グラフィック2020.05.13

京都の食の思い出に華を添える、グルメガイドを発行

京都
Hotechika Office 代表
Takashi Mikawa
三河 隆

シズル感のある写真と分かりやすい文面で、ストレートに読者の食欲をくすぐる冊子「ホテチカぐるめ」。その名の通り、ホテルから徒歩圏内にある、レストランやバーなど、宿泊客が食事やお酒が楽しめるお店が掲載されています。制作・発行を担当している「Hotechika Office」の代表・三河隆(みかわ たかし)さんは、「何よりも地域とのつながりが大切」と話し、掲載店・設置側のホテルとの信頼関係の構築に尽力されています。対象エリアの規模拡大を視野に入れ、着々と歩みを進める三河社長に冊子作りへのこだわりや、今後の展望についてお話を伺いました。

異業種を経てたどり着いた広告業界の仕事

これまでのキャリアについて教えてください。

レンタルビデオの商品管理の仕事をしていたのですが、広告の仕事をしたくて、地域密着型フリーペーパーの制作・発行をしている企業に転職しました。そこで企画営業を担当し、念願の広告デザインの仕事に携わることができて充実していたのですが、会社が業務縮小になり退職することになってしまいまして…。その後、就活の甲斐(かい)あって、女性をターゲットにしたフリーペーパーを手掛けている会社で、また企画営業の仕事に就くことができました。

企画営業の仕事の魅力って何だと思いますか?

自分の考えたものや提案したものが形になった時の達成感と、その制作物でクライアントやエンドユーザーに喜んでいただくことがこの仕事の醍醐味(だいごみ)だと思います。やりがいを感じていたのですが、Web化の影響で印刷物の縮小が進むなか、会社も経営方針の見直しが必要になっていきました。ちょうどそのときに他社が取り扱っていた「ホテチカぐるめ」という冊子の企画・運営・発行を引き継ぐ話が舞い込んできたのです。

その名の通り観光などで訪れた宿泊客用に「ホテル」から徒歩圏内の「グルメガイド」として客室に備え付けられている本でしたので、インバウンドの増加など今後の見込みを社内で検討し、全面的に切り替えたんです。

同じ紙媒体とはいえ、それまでのものとはタイプが違うので、最初は戸惑われたのではないですか?

発行スパンが月刊から年刊になり、読者も女性のリピーターから観光客向けになるなど、媒体の体質がすっかり変わってしまったことで、離れていったクライアントがいて大変でした。そこは新規で営業をかけるなどしてうまく回っていたのですが、数年後に諸事情で会社を閉めることになったんです。私は専属で『ホテチカぐるめ』の企画営業を担当していたこともあり、この冊子に思い入れがありましたので、個人で引き継ぐことを決心しました。

個人でとなると、制作面はどうされたのですか?

外注するにも制作の知識が必要になってくるので、前職の制作担当からDTP(デスクトップパブリッシング)を教えてもらい、起業後も独学で勉強し続けています。まだまだ学ぶ事も多いのですが、試行錯誤を繰り返しながら直近の2号については私一人で仕上げることができました。この冊子はいかに写真を美味しそうに見せるかが重要ですので、クライアントからの提供写真や、プロのカメラマンによる撮影が中心になるのですが、掲載店の予算などでどちらも無理な場合は、自ら撮影しています。実戦で写真スキルも身につきました。

皆が気持ちよく利用できることが一番!

本を片手に、ホテル周辺を散策することはできますか?

基本的には持ち出し禁止になります。宿泊客が部屋に戻った際にくつろぎながら見てくださることを想定して制作していますので、写真の質を落とさずに裏写りもしないよう紙質にもこだわり、A4カラー約80頁で保存版のしっかりとした仕上げにしています。宿泊客から「気軽に持ち出しできるポケットタイプのものを作ってほしい」とホテル側に要望があって、従来版とは別に、A5サイズのミニ版を新たに作成することにしました。このミニ版は、ホテルに荷物だけ置きにきた宿泊客も手軽に持って歩けるようロビーに設置し、従来版とは差異化を図っています。

このミニ版も年刊ですか?

