WEB・モバイル2020.08.26

異業種からの転職、遅咲きだからこそ伝えられることがたくさんある

広島
iai(アイエーアイ)株式会社 代表
Katsumi Fujimoto
藤本 勝己
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ブランディングサイト、プロモーションサイト、Web制作からサイト運営や分析などを総合的にディレクションしている「iai(アイエーアイ)株式会社」。目的に合わせてチーム作りから始め、予算にあった提案に柔軟に対応しています。また、専門学校・職業訓練校などの講師も務め人材育成にも力を入れています。 代表の藤本勝己(ふじもと かつみ)さんは、穏やかな笑顔で、人あたりが良く、なんでも相談にのってくれそうな柔らかな雰囲気。製造業や営業などの仕事で培ってきたノウハウが人柄に滲みでている藤本さんにお話を伺いました。

「横のつながり」「人間関係」の大切さを学べた苦い経験

まず、プロフィールから教えてください。

広島県廿日市市出身です。高校卒業後マツダ関係の会社で製造の仕事に就いたんですが、これといった目標が持てず、テレビでたまたま見かけたFP(ファイナンシャルプランナー)の仕事に憧れ、保険会社に転職。営業の仕事をしながらFPを学びました。商品をすすめるためラーメン屋さんに通っていると店主から「帰れ!」と水をかけられたこともありましたが、人とのコミュニケーション力アップにつながりました。

もともと好きだったパソコンを使った仕事ができないかと、独学で技術を習得し、24歳のとき、Web系のEC(ネットショップ)を運営する会社にアルバイトで入り、そこで経験を重ねながら2年後、フリーランスとして独立。しかし、目の前の仕事に追われる日々が続いて、「これでは自分の思いとはほど遠い」ことに気付き、仕事の幅を広げるため、印刷とWeb制作の会社に再転職。ここでのキャリアを生かして34歳の時、再度フリーランスとして経験を積み、2020年3月に法人化しました。

会社を設立したきっかけは?

広島だけでなく東京の案件など大きな仕事を請け負うことが増え、お客さまとの直接のやり取りも増えてきましたので、安心して仕事を依頼してもらえるよう、そして、将来的にやりたい仕事を取っていけるように法人化しました。スタッフも増えたので福利厚生の充実を考え、地方で頑張る人たちに幅広く活躍できる機会を作っていきたいと思っています。

社名のiai(アイエーアイ)の意味は?

インフォメーションアーキテクトイズムという造語です。=Web制作にも情報設計を積極的に取り入れていきたいという意味も込めています。

また「iai」をローマ字読みすると「いあい=居合」とも読めるでしょう。 居合とは、刀を鞘に収めた状態から抜き放つ動作が中心の古武術のことで、26歳のときからはじめました。全く無音の場所で刀と向き合うことで己の魂と向き合える、何も考えずに「無」になれるのがいいんです。会社名はその「居合」にも掛けています。

事業内容を教えてください。

ホームページの制作全般、ECコンサルティング、さらに職業訓練校・専門学校・臨時に大学などの講師を務めています。広島でのホームページ案件では、シェラトングランドホテル広島、ダイハツ広島、特定法人あかね会などの制作に関わっています。また、東京の大手企業の案件も多数いただいています。

制作するうえで大切にしていることは、こちらの都合で仕事を捉えないで、お客さんの「こうしたい!」に納得いくまで付き合うことです。この仕事は形になっていくのが目に見えるので達成感があります。

人を育てることは、楽しみでもあり、誇りでもあり、大きな活力に!

講師の仕事では、どんな授業をしているのですか?

職業訓練校と専門学校、それに大学などでもWebやUI/UXについて教えているのですが、職業訓練校では、自身も異業種からの転職組なので「外からこの業界を見たときの憧れはよくわかるけれど、とても専門的でスピードが早いため30代からの転職はなかなか難しい。他の人の3倍は頑張る気持ちがないと続かない」といった現実的な話をしています。専門学校生には、技術的な面はもとより社会人としてのあり方、生き方、コミュニケーションの取り方など、人として基本となることを教えています。

一口に、20歳といってもこれまでの過ごし方、家庭環境などによって、できるできないなどの個人差があるので、分かるように話し、大事に育てています。このように学校で教えるといった機会を持たせていただいていることをとても誇りに思っています。

法人化したり、講師をしたり、とにかくアグレッシブに活動していらっしゃいますが、その原動力は?

