良し」という言葉があります。「売り手良し、買い手良し、世間良し」で、関わっている人すべてにメリットがなければ、いい関係は築けません。

なぜ、コミュニケーションツールとして動画を選んだのでしょうか。

最初はそう考えたわけでもなく、ヨガスタジオを作った頃が転機です。その頃、あるアパレルの人気ファッションチャンネルがあって、公開収録をすれば何百人とファンが集ってくれました。服も、そこでは飛ぶように売れる。本当に好きなものには、ファンは「もっと関わりたい」と思っていると知り、「コミュニティの場をリアルにつくってしまえばいい」と考えました。
今はリアルでは、人とのつながりが減っているじゃないですか。一方でネットでは人がどんどんつながっていく。でも、他の人の活躍や人気を見て、かえってさみしくなる人もいる。そういう欠乏をYouTubeコミュニティーを軸とした愛で埋められればと思います。

面白いことを突き詰めて、社会の欠乏を愛で埋めていく使命

愛にこだわり始めたのはいつからですか。

ヨガを始めてからですね。ヨガの本質は哲学で、それを実践するために体を整えているんです。ヨガの基本になっているのがヴェーダというインド古来の経典で、そこには現代に必要な知恵が詰まっています。
この経典から、自身の役割をどう受け入れて謙虚に生きていくかを学びました。そして、この学びをもって現代に目を向けてみると、今の社会には足りないものばかりだと驚き、自分も何か社会に還元していきたいと思いました。社員に対しても、彼らが持っている役割を全うできない場所なら、作っても意味はないんじゃないかと。欠乏しているものを埋めていく何かを作らなければ、会社をやっている意味がない。自分としてはまだまだではありますが。

社名が変わったのはビジネスを変えたいという意図があったのでしょうか。

最初は、株式会社東京倉庫という名で、インバウンド向けのメディアを作っていました。例えばラーメン店の情報だけでなく外国人向けの「ラーメンの食べ方」とか。東京のいろいろな情報の倉庫という意味での名前です。
ですが、本当にやがて倉庫のように「モノ」しかない状態になってきました。ちょうど人がどんどん辞めていた時期で「本当に倉庫になってしまう」と新しく社名を「ウィコメディアン」に変更。この由来は「ウィキペディア」と「コメディアン」と「メディア」をかけ合わせています。「エンタメをよりインタラクティブに、笑いを共創し、それ自体がメディア」というメッセージを込めました。YouTubeには視聴者と提供者の間の愛や、楽しんで発信している人の愛があります。人を楽しませ続けることが自分たちの使命です。

浅井企画とのコラボ企画について伺えますか。

今、お笑いの世界の問題として、芸人が入れ替わらないというものがあります。テレビに出ているのはごく一部で、見えないところにものすごい数の芸人がひしめきあっています。お笑いは今までテレビでブレークするしかありませんでしたが、YouTubeを活用すればそういった人たちにもチャンスがある。YouTubeに適した芸を持っている人はいいのですが、違う芸風の人もいるので「彼らをどう伝えたら、センスを認められるようになるのか」とやってみた企画です。現在休止中ですが、6月に再開予定です。

素人も多いYouTubeに企業として入っていくにあたり、どのようなアプローチを考えられていますか。

個人では、飛び抜けた趣味がある人はそれを流すだけでも同じ趣味の人が集まってきます。若い人の日常も、毎日アップしていると、似たようなユーザーが共感しますから、それで成立します。企業の場合は、技術や情報はあっても、共感はゼロベーススタートですから、それをどう擬似的に作るか、ファンを開拓するかという設計が重要になります。

愛や使命でも収益は必要ですが、ビジネスモデルについて伺ってもよろしいでしょうか?

通常の広告がメインです。またはタイアップ型の依頼がある動画ですね。ヨガのようなリアルな場があるものは、そこでも収益が出ます。メディアがひとつ立ち上がれば人が集まるので、そこにビジネスが生まれます。だから人口減は怖い。少子化なので、いかに一人一人の顧客のLTV(生涯価値)を上げるかが重要になってきます。ファンの満足度が大切です。企業の最終目的は利益を出すことですが、そこに重きを置かない会社もどんどん出てくると思います。例えばパタゴニアという「自然保護をしたいから、その費用のために企業として利益を出す」という会社があります。最後には周りへの愛が重要になるんです。

YouTubeを通じて見つめるこれからの未来

今後はどのような活動をされたいですか。

コミュニティとしてのYouTubeチャンネルをたくさん作り、並行してリアルな場に小さなテーマパークをたくさん作っていければと思います。多様性を受け入れる愛を軸に感じるリアルなコミュニケーションの場です。その一環として、近々、会社の近くにサウナを作る予定です。これも、女性スタッフによるサウナチャンネルを並行して走らせた、デジタルとリアルのテーマパークです。

最後に、YouTubeを作っている人やクリエイターに一言いただけますか。

いかに人を楽しませたいかという気持ちがあって映像を作っていると思うので、今あるものと同じものを作るよりも、今あるものの半歩先を作るのが面白いと思います。半歩先というのが重要です。一歩先だと理解されない。見たことがないものには共感しにくいので、その間を取る努力をしてみてください。
YouTuberがこう作ってるからこうしようって、まねていくスタイルが主流だけれど、それが本当にいいのか? 見慣れているから理解されやすいのですが、それだけではクリエイティブってものが進化しない。「これは本当に機能的なのか」とか、小さなイノベーションをクリエイターが繰り返していけば、もっとクリエイティブで楽しい世の中になるんじゃないでしょうか。

取材日:2020年1月28日 ライター:久世 薫

株式会社WIQOMEDIAN

  • 代表者名:代表取締役 滝 祐夏
  • 設立年月:2013年4月
    ※2018年12月13日に、株式会社東京倉庫から社名変更
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:動画メディア事業・マイクロテーマパーク事業・プロダクション事業・広告事業
  • 所在地:〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1-9-9 新室町ビル4F
  • URL:https://www.wiqomedian.jp/
  • お問い合わせ先:03-6886-5879

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