仙台でいち早くトレンドをとらえた最先端のデザインを提案
勤めていたファッションのWebサイトを運営する会社が突然解散になり、東京から地元・仙台に帰ってきた小林啓樹(こばやし けいき)さん。地元・仙台のデザイン会社に就職。そこでデザイナーの佐藤早紀(さとう さき)さんと出会い、仙台市の助成事業コンペに応募して通ったことをきっかけに会社を辞め、2人で株式会社OPEN TOWN(オープンタウン)を設立。
温和でシャイな小林さんと、物おじしないパワフルな佐藤さん。お互いのセンスと技術を出し合い、仙台PARCOのインスタグラムの撮影や仙台フォーラスのエレベーターデザインなど、若い人のトレンドをつかむ幅広いモノづくりに取り組む2人に、お話を伺いました。
ファッション好きで目的が一致し、流れで会社を設立
小林さんは東京でフォトグラファーをやっていたそうですね。
小林啓樹さん:
東京の大学に進学してすぐ、ストリートスナップのファッションサイトを運営する会社で、街角でお洒落な人に声をかけて写真撮影をするアルバイトをしていました。高校時代からファッションのWebメディアには興味があり、インターン募集広告を見て応募しました。基本的なことは、先輩に教えてもらいましたね。そのうち、社長から社員にならないかと誘われて、大学を辞めて就職しました。社長一人であとはボランティアという、サークル仲間の集まりのような感じでした。社長は当時25歳くらいで、ハチャメチャというか何を考えているのか謎な人でしたが、魅力的で、その社長についていこうと思ったのです。
ところが、倒産してしまって。このときにいったん仙台に帰ってきて、1年くらい仙台に住んでまた東京に戻ろうと思いながら、デザイン会社に就職して、そこでデザイナーの佐藤早紀さんと知り合いました。
小林さんが佐藤さんと知り合って、2人で起業することになったのはなぜですか。
佐藤早紀さん:
私は、看護学校からデザイン学校に入り直して。東京にある雑誌の編集部などに憧れていましたが、仙台は離れられなくて。東京にあるスナップサイトのようなWebメディアを仙台で作りたくて、同年代のセンスのいいカメラマンを求めていました。そんなときに、入ってきた小林さんが、よく見ていたスナップサイトで写真を撮っていたと知り、一緒にWebメディアを作ろうとスカウトしました。
小林さん:
2015年に仙台市が起業する人を応援する助成金プロジェクトコンペを見つけて、出したら通ったのです。会社員だと副業はできないので、2人とも辞めて会社をつくることになりました。会社を作ろうとか、事業を起こそうという気持ちは一切なかったのに、自然な流れで。会社にしたのは、メーカーさんと契約するには、個人だと審査が難しく、入金の手続きも面倒で会社にする必要があったからです。
仙台市の、どのようなコンペでしたか。
佐藤さん:
新規事業立ち上げを応援する助成金事業です。ファッションスナップで仙台の若者を盛り上げようと、若い人たちが好きなことをできる場を提案しました。その助成金で仙台フォーラスの場所を借りて1ヵ月位イベントを行いました。
イベントは、若い子たちが集まるようなイベントやワークショップなどを開催しました。なかでも、無料のヘアアレンジのイベントが好評で、ネットの告知で呼べない新たなお客さんを呼ぶことができました。そして、美容系のディーラーさんやメーカーさんがスポンサーになってくれて、美容系イベントが継続してできるようになりました。
小林さん:
アイデアが形になり、人も集まり嬉しかったですね。最初はイベントがメインで並行してポスターやフライヤーなども作っていましたが、コンペに通ったことがきっかけで、人脈も広がり、環境が変わりました。
今、オフィスが入っているイエロービルは、コンペに通った後、ビルのオーナーから「空きビルがあるから入りませんか」と声をかけられたのがきっかけです。古いビルでしたが、リノベーションをして、おしゃれなオフィスに生まれ変わりました。ビルの3階と4階でアパレル販売やネイル、フォトスタジオ、イベントスペースのレンタルもしています。
佐藤さん:
看板も出していないので、ネイルやアパレルはインスタにアップしたり、ミニモという集客サイトに掲載したりしていますが、お客さんはほとんどが口コミですね。仙台では「黄色いビルの上」というので分かります。
仙台で一番早くトレンドを反映したデザインを作りたい
幅広いお仕事をされていますが、何がメインですか。
小林さん:
