Web制作約20年、「商い」は飽きないが大事
宮城県東松島市にあるWeb制作会社、有限会社おおはしコーポレーションの代表取締役、大橋諒(おおはし りょう)さん。2001年に父親が経営するこの会社に入社し、時代のニーズに応えてホームページ制作をはじめ、技術とビジネス力を磨きながらWebの可能性を広げてきました。屋号の「ウェブリッジ」には、Webで人と人の架け橋にという意味が込められています。地元に根差し、人とふれあいながら、Webを通して街に貢献する大橋さんの歩みと思いを伺いました。
ホームページ制作を独学で始めてからビジネスとして軌道にのるまで
現職に就くまでのキャリアを教えてください。以前から興味があったのでしょうか。
おおはしコーポレーションは父が創業した会社で、当時は父の保険代理業と母が営むリサイクルショップの2業種で展開していました。僕は16歳から18歳まで、塗装業や水道設備の仕事などをしていましたが、「やりたい仕事がないなら、うちの仕事を手伝って」と親に言われて、20歳の頃に入社しました。
高校までパソコンやゲームが好きで、ゲームを作ったりしていたこともあって、最初はパソコンでリサイクルショップの商品や売り上げの管理をしていました。2001年、インターネットが急速に普及して「ホームページを作ってみたら」と知り合いに言われたのをきっかけに、ソフトを買って制作を始めました。最初に自社のリサイクルショップのホームページを作ったら、父が知り合いに「息子がホームページを作れるようになったから、安く作るよ」と声をかけて、仕事を取ってきてくれました。
ホームページ制作は、どこかで学んだのですか。
いいえ、独学しました。当時は、ホームページを見る人も制作会社も、制作者も少なくて、あればいいくらいのレベルだったので、東松島市では先駆けでした。数千円の制作費で、勉強しながら作っていましたので、技術を身に付けるとともに制作費が上がり、知り合いやお客さんの紹介で発注は増えましたが、制作だけで食べていけるほどの仕事量はありませんでした。
3、4年、一生懸命勉強するとプロレベルのものが作れるようになりましたが、成約に至るのが難しく、限界を感じるようになりました。そんなときに、ドリームデザインという会社が仙台でシステム事業部を立ち上げるために人材を探していて、1年半くらい勤めました。そのときにホームページ制作に対する考え方が変わりました。
「なぜホームページが必要か」を聞いて見えてくる課題がある
どのように考え方が変わったのでしょうか。
優秀な実績を持つ、すご腕営業担当が入ってきて、ビジネス、コンサルティングの要素を学べたのです。それまではお客さんの好みに合わせて、見た目がカッコいいものを作ればいいという発想でしたが、「成果にコミットする」「報酬以上の利益を出す」というビジネス感が圧倒的に足りなかったことに気付きました。
それからはデザインや費用の話は後回しで、メインターゲットが誰で何を届けたいかをヒアリングするようになりました。そもそも、なぜホームページが必要かと聞くと、会社の本当の課題が見えてきて、どんな戦略が必要かという提案が出来るようになりました。
ホームページ制作がビジネスとして軌道に乗り始めたのでしょうか。
いいえ、まだまだ食べていける状態ではありませんでしたが、ドリームデザインを辞めた後も、昼はホームページ制作、夜は居酒屋でアルバイトをしていました。居酒屋のバイトは半年くらいでしたが、1秒も無駄にせず動くこと、酔客を相手にホスピタリティを学べ、それから少しずつ仕事の依頼も増えました。2008年頃に、今の会社の場所に落ち着いて、ホームページ制作に専念するようになりました。
ホームページ制作は無料、売り上げに応じた販売手数料をもらい共同で販売
これまでの制作実績はどのくらいありますか。どんな形で営業していますか。
約20年間で、大小合わせて3000社以上のホームページを作りました。主にお客さんからの紹介で、制作中に新たな依頼があり、常に仕事が切れないので、特に外に出て営業をすることはありません。
強いて言えば地域活動が営業につながっているかもしれません。石巻青年会議所の副理事長、東松島市商工会青年部幹事などの地域活動で知り合った人から頼まれることも多いです。ホームページは、どの業種からも発注してもらえるので間口が広いと思います。
豊富な制作実績のうち、印象に残った案件があれば教えてください。