広島をもっと盛り上げていきたいという思いからです。東京と広島の差を思い知らされたときがあって…。東京では頻繁にセミナーや勉強会が開かれていて、学びたい人、やる気がある人、若い人たちが集まってしのぎを削っています。勉強できる機会や場所も多く、人材の宝庫なんです。一方の広島でも、学びたい気持ちを持った人を集めて勉強会ができないかと、地道にセミナーやイベントを開催してきました。

例えば、2017年まで「CSS Nite」の広島での実行委員長を務めていました。また、10年以上になりますが、今はコロナの影響もあり自粛していますが毎月1回、広島県や中国地方の人を対象にさまざまな方面からゲストを招いて技術や知識を自主的に勉強する、「WEB TOUCH MEETING」を開いています。

実は26歳で最初に独立したとき、横のつながりが希薄だったため挫折を体験しました。webの仕事は、人間関係が大事だと実感し、一緒に成長できる仲間作りを目指しています。「広島も東京とそこまでレベルは変わらない。あとはいかに注目され、良い人を輩出することが出来るか? やる気がある人をどう増やすか?」これが私の原動力です。お金にはならないですけれど、楽しいですね(笑) 。

本も出されていますね。

きっかけをいただいたので頑張って書いてみようと。共著ですが『css3デザインブック仕事で絶対に使うプロのテクニック』と『初心者からちゃんとしたプロになるWebデザイン基礎入門』(共にMdN)の2冊に寄稿しました。「Webデザイン基礎入門」の方は重版(3刷)されて、基本のところから最近の業界の傾向まで、この本を読めば丸々1サイトを作れるよう、分かりやすく書いています。教科書代わりに使ってほしいですね。

穏やかな笑顔のなかに秘められた、強い意志と闘志

藤本さんにとってWebデザインの仕事は?

国の境界がないので広い世界に目を向けて進んでいけます。日本人は世界的にも認められていて、今のところ対価としては、海外の方のレベルが高いんですが、この仕事は、AIが入ってきても、すべてが無くなる仕事ではないと思っています。ただし現状維持では置いて行かれますから、仕事をしながら勉強を続けることが大事だと考えています。

今後、どんな会社にしたいですか?

今はまだ、大きな案件が動いても横並びの状態で決められた座組みのなかで請け負うことが多く、実際に広島の案件を他県の制作会社が作るという悔しい思いを何度もしたことがあります。今後はシステム開発の要である上流工程を目指し、采配できるようになれば、よりお客さまの思いを反映できるのではないかと思っています。そのために要所をしっかり押さえていきたいですね。

現在、1チーム5人(デザイナー×2、コーディング×2、ディレクター×1)で案件に取り組んでいますが、ゆくゆくは、自分がもう少し営業に出たいと思っています。5年後は東京に出て、自分がいなくても会社が回っているようになるのが目標ですね。

スタッフに対して心掛けていることは?

細かいところにまで気が付けるように心掛けています。クライアントは、制作現場の裏側など細かいところまでは見えないので、当たり前に案件をこなしていると思われてしまうこともありますが、デザイナーたちは、当たり前ではなく少しでも良いものができるように工夫してやっています。その気持ちを汲み取って、先方に伝えるようにしています。

そして、スタッフに「お客さんが喜んでいたよ!」と伝えることも大事だと思っています。頑張ってやっていることは、評価にも対価にもあらわれ、喜び、やりがいにつながっていくことを実感してもらいたいと思っています。また、息詰まったりして困ったりしても、一人で抱え込まないでほしいですね。

これからこの仕事に就きたい人に一言お願いします。

デザインをする仕事は、傍から見るとオシャレでかっこよく見えるかもしれませんが、決してお洒落な仕事ではありません。どちらかというと地味なんですよ。でも、学べるスキルが多く、そのスキルを使いこなせ、いろんなことに興味を持ってチャレンジできることが楽しさにつながりますので、ワクワクする気持ちを大事にしてもらいたいです。

取材日:2020年7月10日 ライター:土井 美幸

iai/アイエーアイ株式会社

  • 代表者名:藤本 勝己
  • 設立年月:2020年3月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:ホームページ制作全般・ECコンサルティング、穴吹デザイン専門学校Webエキスパート専攻非常勤講師、デジタルハリウッドSTUDIO広島 特別講師
  • 所在地:〒730-0801 広島県広島市中区寺町6-15 上森ビル1階
  • URL:https://iaiweb.co.jp/
  • お問い合わせ先:082-208-5364

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