良い「作物」美しい「花」を育てるためいまは「土」を作っているようなもの
- 福岡
- 株式会社グランドビジョン 代表取締役社長 中尾賢一郎氏
変化した広告の在り方。ダイレクトマーケティングの可能性
業界の枠を越えて様々な事業を行っておられますが、主たる事業について教えてください。
メインとなる事業は、いわゆる弊社の強みとなるダイレクトマーケティングを活かしたコンサルティングや、広告の制作といったところですね。
私自身これまでダイレクトマーケティングに関わっていたわけではなく、イベントや企画などを中心に行っていたのですが、広告の在り方ややり方が変わってきたなという実感がありまして。
広告は、「結果」が見えにくいものです。それがどう作用したのか、という部分。しかし、ダイレクトマーケティングではそこが明確に数値化できる。だから細やかにコスト効率を見ていけますし、そこで掴んだお客様にどれだけ続けていただけるかといったことも数値化できるわけです。
一方で私が経験してきた広告プランニングやイベントは、長期的な視点や効果測定が必要です。私は両方を経験できているので、今とても勉強になっているし、これからの広告の在り方を構築できるんじゃないかとも思っていますね。
コミュニケーション手段としてコールセンターを使う、という?
そうですね。商売になるからコールセンターをやっているというわけではなくて、お客様の声を活かすためというか。いまは、「売ってないものはない・いつでも買える」という時代じゃないですか。商売をする側の悩みどころは差別化ですよね。そういう状態で、お客様の声こそ大事じゃないかと思っているんです。
コールセンターはアポインターがオペレーション業務に従事している、というようなものではなく、むしろマーケティングやホスピタリティ、ロイヤリティといった意味合いが強い。そしてそこで得たお客様の声を活かした商品作りやマーケティングを、私たちは心がけています。
面白いコトをやるために、面白い人を育てる。そのための面白いコト
イベントなどもたくさん行っておられますが、そちらのお話も聞かせてください。
グランドビジョンとしてやっている自主興行、大きくは『空海劇場』と『ディクショナリー倶楽部』ですね。それぞれきちんと意味を持っていまして…。 やっぱりこの地域で商いをさせていただいている中で、なんらかの地域貢献をしていきたいな、と。福岡は新しいものがどんどん入ってくるじゃないですか。でも、「もっと古くから続いているものに関心を持つことって大事だな」「知る機会を私が作っていかなきゃいけないな」と思ったんです。
空海劇場はどんなイベントなのでしょう?
空海は、アジアから色々な文化を日本にもたらしたと言われています。単に宗教家というだけでなく、食や工学、医学、最初に民衆の学校を作ったのも空海と言われています。その多様性は我々がやっていることにも一致しているんです。 「空海劇場」では、様々な伝統芸能や文化をモチーフとしたプログラムを用意しています。「空海劇場」を通じてそういった伝統文化に触れていただきたい。昨年秋に3回目が終了しましたが、これからも続けていくつもりです。
地域貢献、さらには文化貢献といったところですね。
そうですね。すごくメッセージ性の高いイベントで、もうプロジェクトですね。…だから全然儲からないですよ(笑)。
実際やろうとすると「それは儲かるのか」という問題が必ず出てくるじゃないですか。でも、そこだけで測っていたら何もチャレンジできないです。それに、本当に大切なことって結果が出るまでに時間がかかる。自分についてもそうだし、会社についてもそう。そこは長い目で見ていかなきゃいけない。今の時代って、すぐ結果を求めるし、何かとリセットが早いじゃないですか。スピードが大切なことと、そうじゃないものの見極めが大事だと思っています。「空海劇場」は時間がかかってもしっかり育てて続けていきます。
もうひとつの「ディクショナリー倶楽部」というのは?
「スネークマン・ショー」の桑原茂一さんとお会いして、今の時代、東京の一極集中じゃないよね、という話になったんです。でも何かとカネで判断されて、やりたいことがあってもチャレンジできないような状態だとなかなか人って育っていかない。で、結局刺激を求めて東京に行く、っていう状態ですよね、まだ。
刺激ある人間を育てるために、「刺激的なコト」を作らないといけない。そして、それを見て刺激を受けて「福岡でも出来る」と思ってもらう。だから、単なる興行イベントではなく、「面白いコトをするために、面白い人を育てる。そのための面白いコト」をやりたいと思っているんです。
著名なお方が多数参加されているとか?