僕がデザイン、写真撮影、映像制作、編集など、Webデザインに関連するもの、佐藤がネイル、アパレル、広告グラフィックのデザインなどを、個別にやったり一緒にやったりしています。気付いたらいろいろやっていて、何屋さんかわからなくなってきました。今は仙台フォーラスの巨大スクリーンの動画やエレベーターの壁紙のデザイン、看板、PARCOのインスタグラムで使う写真撮影などをやっています。
佐藤さん:
私は多趣味でいろいろなことに興味があって、飽き性なところもあり、同じことを長くできないタイプ。ただ、アパレルやネイルなど、ファッション系はどんどんトレンドが変わっていくので、飽きがきません。トレンドをおさえるとデザインにも反映できるので、つながっていますね。
この仕事を始めたときは23歳くらいでしたが、だんだん30歳近くなって、20歳頃の気持ちがわからなくなってきているので、できるだけ若い子と関わり、話す機会を作って、若々しいデザインが作れるように心がけています。
御社のポリシーを教えてください。
佐藤さん:
やはり、ひと昔前のデザインはしたくない、デザインは最先端でいたいという気持ちはあります。仙台にはおしゃれ系のデザイン事務所が少ないから、「OPEN TOWN」に頼むと今っぽいデザインができると思ってもらえたら。東京と仙台はだいぶ時差がありますが、トレンドは早く取り入れていると思います。
小林さん:
東京に遊びに行ったりして、お互いトレンドをおさえるようにしています。僕はずっとファッションの写真を撮ってきたので、ファッションが好きというのが根本にありますね。
困っていることを解決し、喜ばれる仕事がしたい
仕事をする上で大事にしていることは?
小林さん:
僕は働くことが好きなので、仕事はあればあるほど嬉しいです。仕事をいただくと、ワクワクしてテンションが上がります。そして、クライアントもテンションが上がって喜んでくれることが一番大事。クライアントがハッピーなら自分もハッピーです。
佐藤さん:
そう、仕事を発注してくれる相手に「うれしい」と満足してもらえることをやりたいですね。ただ、若い人がターゲットなので、無難なものより、目につくおしゃれなもの、クライアントが想定していなかったデザインに挑戦したいので、「先方の要望に沿ったもの」と、話を聞いて「私が思う、より良いもの」と2つ提案するときもあります。ただおしゃれなものよりも、説得する材料を重ね、納得していただけるようなものを作ろうと、頭をフル回転しています。
小林さん:
自分が好きなデザインをして、クライアントが見ても納得するようなものです。自信を持てないものは極力出しません。
これから会社をどうしていきたいですか?
小林さん:
働くことが好きで、長い時間働けば対応ができるので、今のところスタッフの募集はしてきませんでしたが、体制として、営業がいないので、人を増やしてもいいのかな、とはずっと考えています。
これからは東京のテレビの仕事などもしたいと思い、周りに話して徐々につてが出来てきたところです。最終的には、自分たちも食事をする場がほしいので食堂をやりたいと思ったりしています。
佐藤さん:
食堂とか、犬を連れていけるご飯屋さんとか、近くの人が楽しめる場所、困っていることを解決できる場所をつくりたいというのがあります。会社をすごく大きくしたい、ガンガン稼ぎたいというのはありませんので、クライアントも、「費用がかかるのでは」などと思わず、気軽に相談してほしい。デザインだけを頼むのではなく、どうやったら人が来るかまで、サポートしたい気持ちがあります。それをたくさんかなえるためには、従業員を増やした方がいいのかなとは思います。ただ、私は生涯プレイヤーでいたいですね。
小林さん:
僕は、人がやっていてもいいかなと思います。最近、技術があるのに定年で仕事をしていない職人さんとかがいて、もったいないと思う。定年した年配の人と若い人をつなぐサービスができたらいいなと考えています。今は、撮影したり、洋服やレコードを販売したり、ネイルを提供したり、撮影スタジオやイベントスペースを提供したりしていますが、ここが到達点ではなく、まだまだやりたいこと、可能性がいろいろとあるので、挑戦したいと思いますね。
取材日:2020年2月18日取材 ライター:佐藤 由紀子
株式会社 OPEN TOWN(オープンタウン)
- 代表者名:代表取締役 小林 啓樹
- 設立年月:2017年6月
- 資本金:300万円
- 事業内容:デザイン、アパレル販売、撮影、撮影キャスティング、イベント運営、ネイル、 ほか
- 所在地:〒980-0014 宮城県仙台市青葉区本町1-13-16 Yellow Bldg 3F、4F
- URL:http://opentown.jp/
- お問い合わせ先:opentown34@gmail.com
- TEL: 080-1809-8949