漁師の友人から「奥松島のカキをネットで売りたい」と相談されて、ホームページを無料で作って商品が売れたら販売手数料をもらうことを提案しました。お客さんから注文がきて、売り上げが目に見えるようになったときは、すごくうれしかったです。お客さんが購入しようと思える水準のホームページになった、自分のやり方が認められたという手応えを感じました。
また、自ら商品を売ることで収入になり、商品を売るノウハウを蓄積することができて、実績も作れるので、「売り方がうまいホームページ屋」という強みになると思いました。
ホームページは完成してから、毎月更新をしてコンサルティングを続けていくのが理想ですが、実際は作って何年かそのままにして、古くなったらリニューアルする会社が多いです。無料で制作して一緒に商品を売る共同販売のスタイルなら、お客さんはノーリスクで、うちは売り上げを上げるために必死になるので、お互いにいい関係で仕事ができています。
脳みそに余裕を作っておくことで、仕事に前向きになれる
仕事のやりがいや課題は、どんなときに感じますか。
弊社の存在意義は、ホームページを通じて困っている会社の課題の解決に一役買うこと。お客さんの売り上げが上がり成果が出て喜んでもらえるのがやりがいです。
仕事の課題はありますが、僕自身くよくよ考えないタイプで、「もっともっと」という気持ちがあまりなくて、「食べていけるからいいか」とマイペースにやっています。
仕事がうまくいかないとき、壁にぶつかったときはどう対処していますか。
当たり前ですが、原因を見つけて、次からは同じ失敗を繰り返さないようにします。反省したら引きずらないで、お酒を飲んで忘れます(笑)。基本ポジティブ、ネガティブで暗いと仕事も集まらないと思います。
人としての幅を広げるためにも、遊ぶことは大切だと考えていますので、仕事とプライベートの切り替えも意識していますね。
Webサイトを面白いと思えるなら天職、飽きずに向き合うことが大事
会社が目指す将来のビジョン、展望を教えてください。
東京や仙台、東松島市など、どの会社にしても、サービスやツールが優れたホームページを作っても、そこで満足してしまうケースが多くあります。また、無料でホームページを作るサイトもたくさんあってSNSなどに慣れている若い人は自分で見栄えのいいホームページを作れると思います。これからホームページの制作会社は淘汰されていくでしょう。
ただホームページを作るだけの会社は活躍することが難しくなると思います。地域密着で仕事をする以上、人との関わりという部分を大きくして、弊社にしかできないコンサルティングという価値を提供して、成果が出るホームページを作っていかなければならないと思います。
そして、いずれ「東松島市の企業ってWeb化が進んでいるね」と言われるようになることが、使命、最終的なミッションだと思っています。そして、各社のPRや売り上げにつながって、それは「ウェブリッジがあるから」と言われたいものです。
ネットやWebで分からないことがあるときに「おおはしコーポレーションに聞けば答えてくれる」と頼ってもらえる存在であれば、仕事に困ることはないでしょうし、むしろ企業のWeb化が自立できるように育ってほしいと思っています。
Webクリエイターにメッセージをお願いします。
まずはやってみること。ただし、ソフトが使えてきれいなデザインを作れても、そこにビジネス感覚がなければ売れるデザインにはなりません。技術は日進月歩でどんどん新しいものが出てくるので、それを面白がって触るぐらいの感覚で取り組むこと。Webサイト自体を面白い、好きと思えるなら、天職だと思います。
僕の好きな言葉のひとつに「飽きない」という言葉があります。飽きないから「商い(あきない)」、飽きてしまったらいいものができません。モチベーションが維持できるよう意識して、飽きずに仕事に向き合っていけば、いい成果につながると思います。
取材日:2020年6月24日 ライター:佐藤 由紀子
有限会社おおはしコーポレーション/ウェブコンサルタント・ウェブリッジ
- 代表者名:大橋諒(おおはし りょう)
- 設立年月:1998年8月
- 事業内容:ウェブサイト、ウェブシステムの企画、制作、開発、コンサルティング業務/チラシ、ポスターなどのDTPデザイン/インターネット広告代理/パソコンおよび周辺機器、関連製品の販売、設置、サポートおよび関連業務/仙台牛の販売およびプロモーション業務 等
- 所在地:〒981-0503 宮城県東松島市矢本字河戸3-2
- URL:http://c-webridge.com/
- お問い合わせ先:TEL:0225-83-2630 FAX:0225-82-2438