ミニ版は、観光シーズンを狙って春と秋の年2回発行しています。現在、烏丸版と河原町版の2種類を各1万5000部発行し、約80カ所のホテルに設置しています。従来版については京都市全域が対象エリアとなるため、設置ホテル件数が200軒くらいで、補充分を含め2万部を発行しています。京都はホテル建設ラッシュですので、ミニ版については京都駅版の発行も予定しています。

独立後も精力的に取り組まれているなかで、仕事で大切にされていることはなんですか?

『ホテチカぐるめ』は、宿泊客である読者、掲載先であるお店、設置していただけるホテル、この3つすべてのご協力があってこそ、発行を続けることができます。ミニ版発行の経緯もそうですが、直にそれぞれの声を聞き迅速に対応することを大切にしています。一時期、掲載店数を増やしたいと思い、通常20~24ページのミニ版を40ページくらいまで増やしたことがあったのですが、1店舗当たりの来店者数が分散されてしまったようで、掲載店から売り上げが減ったというお声があり、すぐにページ数と掲載件数を元に戻すよう調整しました。

それぞれのお声に真摯(しんし)に対応されているんですね

読者・掲載店・ホテルのそれぞれに、この本を本当に気に入って利用していただきたいんです。掲載内容についても、お肉、魚、麺類など、各ジャンルをバランスよく掲載するようにしています。そうした誌面作りが読者にも受けているようで、見やすい・使いやすいとうれしいお声をいただき、なかには、「ホテチカぐるめを送ってほしい」という方もいるくらいです。

現在、ホテチカぐるめの制作・発行が事業の65%程度を占めているのですが、残りの35%で、掲載店の依頼により、メニューブックや名刺、看板デザインや社内ツールなどのDTPデザインや、広告代理店業など、幅広く対応できるようにしています。

冊子ならではの上質な情報を

心強いですね。印刷物を制作されるなかで、Webについてはどう思われていますか?

Webって膨大な情報量が強みなのですが、中には更新されていない古い情報のまま掲載されているものもあり、実際に行ってみたら閉店だったというケースなど、正しい情報ばかりではありません。Webはお客さま自身が情報を探しにいく必要があるのですが、部屋でくつろいでいるときに、何げなく『ホテチカぐるめ』をめくっていくことで、おいしそうな写真が目に入ってきて自然と情報を得ることができます。

Webとはまた違った角度から情報提供ができるところがこの冊子の魅力だと思います。読者の好みは千差万別で、掲載内容が偏ると冊子自体の魅力がなくなってしまいますので、高級店から小規模のお店まで幅広くご紹介できるよう、広告代理店の営業をしていた経験を生かし、掲載料も相場の7割程度にしています。いろいろなお店に登場していただくことで、冊子のクオリティが保たれ、読者の利用のしやすさにつながっていきますので。

確かにホテルの部屋にあるものって何げなく見てしまいますから、このような本があると便利ですね。最後に、今後の展望について教えてください。

社名に“グルメ”を入れずに「Hotechika Office(ホテチカ オフィス)」としているのは、今後、他のジャンルも視野に入れ、掲載店舗や対象エリア、設置ホテルなど新規開拓をして拡大していく予定だからです。

5年後に大阪万博があり、関西ではますます観光客が増えて盛り上がってくると思われますので、京都以外の地域での拡大も検討しています。地域とのつながりが『ホテチカぐるめ』の売りですので、そこだけは見失わないように焦らずに着々と進んでいければいいと思っています。

取材日:2020年2月5日 ライター:川原 珠美

Hotechika Office

  • 代表者名:代表 三河 隆
  • 設立年月:2018年1月
  • 事業内容:ホテチカグルメの編集発行、DTPデザイン(メニューブック、名刺、看板など)、広告代理業
  • 所在地:〒600-8078 京都府京都市下京区松原通堺町東入杉屋町295 カーサデ河原町405
  • URL:https://hotechikaoffice.wixsite.com/hotechikaoffice
  • お問い合わせ先:075-755-2889

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