「ディクショナリー倶楽部」では茂木健一郎さんとリリー・フランキーさんを両横綱に設定して、福岡で、もしくは福岡出身で頑張っている人を土俵に上げて両横綱と事前打ち合わせなしのトークバトル、というようなことをしています。「体と体のぶつかりあい」みたいな話から「じゃあ土俵作っちゃいましょう」と。
エステーのCMを手がけている鹿毛康司さんや「あんみつ姫」のとまと座長、世界的に有名なイラストレーターの黒田征太郎さん、レベルファイブの日野社長などなど、そうそうたる面々に土俵に上がっていただきました。打ち合わせなしだし、この人たちがリリーさんや茂木さんと一体どんな話を繰り広げるんだろう、と(笑)。おかげさまで、ご来場の皆様にも凄く喜んでいただけました。 土俵も実際と同じものを作りましたし、大学の相撲部に来てもらって、現役の相撲部屋親方にDJをやってもらったりもして(笑)。
リリーさんなんか「朝までやりたかった」とおっしゃってました。会場の一体感も凄かったですよ。やっぱり、それぞれの土地が持っているポテンシャルがあると思うんです。元気がある人とか、長年何かを追及している人とか。そこに茂木さんやリリーさんがやってきて、何を感じてどんなことを喋るのか。これが面白いと思うんですよね。
年に2~3回、こういった地方巡業をやっていきたいねって桑原茂一さんと計画してます。
いまの事業は、未だやりたいことの100分の1
本当に事業の幅が多彩ですね。「アサファイト」についてもお聞かせいただけますか?
大半の日本人は、朝スタートするわけじゃないですか。で、どちらかというと朝元気のない人が非常に多い。みんなが朝元気になれば日本は良くなると思うんですよ。 じゃ、それをどう元気にするのかって考える時に、やっぱり朝の習慣を見なおすことが大事だと思うんですね。そこで、「アサファイト」っていうブランドを立ち上げました。
まあ、こっちはまだまだこれからの取り組みで未完成なんですが。うちのメンバーが朝のラジオにレギュラー出演したり、朝活を取材して紹介したりとか。今後は、朝に嬉しいグッズの販売なんかも拡げていきたいですね。現在弊社が製造販売している「ごぼう茶」は、朝に最もやさしいお茶を探してたどり着いたお茶なんですよ。
全ての事業や取り組みについて、世の中を良くしたいという社長の想いを感じます。
実はまだやりたいことの100分の1くらいしかできていないんです。でも、それをやるためにはお金も時間も環境も、そして何より「人」が必要なんですよ。 例えば「空海劇場」なんかは、3回目を迎えてだんだん協力者・理解者が増えてきました。共感してくれるメンバーが社内外に増えて、精神科医で有名な名越康文先生やイベントプロデューサー・タレントの深町健二郎さんなど、本来こちらからオファーして来てもらうべき人たちが向こうから連絡して協力してくれる。
グランドビジョンのグランドって「土」という意味合いもありますよね。いまは土作りをしているようなものです。やっぱりいい土じゃないと、いい作物や綺麗な花は育たない。 グランドビジョンで言う「土作り」はすなわち「人づくり」です。 刺激的な面白いことにチャレンジしたい人、伝統を知り新しい発想もある人、事業に共感してくれる人が増えていくことが事業の成長・拡大に繋がりますよね。
社長が作ろうとしているものはもう、「日本の土」ですね。
いや、そんなに大それたことは言えませんが…(苦笑)。でも、今後いろんな地域を視野に入れていますが、結局「畑」を作っていくようなものですよね。そして各地で、みんなを幸せにするような「作物」だったり「花」だったりを生んでいけたらと思います。
最後に、全国のクリエイターへメッセージをお願いします。
「クリエイター」や「営業」といった垣根のない人が活躍できる時代じゃないでしょうか。作りたいものだけを作るアーティストでない限り、なんらかの目的を持って作っているわけだし、それはクライアントの投資で成り立っています。営業が取ってきた仕事をこなすのではなく、自分の作ったものがどのように役立ち、クライアントにどれだけ利益をもたらすのかについてもコミットしていく必要があると思うんですよね。
有名な方でいうと佐藤可士和さん。あの方は一般的にはクリエイターですが、私から見れば凄腕の営業マンだし、凄腕のプロデューサーでもあるし、もちろん日本を代表するクリエイターでもある。そういう人って少ないかもしれませんが、でもこれからはそういう人が求められる時代になるんじゃないかな。クリエイター的センスを持った営業マンなんかはもの凄く活躍すると思いますよ。
取材日:2014年1月
株式会社グランドビジョン
- 代表取締役社長:中尾賢一郎
- 設立年月:2011年11月1日
- 資本金:2,000万円
- 事業内容:
- 広告プランニング
- ブランディング
- マーケティング
- 商品開発
- 映像制作
- 事業計画立案
- コールセンター運営
- TEL:092-718-3041
- FAX:092-718-3042
- 所在地:〒810-0001 福岡県福岡市中央区天神2-4-5 デイトンビル1-3F
- URL:http://gvn.co.jp/